投下します。以下読んでおくと理解しやすいかもしれないキャラ設定
カエラ:第一人称。ローグ駆け出し。
姉御:女サムライ。カエラの師匠?
副長:乙女な人。緑ナイト。副長はあだ名。
アルフレッド:『彼』。ヒーラー。
リーダー:ファイター。
ギルマス:メイジ。
姫ちゃん:プリンセス。
頬を撫でる潮風が心地いい。
とかロマンチックなことを書きたいところだけどぶっちゃけ寒い。薄着だからなお寒い。
定期便カザン発プレロマ行きは現在海上を順調に航行中。
船酔いした姉御に付き添って甲板まで出てきたあたしは、この糞寒い中腕組みして水平線を見つめているギルマスを発見した。
「何カッコつけてんですか、こんなところで」
「ああ、いらっしゃい。せっかく船に乗ったんだから存分に潮風を浴びておこうと思ってね」
訳分からん。
「風邪ひくぞ」
「君は少し調子が悪そうだね。船酔いでもした?」
「少しな。船内にいると平衡感覚がおかしくなる」
「で、ギルマス。今回はまた急な話ですけど、何しに行くんです?船のチケットだってそんなに安くないんじゃ」
「まあね。僕たちの今後の活動にかかわることだから……ポータルの使用申請をしにいくんだよ」
ポータル。意外と認知度の低いそれは、世界各地を繋ぐ超技術の移動装置、あるいは施設の総称だ。
カザンの近くにも一つあるけど、限られた人しか利用できない上実際に使用しているのは見たことが無いので
あたしも本当にあれがポータルなのか、ポータルが実在するのか半信半疑という代物だ。
「なるほど……確かにポータルが使えればあたし達の活動範囲も広がりますよね。
てかあれ本当にポータルだったんだ……あ、それにあたしあれがプレロマのものだなんて知りませんでした」
「うん………確証は取っていない!」
「えええええぇぇぇぇぇっ!!?」
「とはいえたぶん問題ないよ。転送装置なんてプレロマ以外まずありえないし、
それにほら、ポータルのそばに必ずあるセーブポイントが、ね」
「セーブポイントが……なんですか?」
ポータルのそばに立っている幾何学的な形をした石柱。
それがセーブポイントと呼ばれる記憶装置だというのは比較的知られていることだと思う。
ハントマンなら一度は利用するであろうそれはあたしにもすぐに思い浮かべられたが……
それとどういう関係が?疑問の視線をギルマスに送る。
「行ってみれば分かるよ」
「えー」
「それより問題はどこの馬の骨とも分からない僕たちに使用許可を出してくれるかだね。
やれることはやった、あとはエメル女史のご機嫌次第だ、な」
――――――――――――――――――――
世の中には理不尽なことなんていくらでもある。
例えば、今あたしの目の前にあるのなんかそうだ―――強力な敵。
どうして?
いくらあたしが全力で打ち込んでも、息を荒げながら確認すれば
そこにあるのはまったく変わらない真っ黒なシミ。
あたしの力じゃ足りないというのか。
あたしの力じゃ、この真っ黒な染みを拭い去ることは。
「遅い、何をそんなのに手間取っている」
向こうでこまいのを片付けていた姉御から咎めるような声が飛んでくる。
あたしだって、適当にやってるわけじゃないのに。
「だって、姉御、こいつ……」
「……む」
あいつを見た姉御の表情が微妙に変わる。
「……すまない、確かにこれはお前の手には余るな」
獲物を手に、しばらく姉御は奴の分析を行う。そして、
「ふむ。いいか、こういうときは重曹を使ってだな……」
白い粉を手にした雑巾に振り、拭いた。
一閃。
その後にはあの忌々しいシミは跡形も無く、生白い石の壁だけがあった。
「すごい……さすが年の功、おばあちゃんの知恵袋」
「……どういう意味で言った、場合によっては殺す」
あたし達はギルドハウスの地下室でお掃除を難航させていた。
「ふぃー」
一段落したあたしは二階にある自分の部屋のベッドに横になり、一息つく。
そう、自慢じゃないがあたしたちにはギルドハウスがある。中古だがなかなかの物件だ。
立地は市街地からは離れているが郊外の林の中にある静かな場所で、二階建て、
ギルメン全員に割り振れる数の部屋があり(もっとも、あたしの部屋なんか物置みたいなもんだが)、
地下室つき。テラスやベランダがあるような邸宅とは比べるべくもないがそこそこ豪華なつくりで、
井戸は近く、おまけに家財道具完備。家具も食器も全て定位置に配置済みで、
この家にある物品は全て処分するなり自分のものにするなり自由にしてよし。
その完璧すぎる配置はまるで昨日まで人が使っていたような状態だった。
……………
……うん、ワケあり物件。ついでに言うと一家惨殺。
旦那さんと奥さん、それと小さな男の子が住んでいたそうだけど、
地下室で血痕の跡と思しき大きなシミを見つけたときには肝をつぶしたね。
まあこう聞くとワケあり物件を厄介払いついでに格安で手に入れたみたいに思うだろうけど、
これでもこの家は政府から下賜された褒章としてのギルド財産だ。
新しく結成して間もない後進でありながらわりと本気でドラゴン退治に挑む
野心100%ギルドであるウチは、これまでにも名も無き小洞始めいくつかのダンジョンのフロワロを掃い
政府の国土・街道浄化企画にも積極的に参加してきた。
地味ながらも着実にドラゴンの脅威を駆逐し続けた功績は政府に評価され、
いわくはあるが資産価値の高いこの家がギルドハウスとしてあたしたちに下賜されたというわけだ。
これまでたくさんのドラゴンに袋叩きにされかけたり主がいなくなってフロワロの無くなったダンジョンに
姉御と二人で出かけたらまだドラゴンが残っててひどい目にあったりしたけど、この家で皆と仲良く暮らせるなら
……そんなに悪くは無いよね。
「お姉ちゃん、疲れてるの?……掃除してたんだ」
いつの間にやら、窓の外にあっちゃんが立っていた。
あっちゃんはこの近くに住んでいるらしく、たまにやってきてはこの窓越しに話をしていく。
元気があって朗らかで、最近なかなか見ないような礼儀正しい男の子だ。
「こんにちはあっちゃん。そーなの、地下室の掃除してたんだけど全然片付かなくて」
「大変だね。十年以上散らかる一方だったのを、家族三人で一月かかっても片付かなかったんだからしょうがないよ」
「ほえ……よく知ってるねそんなこと」
「まあね。それよりほら、さっきから下でおねえちゃんのこと呼んでるよ?」
「え、ほんと?」
耳を澄ませば、確かにギルマスがあたしの事を呼ぶのが聞こえてくる。
「ほんとだ、ありがとあっちゃん」
ふりむくと、すでにあっちゃんはいなかった。
「あれ……いつものことだけどせっかちだよね、いつの間にかいなくなるんだから」
ともかくギルマスを待たせておくわけにも行かないのであたしは1階に降りていく。
そしてリビングに入ると同時に返事をしたあたしに飛んできたのは、
「出かける準備して。プレロマに行くよ」
との一言だった。
――――――――――――――――――――
そんな訳でプレロマだ。
場面転換ばかりで読みにくい日記になりそうだ。ついでにここからも場面転換ばっかりだ。
なるほど。ギルマスの言ってた意味が分かった。
あたしの目の前にあるプレロマ本塔、その外見はまるっきり大きなセーブポイントだ。
形はより複雑でわけの分からないことになっているが、この他に無い質感は間違えようが無い。
世界各地にあるポータルにこの塔とそっくりな記憶装置が備え付けられているということは、
まずポータルはプレロマが作ったものかそうでなくても深いかかわりがあると考えた方が妥当だろう。
ギルマスが申請に行っている間暇になったので、その辺を意味も無くぶらぶらすることにする。
とはいっても……見事に何も無いなここ。
あるのは本塔と宿屋と……倉庫、かな?地下から物騒な空気が漏れてるけど。
本塔をぐるりと囲む石造りのテラスがちょうどいい散歩道になっていたので引かれるように足を踏み入れる。
日陰があって涼しい、と周りより土台の分高くなっていて見下ろせる、以外の長所は特に見当たらないテラスを
ぶらぶらと歩いていると、ちょうど本塔の裏側辺りで手すりに肘をかけ、たそがれている副長を発見した。
「ふーくちょー、何してるのこんなとこで」
「ああ、カエラさん……」
「暗いなー。静かに風情を楽しむんならいいけど、どうみても私悩んでますって顔だよそれ」
「そ、そうですか?いけませんね、しゃきっとしないと」
「いやそーじゃなくてさ、……悩んでるなら話してみてよ?ああもう恥ずかしいなこんなこと言わせて」
「カエラさん……ありがとうございます、すいません。本当に大丈夫ですから」
副長はそう言って笑うが、前からなんとなく悩みの理由が分かっていたあたしは、前触れも無くぽんと核心に迫ることにした。
「ズバリ恋の悩みと見た」
「……っくぅ!?」
「相手はリーダー?早くコクっちゃえばいいのに。恋人と一緒にハントマンは楽しいよ?」
「かはっ!?ふぐっ!にぎゅあーーーーああおああああああおん!?!!??」
「……」
ぶっちゃけまさかここまでヒットするとはおもわなかった。
こりゃただ単にヒットするだけじゃなくてさっきまで同じこと考えてたな……
「な、な、な、なぜ、心を読ん……」
「読んでないから。……で、どうなの?」
「あう……そ、そのですね………」
簡単に説明しよう。
この副長ことナイトさんは、同じギルドのリーダーことファイターさんに惚れている。
何で分かるのかって、半分は女の勘、もう半分は副長が言動の端々に発する恋する乙女オーラだ。
副長は最初しぶしぶと、次第に熱のこもった言葉でいろいろなことを話してくれた。
自分がフリーの騎士だった頃、彼女の故郷にやってきた冒険者がリーダー達だったこと。
そのリーダーに勧誘され、自分もそのチームに入って冒険をするようになったこと。
高潔と清浄が第一、恋愛なんてもっての他と思っていたはずがいつの間にかリーダーに特別な感情を抱いていた事。
その辺りの冒険を終え、故郷に残るかリーダー達と共に新天地を目指すかという選択を迫られたとき、
ありったけの勇気と覚悟を振り絞って故郷を捨てて共についてくる決心をしたこと。
そして現在、あのときの勇気はなんだったのかというくらい何も出来ず、今の今まで進展が無いままここまで来てしまったこと。
「で、ここでふがいない自分を嘆きつつどうしたもんかと頭を悩ませていたわけだ。
その調子だと船でもなんかあった?」
「え、ええ……。
定期船とはいえ広い海の真ん中、甲板の上で二人はやっぱりロマンチックじゃないですか。
それとなくお誘いしようと思ったんですが……この天気じゃ寒いからここにいようと言われ」
「いや、実際あそこは寒かったからね、それは正解だよ。……へっきし」
「そーそー、潮風っていうか海風がびゅうびゅうと……へ?」
「え?」
「ん、どうしたんだい?何か話の腰を折るようなことでもあった?」
「ひぎゃああああギギギギルマスっ!?」
「びっくりしたなあ、いつの間に?」
「というかいつから!?いつから聞いていたんです!?」
「そーだな……『その日も仕事が見つからず落ち込んでいた私の前に』あたりからかな」
「んああああおお……ほとんど最初からじゃないですか………」
「こーいう話を立ち聞きはどーかと思いますよ」
「まあ、いいじゃないか。おわびに僕も相談に」
「いりません!」
「そう言わない。問題なのは君は切羽詰らないと行動を起こせないタイプということだろう?」
「!?ま、まあ……」
「けど次に切羽詰ったときは、数十年後かそのときには手遅れかのどっちかだろうね。
つまり君は、今勇気を出せないならこれからも出せないと思っていいということだ。
だが色々なことを天秤にかけて『最も困る結果』から逃げ続ける君に面と向かっての告白など期待できるはずが無い」
「うぐ……」
「割と容赦ないっすね」
「そんな君にお勧めするのがラブレター作戦だ!君に表現できるギリギリの好意を書き綴って彼に渡し、
彼がこれってラブレターだよなと理解したところで本告白、お付き合いの申し込みに移る!
告白までワンステップあるから君にも実行は易しいし、手紙ならよく吟味できるから
出だしですっ転ぶこともまず無い!そして気付けば後がないから君がどんなに臆病でも告白せざるを得ない!
とまあ考えてる分にはいい作戦だと思うんだけどどうかな?」
「ど、どうかなって……そんな、いきなり言われても……」
「あー、でもさ、手紙なんだから練習のつもりで書いてみたら?
書いてみて出せないと思ったらそこでやめればいいんだし、うん、練習しなきゃどうしようもないよ」
「練習、ですか……そうですね……練習なら………」
「ね!やってみよ!(ギルマス、これでいい?)」
「それがいいね(上出来だ、練習といってるうちに完成品を書かせてしまえばあとは背中を蹴り飛ばすだけだ)」
水面下でやり取りするあたし達をよそに、副長はうんうん唸っている。
「分かり……ました。とりあえずやってみます」
「よし、その意気だ」
「オッケー、こっちの話は一段落だね。
……で、ギルマス。ポータルの件はどうなったのさ?」
「ああ、そうそう」
そういえばそんなこともあった、といった感じで手を打ったギルマスは、次にほうと息をつきながら腕を組んだ。
「エメル女史に会ってきたよ。いやおっかない人だった、メナス補佐官もなかなかだがあの人はもっと怖い」
「で、結果は」
「……残念ながら」
苦笑と共に首が横に振られた。
「そんな」
「『実績が足りん!』だってさ。今の状態では保身のために魔物退治をする国軍と変わらない、
ポータルを貸して欲しいならそれに相応しい貪欲さ、機会さえあれば自分達がこの星からドラゴン共を
消し去ってやるという覚悟を見せてみろだって」
「確かにこれまで相手にしてきたのは小物ばっかだもんね……」
「しかし……実際私達には大物を相手にする機会も実力も無いじゃないですか。
本来一国の主力部隊を持って相手にするような敵にそれはあんまりじゃ……」
「うん。まあ目に見える戦果をあげるのはさすがに無理だね。
しかし要は僕たちが役に立つというところを見せればいいんだ、まだ手はある」
「そうなんですか?」
「エメル女史はどうやら猶予をくれたようだ、耳寄りな情報をもらってきた。
それで君たちに頼みたいことがあるんだが……皆にも声を掛けてくれるかい?
今回の仕事は早いほどいい」
「それじゃあんな話に割く時間はないでしょう!
何をすればいいんですか、早い方がいいんでしょう?」
「……じゃあ、よく聞いてくれ。
まず狩りの支度だ。君たちはこのプレロマを出て―――鳥の羽を集めてくれ」
「……は?」
――――――――――――――――――――
副長が後ろ腰に差した騎士剣の鍔、刀身と柄の間にある輪に手をかけてすらりと抜く。
引き抜かれた剣は輪にそってくるりと回転、その柄が副長の手に納まった。
……てか、よく見るとリーダーの馬鹿でかい人斬り包丁も物騒だけど副長の剣もたいがいだよね。
一応騎士剣としての体裁を保っちゃいるけど、その分厚い刀身は小剣なんだかナタなんだかわかりゃしない。
戦闘準備を終えた副長は、ふとこっちに顔を向けて何事かもじもじし始めた。
「……なに?」
「あの……ですね。ラブレターの件なんですが……お手本を書いてもらえないでしょうか?
あ、もちろん自分のは自分の言葉でちゃんと書きます。ただ……なにをどう書いたらいいか見当もつかなくて」
「それこそ思ったままでいいと思うけど……ん、分かった。とりあえず夜にね」
「ありがとうございます」
「しっかしギルマスってば、鳥の羽なんか何に使うんだろうね?それも出来るだけ大量になんて」
「これがドラゴン退治に役に立つとは思えませんが……まあ、何か考えあっての事でしょう」
「そだね」
「おーい、待たせたな」
向こうから姉御と彼、リーダーがやってくる。
さっきまで話していたことがことだけに副長はリーダーを見てぎこちなくなってしまうが、
一々フォローするのもなんなので普通に応対することにしよう。
「こっちも今来たとこです」
「ん。ひいふうみいよ……五人か。肝心のあいつはどうした?」
「姫ちゃんは来ないそうです。ギルマスはなんかテイリュウを見に行くって言ってましたよ」
「………
……へ?帝竜?」
「な、なんですかその反応。テイリュウってなんか……堤防とかそーゆーのの親戚ですよね?ね?」
「えーとな。帝竜ってのは……」
――――――――――――――――――――
――マレアイア群諸島、北東部。
列島を形成する島々の一つ、海を見下ろせる絶壁の上に彼の姿はあった。
ギルマスことメイジは同ギルドのプリンセスを伴い、海を挟んで向こうに見える島を見つめている。
メイジの視線の先には島の上に立つ三柱の塔が一組となった古めかしい建造物があった。
古代遺跡マレアレ神塔だ。
その中央塔の上で何かが光った直後、海を越えて地獄の脈動のような竜の咆哮が響いてきた。
「始まった」
塔の上で光が集まり、幾条かの弾丸となって撃ち出される。
水平線に向かって飛んでいった光の砲弾は海面に着弾して大きな水柱をあげた。
メイジが目を細めその着弾点に目をこらす。
揺れ動く水面の向こう、遥か彼方の波間に巨大な影が見えた。
再び塔の上から光の弾丸が撃ち出される。
海面の何かに向かって飛翔する光と入れ違うように、今度は塔に向かって黒い影が飛来してきた。
放たれた機関砲の弾丸が塔の頂上に着弾し凄まじい破壊音と金属音が響く。
それを皮切りに、マレアイアの海に熾烈な砲撃戦が展開し始めた。
「なるほど……海の上で戦うのは分が悪い、かといって単なる砲撃戦では射程距離で圧倒される。
それを補うために塔の高低差を利用したのか」
冷静に状況おを分析していたメイジが、もういちど海の彼方に目を向ける。
「あれが――帝竜か」
巨大な影が、機関砲を撃ちまくりながらゆっくりと航行する。
圧倒的な弾丸の嵐が、時には魔力の壁に阻まれ、時には塔の上にいる守護神に直接弾き飛ばされていた。
「……よし、帰ろっか!」
しばらくそれを眺めていたメイジは、出し抜けに明るい声で最後まで見届けずに帰ることを宣言した。
「……見ていかないの?」
「勝負が見えてるからね。それより早くしないと密航し損ねちゃう、そしたら帰れなくなるよ」
「うん、じゃあ、帰ろう」
「いったんマレアイアによってから折り返すルートなんだけど、お土産何にしよっか。やっぱ水着?」
「(こくこく)」
「ファイターにはトランクス、先生にはも少しおとなしめで……ナイト君は引っ込み思案だから思い切ってビキニがいいよね。
ローグ君には……どうしようかな。サムライはスクール水着でいいや」
「殺されるよ」
「僕の分はどうしようかな。ウケを狙うならやはりブーメランタイプ……いや
だけど……僕自身が精神に追うダメージとの釣り合いがなあ」
「……ねえ」
「ん?ああ、君の分を考えて無かったね」
「ううん、そうじゃなくて」
「?」
「マレアイアに男物の水着は売ってないと思うよ」
「……なんたることだ!」
緊張感のかけらも無い会話を繰り広げる彼らの背後で、塔の頂上に向けて放たれた極太の光の帯が
それを防ぐ障壁とぶつかり合って巨大なフレアを作り出していた。
そんなこんなで夜。
あたしは宿屋で副長に頼まれたラブレターのお手本を書いている。
「貴方はすでにお気づきかもしれませんし、もしくはまったくお気づきになられていないかもしれません。
これまで私はただ貴方の隣で戦うだけ、それだけの関係と距離でこの頃を過ごしてきました。
それはとても心地よく、ともすればいつまでも浸っていたいと思ってしまうような時間でした。
しかし、今、私は今の関係から一歩進んだ未来のために勇気を奮い起こします。
どうかお読みになってください。この手紙に私の想いをつづります。
……
こんな感じでいいかな?」
「いいじゃない、なかなかだと思うよ」
これでも乙女マスタリーにしっかりとポイントをつぎ込んでいるのだ、このくらいはわけもない。
ちなみに副長はまだ仕事で走り回っている。隣でラブレター製作を見てくれているのは彼だ。
「率直に書きます。私は貴方に……」
「……」
「貴方は目的もなく、無為に日々を過ごしていた私に新しい……」
「……」
「ですから私は……」
「うん……」
「……」
「ここでそれは凄くいいよ……」
「……」
「あ、貴方を守りたいは別の表現の方がいいんじゃないかな」
「そう?リーダーって男女平等主義だよね」
「そうなんだけど、それとは別になんというか、ね。男にも色々あるんだよ」
「ふうん」
「貴方の背中を守りたい、とかそういう感じがいいと思うよ」
「うん。場合によっては貴方の傷を半分分けてくださいとかもいいよね」
「あ、それ、いいね」
「……」
「……」
「本告白が別にあることを考えると……」
「結びの文は……」
「……完成!」
入魂の一筆が出来た。
それを書き終えたあたしは背を伸ばし、壁の時計へと目を向ける。
「さて……どうしよっか。副長帰ってこないね」
「夕ご飯にも早い時間だし、散歩でも行こうか?」
「散歩?」
「うん。この辺は建物が少ないから少し行くだけで星がきれいに見えるよ。
それにそう遠くないところに海岸もあるし……二人で行かない?」
「行く行く!……じゃあ、この手紙はフロントに預けていこっか。誰かに見られるといけないし」
「そうだね」
そうと決まれば善は急げ、早速出かける準備をしたあたしは一直線にフロントへ。
「すいません、ここに戻ってくる仲間に言伝はお願いできますか?」
「はい。どうぞ何なりとご用命ください」
「じゃあ、長い髪で、特徴的な髪留めをした女のハントマンにこの手紙を渡してください」
「かしこまりました」
そうしてあたしは手紙を渡す。
もともとプレロマによそ者はそう居ないし、まして今日ここに泊まるのはあたし達くらいだろう。
まず間違えて他のギルドの人に渡しちゃったりはしないはず。
「カエラ、お待たせ!」
「あ、来た来た!ほら、早く行こう!」
思いがけない久しぶりの二人でのお出かけに、あたしは弾む心を抑えきれない。
彼の手をとって走り出したあたしの頭からは手紙のことはきれいに消え去っていた。
そう、このときのあたしは知らない。
この手紙が、後にあたしの頭を悩ませる厄介事の種になろうとは。
(ここから姉御の日記)
……ふう。
ちょっと早いが、たまには早風呂もいいものだ。
宿屋から少し離れたところにある公衆浴場はよくいえば清潔的、悪く言えば機械的な印象だった。
とはいえリラックスして汗を流すには申し分ないし、なかなか面白かった。
夕食までもう少し、何をしようか。
そんなことを考えながらフロントを通りかかったとき、私はふと呼び止められた。
「すいません、お客様宛てと思われる手紙を預かっているのですがお心当たりはありませんか」
私に手紙?
私は首をひねる。
それに合わせて、濡れた髪をまとめたかんざしがチリンと鳴った。
「これを預けたのはどんな奴だった?」
「そうですね。黄色い髪を上にあげた、やや日に焼けたペタンコのお客様でした」
……カエラか。
「なるほど、確かに私宛のようだ。ありがとう助かったよ」
「いえ。では、確かにお渡ししました」
その手紙を受け取り、私は部屋に戻る。
カエラの奴、わざわざ手紙で何の用だ?言いたいことがあるなら直接言えばいいのに……
どれ。
ふむふむ。
ふむ。
ふむふ……
…………………
「な、ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?!?!????」
(続く?)
最終更新:2013年05月04日 23:04