「ぬぅん、レボリューション(革命)!!!」
昼休み、教室の窓際にある一つの机に8人くらいの集団ができていた。身長の高いヤツ、太ったヤツ、オッサンみたいな顔のヤツ・・・その中で、一際小柄なヤツがいた。彼の名前は
貝塚真二(カイヅカシンジ)、5人でトランプの「大富豪」を楽しんでいたのだ(残り3人は観客だろう)。そして、このゲームに勝ったのは真二だった。
「ああ、くそー!真二が一抜けかよ・・!!」
こんな場面で革命かよ・・・、ありえねぇよ!などと、4人は文句を言っていた。
「ふふ、これがぁ俺の運命なんだよぉ」
真二はそう言って机の上に腰を下ろした。もちろん、この後4人に集中攻撃されたのは言うまでもない・・・・
真二は他の人とは少し変わった感じの少年だった。学校内でもかなり小柄なのもそうだが、特徴的なゆったりとしたしゃべり方、そして行動が天然・・否、先が読めない不明な行動が多いというのが他の人と違った雰囲気をかもしだしているのだろう。
──とある授業、周りは横の人と話していたり、爆睡したりと全く授業に集中している様子はなかった。黒板の前に立つ教師も涙目・・・。その時だった、(バンッ!!)という音が教室に響き渡ったのだ。一気に教室が静かになり、爆睡していた人達も目を覚ました。見ると真二が立ち上がっている・・、きっと、机を思いっきり叩いたのであろう若干、手が赤くなっていた。皆が真二に注目し、なんだなんだ?と驚いているようだった。真二は教室を見回すと、教師と目を合わせて言った・・・・
「希望の翼がほしいですぅ!!」
大爆笑────、更に授業は盛り上がった。この時、皆を注意してくれるのだろうかと少しでも思っていた教師が、授業後に真二を呼び出したのは言うまでもない・・・・
──とある放課後、部活をしていない真二は他の帰宅部のメンバーと一緒に自転車で帰ろうとしていた。
「おい!ちょっと待てや!!」
いきなり、柄の悪そうな上級生が声をかけ、真二達を呼び止めた。
「俺さぁ、今日車で来たから歩いて帰らなあかんわけよ、わかる?誰か自転車で送ってくれや」
二人乗りの要求である。誰もが嫌がっていたわけだが、上級生はママチャリで後ろに座れる真二に目を付けた。
「なあ、乗せてくれへんか?」
他の帰宅部メンバーは、ひやひやしながらその様子を黙って見ていた。
「ショートケーキぃ、何がいい~?」
「は!?」
真二が突拍子もないことを言い出した
「はぁ!?今、なんて言うた・・?」
上級生も聞き間違いだと思ったのか、再度聞き直す
「ショートケーキぃ、何がいい~のぉ?」
しばらく、無言の時間が過ぎた。帰宅部メンバーはもう口あんぐり・・・・
ちょうど、上級生の友達と思われる人物が車に乗せてやると言いに来たので、何事もなかったように上級生は去っていった・・
他にも色々な出来事が多々あったが、それでも学校生活は平和が続いていた
ある休日、真二は街中を徘徊していた。店で数時間滞在したり、立ち読みしたり、いつもの休日の日課ともいわれる徘徊を今日もしていた。細い路地を通り、家までの近道をしている時だった。反対側から10人ほどの集団がやってきたのだ。その集団は近所ではそれなりに名の知れた不良グループだった。真二はそのまま、道を歩いていき金髪の不良とぶつかった。
「てめぇ、どこ見て歩いてやがんだ、ああ!!?」
「うぃ~っしゅ・・」
真二はまた不明なことを言い、そのまま立ち去ろうとした。金髪の不良は怒り、真二の胸ぐらを掴んだ(確かに真二が悪いのだが・・)。
「何だその態度は?ぶつかったら、謝罪して土下座だろ?なあ?」
「え~だってお婆ちゃんがぁ、土下座なんてするもんじゃないって言ってたしぃ、ぶつかったのそっちじゃぁん・・・」
金髪の不良は真二の胸ぐらを掴んだまま、腹を一発殴った。鈍い音と同時に真二の口から、ポタポタと血が滴り落ちる。
「俺はやさしいんだ、謝罪と土下座で許してやるって言ってるんだからな。たったそれだけのことだろ?」
「でもさぁ~・・・・・!!」
真二がそこまで言うと、金髪の不良は手を離しミドルキックを食らわせた。真二はその場に血を吐きながら倒れこんだ。金髪の不良はかなり怒っているようで目が少し血走っていたのだが、こんな時でも真二は顔色ひとつ変えていなかった。
「・・・あ・・」
真二が何かに気がついた。
「・・ちょっとぉ、ズボンのチャック・・・開いてるよぉ・・」
「なっ・・!!!?」
真二が見つけたのは、金髪の不良のチャックが全開になっていることだった。不良は慌てて全開になっていたチャックを閉じた。他の不良達は声こそ出さなかったが、顔は笑うのをこらえるので必死になっていた。
「・・閉めるの忘れるなんてぇ、恥ずかしいなぁ。・・・もしかしてぇ今でもお婆ちゃんとかぁお母さんにぃ、チャックをあげてもらってるのぉ・・・?」
「て、てめぇぇええええ!!!!」
真二の腹を思いっきり踏みつけ、グリグリと踏みにじりだした。
「俺をここまで怒らせたヤツは、お前が初めてだぁああ!!!」
そこからは、蹴りの嵐・・・他の不良も一緒になり真二を暴行し続けた───
───ぉい、死んじまったんじゃねぇのか?
1人の不良が真二が全く動かないのに気がついた。口元に手を当てても、呼吸している様子はない。
「ま、まじかよ!?本当に死んじまったのかよ!!!」
「俺たち、人殺しじゃねえか!!!」
不良達は顔を真っ青にして、動揺していた。いくら不良といえど人を殺すということには、さすがに恐怖を覚えるようだ。
「・・・し、仕方ねぇ・・コイツを山に埋めるぞ・・」
「そ、そんなことしたら・・・・俺達ゃ、完全に・・・」
「バカ野郎!!このままじゃ警察に捕まるだけだろうが!!!・・見つからないように、山奥に隠すんだよ!」
真二を1人が背負うと、他の不良は見えないようにバリケードを張りながら真二を人目の付かない場所に運んだ───
───そして夜、不良達は近くの山の奥深くでスコップを持ち、3メートル程の穴を掘っていた。
「こんだけ深けりゃ見つからねぇな・・・よし、埋めるぞ!」
真二の入った袋を穴の中に入れ、土を穴に戻そうとした。その時だった・・
「・・う・・・・・」
真二の意識が戻ったのだ。どうやら、呼吸をしていないというのは勘違いだったようで気を失っていただけだったようなのだ。
「お、おい・・・生きてるぞ・・」
不良達も真二の意識があることに気がついた。
「な、なあ・・助けてやった方が、いいんじゃないか・・・?」
「ば・・・ばか言うな!!!ここまでやったら、もう手遅れなんだよ!構わねぇ、埋めちまえ!!!」
不良達は急いで穴を埋めていった。真二は、自分が今どんな状況にいるのか理解していたが、ひどく暴行されたため動くことができなかった。そして、そのまま穴は完全にふさがれてしまった。
「早く、ここから逃げるぞ!!」
不良達は我先にと、山を降りていった。
──真二は、薄れていく意識の中で今までの自分を振り返っていた。真二の特徴的なゆっくりとしたしゃべり方も、耳の不自由なお婆さんが聞き取りやすいようにと、次第に定着させていった「話すスピード」である。変わった行動や言動だって、周りの雰囲気を変えたり、和ませようとして頑張ってみた結果である。本当の真二は、負けず嫌いで・・、傷つきやすくて・・、たよりなくて・・・・、ぁぁ・・だめだなぁ・・・俺ぇ・・・
そして、真二の鼓動はゆっくりと停止した────
──────クン・・トクン・・・トクン・・・・・・ドクン・・・・・・ドクンッ
山の中から真二が消えたのは、鼓動が停止してから間も無くだった・・・・・・・・・・・
真二を埋めた不良達は、自分たちのたまり場で話し合っていた。
「まあ、あれなら見つからねぇだろ。あんな山奥、誰も行かねぇし、掘り返すヤツもいねぇ・・」
「でもよ、俺・・まだ、心臓バクバクしてんだよな。」
「お・・俺、トイレ行ってくるわ・・」
1人が立ち上がり、早足でトイレに行こうとした。
「・・・・・バシャッ!!」
「!!?」
突然の水しぶきのような音に、不良達は驚き辺りを見渡した。
「・・あれ?1人いねぇぞ・・?」
先ほど、トイレに立ち上がった不良がいないのだ。不良達に嫌な汗が吹き出てきて、それを何回も手でぬぐう。
「うわ、わああああ!!!!?」
1人の不良から悲鳴が上がった。見れば、コンクリートの地面が男の周りだけ、水のように波打っており、溺れていたのだ。
「な、な・・・なんだ!!!!??」
慌てて溺れている不良を助けようとしたのだが、先ほどまで波打っていたコンクリートの地面は、すでに普通のコンクリートになっており手首から先が突き出ている状態で息絶えていた。
「ぎゃあああ!!!」
「か、体が地面にっ!!!!」
他の不良も次々と地面に沈んでいき、ついに金髪の不良1人になった。
「お、おい!!なんだよこれ!!?どうなってやがんだぁぁあああ!!!!!!」
金髪の不良はパニック状態に陥っていた。
「!!」
不良は背後に気配を感じた。振り返ると、そこに立っているのは真二だった。
「お、お前!!なんで・・・!?・・お前か?お前がやったのかああ!!」
真二は無言のままじっとしていて動かない。金髪の男は、真二の首を掴み思いっきり締め付けていた。
「化け物・・・化け物めぇぇええええ!!!!!」
真二は首を絞められているにも関わらず、微動だにしない。そして、すっ・・と手を上げると次の瞬間には、不良と真二はコンクリートの地面の中に沈んでいた。不良は真二から手を離し、急いで浮上しようとするが地面が急に固まり、動けなくなった。
「・・・・がっ・・・・・・・・・・」
そして、呼吸のできなくなった不良は息絶えた。
次の日、真二は学校でいつもと変わらない生活を送っていた。5人でトランプの「大富豪」、3人の観客・・・。真二は前日の出来事については覚えていない。母親の話によると、朝部屋を除いたらコンクリートのかけらがたくさん転がっていたそうだ。それと不良集団がいなくなり、住民は喜び、警察は捜索で迷惑がっているようだった。
真二にこのような力が宿った理由はわからない。そして、どのように真二の人生を変えてしまうのかもわからない。
真二はこれから、今までと変わらない生活を送ることができるのだろうか・・・
「ぬぅん、レボリューション(革命)!!!」
「ほいっ、革命返し♪」
「ぬああああああああああああ!!!」
もう変わっているのかもしれない・・・・・
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最終更新:2011年04月23日 23:40