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キラの至上最悪の災難

「…………………」
「あのー…キララちゃん?」
(ギロッ)
「(ビクッ)な…何でもないです……」

いかせのごれ高校2年2組。
ほとんどの生徒達がただならぬオーラに戦いていた。
キラである。

<おやおや。あからさまに不機嫌だねえ>
「そだねー。『相変わらず貧乏くさい身なりだな愚民よ』とか言った人利一を、軽く睨んで戦闘不能にさせたもんね」

クラスきっての凡人な非凡人である灰音と、ちらほら伝説を残しつつある簀は呑気にその様を見ていた。(因みに簀は大量の中華まんを食べている)

「………」
「白奈、もう話しかけんな。触らぬ神に祟りなし…だ」
「う…うん」

小声で制止したのは紀伊。

「…ねえねえオト君。何でキララちゃん、あんなに怖いの?」
「あー…まあ。ちょっと、な…」

数日前の事だ。


―ウスワイヤ―

「…っと。復興作業も大変だなー」
「大丈夫か、朱弘梨。無理してまた玉置先生に怒られるなよ」
「わーってる、わーってrオェエエエーー!!!」
「言われた傍から吐くなぁあああ!!!! 誰か! 水入りバケツと雑巾と袋!」

千年王国の襲撃を受けた翌日の事。
その時キラは、朱弘梨や他の仲間と復興作業をしていた所だった。
因みに隅っこで、

「金……僕の金………」

学校でもウスワイヤでも金の亡者で有名な人利一が体育座りしていた。

「……どーするよ、アレ」

ジト目で人利一を見やるヒロヤ
それに対して幸斗は、

「んー…ほっといて、いいんじゃないですかねー」
「…そうか。まあお前が言うんならいいか」
「はいー。なーんか大体いつもの事らしいですよー」

と、そこで幸斗の赤い目が一瞬青く光る。
人格が幸斗から妖魔のユクへ変わったのだ。

アキヒロの所長権限か。聖の仕置きか。はたまたそれ以外の奴の仕置きで、泣く泣く金出したんだろーよ。哀れな事だなー全く」

体の主に似合わぬ笑い声を上げるユク。

「アイツ、結構嫌われてそうだもんなー…それよか、急に出てくんなよ。ビックリするだろ」
「ハッハッハー!」
「オイお前らー…駄弁ってねーで手動かせよー…」
『へーい』

何とか復活した朱弘梨にたしなめられる二人。

「…ところで、ジャックと梦惟さんは?」
「ああ、パトロールで外に行ってる」
「そうか。しかし梦惟さんが尤惟から離れるとはなあ…」

騒動の前に保護された梦惟は尤惟の姉であるのだが、その重度なブラコンで瞬く間にウスワイヤで有名になった。
どれくらいかと言うと、大衆の前でも「トガちゃ~んVv」とハグしては尤惟に「死ね」とウザがられるぐらい。

「まあ、ブラコンではあるが真面目だからな。…一応」
「何で最後付け加えたし」

と。

「ただいま~」
「只今帰還シマシタ」
「おー、お帰りー…って、誰だソイツ?」
「てか…人間じゃなくね?」

ジャックが肩を貸している少年らしき人物に気付く朱弘梨。
またヒロヤの言う通り、体の所々が『破損している』かの様になっていて、しかもコードやらエナメル線やらが見えている。

「跡地で倒れているのを見つけたんデス」
「背中にホウオウグループのマークあったから、多分捨てられたんじゃないかな?」
「んー…まあ、とりあえず所長や獏也さんに相談……ってキラ?」


「…よくものうのうと私の前に……」


「キ、キラ?」
「どうしたんだよ一体…」
「キラさーん?」

突然の態度の変わり様に狼狽える朱弘梨達。
と。

「…ん」
「あっ、起きた」
「大丈夫デスカ?」

目を覚ました少年。
辺りをキョロキョロと見渡していたが、キラに気付いた途端、目を輝かせた。

「…キラ?」
「え?」
「知ってるの―――」

刹那。


「…黙れぇえええええええええええええええッ!!!!!!!!!」


『!?』

ドゴォオッ!

「あたたたー…」
「つう…ハッ、朱弘梨! 大丈夫か!?」
「何とか…まあ関係ねーけどゲロ出そうだし頭いtうぇっぷ」
「大丈夫じゃねーじゃん!!」

二人の漫才はさておき。
キラはいつの間にかアンドロイドの姿を取っており、なりふり構わずルームクエイクを出した。
幸い怪我人は出ずに済んだ(一人体調不良がいるが)。

「お、落ち着いてキラちゃん!」
「そっそうでございマスよ! 急に暴れられては―――」
「五月蝿い。巻き込まれたくなかったらソイツを置いてどこかに逃げろ」
「あわわわ待って下さいキラさーん! 誰かー来て下さーい!! 大変ですー!」

「…で、どういう事だこれは」
「まだ修復中なのに傷を増やしてどうするっすか? 軽かったから良かったものの…」
「………すいません」

幸斗の呼び掛けに応じたシュウトがナイアナでキラを捕縛し、騒ぎを聞き付けた獏也とシノがその場に駆け付け、今に至っている。
朱弘梨はというとついにダウンしてしまい、ベッドに臥せっていた。

「まあまあ。…キラちゃん、何で急に怒ったんだい?」
「……話せば長くなるが…」

語られた内容によると、拾われた少年―――ミーレスは自身の旧式兵器であり、ホウオウグループ時代の相棒であったという。
ある日、怪我をした幼い能力者少女に出会い、グループに内緒でこっそり看病していたのだが、その少女がウスワイヤ側という事を知る。
しかし、殺す理由も特に無いからと彼女は看病を続け、少女を仲間の元へ返した。
だがこの事がホウオウグループにバレてしまい、裏切り者の烙印を押されてしまう。

「…問題はここからだ」
「というと?」


「奴らは、ミーレスに私を殺せと命じた」


キラの口から出た言葉に、その場の空気が凍り付いた。

「しかもミーレスは何の躊躇も無く私を殺そうとした」
「相棒なのに!?」
「アイツにそんなものは通じない」
「どういう事なんですかー?」

相変わらず緊張感の無い口調で聞いた幸斗に、キラは嘲る様に言った。

「……ミーレスには『心』が無い。喜ぶ事も無ければ泣く事も無い。アイツは正真正銘、戦う為に造られた戦闘兵器だ」
「………」
「だが私がアイツを嫌う理由は、殺そうとしたからだけじゃない」
「え?」
「アイツ、昔から私に対して『好き』だと言いまくってたんだよ」
「好き…って……異性としてって事っすか?」
「ああ」

忌々しげに返答するキラ。

「けど、心が無いって…」
「そうだ。アイツの『好き』は私自身ではなく、『戦いの相棒であり最も近くにいる者』である私に向けられた言葉で、好意も無くただただ言っているだけだ。恋愛感情なんてありゃしないし、理解出来る訳なんかない」
「! まさか『冷たいもの』を嫌うのは…」
「…ああ。アイツの心の無さの有り様に絶望したからさ。……人でなしにも程がある」
「キラ………」

重苦しい空気が流れ出す。
それを破ったのはシノだった。

「とりあえず、ミーレス君どうするっすか?」
「そうだな…あの状態を見るに、廃棄された可能性が高い。保護してもいいだろう」
「!? ちょ…ちょっと待って下さい獏也教官!! 何故ミーレスを保護するんですか!?」

納得いかないかの様な素振りを見せるキラ。
当然と言えば当然なのだが。

「このまま放っておくのもアレだろう。それにすぐ暴れるような奴ではないみたいだしな」
「た…しかに、そうですけど……」

事実らしく、否定できない様子のキラ。
と。

ガバッ

「!!?!??!!」
「キラ♪」
「貴様…ッ! 離れろこの人でなし!!!」

その場に現れたかと思えばキラに抱き着いたミーレス。
それを見た獏也は微笑を浮かべ、

「…問題は無いな」

と言ってのけた。

「はぁ!? ふふふざけた事言わないで下さい教官!! 貴様も離れろ鬱陶しい! てか何故ここに!?」
「ごめんキラちゃん…キラちゃんに会いたいって聞かなくて」
「そこは壊してでも止めて下さいよ先生!!! …っぐぁあああぁあああぁぁあああ!!!!!!!!」

ウスワイヤに虚しい咆哮が響いた。


(あれからずっとあんな感じだなんて言えねーよ…)
「オトくーん?」
「ああ…何でもねえから…」
「?」


キラの至上最悪の災難


―余談―

「あっシュウト君、リリーちゃんどうだったすか?」
「あー…またドアの前で追い返されちゃいました」
「ありゃ。まあ仕方ないっすよねえ」


―更に余談―

「ルーツ、あの新人はどこだ」
「新人? …ああ、いつも弱音吐いてる子か。それならジングウの所に行ったぜ」
「何故そんな所に…?」
「さあな」
「…まあいい」

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最終更新:2012年08月21日 23:11