ランカが助けを求めに家に飛び込んだ直後のこと。
「くっ…」
「ヒナちゃん、しっかり!」
「母様っ!」
割られた額からは血が溢れ出し、このままでは命が危ない。
しかし病院にもウスワイヤにも連れて行くには時間が足りない。
皆が手を拱いているときだった。
「あの…どうされました?」
背後から突然、声をかけられた。
アオイが振り向くと、そこには一組の男女がいた。
紅色の髪を持つ女性と、強面で筋肉質な大男。
何者かと問う前に、女性の方が驚いたように口元を覆った。
「まあ、大変!酷い怪我をなさっているじゃないですか!」
琴音の様子を見てのことだろう。
傍に駆け寄り、膝をつく。
「大丈夫…ではなさそうね…」
悲痛な表情を浮かべ、ポツリと呟く。
そのまま、そっと両手を己の胸に当てる。
「…紅…」
「大丈夫よ。血を止めるだけ」
大男が、気遣うように女性に声をかける。
紅、と呼ばれた女性は、小さく微笑むと目を閉じた。
「………!」
女性の体が淡く光り、次の瞬間その手には
同じように光る小さな結晶が現れた。
「貴女、何を…?」
「…大丈夫。じっとしていて」
その結晶を、額の傷に向けてほろりと落とす。
結晶は、溶けるようにして傷に吸い込まれた。
傷はというと。
かなりの深手であったはずが、先ほどまで流れていた血が止まっている。
「……え…?」
「血を…止めました。これで、少しはマシなはず」
鞄の中からハンカチを取り出すと、傷の周りの血をそっと拭く。
そして、首に巻いていたスカーフを外すと、ぎゅっと強く傷口を縛った。
「…これで、よし。あとは、きちんとお医者様の所で治療を」
「あ…ありがとう…」
「……貴女は、いったい…?」
「…あら、名乗りもせずにごめんなさい。私はこういう者です」
微笑んで鞄から名刺を一枚取り出すと、それをアカネに渡す。
アカネはそれを受け取ると、怪訝そうな表情を浮かべた。
「『
情報屋「Vermilion」経営者
音早 紅』…?聞いたことないわね」
「個人でひっそりと経営しているものですから…。…けれど、仕事には誇りを持っています。もし何かあったら、気軽にどうぞ」
そう言うと、立ち上がって礼をする。
「…私は、これで。投げ出すようで申し訳ありませんが…」
「い、いいえ。ありがとう…」
「…よかった。…お大事に」
そう言うと、女性は男に支えられるようにして去っていった。
後には、アオイとアカネ、そして手当てを施された琴音が残された。
「あの人…いったい何者だったのかしら…」
「さあ…」
紅色の情報屋
-その後、情報屋「Vermilion」にて-
『あっ!ハヅル、ベニー姉さん、
おかえりなさぁい!!』
「…ただいま。…アーサー、悪いが、今日は店じまい…だ。…久我、悪いが外の札をかけかえておいてくれ…」
「…了解」
『おーいおい、僕を忘れちゃ困るなぁ。それで、どうしてだい?』
「…そうだな…すまない、ロッギー。…紅が、体調を崩した…微熱も、ある…」
「大丈夫よ…。少し、眩暈がしただけだから…」
『大丈夫じゃないよぉ!!大変だ大変だ、僕らはお休みの準備をしてくるね!』
「以前にそう言って風邪拗らせて入院直前までいったの忘れたんですか。大人しく寝て、早く元気になってくださいよ」
「……そうね。ごめんなさい」
最終更新:2012年08月21日 23:13