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Zに繋がる物語/サティスファクション - (2010/12/21 (火) 11:42:20) のソース
*Zに繋がる物語/サティスファクション ◆7pf62HiyTE 【3】 Geass デルタの最強の技、ルシファーズハンマーは本来対オルフェノク用のものだ。 オルフェノクより遙かに脆弱でなおかつ何の力もない一般人がその直撃を受ければどうなるかは語るまでもない。 ルシファーズハンマーによって赤き炎をあげ瞬時に灰化し散華したはやての死体から視線を逸らしたデルタはジェットスライガーに背を預ける。 「ごめんね……折角呼んであげたのに出番を与えてあげなくてね……」 そう言ってジェットスライガーに謝る。仇討ちを果たした堕天使の心境は―― 「『満足でけへん』……ふっ……満足なんて出来るわけなんてないわよ……」 先程殺したはやて同様、満たされるわけなど無かった。残るのは空虚でしかない。 同時に身体には人を殺したという実感が恐ろしい程に染み着いている。 堕天使ははやてを殺す前に3人殺している。しかしモンスターに喰わせる、もしくは暴走状態であった為、強い実感があったかと言えばそういうわけではない。 「これが人殺しの感覚か……嫌な感覚ね……」 今更自分にそれを口にする資格は無いとはわかっているがそれでも口にしてしまう。 そんな中、急激に力が抜けていくのを感じた―― 「そっか……私、死ぬのね……」 思い出して欲しい、スバルと戦っていた時は文字通り全力全開、出せる全ての力で戦ってきた。 だが、はやてと再会してからはあまり感情的にはならず悠長に長々と話をしてから彼女にトドメを刺した。 はやての策に乗ったフリをしていたのか? 殆ど無力になったはやてが哀れに感じたから? 復讐を踏みとどまろうと考えたからか? それが全く無かったとは言えない。最初からはやてがこなたを殺した事を悔やみ心から謝罪してくれれば違う可能性も―― だが、そんなのは幻想に過ぎなかった。そもそも謝罪するつもりだったのならば森を消し飛ばしなのはを殺そうとするわけなんてないのだから―― それ以前にあの女が最初に口にしたのは本を破壊された事の恨み言だった。つまり、その時点ではやては謝罪をする気は0だったというわけだ。 そう、はやての謝罪がこの場をやり過ごす為の方便である事は最初から解っていた事なのだ。 だがそれで良かった。はやてが全く後悔してくれなかったお陰で後腐れ無く彼女を殺す事が出来たのだから―― どちらにしてもはやてを見逃すつもりなんて無かったのだ―― 話を戻そう。デルタが悠長に話をしていた本当の理由―― そう、既にデルタは戦える状態では無かったからだ。 スバルとの戦いで前にはやてによって傷付けられた両手足及び腹部の傷が開いたのだ。治療したとはいえ完全ではなかった為、無茶をすればぶり返すのは当然の話だ。 スバルの攻撃そのものは非殺傷でも、地面などに激突した際に受ける衝撃までは非殺傷ではない、その衝撃は確実に彼女を蝕んでいった。 スーツの中ではずっと血が流れ続けていたというわけだ。そんな状態で戦い続ければどうなるかなど誰にだってわかる。 つまり―― とっくの昔に彼女の肉体は限界を超えていたのだ―― 彼女の脳裏にあるマンガのある話が浮かび上がる。 とあるギャングのリーダーがボスに致命傷を負わされたがそれでも仲間の力と強い精神力だけで肉体は死してもずっと活動をし続けたという話だ。 今の自分はさながらそのリーダーの状態に似ていたのかも知れない。 彼女は肉体の限界を超えても尚、こなたを殺したはやてを殺したいという自身の想い……我が儘を叶える為、想いだけで戦い続けた。 緑の怪物の言葉はまさしく正しかった。僅かに残った想いだけでデルタの力を最大限に引き出しスバルを打ち倒しはやての所へ向かえたのだ。 だが、それで精一杯。はやてと対峙した時には既に戦える状態ではなくなっていた。 ジェットスライガーを使えばまだ可能性はあったが、そもそもそのパワーに耐えきれる確証すら無かった。 しかし幸運にもはやて自身がなのはとの戦いで重症を負い殆ど無力化した状態になっていた。 なのははそんなつもりでやったつもりは無かったのだろうが、その事について2つ感謝した。 1つは今の状態でも殺せるくらい弱体化させた事、もう1つが殺さないでおいてくれた事だ。 デルタが望むのは戦いではない。復讐の為の殺害でしかないのだ、少々拍子抜けだがそれで十分だ。 ゆっくりと話をしていく内に少しずつ熱を取り戻し……そして最期の一撃を叩き込んだのだ。 撃つだけで殺せたかもしれない。だが、それでは意味がなかった。 呆気なく殺されたこなたの無念を果たす為に彼女には十分過ぎる程苦しみを与えたかったのだ。そうでなければあまりにもこなたが不憫だと思ったのだ。 勿論、誰かが来るとなればすぐにでも射殺するつもりだった。拘りすぎて仕留めるチャンスを逃すという愚行を犯すつもりはない。 「ま、すぐ殺してもじっくり殺しても同じ事だけど……」 そして、はやてを殺した瞬間。彼女を支えていた最期の想いは消え去った。彼女の命を支えていたのが想いであるならばそれが消えれば死へと至るだけなのはおわかりだろう。 勿論、なのは辺りが助けに来ればまだ生きられる可能性はある。 だが、今更生きる事に固着するつもりはない。 厳密に言えばまだまだ生きていたいという想いが無いわけではない。だが足りないのだ、傷付きすぎた身体を生かす為には今内にある想いだけでは足りないのだ。 それ以前に、どういういきさつにしろ天道やなのは達を裏切ったのだ、それが許されるわけがない。 それでもなのはは自分を許すだろう。だが自分自身がそれを許せないのだ。 自分がこなたを殺されて許されない様に、きっとなのはもはやてを殺されて許せるわけなどないのだから。 自分にとっては仇であっても、なのはにとっては友人である事に変わりはないのだから。 「本当にバカよね……なのはもスバルも……こんな愚か者をそれでも許すんだから……」 もしかしたら、こなたを守ってという約束を守れなかった事を悔やんでいるかもしれない。なのははそれぐらい大馬鹿者なのだろう。 「大丈夫よ……そんな事で恨んだりなんかしないから……だって……元々悪いのは私なんだから……」 気になるのは生き残った仲間達だ。 スバルはアジトに放り込んだから恐らくは無事、 なのはに関してもはやての言動から大丈夫だろう。 行方不明の天道だが何となく無事だろう。何となくだがそんな気がした。 ヴィヴィオに関しては正直心配だ。ちゃんと誰かに保護されていれば良いが―― あと1人――眼鏡の少年、もしかしたら男の娘か何かがいた様な気がしたが大丈夫なのだろうか? 確か聞いた話ではまだ3人程敵もしくは不穏な人物がいるらしい。そんな連中を相手に脱出なんて出来るのだろうか? 「今更そんな資格も無いわね……結局の所、私がぶち壊した事に変わりは無いんだから……」 そう、自分の我が儘を通す為、スバルに重傷を負わせはやてを殺した自分が言えた話ではない。 2人分の力を奪ってしまったわけなのだから。 そんな中、彼女の傍に何かが転送されてきた。 「そういえばボーナス支給品が出るんだっけ……でも、もう自分には必要ないわね……ま、ジェットスライガーもそれもなのは達が有効利用してくれれば……」 そう言いながら、意識を手放―― 「あれ……? そういえば……私が死んだら誰にボーナスが出るのかしら……?」 それはほんのささやかな疑問。そう、自分が死んだ時のボーナスは誰に支給されるかだ。 その疑問に気付いた時、消えかけていた命の炎が再び僅かに燃え上がるのを感じた。 「そうだわ……まだやらなきゃいけない事があったわ……」 そう口にしボーナス支給品を拾いジェットスライガーの操縦席に座る。 「こんな使い方望まないと思うけど……付き合ってくれるわね……」 そう言って、ジェットスライガーに搭載されている武器弾薬を一斉に発射し始めた。着弾地点は荒れ果てた大地、誰に当てるわけでもない只の無駄撃ちだ。 「ぐっ……」 元々ジェットスライガーはオルフェノクが変身する仮面ライダーの為に作られた超絶マシンだ。それゆえに身体にかかる衝撃は相当な者。 同時に今変身しているのは衰弱した死にかけの人間だ、何時衝撃に耐えきれず事切れてもおかしくはない。 「まだよ……もう少しだけでいいから……」 それでもジェットスライガーに搭載されているミサイルを撃ち尽くそうとした。 デルタは考えた。自分の死後、これは生き残った参加者が使うのだろうと。 だが、これはどう考えても過ぎた力だ。なのは達が手にした所で持て余すものだ。恐らく彼女達は搭載されている武器を使おうとはしない。 かといって危険人物に渡すわけにもいかない。その時点でなのは達が危機に瀕してしまう。 その為、なのは達でも十分に扱え、危険人物に渡してもその脅威を減らす為に敢えて弾薬を消耗させていたのだ。 そして1発だけ残した上でミサイルを出し尽くした後、デルタはそのままアジトへと走り出した。 ジェットスライガーの最高時速は時速1300km、分速にして21km強だ。当然、9km四方のこのフィールドなど1分も経たずに走り抜けられる。 だがそこまでのオーバースペックなど出させるわけもない。少なくてもこの場に置いては大幅に制限がかけられている。 それでも並のバイクを遙かに凌駕するスペックを発揮する事に変わりはない。数キロ程度など数分で駆け抜けられる事に違いはない。 しかし前述のミサイル同様操縦者に大きな負荷がかかる事は間違いない。普通の人間ではその性能を引き出す事など不可能だ。 同時に今にも死にそうな人間が耐えられる道理もない。故にかかる負荷により、デルタに残った僅かな生命力は急激に消耗していった。 「ぐっ……」 強い衝撃が身体を襲う。スーツ越しであっても傷付いた身体には堪えるものであった。 気を抜けば一瞬で意識を失うだろう。それは即ち死を意味する。 最早死ぬ事だけは確定事項、数分早いか遅いかの違いしかない。 「まだよ……今死んだら……きっとアイツは立ち直れなくなる……そうしたら……それこそ誰も救えなくなる……だから……全てが終わるまで……この身体を……保たせて……」 今更生き延びたいというわけではない。しかし、今死んだら困るのだ。自分の死が彼女に影響を与えてしまう。 それだけは避けねばならない。生きている間散々迷惑をかけておいて死んでもなお迷惑をかける事など耐えられない。 そんな中、彼女の脳裏にこの殺し合いに連れて来られてから起こった事が浮かび上がってくる。 パニックに陥りエリオ・モンディアルを撃ってしまいそのままモンスターに喰わせてしまった事、 助けてくれたなのはの想いを裏切りデルタに呑まれた事、 そのまま暴れ続けシグナムを殺した事、 保護してくれた筈のLを裏切り逃げ出した事、 万丈目準に危険なモンスターを押しつけられた事、 そのモンスターに喰われそうになったがメビウスが助けてくれた事、 バクラと共に色々話したりホテルで休んだ事、 デュエルアカデミアで片目の少女を殺しスバルを襲った事、 レストランで参加者を殺そうとしたが浅倉威達にしてやられた事、 奇妙な空間に引きずり込まれ妹である柊つかさを浅倉に惨殺された事、 ホテルで緑の怪物に破れた事、 はやてに自身の罪を突き付けられ瀕死の重傷を負わされた事、 そんな自分をなのは達が助けてくれた事、 はやてによってこなたを惨殺された事、 仇討ちをする自分を止める様とするスバルと戦った事、 そしてそのはやてを仕留め遂に仇討ちを果たした事、 「本当に色々あったわね……みんな……本当にごめんね……」 それはある意味無限に続くと思われた地獄と言っても良い。 その中でデルタは多くの迷惑をかけた事を改めて謝罪する―― 「万丈目も死にたくなかっただけなのよね……いいわ、向こうで一発殴るから……それで許してあげる……」 死を前にして、万丈目が自分にした凶行を遂に許し―― 「バクラ……馬鹿な宿主で本当にごめんね……私以外の人に出会えたらもっと違った結末もあったのに……」 離れ離れになって消息の掴めないバクラに想いを馳せた―― あの攻撃で吹き飛ばされて放置されたままなのか、スバル達によって破壊されたかそれはわからない―― だがどちらにしてももうバクラにはどうする事も出来ないだろう。 バクラは悪ではあったが、強い意志と目的を持っていた。その存在に利用されてはいたが十分に助けられた事は事実―― が、結局自分はバクラの存在を都合良く利用しただけだった。 それが今更ながらにすまなく感じたのだ―― これまでの事を思い返していく内に終焉が近付いているのを感じた。死の間際に見る走馬燈の一種なのだろう―― 「不公平な話もあったものよね……」 こなたやつかさはそういうのすら見ない内に呆気なく殺されたというのに自分にはそれを見せる。神の悪戯だとするならばなんと残酷な話だろう。 そうしていく内に脳裏には元の世界でこなた達と話した様々なマンガやアニメなどの内容が思い浮かんでくる―― 神社の家に生まれた少女が戦国時代にタイムスリップして妖怪と人間の間に産まれた少年と共に旅をする話―― 世界や人々を守ろうとした戦士が長き戦いの果てに友となった人の心を得た怪物と人々両方を救う為ある決断をする話―― カードゲームが大好きな少年がカードゲームの学校で様々な経験や決闘を行い成長する話―― そう、他人事の様な作り話ではあったが自分もそれが好きだったのだ―― 何故今頃になって思い出したのか――きっと本当に大事な事は忘れた頃に気付くものなのだろう―― 「そういえば……あのアニメのアイツは幸せになれたのかしら……」 何のアニメかまでは思い出せない。確か内容はこんな話だったはずだ。 その少年はある国の王子だったが妹と共に国を追われた、そして、妹の為に世界に君臨する祖国を倒そうとする話だ。 だが、その先に待つのは多くの犠牲と親友との対立だった―― 普通に考えればその少年が救われる事などまず有り得ない。少年の妹が殺戮を望むわけなどないのだから―― こなた辺りに聞けばその答えもわかるかもしれない――だが、それは最早叶わない話だ。 「きっと幸せになれる筈よね……現実とフィクションは違うんだから……フィクションの中でぐらい救われたってバチはあたらないわよ……」 そうして考えていく内にようやくアジトの入口まで辿り着いた。 「後は……」 デルタは変身を解除し、僅かに残った力を振り絞り自身に力を与えていたベルト一式をジェットスライガーの前に放り投げた。 そしてすぐさま操縦席を操作し最後のミサイルを発射しベルト一式に命中させそれを破壊した。 もう二度とデルタに変身する者が現れない様に―― 傷口からは血が流れきり、身体もとっくの昔に冷え切り、身体の感覚など最早消え失せている。もうまともに物も見えない状況だ。 間違いない、あと数十秒で自分は死ぬと―― 「これで……これで……最期よ……」 それでも少女は右手を動かし血を使って操縦席に何かを書き残そうとする。 それは最初に自分の死体を見つけるであろうスバルへの―― もし、自分が死んだ場合。自分の死によって発生したボーナスは誰の元に向かうのだろうか? 最後にはやてと対峙した際、はやては自分に全く攻撃を仕掛けられなかった。故に彼女の元にボーナスが転送される事はない。 では誰の元に転送されるのか? 自分に致命傷を与えた人物、つまりつい先程まで戦っていたスバルの元に転送される事になる。 ボーナスが転送される事自体は問題ない。問題なのはスバルに自分を殺したという負い目を感じさせることなのだ。 一歩間違えればその罪の意識から戦えなくなる可能性だって否定出来ない。それが少女には耐えられなかったのだ。 自身の死は自身の我が儘が引き起こした結果、それを付き合わされたスバルが背負う必要なんてないのだ。 本当は面と向かって話すべきだったのかもしれない。だが、そこまで身体が保たないのだ。 故にすぐにスバルが見つけてくれる場所へ移動し彼女にメッセージを遺すのだ。 「あんたが殺したのは馬鹿な復讐鬼デルタ……柊ががみっていう女の子じゃない……だから……何も気に病む事なんてないのよ…… でもきっとあんたがそれをずっと引きずる……それ自体は嬉しいけど……それじゃダメなのよ…… まだヴィヴィオや男の娘……ユーノだったからしら……そいつもいるのよ…… なのはや天道さんがどうなっているかわからないんだから……あんたしかいないのよ…… 今更言えた話じゃないけど……アンタがみんなを守らなきゃいけないの…… それでも私の事を……気にするっていうなら……私の事を気にしなくなる様に…… 呪い……そう、ギアスをかけてあげる……だから……私の事は……」 そう言いながら4文字の血文字を刻み込んだ。そして全てをやり遂げた少女は操縦席に背をもたれ込む。 「はぁ……はぁ……終わった……」 もう何も見えないし聞こえない。意識が途切れるのを待つだけだ。 今の自分はどんな顔をしているのだろうか? あの頃の様に笑っているのだろうか? それを確かめる事はもう出来ない。 それでも肌をなでる風が優しく感じた。 ああ、この世界から拒絶されたと思っていたのに許してくれるのか―― 元の自分に戻れた事を祝福してくれるのか―― それがとても嬉しく感じた―― 「ありがとう……これで……満足……できた……わ……」 &color(red){【柊かがみ@なの☆すた 死亡確認】} 【1】 Nexus 「『ワスレロ』……かがみさんは解っていたんだ……あたしがかがみさんを殺した事を悔やむって……」 操縦席に遺された血文字は『ワ』、『ス』、『レ』、『ロ』。 「馬鹿ですよかがみさん……こんなメッセージ遺すのに残った力を使うなんて……」 はやてと戦った場所は少し離れた場所だ。はやてを殺してここまで戻りメッセージを遺すのに無駄な力を使う位ならば別の方法があった筈なのだ。 確かにはやてを殺して得たと思われるボーナス支給品は回復には使えない為、彼女の手元には回復道具はない。それでも安静にしていればまだ可能性はあった筈だ。 何故、彼女は残った命を無駄に使ったのだろうか? いや、そんな事は分かり切っている。自分がかがみを殺した事を悔やむ事を予想した上での行動だ。 『自分の事は忘れろ、気にするな』というメッセージを遺す事で、自分の事よりも生き残っている他の皆を助けろという事なのだろう。 こなたに聞いた通り、本当に他人に優しい人だと思う―― 「でも……でも……あたしの助けたい人の中にはかがみさんも入っていたんですよ……それなのに……」 それでも、スバルがかがみを助けたかった事、そして助けられなかった事実に変わりはない。スバルの中には強い悔しさが残る。 だが何時までも後悔したまま俯いてはいられない。ここで俯いたままではかがみが命を賭して遺したメッセージを無駄にしてしまうからだ。 それだけは決して許されない。 「かがみさん……やっぱり貴方の最期のお願いは聞けません……かがみさんを死なせてしまった事は一生忘れられないと思います……」 かがみの死体をアジトの奥へと運ぶ。アジトの中ならばもう誰も手を出したりしないだろう。 本音を言えばこなたの死体も一緒に置いておきたかったが彼女の死体を探す時間も運ぶ時間もない。 「でも……その想いは無駄にはしませんから……」 かがみは生き残った者達を助けて欲しいと願っていた。それには応えなければならない、それはスバルの望みでもあるのだから。 はやてとなのはの戦いは恐らく両方疲弊させきった泥仕合ともいうべきものだったと推測される。 故にかがみははやてを殆ど難なく仕留める事が出来たと考えて良い。 恐らくなのははその場に駆けつけてはいない。疲弊しきって駆けつけられる状態ではなかった。もしくは既に激闘で―― どちらにせよなのはは殆ど戦える状態ではない可能性が高い。 天道の行方がわからない今、戦えるのはユーノ・スクライアと自分だけだ。しかしユーノは攻撃は不得手であり、彼にはヴィヴィオを守る仕事がある。 となれば自分が戦わなくてはならない。残った力で生き残った仲間達を脱出させなければならない。 そう、スバル1人で―― いや―― 『大丈夫よ、スバル――』 「ギン姉……?」 リボルバーナックルからギンガの声が、 『あんたならやれるわよ――』 「ティア……?」 破損したクロスミラージュからティアナ・ランスターの声が、 『お前は1人じゃない――』 「始さん……」 風で飛んだせいかジェットスライガーの傍に落ちていた2枚のカードから相川始の声が、 『お前には俺達が付いている――』 「ルルーシュ……」 指輪からルルーシュ・ランペルージの声が、 そして―― 『だから、あんただったら守れるはずよ――』 「かがみさん……」 ジェットスライガーからかがみの声が聞こえた気がした―― スバルにはこんなに自分を信じてくれる仲間がいるのだ。この場にいなくても彼等は自分に力を与えてくれる―― 彼等の想いがある限り決して諦めたりはしない―― カードを拾い胸に納め、ジェットスライガーに乗り込みそれを起動する。 仮面ライダークラスでなければ扱いきれないがそれと互角の戦いを繰り広げたスバルなら移動程度には使いこなせる。 目的は仲間との合流だ。だが、天道の行方がわからない以上駅で待つユーノ達との合流を優先した方が良いだろう。 少し走った所でヴァッシュの遺体を見つけた。状況から考えてはやてが殺したのだろう。ヴァッシュを弔いたかったが今は時間がない。 「ヴァッシュさんの想いも私が背負いますから――」 そう言って走り抜けた。 吹き付ける風は冷たい。それはこの先が決して平坦な道ではない事を示しているのだろう。 だが決して負けるわけにはいかない。 スバルは1人ではない。彼女の中には出会い去っていった者達と紡いでいったもの、想いと絆の力がある。 「絶対に……こんな哀しい戦いを終わらせます……こんな結末じゃ満足なんて出来ませんから――」 その想いを胸にスバルは駆ける―― 【2日目 早朝】 【現在地 C-9】 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】疲労(中)、魔力消費(中)、全身ダメージ(中)、悲しみとそれ以上の決意、バリアジャケット展開中 【装備】リボルバーナックル(左手用、6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レヴァンティン(0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、治療の神 ディアン・ケト@リリカル遊戯王GX、 ラウズカード(ジョーカー、ハートの2)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ジェットスライガー(ミサイル残弾数0)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ボーナス支給品(確認済、回復アイテムではない) 【道具】なし 【思考】 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。 1.駅でユーノ達と合流する。 【備考】 ※金居を警戒しています。 ※アンジールが味方かどうか判断しかねています。 【0】 Satisfaction 「……ちゃん、お姉ちゃん……」 その声と共に少女は目を覚ました。 「あれ……ここは? 私……死んだはずじゃ……って■■■!」 目の前には少女の妹がいた。 「あれ……どういうこと?」 「あーやっぱり■■■んも死んじゃったかー」 「……その声は……■■■!?」 そしてその近くには少女の友人も変わらずそこにいた。 「守れた時は大丈夫かなーって思っていたのにやっぱり現実はゲームとは違うねー」 「そうだね、■■ちゃん」 目の前の2人は殺し合いの場所にいた事も忘れて何時もの様に楽しそうに話している。いや、それ以前に―― 「……ねぇ……まだ私の事友達とか姉って言ってくれるの?」 「え?」 「だって、私沢山人殺したのよ、それにアンタ達だって殺そうと……」 「当然だよお姉ちゃん、だってお姉ちゃんに何があったってお姉ちゃんである事に変わりないもの」 「そうだよ■■■ん、どんな事があったって■■■んは友達だよ」 2人は愚かな自分をそれでも姉や友達だって言ってくれた。これが幻でも何でもそれがたまらなく嬉しく感じた。 「それにそれを言うなら私も十代君やフェイトちゃんを殺しちゃったし……お互い様だよ」 「そうそう、あたしも最初に出会った赤いコート着た人の頭にナイフ刺しちゃったし」 「(そっか……2人も辛い思いして戦って来たんだ……)」 「それとも、もしかして■■■の姉とかあたしの友達とかもうイヤ?」 「……イヤなわけなんてないわよ、ずっと■■■の姉だし■■■の友達よ!」 「もしかしてお姉ちゃん泣いてる?」 「泣いてなんかないわよ!」 「もー■■■んは本当にツンデレだねー♪」 こうやって馬鹿馬鹿しい話をしていく内に内心で言葉に出来ない感情が湧き上がって来るのを感じた。 「……ねぇ、万丈目もこっちに来ているの?」 「うん、あっちで十代君と決闘していたよ」 「もしかして■■■んの彼氏とか?」 「いや、一発ぶん殴りたいと思っただけよ……」 そう言いながら歩き出す。 「そうだ……ねぇねぇ、1つ聞いて良い?」 「何よ?」 「本当の所、どう思っているの? 満足出来た?」 「は? それは……」 そう、確かに自分はあの時満たされた。だが…… 「満足なんて……出来るわけないわよ……」 死んで満足なんて所詮は幻想だ。理想を言えばみんなで生きて戻りたかった。それが叶わないとしても思わずにはいられない。 「そうだね……だから…… 私達の満足はこれからだー!」 「おー!」 「って、何処の打ち切りエンドよ!?」 【リボルバーナックル(左手用)@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 スバル・ナカジマに支給されたボーナス支給品。 ギンガが左手に装着している「非人格式・拳装着型アームドデバイス」(リボルバー式カートリッジシステム付き、装弾数は6発)。 それなりに重量がある。 【全体の備考】 ※C-8にはやて(StS)の首輪とジェットスライガーのミサイルで開けられた穴があります。 ※デルタギア一式は破壊されました。 ※スカリエッティのアジト内部にかがみの死体があります。 |Back:[[Zに繋がる物語/白銀の堕天使]]|時系列順で読む|Next:[[Masquerade]]| |~|投下順で読む|Next:[[Masquerade]]| |~|スバル・ナカジマ|Next:[[]]| |~|&color(red){柊かがみ}|&color(red){GAME OVER}| |~|&color(red){八神はやて(StS)}|&color(red){GAME OVER}| ----