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考えるな、動け

『ああ?そういう小さいことでぐっだぐだ言うんじゃねぇよ。』
テレパシー越しに幹久朗が言う。カイムはずり落ちそうになる眼鏡をあげながら答えた。
「小さいことって…。万一、一〇一話に青行灯がいればキリさんが帰ってこれない可能性があるんですよ?」
『万一だか千一だか知りはしねぇが、お前はそんな可能性にこだわるのかよ。』

百物語組では現在キリがいなくなり、ほぼ同時にゴクオーとの連絡が取れなくなっていた。
いつものように学校の屋上にいるわけでも、ガラクの洞窟にいるわけでもない。
春美が籠ってる今、憑依型の妖怪であるハルミとの連絡手段もない。
仕方がないため現在のところ話数最上位である幹久朗が取り仕切ってる次第である。

別所にいる幹久朗に今までの経過を話していたカイム。
春美の能力を掴みあぐね、どこまでが「百物語」に該当するのかカイムは非常に困っていたのだ。
そこで幹久朗に相談しようと経過を話した結果が、冒頭の台詞だった。

「あのですね幹久朗さん、キリさんと仲があまりよくなかったのは存じてますが、あまりに投げやりではありませんか?」
『いやまぁ、確かにあいつは気に入らなかったけどよ。お前、俺がそんな薄情に見えるのか?』
「いえ、そういうわけでは…。」
『お前、俺たちの仲をあんまりしらねぇな?』

『確かに俺とあいつは互いが気に入らなくて張り合ってた。けどよ、付き合いが長いから一番信頼できる仲でもあるんだ。』
いいか、これだけ言っておくぞ。そう前置きして幹久朗は言った。
『今回の件で一番傷ついてるのは間違いなく主だ。だが、一番助けたいと思うのは俺だ。』

『俺は、キリを、助けたい。』

『そのためなら手段を選んでられねぇんだ。可能性がある限り何でもやる。』
「幹久朗さん…。」
『それなのにお前、いろんな「万一」が為にこの手段を放棄できるか?』
「!」
『俺ならしないね。出来なかったらその時だが、今はやることが第一だ。』

『悪いね、こんな適当な性格でよ。』
いつものように軽く笑う幹久朗に、この時は勇気づけられた。
カイムも口角をあげると、明るく返した。
「いいえ、俄然やる気が出ました。やれることはやってみましょう。」
『おう、そのいきだ! 俺も頑張る。お前も頑張れ!』

通話を切ったカイムは一つ伸びをして、目の前の原稿に取りかかった。
無論、キリを「語る」ための原稿である。


考えるな、動け


「…さぁてと。」
幹久朗は自分の店のテーブルに待たせていた客人にお茶を差し出した。
「少し話をするか、千郷。」

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最終更新:2013年05月02日 21:16