「ジャシン」を巡る騒動から数日。
かつて守人であった
百物語組の一人、
アゲハは斎に今回の件を報告していた。
「そうですか、そんな事が…」
「うん。大変だった」
「怪我はありませんでしたか?」
「あったけど、完治した。大丈夫」
「それは良かった…お疲れ様です」
刹那。
「ちょうどいい所にちょうどいい話してるじゃない…」
『うわぁああああっ?!』
「……何故そんなに驚くのよ」
いつの間にかそこにいた、巫女装束を身に包んだ緑髪の少女。
二人の反応に機嫌を損ねたようで、声色に怒気が含まれている。
目付きも更にジトっとした感じだ。
「いきなり後ろに現れて、いきなり話しかけられたらそりゃビックリするよ。…咲子」
「ふうん。まあ…どうでもいいわ」
と、興味なさげに言う少女、咲子。
「ところで、ちょうどいい…とは、どういう事ですか? 守人の巫女様」
「…家の書庫にある古書に、その坊主と似た人物について載っていたわ」
『!』
咲子から告げられた言葉で、緊張が走る。
「『幾度も姿を見せ、世を炎の如く滅ばさんとする、人の形をした異の者』……かつてソレは、数百人ものの死者を出した事もあった。その時目論みを阻止したのが、私達守人の先祖達…」
「!」
「………」
「…ソレは、何度も姿を現すわ……私達も、警戒すべきよ…」
「……完全に消す方法は無い?」
「今のところ。私のこの”目”が何か分かってくれれば、いいのだけれど…」
左目の瞼に軽く触れる咲子。
そのほんの一瞬、黒い瞳に赤い梵字の様なものが、光るようにして映った。
「そう気に病まないで下さい。貴方の”目”は、来るべき時に知らせるものですから」
「うん。それに」
――発動した時ちょっと…いや、かなり怖い。
二人は同時にそう思った。
それもそのはず、咲子は『予言』をする際、発狂したかの様な素振りを見せつつ、奇声を上げるのだ。
自然とそうなるのか、はたまたわざとなのかは分からないが、元々普段から怪しい雰囲気を放っている為、余計に怖い。
二人のそんな心情を察したのか、
「……私に、失礼な事…考えてないでしょうね?」
「えっはっ、い、いやいや?! な、何も?!」
「うんうん何も何も」
「…………」
黒い目は挙動不審な二人を、更に訝しく見つめるのであった。
「………」
「ねーえ!」
「…ああ、お前か」
「どーう? ”邪駒”できーた?」
「いんや、失敗だ。目ェ付けてた奴もくたばっちまった」
「ここ数年は何回か失敗しちゃってるしーね。…”邪駒”にすらならねーとか人間じゃねえなクソ」
「ついでにあいつら目障りだしな」
「しかも何かーさ? 変な坊主が八岐大蛇を呼んで人間滅ぼそうとしたうーえ? ソレを『ジャシン』って呼んでたってーね?」
「オレらが崇める『邪神』様を差し置いてかい」
「いい度胸してるよーね。目論み破れて清々しーた」
「その坊主、何も分かっちゃいねえな」
「だよーね! 人間は自分が抱えてる闇に忠実なのが当たり前なのにーね!」
「…で、まだ仕掛けねえのか?」
「まーだ。アイツらに気づかれる前に、”邪駒”増やしとーこ。後
邪魔者消えないーと」
「そうだな…」
「「全ては、我らの『邪神』様の為に」」
新たなる闇
(そう言って二つの影は見下ろした)
(死体と血で穢れた)
(儀式の地を)
最終更新:2013年05月06日 12:57