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通学路にて

――――――――――

『キミ達は、どこから来たんだい?』

「えっとねー、遠いところ?」
「今日は家族でお出かけなんだ!」

『…そう』

「ひっつじさんはー、どこからきたの?」

『私も――遠いところから、だ』

「そっかぁー、同じだねー」

『……帰れるような場所では、ないけどね』

――――――――――

「いってきまーす!」
「いっちきやーす」

偶然にも、お互い部活の朝練がなかった榛名姉弟。
鞄を片手に外の世界へと飛び出した。姉弟と言えど、一緒に学校へ登校というのは珍しい。
それなりのお年頃、その上男女なのだからもう少しお互いにお互いを避けててもいいはずなのだが――

「で、あの「能力」のことなんだけどさ…」
「あー、まだ言ってたのかよ、それ」

周りの学生に聞こえないよう、こそこそと話すユウイ。
ユズリは「またか」と頭を掻いた。

「アタシらの他にも、いるのかな」
「――いない、とは言えねぇな」

気のせいかもしれないが、ここ最近妙な事件が多発している気がする。
もしかしたら、それらの事件に巻き込まれたか何かで自分達と同じような能力を持った人々が近くにいるかもしれない。
もちろん、あの「いかせのごれ高校」にも。

「とにかく姉貴の能力、今のとこ誰が知ってんだよ」
「ええと…リオト、かな…?」

やっぱり、とユズリは心の中で舌打ちを打つ。
ユウイの傍に必ずと言っていほどいるのは奴、高嶺 利央兎だ。
これは嫉妬だとかそういう類のものではない。
ユズリは直感でリオトが「危険な人物」であるということをわかっている。
忘れられない、あのこびり付いた血の匂い。奴も特殊な人間であるということは確かだ。

「リオ兄に相談するのはさぁ…」
「………?」
「俺、あんまりよくねぇと――姉貴?聞いてんのか?」
「あれ、なんだろ」

ユウイが前をすっと指差す。その先にあったのは――いや、いたのは、
緑色の服を身に纏った、背の高い男性だった。帽子を深く被りこちらへと近付いてくる。
その男性を一言で表すとするなら「放浪者」または「旅人」だろうか。
とにかく、その男性の服装は普通とはかけ離れていたのである。
二人はコスプレか何かの類だと思い、「こんな朝から」と男性を軽蔑するように見た。

どんどんと男性との距離は縮まる。
変に絡まれたら嫌だ、二人は話しかけられないことを祈りつつ歩く速度を速めた。
しかし、そんな二人の思いも空しく―――



「そこのお二人さん、ちょっといいかい?」

話しかけられてしまった。

このまま学校まで全速力で走って逃げることも考えた。
しかし、振り返ってみたときに見えた男性の素顔は、それはそれは優しそうで。
先程の「朝からコスプレをした変な男」という印象は一瞬にして
「ちょっと変な格好しているけど優しそうなお兄さん」という印象に塗り替えられてしまった。

「聞きたいことがあるのだけれど…この辺りでおんなのことおとこのこを見なかったかな?」
「は?」

思わず聞き返してしまった。
アバウトにも程がある。二つ結び~だとか、金髪の~だとか、特徴を言うならまだしも
「おんなのことおとこのこを見なかったか?」である。
一体この質問にどう答えろというのか。

「いや、そんな質問されても…」
「…特徴とかないんスか?」
「黒髪…だったような」

曖昧かよ、と二人は同時に心の中でツッコミを入れた。

「そう、だな…今ならきっとキミ達と同じくらいの歳、だろうか」
「最初からそれも言えよ!なんだよ最初の「おんなのことおとこのこ」って!」
「ゆーちゃん、落ち着いて…!」

あまりの段取りの悪さにユズリの短気っぷりが炸裂した。
まぁまぁ、と弟を宥めるユウイ。

「まさか、キミ達なんてことは――」
「ねーだろ、俺そっちみたいな奴知らねーもん」
「アタシも…きっと違いますよ」
「そう、か」

ぐいっと帽子を被り直し、溜め息をつく男性。

「いや、実はね――昔その「おんなのことおとこのこ」に約束をしたんだ」
「…へぇ?」
「『いつか、私の故郷の美しい景色を見せてあげよう』と、ね」


「けれど、それは叶わなくなってしまった。何者かによって、森の「色」が奪われてしまったんだ」
「…色?」

ふと何かに気が付いたようにユズリが声を上げた。
ここ最近学校で噂になっている話を思い出したからだ。

「それってもしかしてさ、「色のない森」のことか?」
「!――そう、かもしれない。そうか、ここではそんな風に呼ばれていたのか」
「じゃあ、そっちはその森から逃げてきた奴、なのか…?」

少し、ほんの少しの間だけだが、男は黙り込んだ。
まるで何かを話したくなかったかのように見えたが――。

「そうだ、私はハーディ。キミ達が話している「色のない森」から出てきた者だ」
「ハーディ、なんだか、外人みてーな名前だな」
「ふふ、そうだね」

薄く笑うと、男――ハーディの帽子についている二つの羽がふわりと揺れた。

「さて、私はそろそろ行こうか すまないね、止めたりして」
「いえ、こちらこそ、力になれなくてすみません」
「っつーかあれだけの情報で探すってのが無りむがが」

ユウイが、弟の生意気な口を片手で押さえた。

「もう会うことはないだろうけれど…じゃあね、学生お二人さん」
「はい、探している人、見付かるといいですね!」
「頑張ってくださーい」


通学路にて


「なー、姉貴」
「なに?」
「「色のない森」なんだけどさ」
「…アタシはやだよ」
「…そーかよ」

――――――――――


『ヤハト!』

「…ミハル」

『ふふっ、今日も此処にいたのね』

「お前も物好きだな。私に会いにくるなんて」

『貴方、温厚そうにみえてかなーり猪突猛進な人だからね。
放っておけないわ。またぼろぼろで倒れてるかもだし』

「………」

『やだ、そんなコワイ顔で睨まないでよ』

「……ハァ、好きにしろ」

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最終更新:2013年03月21日 20:20