キリさんがいなくなった。
それを聞いた瞬間、
黒井さんはその場にへたりこんだ。
嘘だ。
黒井さんよりずっとずっと強いあの人が、キリさんが。
死ぬなんて有り得ない。
「だ…大丈夫…?」
『…分かんない』
「とりあえず…部屋で休む?」
『うん。ありがとう、
アゲハさん…』
アゲハさんに連れられ、黒井さんは部屋に戻る。
「何かあったら、言ってね…」
『うん』
アゲハさんの気配が消え去ると、黒井さんはそこでうずくまって泣いた。
誰にも気付かれたくなかったから、声を押し殺して泣いた。
泣いて、泣いて、泣いて。
『キリさん…キリさん…ッ!』
初めて会った時を思い出す。
いつも通りの、虚しい日々に「ソレ」は突然やって来た。
キリさんに出会い、自分の事を知り、一人じゃなくなった。
キリさんと出会わなかったら、今ここに黒井さんはいない。
『何でさ、何でさ、何でさ……何であなたが……』
ある日現れたあの人は、黒井さんを救ったあの人は。
黒井さんにとって、カッコいい素敵な王子様だったんだ。
第一話と第九八話
最終更新:2012年08月21日 23:14