発覚
暗く気味の悪い森を抜けると、電話をかけた通り、幹久朗がこちらに向かって手を振っていた。
そちらに駆け寄ると、幹久朗は月光に軽く耳打ちをした。
「言われた通り
アカノミには伝えておいた。が、どこまでごまかしとおせるかわからない。」
「大丈夫ぜよ。言い回しが長い分は『思い出している』と解釈させれば暫くは。」
連れてきた流也はアカノミを見上げて感嘆の声を漏らしている。
対するアカノミは人間を滅多に見ないうえ、ここまで見つめられることもないので恥ずかしく思っていた。
打ち合わせにはさほど時間はかからなかった筈だ。
しかし月光はふと、あることに気がついた。
流也の口数が、急に多くなったのだ。
気になって彼は幹久朗をつつき、彼の言葉に耳を傾けた。
『で、でも、僕そんなに人間とかかわってないから…。』
「だからってそうも堅くなるなよw」
『癖になってるみたいでね…。』
「そうかー。なら打ち解けるまでに時間かかるか。」
「…月光、あの二人、会話してる。」
「えっ;」
「アカノミの声と流也?っていう人の言葉がマッチしてる。」
「え、でも、そんな能力あるなんてきいたことないぜよ、何で…;」
幹久朗はそっと流也に近づいた。
「…聞こえるのか、こいつの声が?」
「え?…ああ。」
「成程なぁ。もしかして、『ドリトルエンパシー』かなんか持ってんのか?」
「!」
反射的に身構えるが、そばにいた巨木はのんびりと言葉を吐いた。
『あー、成程。道理で言葉が分かるわけだね。』
「アカノミ、お前も聞いたことがあるだろ。意思のある生物なら、例え植物でも会話をすることができる能力だ。」
「何でそれを知ってるんだ。というか、お前も使えるのか?」
「いいや、俺のは生まれ持った素質。能力じゃねぇ。ただ、似たような力だったから覚えてたんだ。」
「なんだ、それじゃあ
幹久朗殿の協力の必要なかったぜよ;」
月光は頭をかいて言った。
「いや、いいんだ。俺自身能力は気になってたわけだしな。」
幹久朗は笑い返した。
「お前、この辺じゃ見かけないけど、よそから来たのか?」
「ああ。一度ここは訪れてるんだけどな。」
「暫くここに滞在するのか?」
流也は少し迷ったが、答えた。
「少なくとも目的が達成されるまでは。」
「そうか。」
幹久朗は微笑んだ。
「なら、またここに寄ってもらえないか?」
『「え?」』
流也はもちろん、アカノミも素っ頓狂な声を上げた。
「アカノミは意思を持つ植物だが、会話できるのが俺しかいなかったんだ。そのせいで友達も少なくてよ。」
「つまり、彼の友人になってほしいと?」
「早い話がそういうことだ。そんなに頻繁に来なくてもかまわない。思い出した頃に寄って、ちょっと話すだけでもいいんだ。」
幹久朗は、いつも自分が寄れないときにアカノミが寂しそうにしていたことに気付いていた。
この提案はアカノミに対する、彼なりの配慮だったのだ。
「…分かった。本当にたまにしかこれないけどな;」
『!』
「それでいいんだ。いいだろ、アカノミ?」
『…いいの?僕の話し相手だなんて…。』
「いいんだよ。それに、仲のいい人は多い方がいい。」
流也はアカノミに、笑いかけていた。
アカノミは二人の優しさに得も言われぬ感動を覚え、呟いていた。
『…ありがとう…。』
「…さて、そろそろ本題に入るか。」
真剣な顔つきになり、幹久朗は言った。
「流也。お前は誰を追ってここに来た?」
「…
ヴァイス。ヴァイス=シュヴァルツだ。」
「白」と「黒」。相反する意味を持つ名前に、アカノミは気付いた。
『…いるよ。』
「え?」
『ヴァイス=シュヴァルツ…『白い闇』…。間違いなく、このいかせのごれにいるよ。』
最終更新:2011年05月29日 01:44