#center(){ **我が藩国の移動機関 ~ナニワアームズ商藩国~ /*/ } ご覧の通り、ナニワが位置するのは共和国でも西の辺境地域で、辺り一面が見渡す限りの砂漠に囲まれています。 細く途切れがちに続く隊商路。そこを行くラクダや乗用怪獣を引いた隊商が目指すのは砂漠の只中にぽつんとあるオアシスと、それに寄り添うように立ち並ぶ商人宿です。 ようこそ。ナニワアームズ商藩国へ。 え? このみすぼらしい宿場町とオアシスが国の全てなのか、ですか。 いえいえ、もちろん違います。 ほら、緩くカーブした道の先、オアシスの上に橋が架かっていて、中程に小さな建物が建っていますよね。 あれが本当の入国管理所にして地下への入り口、その名もアバラーヤです。 …見た目と名前についてはコメントいただかなくても結構です。 大切なのは中身ですから。さあ、行きましょう。 無事入国審査を通りましたね。といってもよほどのことがなければ入国を断れることはありませんが。人との交わりにこそ商機があり、とはナニワのことわざの一つです。お客様は神様、とも言いますね。 ではこちらのエレベーターへどうぞ。 はい、避難経路の一部としてエレベーターは大型の物が複数機備えられています。 まずは大深度地下第一層、居住区へ参ります。 この地下に広がる全五層の大空洞が本当のナニワなんですよ。 そもそも砂漠を行くキャラバン隊だったナニワ人の祖先がこの地下大空洞とそこからわき出る水を見付けたのがナニワ建国の始まりでした。 当時はただぽっかりと空いた空間だったようですが、今では人の手が入って地下とは思えないほど快適な空間になっていますよ。 …ついたようですね。 あらためて、ようこそ。地下千メートルのジオフロント、ナニワアームズ商藩国 第一層居住区画へ。 ナニワには他に第二層から第五層まで用途に応じて分けられた階層がありますが、そちらについてはまた後ほど。まずは市街地をご案内しましょう。 あら、路面電車が気になりますか。今は丁度夕方の帰宅時間ですね。 バッテリー式の路面電車はナニワ国民の大切な足です。 はい。地下にある国なので燃料を使用する車は存在しません。空調は作動していますが煙が籠もったりすると困りますから。 あの路面電車にも実はちょっとしたヒミツがあるんですよ。 丁度発車時間も近いですし、駅に行ってみましょうか。 改札に、プラットホーム、操車場。 軍事物資の積み降ろしをしたりもするので区画が広めに取られていますけれど、何の変哲もない駅ですよね。 でも乗ってみればきっと驚きますよ。 さあ、路面電車が来ました。行きましょう。 のどかですね。こうして車窓から夕方のナニワの商店街を眺めるのも、良いものです。 夕日は太陽灯で再現しています。その他にも雲や空はホログラフ投影機、雨はスプリンクラーを使っています。 やっぱり地下にずっといると地上が恋しくなるので防災設備も兼ねてこのような機構が採用されているんですよ。 あ、見えてきました。 先程降りてきたエレベーターの出口、わたし達はシャフトと呼んでいます。 シャフトにぽっかりトンネルが通ってますね。そこがとりあえずの目的地です。 シャフトの中に入りました。中に入ってみると意外に広いでしょう。 ここで停車してどうするか、ですか。 そろそろですね。…このまま下へ参ります。 やっぱり驚きましたか。 まあ、電車ごとリフトに乗せて運んでしまえ、というのはいかにも乱暴に見えますけれども。 当初はトンネルの内側に敷いたレールを螺旋状に走らせる構想もあったようですけど、ほら、一方向に旋回すると乗り物酔いしやすそうですよね。 ということでそちらは折り返し式の地下鉄ナニワ本線という名称で空洞の両端に設けられる事になりました。 この地下鉄ナニワ縦坑線はもともとは大空洞拡張整備工事時代に大型の工事機械を運んでいた垂直移動用のリフトと、大空洞内で資材の運搬などに使っていたトロッコを一緒に使えないか、という発想から始まったそうです。 この辺は合理を好むナニワ商売人らしい発想ですね。勿論このコンセプトは今でも現役で、貨客車両の他に大空洞内の整備機械や、自家用車両、I=Dなんかもそのまま素早く搬送できます。 あ、ほら、下から上がってくるリフトが見えますよ。 体感はあまりないですが、なにぶん上下四千メートルありますのでリフトは結構なスピードで移動しています。 すれ違うと電車が揺れてちょっと怖いですね。 緊急時はこの複数のリフトを同時に使って更に巨大な貨物を搬送することも出来ますよ。 はい、こちらが地下第二層、生産区画です。 主に地底湖で獲れる水棲怪獣を食用に加工する工場やそれを備蓄する倉庫があります。 この電車は養殖プラントを兼ねた水族館に停まりますよ。 …お疲れ様でした。こちらがナニワの誇る水資源、地底湖です。 どうですか、特大アクリルガラス越しに湖底探検している気分は。 この莫大な地下水の発見が、今のナニワの基礎となっていることは間違いありません。 はい。砂漠の熱砂に喘いでいた当時の人にとっては黒いダイヤと呼ばれる石油より貴重に思えたでしょうね。 あ、水棲怪獣を獲る作業艇が出ましたよ。今日も大漁だと良いですね。 最近はこちらの水族館は穴場的な観光スポットとして注目されていますが、第一層では地底湖の湖面がご覧になれます。 ええ。地底湖の水からゆらゆら天井に反射して地下ならではの美しい光景です。 …いえいえ。ナニワの良さを少しでも知って貰えれば嬉しいです。 居住区には人気の怪獣闘技場や名物のドリルパークもありますし、もっと深い階層では野生の怪獣観察も出来ますよ。 はい。ナニワにはもっと魅力的な面がいっぱいあります。 せびゆっくりごらんくださいね。 #center(){ /*/ } &bold(){登場した乗り物} ラクダ:今も昔も砂漠の民の友。最近では大人しい性質の二足歩行乗用怪獣も同様に使われる。 エレベーター:上下移動が多いお国柄、静音性、速度、運搬重量に優れた物が多くある。 車両:地下空間を利用した国なので排気ガスは厳重に管理されている。そのため一般には電車の利用が広く普及しており、車は軍用や緊急車両等が主で極少ない。 そもそも国土が小さいので大抵は徒歩で用が足りるのである。 いずれもバッテリー搭載型であり、給電はバッテリーステーションでバッテリーごと交換するのが一般的。 船舶:ナニワのシンボル・地底湖は二層に渡って存在している水資源、水産物の宝庫でもある。 湖底はかなり深いところにあるため通常の船舶の他に水深の深いところで作業できる作業艇も使われている。 水族館では養殖されている水棲怪獣や進化から取り残された古代魚達を鑑賞できる。 ドリルパーク:ドリルコースターやドリルゴーランドといったアトラクション用途の乗り物が充実。 I=D:主に第三層以下で運用され、あまり一般人の目に触れることはない。 一見のほほんとしたナニワだが、最下層の未探索域や軍事区画近くまで進出してくる地底怪獣との戦いなど意外に実戦の機会は多い。 ちなみに砂漠各所に通じる秘密の地下通路がシャフトの周囲に蟻の巣のように張り巡らされており、緊急時には避難や部隊の展開などに用いられる。その際の移動手段はやはり徒歩が多い。 I=Dも歩いて移動するのだ。 #image(0407-00.jpg,center) #center(){【仮置き。 もう暫しお待ち下さい。】} (文章: 久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国) (絵: 乃亜Ⅰ型@ナニワアームズ商藩国)