無計画と有方法?
「えっ!?全く予定立てずに来てしまったがか!?;」
事務所に戻った月光は、旧友・
霧波 流也との予想外の再会を喜んだ。
月光を置いて3人とも出ていってしまったため、事務所には月光と流也の二人だけだ。
「道案内」と用件を聞いて戻って来た月光だが、事情を聴いているとどうも後先考えずに飛び出したらしいことがうかがえた。
「最初はいかせのごれ高校に行こうかなとか考えてたんだ。あそこなら情報が集まるかと思って。」
「それで迷ったがか;というかその段なら宿とか全く考えてないじゃろ;」
「…あ、そういえば;」
「その性格さえ直せば完璧なのに…。」
テーブルに両手をつき、月光はため息を吐いた。
「でも、今からじゃ宿とるのは難しいだろうなぁ。」
「どうするがか…;」
そういいながらも、月光は一つの方法を考えていた。
早い話、事務所に泊めれば直ぐに解決するのだ。
だが、ただでさえ二人でもいっぱいいっぱいだった事務所。
クランケと
ミサキが転がり込んで更に生活はきついものとなっていた。
「…一泊でも、難しいじゃろうな…;」
かといって流也は「外から来た能力者」。
アースセイバーに登録していない可能性も大いにある。
動きの自由に規制がかかってしまう可能性がある以上、アースセイバーと連携もとれないのだ。
となるとあと頼れるところと言えば
レストランと寺院くらいだろう。
しかし、このところ亜音が不調子なのを星から聞いている。
寺院は寺院で妖怪達に通ずる環境。ある意味現世離れしたところだ。
流也が妖怪や幽霊の類に強かったかどうかまではっきりと覚えていないのだ。
頭を抱え、月光は唸りだした。
「…おい、大丈夫か、月光?;」
「調査も何も、拠点がなければ話にならんぜよ。じゃけど、今頼れるところがなくて…;」
「まだ昼間だぜ?いざとなりゃ俺は野宿もできるし。それに、おとなしく座ってられないんだよ。」
「何でまた?」
「…この街にいるんだろ、「
ヴァイス」が。」
そう、流也はヴァイスを追ってこの街にやって来た。
人を「壊す」愉快犯に、彼の家族も壊された。
だからこれ以上、犠牲を出すわけにはいかないのだ。
それに、既に誰かを壊したという噂は全くきいていない。
壊すまでに手間は惜しまない奴ではあるが、ここまで長い時間手間をかけるとも思えない。
そう、「壊すのに失敗している」可能性が出てきているのだ。
計画を崩されるのが嫌いなあいつのことだ。放っておけば何が起こってもおかしくない。
だから時間はかけられない。
こうやって計画を練っている時間がもどかしくて仕方がないのだ。
…もっとも、そうやって飛び出したせいで途方に暮れているのはあるが。
その感情が月光にも通じたのだろう。
彼は顔をあげ、力なく微笑んだ。
「わかったぜよ。宿の話は後じゃ。また迷ってもらっても困るけ、あしもついていくぜよ。」
「本当か!?ありがとう!」
「…そうじゃな。そうとなれば、ちと連絡をとってみるぜよ。」
月光は立ち上がり、事務所の端にあった昔懐かしい黒電話の受話器を取った。
回線は切れていないが、めっきり見なくなったダイアル式の電話は、どれだけ生活が切羽詰まってるかを物語っているようだ。
「何処にかけてるんだ?」
「「所在さえもつかめない奴」の情報を訊きだすには、丁度良い人がいるんじゃ。…「人」かどうかは疑問じゃけど。」
「?」
「…もしもし、
幹久朗殿がか?…
アカノミの「浮世歌」をきかせてほしいんじゃ。勿論、おまんの通訳下で。」
最終更新:2011年05月18日 23:45