今、オレはユウイと一緒に下校をしている。
途中で買ったクレープを幸せそうに頬張る彼女。
…あぁ、なんて可愛いんだろう!
「……ねぇ」
「ん?」
「じろじろ見すぎだってお前…なんか恥ずかしい!」
「あぁ…ごめん」
どうやらオレは無意識のうちにユウイを見つめていたらしい。
俯きクレープを食べながら顔を紅潮させた彼女を見て抱きしめてやりたい衝動に駆られるも、ここはぐっと抑えた。
そのまま歩いていると、前方からガラの悪い金髪色黒な男達が歩いてきた。
嫌だなぁ、なんて思いながら足を進めているとユウイが突然ドスン、とオレの後ろの方で尻餅をついた。
アイツら、ガラの悪い男達の一人が彼女にぶつかったのだ。
「……って…」
「ユウイ!大丈夫か!?」
オレは座り込んでいるユウイの傍へと膝をつき、あのガラの悪い奴らへと目を向けた。
奴らは「ごっめ~ん」等と悪びれた様子もなく、こちらに見向きもせず立ち去っていく。ゲラゲラという下品な笑い声が腹立たしい。
「っ…アイツら…」
「いーよリオト、あんなのどこにでもいるだろ。…あーそれよりもクレープが…」
ぱんぱんと埃を払いながら立ち上がったユウイは、生クリームがはみ出て無残な姿になったクレープを見て大きな溜め息をつきがっくりと肩を落とす。
そんな彼女の表情を見て、オレはいてもたってもいられなくなった。
「…オレ新しいの買ってくるから、ここで待っててくんねぇ?」
「え?でも…悪いし…」
「……
スペシャルを買ってやろうと思ってたんだけど」
「おkボス!了解しやした!」
びしっと敬礼をしたユウイ。そんな子どものような彼女の頭を撫でた後、オレは走り出した。
勿論、あの男共の所に。
「さて、と…じゃあ本題に入る」
あのチンピラ共に追い付いたオレは、此処、廃ビルへと奴らを連れ込んでいた。勿論チンピラは不機嫌そうに舌打ちをしている。
「……ユウイに謝れ」
「はぁ?…あー…さっきの女か。あれなら謝ったろ?」
「あんなのは謝ったなんて言わない」
「んのガキ…あんまり調子こいてるとぶっ殺すぞ!!」
このチンピラ共のリーダーと思わしき人物が、ポケットからナイフを取り出してきた。
…そんなもので怯えるとでも思っているのだろうか。 オレは持っていた鞄から彫刻刀を取り出す。
「なんだぁ?やんのかぁ?」
「………」
「……!?」
そしてそのまま彫刻刀を自分の腕へと突き刺した。痛みは走るがこんなぐらいなら直ぐに抑えられる。
言うまでもなくチンピラ共はオレの行動に目を丸くしていたしていた。
その後響いた首領の笑い声。
「ぶっ、あはぁはははは!!!コイツ頭いってんじゃねぇの!?自分でぎゃああああああっ!!?」
だがそれは直ぐに悲鳴へと変わる。首領の腹には赤色をしたナイフが突き刺さっていた。
そのまま地面へと崩れ落ち、のたうち回る。
取り巻きである男達も悲鳴を上げた。
──…耳障り
そう思ったオレは彫刻刀でさっき作った腕の傷を更に深く大きくして、ぶん、とその腕を振った。
直後に飛んでいった血の刃は、取り巻きを一気に始末する。
もう此処にはオレとこの首領だけしかいない。
「……最後に一つだけ言っとく」
「あっ、がぁああ!!や、やめ…てくれ…」
「アイツに触って良いの、オレだけだから」
──そうだ、オレはユウイがぶつかられたから怒ったんじゃない。オレは、ユウイの身体が他人に触れることが嫌だったんだ。
チンピラへの言葉が終わると同時に、赤い血と肉が弾け飛んだ。
酷く風変わりした廃ビル。 壁には大量の血がこびりついている。その中に自分の血液も含まれていると考えてみると、ふっと笑みが溢れてきた。
「うっはー、派手にやったねぇ」
突如背後から聞こえた陽気な声。こんな現実離れした場所でこんな声が出せる人物などアイツしかいない。
「……トキコ」
「んもー、片付けるの大変なんだからねー?それに、あんまり殺しすぎると怒られるよー」
「…悪い、気を付ける」
チンピラの血肉を踏みながらオレの方へ向かってくるトキコ。
オレがこの後誰に会いに行くかはもうお見通しらしく、包帯をぽいっと投げてくる。
もう血の塊で塞がっている傷の上から包帯を巻いた。
「…リオ君さー、もしあの人にユーイちゃんを殺せ、て言われたら、殺せる?」
「っ…お前……っ!」
「ふふっ」
トキコの言葉でオレは目を見開きガラにもなく慌ててしまった。
…後悔した。これではもう答えを言っているも同然じゃないか。
そそくさと彫刻刀を鞄へとしまいその場から立ち去ろうとした。
「あ、ちょっとリオ君!これどーするの!?」
「お前が片付けて」
「えぇ!?なんでよぉー!」
「あ、やっときた!」
「ごめんユウイ…あのクレープ屋すっげぇ並んでて…」
「でも買えたんだな!ありがとリオト!」
あの後オレはユウイの為のスペシャルクレープを買い、ユウイのもとへと急いだ。並んでた、なんて嘘に決まってる。
クレープを受け取った彼女は、笑顔でそれにかぶりつく。
やっぱり子どもみたいだ。
──ユーイちゃんを殺せる?
ふとあの時のトキコの言葉が頭に浮かんだ。
…言ってしまえば、答えはNOだ。ユウイを殺せるわけがない。
でも、あの人を裏切るようなことはしたくない。もし…もしあの人からそんな命令が出たらオレはどうするんだろうな。
「……リオト?」
「え?」
「またぼーっとしてる。どうした?」
「あ、いや…別に」
「そっか、これ一口食べるか?めちゃくちゃ美味しいぞ!」
「…じゃあ頂きます」
「………あ。お前一口でそんなに食べんなぁっ!」
終わり
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最終更新:2013年06月14日 21:59