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麒麟と朱雀

 俺にとって、学校とは青春を過ごす場所であり、友と夢と馬鹿を語り合う場所であり、先生に怒られながら成長する場所であり、

 そして、守るべきかけがえのない場所である。



 昼休み、俺は屋上からぼんやりと外の景色を眺めていた。少し間を空けて、隣に火波スザクの姿がある。
「なぁ、スザク。最近起きている失踪事件について、何か知らないか?」
「さぁ。僕は特に知らないなぁ」
 そう言って、スザクは首を振った。嘘をつく理由はないので、本当に何も知らないのだろう。
「どうしたんだ、一体?」
「いや、最近妙な噂を聞くものだから」
 その噂によれば、最近町に怪物が出没するらしい。

 ある人は女の上半身を持つ蜘蛛のようだったと言い、
 ある人は人の形をした蝙蝠だったと言い、
 ある人は巨大な鰐のようだったと言う。

 どの証言もてんでバラバラ。
 しかし、一つだけ共通している事がある。どの怪物も姿は似ていないが、「夜に現れ」、「人を襲っていた」という事だ。

「んー、知らないなぁ……」
「と言うか、君はこんな眉唾な話に耳を傾けないでしょ」
「まぁね。だけど、それは君にとっても同じ事だろ?」
 そう言うと、スザクは俺の方に首を向けた。
「君が気にするのだから、何かあるか?」
「……昨日の事なんだけどさ」

 昨日の事。ストラウル跡地で巨大ロボット(ギルギガントと言う名称らしい)と戦った俺は、本部に連絡して後始末の為に何人かアースセイバーのメンバーに来て貰っていた。事故の痕跡を消したり、ギルギガントの部品を回収したり、かなり忙しそうだった(俺は怪我人なので、安静にしていろと言われた)。

 と、そんな時だった。調査員の一人が、現場近くで何かを発見したのだ。

 そこにあったのは、違法投棄された産業廃棄物の山だった。ゴーストタウンとなった跡地には滅多に人など来ない。臭い物に蓋をするなら、打ってつけと言うわけだ。

「それだけだったら、この話はここで終わりなんだけどね。産廃に埋もれていた物が問題だったんだ」

 調査員の目に入ったのは、産廃の山が崩れて露出した、「ある物」の一部だった。その調査員が言うには、それはある種の培養器、或いは生体ポッドに似ていると言う話だった。場所が場所なので、俺達は産廃を退けて何が埋もれているのか確認する事にした。

「それで?」
「その調査員の見立て通り。出てきたのは全長五メートルもある培養器。それも、ホウオウグループ製のね」

 培養器には、しっかりとホウオウグループのエンブレムが刻まれていた。まさか同じ日にこれを二度と拝む事になるとは、俺自身思っても見なかった。


「中には、何が入っていたんだ?」
「何にも」
「え?」
「空っぽ。何も無かったのさ、これが」
「何だ、つまらない」
「……ただ」
「ん?」

 カプセルは開いていた。それも、「内側」から無理矢理。「外側」からではなく「内側」からだ。それも、カプセルが開いたのはつい最近の事だと分かった。

 カプセルの「中身」は、自力でカプセルを破って外へ出たのだ。

「ホウオウグループ製のカプセル。最近起きてる失踪事件。そして、巷を騒がせる謎の怪物……」

 気にならない? そう、俺はスザクに言った。

「……なぁ、前から気になっていたんだけど」
「ん?」
「君は、なぜ僕にそういった話を持ちかける? アースセイバーの所属なら、話しかける相手が違うんじゃないか」
「確かに、俺はアースセイバーの所属だ。話をするなら、同じ組織の仲間って言うのもよく分かる……だけどスザク、君は「アースセイバーじゃない」。だからアテにしている。君なら、アースセイバーにはない情報も知っているからね」

 そう。スザクはスザクで動いている。その結果、アースセイバーの活動では手に入らない情報を彼女は知っている事がある。そのおかげで解決出来た事件が過去にもあるんだ。だから俺は、彼女をアテにしている。

「なるほど。筋の通った話だ」

 納得したのか、僅かにスザクの表情が和らいだ。それが俺には、彼女が笑っているように見えた。

「……ホウオウグループではかつて、生物兵器の研究も行われていた」
「生物兵器?」
「ああ。と言っても、生物兵器は運用の面で難がある。幾度となく失敗したし、作った傍から廃棄処分なんて言うのもよくある話だった……そのカプセルとやらも、もしかしたらその関係かもしれない」
「なるほど、生物兵器か。巨人や神を作るところだ、あそこならやりかねない……ありがとう。参考になった」

 俺は礼を言うと、出口へと向かう。時間的にそろそろ五時間目が始まる頃だ。教室に戻らないと、委員長にどやらされる。

シスイ
「ん?」

 出際に、スザクに呼び止められた。

「それで、お前はどうするんだ?」
「……失踪事件は警察の管轄。だけど、その犯人が怪物だって言うのなら、それは俺の仕事だ」

 グッ、と、俺は拳を握り締める。

「俺がこの手でぶっ潰す」
「……なるほど、君らしい答えだ……だけど、残念なニュースがある」
「何?」
「その台詞、ケイイチを意識したのだろうけど……全然似合ってない」
「おい!」

 ※シスイが年上であるスザクを呼び捨てにしているのは、彼が仕事中に何度か共闘した経験を持っているからです。



作者 登場人物
akiyakan 都シスイ火波 スザク

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最終更新:2013年06月14日 22:00