コムクスドリ型ミサイル艇(PKG)


▼1番艇「ユ・ヨンハ」(PKG-711)

PKX-A型性能緒元
満載排水量 570t
全長 63.0m
全幅 9.0m
喫水 3.0m
主機 CODAG 3軸
速力 40kts
航続距離 2,000nm/15kts
乗員 40名

【兵装】
対艦ミサイル SSM-700K「海星」/ 連装発射筒 2基
オットー・メララ76mm単装速射砲 1基(1番艇のみ)
WIA 62口径76mm速射砲 1基(2番艇以降)
近接防御 40mm連装機関砲「露蜂」 1基
  12.7mm機関銃 2基
爆雷    

【電子兵装】
3次元捜索レーダー (国産開発中) 1基
火器管制レーダー CEROS-200 1基
光学追尾システム (国産開発中)  
戦闘システム (国産開発中)  
電子戦システム SONATA簡略型  

韓国海軍の次期ミサイル艇(PKX)。2002年の西海交戦(北朝鮮の砲艦と交戦し韓国艦艇が撃沈された)を受け、遠距離交戦能力を持つ強力な小型戦闘艇を開発するPKX計画が始まった。設計に関してはイギリスやフランスから提案を受けたが、結局国内で行われた。将来的にはFFX(韓国次期フリゲート)と共に、韓国沿岸域の防衛を担う主戦力となるだろう。試作艇の意味合いが強い1番艇は2005年8月より建造が始まり、当初の予定より半年ほど遅れて2007年6月に韓進重工業釜山影(プサン・ヨンド)造船所で進水し、2002年の西海交戦(後に第二次延平海戦と命名)で戦死した尹永夏少佐の名前が艇名として付けられた。続いて4,400億ウォンを投じて2009年に4隻、2010年に4隻が進水する(いずれもA型)。PKXは対艦ミサイルを搭載するミサイル艇タイプのPK-A型と、ミサイルを装備しない若干小型(約200t)の哨戒艇タイプPK-B型が建造される。B型はソナーも装備しており、駆潜艇的な役割も果たす。最終的に42隻(A型24隻、B型18隻)を建造する計画だ。韓国ではパエク(白鴎)、キロギ(雁)、チェビ(燕)、チャムスリ(大鷲)など小型戦闘艇に鳥の名前を付けているが、PKXはコムクスドリ(犬鷲)型と呼ばれるようだ。これまで韓国の小型艇は伝統的に大尉が指揮を執ってきたが、PKXは満載排水量570tと大型なため(海上自衛隊のはやぶさ型ミサイル艇は満載240t)少佐が艇長になるという。

韓国海軍の小型艦艇はこれまで、北朝鮮の戦闘艇との交戦を考えて砲填兵装を重視してきた。しかしPKXは新たに開発された国産のSSM-700K艦対艦ミサイル「海星」を搭載し、大型艦への攻撃能力を有している。艇前部には韓国WIA社の国産76mm速射砲(ステルス・シールド)を装備する予定だった。しかしこの国産速射砲は伊オットー・メララ社から違法コピーとして告訴された為、1番艇「ユ・ヨンハ」は退役するポーハン級コルベット等から降ろした76mm砲を装備する事になった(後日換装される可能性はある)。朝鮮日報紙によれば既存の砲を再利用する事で、新型砲を搭載するのと比べ1,000億ウォンの経費削減になるという。メララ社は76mm砲の再利用に対し技術サポートを行う予定で、今後25年の品質が保証される。その後、艦砲については法的問題が解決された事により、2番艇以降はWIA製76mm艦砲を搭載して就役している。

艇後部にはSSM-700Kの連装発射筒2基と国産の40mm連装機関砲「露蜂」1基を装備する。「露蜂」は自動化された機関砲だが、CIWS(Close In Weapon System:近接防御システム)のように固有の捜索・追尾システムは装備しておらず、ミサイルの迎撃能力は限定的なものでしかない。

レーダーはPKX用にNEX1社で開発された3次元レーダー(Xバンド)を搭載し、戦闘システムも国産のものが装備される。3次元レーダーの捜索距離は約30kmで、最大100の空海目標を探知し追跡する事が可能だという。PKX用戦闘システムは2003年から680億ウォンを投じてADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)が民間企業と協力して開発したもので、武器管制システム、指揮決定システムなどから成り、各種レーダー・光学追尾装置や兵装と連接している。自艦の捜索システムで探知、若しくは他艦からデータ・リンクを通じて送られてきた情報をもとに戦闘システムは目標の脅威度を判定し、自動的に攻撃の優先順位を決定する。これまでチャムスリ型などの戦闘艇にはこういった高度な戦闘システムは搭載されておらず、手動で目標を設定しなければならなかった。ADD関係者は自動化され共同交戦能力を持つ新戦闘システムを搭載したPKXは、クァンゲト・デワン級駆逐艦の80%の戦闘力を持っていると主張している。火器管制レーダーはサーブ社のCEROS 200が採用され、艦橋上に1基が搭載されている。CEROS 200は高速艦用に開発された小型の火器管制システムで、Kuバンド帯で作動し、周波数アジリティなどの電波妨害対策が施されている。電波ビーム幅は1.5度と細く、シークラッターの影響を受け難い。またCEROS 200はレーダーだけではなく、可視光TVと赤外線カメラ、レーザー測距システムなどからなる複合光学センサーも装備しており、海面ギリギリを飛来するシー・スキミング型のミサイルの発見などに威力を発揮する(但しPKXの装備するCEROS 200には光学センサーが1種だけしか装備されていないようだ。恐らく専用の光学追尾システムを別に装備しているため、オミットしたものと思われる)。CEROS 200はスウェーデンのヴィズヴィ(Visby)級コルベットなどに採用されている。マスト背面にはEOTS(Electro Optical Tracking System:電子光学追跡システム)が装備されている。これはADDと三星タレス社が開発したもので、FLIR(前方監視赤外線)/IRST(赤外線捜索追尾)、レーザー測距機能を持つ。電子戦システムはチュンムゴン・イ・スンシン級駆逐艦などに搭載された国産のSLQ-200(v)5K SONATAの小型版が搭載される。

艇体形状はステルス性を意識したもので、艇体の舷側や上部構造物の壁面はRSCを低減するために傾斜がつけられている。主機はガスタービン・エンジン3基で、韓進重工業製のウォータージェットにより40ノット以上の速力を発揮する。

【2008.12.08追記】
韓進重工は2008年12月8日、コムクスドリ型ミサイル艇4隻の建造を1,300億ウォンで受注したと発表した。1番艇「ユ・ヨンハ」は2007年に進水し、現在建造中の2~5番艇は2009年に引渡し予定で、今回受注したのは6~9番艇。

【2008.12.20追記】
ADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)の朴所長は12月3日、コムクスドリ型ミサイル艇用の戦闘システムの開発を完了したと発表した。この発表によれば、新型戦闘システムは完全に国内技術のみで開発されたもので、3次元レーダーや光学追尾装置と連接し、100以上の目標を同時に探知・識別し、追尾する事が可能だという。また目標の脅威度を自動的に判別し、衛星を介して僚艦にデータを配信して、最も効果的な攻撃パターンを作製する事ができる。国際基準の商用通信ミドルウェアを用いた開放型システムと、ADDが開発した射撃管制アルゴリズムにより、2008年11月に行なわれた実射試験では、対空・対艦目標において現在使用しているシステムよりも高い命中率を記録したという。ADDは現在韓国海軍が外国性戦闘システムに依存している態勢から脱却し、優秀な国産システムに移行する事を目指しており、今回の新型戦闘システムの開発成功によって、約5,760億ウォンの輸入代替効果と、今後20年間に1,024億ウォンの運営維持費節減効果が期待されている。またこのシステムの輸出にも大きな期待を寄せているようだ。

【2009年10月9日追記】
2009年9月23日、コムクスドリ型ミサイル艇の二、三番艇が鎮海市のSTX造船で進水式を行った[1]。二番艇(PKG-712)は「韓相国(ハン・サングク)」、三番艇(PKG-713)は「趙天衡(チョ・チョンヒョン)」と命名された。艦名はネームシップと同じく第二次延平海戦で戦死した将兵に因んでいる。

1番艇 A型 尹永夏(ユ・ヨンハ)   PKG-711 2007年6月29日進水 / 2008年12月17日就役
2番艇 A型 韓相国(ハン・サングク)   PKG-712 2009年9月23日進水 / 2010年9月就役予定
3番艇 A型 趙天衡(チョ・チョンヒョン)   PKG-713 2009年9月23日進水 / 2010年10月就役予定
4番艇 A型 黄道顯(ファン・ドヒョン)   PKG-714 2009年12月11日進水
5番艇 A型 徐厚源(ソ・フウォン)   PKG-715 2009年12月11日進水
6番艇 A型 朴東赫(パク・ドンヒョク)   PKG-716 2010年7月28日進水
7番艇 A型 玄時學(ヒョン・シハク)   PKG-717 2010年7月28日進水
8番艇 A型     PKG-718
9番艇 A型     PKG-719

▼1番艇「ユ・ヨンハ」。艦橋とその後ろの上部構造物は外舷と面一になっており、後方への直接視界は全く無い。
▼艦橋上の白い円盤状のものは「CEROS-200」火器管制システム。マスト上には国産3次元レーダーを装備している。
▼「CEROS-200」のアップ。レーダーと光学システムからなる複合管制システムだ。マスト両脇には6連のチャフ発射機が見える。
▼2007年6月28日に進水式を行った「ユ・ヨンハ」。全体的にステルスを意識した構造になっており、傾斜と平面を多用している。
▼3基ならんで装備されたウォータージェットが確認できる。後部の40mm連装機関砲は国産の「露蜂」
▼ウォータージェットのアップ
▼艦首のオットー・メララ社製76mm速射砲。計画ではステルス・シールド型の国産砲が搭載される予定だった。
▼後部側から見たマスト。両脇に装備された円筒状のものは国産の電子戦システムSONATA(簡易型)のアンテナ。白い球状のものは光学追尾システムと思われる。
▼3番艦「チョ・チョンヒョン」(PKG-713)。ステルスシールドの76mm砲は韓国WIA社製。ネームシップでは40mm機関砲直前に一基搭載されていた衛星通信用ドームがマスト基部2基に変更されているのが分かる。

▼国産の3次元レーダー
▼国産戦闘システム(KMFC)のシステム構造図

▼「ユ・ヨンハ」の戦闘システム試験動画(CICの様子、KMFCの画面、76mm砲及び40mm機関砲の対水上・対空射撃試験など)

【参考資料】
世界の艦船 2003年2月号(海人社)
朝鮮日報
毎日経済
PowerCorea
MDC軍武狂人夢
国防日報Kookbangilbo「第二次延坪海戦の英雄の名を冠したミサイル艇2.3番艦が進水」(2009年9月24日)[1]
国防日報Kookbangilbo「海軍ミサイル高速艇2隻進水」(2010年7月30日)


2010-08-31 22:46:29 (Tue)

最終更新:2010年08月31日 22:46