ミナケレバイイノニ
「主?居ないのかしら?」
「あれっ、
ミサキ?なんでここにいんの?」
「…ああ、ノラね。吃驚したわ。」
久しくミサキが寺院を訪れたことに意味はない。
クランケは星とともに
墓参りに向かったので、定期の報告に向かったまでだ。
たまたまはちあわせたノラはおそらく暇つぶしだろう。
今日は休日。学校にいかなくてもいいはずだ。
「主ならついさっきアースセイバーに行ったよ。」
「そう。ならいいわ。」
「暇つぶし?ならならっ、あたしとお喋りしない?」
「…そうね。いいわよ。」
師範に案内された縁側にミサキは腰を下ろした。
その隣にノラもちょんと座る。
横に座るノラの顔を見、ミサキは微笑んだ。
「…あんた、まだそんな新鮮な気持ちで世界みてたんだ。」
「あたりまえだよっ!あたしにとっちゃ毎日が新しい発見!経験!面白いことだらけ!」
「それ大半すぐ忘れるからでしょ?」
「まあね;一周回って馬鹿だから。」
「純粋な馬鹿なのよ、あんたは。」
「ぶーっ。」
「しっかし便利な力だよね、ミサキの「眼」。」
「ま、この眼がなきゃ「足」も使えないわけだけど。」
「時速360km!うらやましいなぁとか思ったり。」
「あんたも十分速いじゃないの。」
「比べ物になんないのによく言うなぁ。」
「…正直、私にこの眼は必要なかったのかもしれない。」
「え?なんで?」
ミサキは空を見る。ぽっかり浮かぶ雲はゆっくりと流れていく。
そうねぇ、とミサキは呟いた。
「私の「眼」の力、あんたちゃんと覚えてる?」
「当たり前だよっ!えっと…。」
少し思案し、ノラは指を折りながら言っていった。
「『眼を通じての洗脳、情報奪取および
その他の能力を受け付けない』!」
「それは常時発動型だから役に立ってるわよ。」
「『処理能力を上げ、周りの情景をスローモーションで見ることができる』!」
「それがないと「足」がつかえないから必要にきまってるじゃない。」
「『他人の視界を見ることができる』!」
「そう、それ。私が使いたくない力。」
「へっ?」
ノラが顔をを上げる。
「それは私が妖怪になる前…「人間」だったころから使えた力。でも、私には一番必要のない力。」
「何で?他人の視界が見えるから、考えてることとか、どこに攻撃するかとかわかるんでしょ?」
「そう。相手がどんな風に世界を見ているか分かる。」
ミサキは口元を隠していたマスクを取り払った。
隠していたときに綺麗な顔立ちとは裏腹な、裂けた口が現れる。
「あんたはいいわ。同じ妖怪同士、こんな私を見てもなんの偏見も持たない。」
力なく微笑むミサキを、ノラは黙って見ていた。
「でも、私を見る人間たちは、皆私を偏見した。恐怖でしか見なかった。すごく…辛かった。」
「…馬鹿よね。使いたくないなら使わなきゃいいのに、他人の眼が気になって…。」
「…ミサキ、人間皆偏見するわけじゃないとおもうよ?」
ノラが見上げる。
「ミサキがいつもついてる銀髪の怪盗さん。あの人きっと、ミサキを一人の「人間」としてみてくれてるとおもうよ。」
「ノラ…。」
「だから、
自己嫌悪におちちゃダメダメ!ミサキはいいとこいっぱいあるんだから!」
「…そうね。ありがとう。」
お礼を言ったが、心ではまだ信じられない気分でいた。
その言葉が事実だと信じて、彼に力を…。
そんな勇気、彼女には出なかった。
自分を否定されるのが、怖いから。
最終更新:2011年05月05日 20:23