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『狂女と死にたがり』

『狂女と死にたがり』

今日もいつも通りジングウ様に会いに行った。
そいでいつも通りに話した。
不変はあまり好きじゃないボクだけど、これはまた別。
ボクはジングウ様が大好きだ。
外見、性格、能力、言動、全てがボク好み。
―――欲しい、ジングウ様が欲しい。
その時。

「熱心ですね。あんまり相手にされてないのに」
「…やあ、死にたがりくん」
ウツロです」

不意に聞こえてきた声は、生きる事を苦とする変わり者。
名前はウツロって言うんだけど、ボクは敢えて「死にたがりくん」と呼んでいる。

「アナタだってそうだろう?」
「どういう意味です?」
「死にたがりな所さ。もう諦めなよ」
「お断りします」
「ふふっ、せっかく生まれてきたのに。勿体ない」
「僕が望んだ事じゃありませんから」
「望んだ事、ねえ…」

ボクだって同じさ―――そう、言いかけてボクは黙った。
ボクだって悩みはある。
それはボクの能力、ジェノサイド。
狂気化とも呼ばれるこの能力、
とても強力だけどコントロールがしにくい。
つまり暴走しやすいのだ。
お陰で他のメンバーに怪我させたりした事もある。
それでもホウオウ様は何故か、ボクを組織から追い出そうとしない。
まあ、ジングウ様がここにいる間は出たくないからいいけど。

マキナさんは、どうしてあの人に惚れたんですか?」
「ジングウ様に惚れた理由? そんなの決まってるじゃないか。全部がボク好みだからだよ」
「全部が、ですか」
「そう。あんな人はそうそういないだろうね」
「まあ、確かにそうですよね」

その通り。
ジングウ様みたいな人はあまり、いや、全くいないだろう。
ホウオウ様は勿論凄い。
でもそれだけ。
凄いと思うだけ。
だがあの人は違う。
あの人は凄いだけでなく、惹かれる部分をも持ち合わせている。
ボクに「欲しい」という感情を持たせたのだ。

「あの人は、ホウオウ様を越える。きっとその日が来る」
「…来たら、貴方はどうするつもりですか?」
「ついていくに決まっている」
「…どうせ捨てられると思いますけど」
「そうなったら、殺してもらうつもりだよ」

ボクは愛しいジングウ様が望むなら、何でもする。
誰かを殺したりするのは勿論、ホウオウグループを滅ぼすこと、そして―――喜んで殺される事も。

「僕には分かりませんね。そうしてまで愛するという、貴方の気持ちは」
「分からなくてもいいさ。ボクはあの人を愛しているのだから…」

でも、それが暴力となって現れかける時もある。
ジングウ様が欲しいあまりに、ジングウ様を殺したいという時が。
確かに殺してしまえば、自分の物になったという、快楽を感じるだろう。
だがそれは一時的なもの。
殺すことなくジングウ様を手に入れる事で、初めて自分の物になるのだから。


383 :十字メシア:2011/06/04(土) 21:20:15
「…そういえば、トキコさんから聞いたよ」
「何をですか?」
「最近、アースセイバーの人とよく話してるみたいだね。名前はカナミさんだっけ?」
「…ええ」
「どんな人?」
「…優しい、面白い人。ですかね」
「へえ、是非とも会ってみたいねえ」

その言葉で、死にたがりくんの顔つきが微妙に変わった。
おやおや、誤解させたみたいだね。

「別に殺そうとはしてないよ。純粋に会いたいだけさ」
「…本当に?」
「そりゃあ、死にたがりくんを変えさせるきっかけになるかもしれない人だからね。殺したらつまらない」
「変えさせる?」
「死にたがりなところさ」
「…それは無いですね。確かに、あの人は僕に優しくしてくれますが」
「へーえ」

こんな人に優しくしようとするなんて。
死にたがりくん程じゃないけど変わってるねえ。

「…一応言っときますけど、殺したりとかしないで下さいよ」
「どうして?」
「貴方には関係無いです。とにかく、あの人には手を出さないで下さい」
「ふふっ、分かったよ。じゃあそろそろ部屋に戻るよ」
「…拾った動物、殺しに?」
「まさか。育てる為に拾ってるんだよ」
「でも結局殺してますよね?」
「ボクでも分からないけど、気づいたらそうなるんだよ」

死にたがりくんとの会話を終え、ボクは部屋に戻る。
本人は認めてないけど、やっぱり変わるきっかけになるね。
そのカナミさんという人は。
もしかしたら…ふふっ、とりあえず楽しみだねえ。

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最終更新:2011年06月05日 00:15