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  • 絶望の罪人~夜天の主~

リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル

絶望の罪人~夜天の主~

最終更新:2008年12月06日 19:19

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だれでも歓迎! 編集

絶望の罪人~夜天の主~ ◆jiPkKgmerY




眩い光がその戦いを照らしていた。
片や巨大な十字架をまるで小槌のように易々と振るう、赤コートの男。
片や十字架以上の長さを誇る剣を自分の手足の如く操る、銀髪の男。
市街地の中央。
平常な世界であれば人々が賑わすその道にて二人の人外が演舞を続けていた。
傍目にも相当な重量だと分かる十字架が常人には知覚不能な速さで振るわれる。
常人だったら振り上げる事すら叶わない長剣が竹刀と見違えるかのように軽々と振るわれる。
互いに互いを高めあうかのようにスピードを増していく戦闘。

―――果たしてこれは人間同士の戦いなのか?

八神はやてはその争乱の百メートル程離れたビルの上、茫然と二人の舞を見つめ、疑問を浮かべた。
魔導師同士の高速戦に慣れたはやてでさえも目を見張る程、その戦闘は異常である。
手元に愛用のデバイスがあったとしてもこの戦いに介入できる気がしない。

あの時セフィロスは、自分をビルの屋上から下ろすことすら許さず、たった一人で家から現れた赤服の男に立ち向かっていった。
確かに接近戦を苦手とする自分ではあの戦闘に付いていく事は無理だろう。おそらく数分と持たなかった筈だ。
セフィロスさんは戦う前――赤服の男を見たと同時に、その事実に気付いていたのかもしれない。
あの男は異常だ。端から見てるだけでも分かる。
何度となくセフィロスさんに斬られているにも関わらず倒れない、膝をつきさえもしない化け物。
セフィロスさんでなくては対抗できない。
自分の無力さが悔しい。自分に力があればこの戦闘を止められるのに。セフィロスさんも、相手の男も傷つく事なく場を収められるのに。

「無事に帰ってきて、セフィロスさん……」

爪が掌に食い込む。
歯が唇に食い込む。
少女は身体を震わせその戦闘を傍観し続ける。
その左手に握られた剣が日光に照らされる。
長い長い戦いはまだ始まったばかり――。



■



常人ならば知覚不能なまでの速度で迫る十字の鉄槌を、剣士は体を後方に反らし、易々と回避した。
それどころかお返しとばかりに超長剣を一閃。吸血鬼を覆う真紅のコートからそれ以上に濃密な真紅が噴き出す―――がそれも一瞬。
刀が身体を通過し終える時には既に止まっていた。
有り得ない現象に剣士は小さく舌打ちをし、大きく二歩、後方に跳ぶ。
数瞬後、剣士の立っていた地面に鉛色の十字架が突き刺さる。
十字架を中心としコンクリートに亀裂が走り、陥没。
地面を舗装していた外殻が意味を為さない破片と変わり、周辺に飛び散った。

「いい反応だ、人間(ヒューマン)」

悠々と、まるで遊戯を楽しむ子供のように吸血鬼は笑っていた。
剣士が繰り出す究極ともいえる剣技を前に何度身体を斬りつけられようと、唇は孤を描いたままである。

「黙れ」

剣士はその笑みが不快で仕方がなかった。
まるで殺し合いを殺し合いと思っていない。こいつはただ快楽を貪るためだけに戦闘を行っている。
あいつは自分の全てを――命さえも賭けて殺し合いを止める事を決意した。
おそらくあいつは人が死ぬ度に心を痛める。それが赤の他人であろうと、だ。
だというのにその傍らでは殺し合いを遊戯と取る男もいる。
仲間を助ける為、殺し合いに乗ったシグナムとは違う。
目的を達成する為、殺し合いに乗ろうとした自分とも違う。
愉悦の為の殺戮。快楽の為の殺戮。
不快で仕方がない。

「悪いな……誓いを破らせてもらう」

誰に向けての謝罪か、セフィロスが一つだけ呟いた。
透明感を保っていた目の色が変わる。それは暗い、何処までも暗い空虚な瞳。
ホウ、と感心したようにアーカードが息を飲んだ。
先程までは微塵も感じられかった殺意が溢れ出し、静電気のようにチクチクと皮膚を刺激する。
これ程までに純粋な殺意はアーカードでさえ数える程しか身に覚えがなかった。

「準備運動は終わったか?」
「ああ」
「ならば始まりだな」
「ああ」

数メートルの距離を挟み投げ掛け合う会話。アーカードの唇がこれまで以上の三日月を描いた。

―――たぎる。
―――燃えたぎる。
―――これこそ待ち望んでいたもの。

吸血鬼は狂気の笑みと共に一歩足を動かした。
それと同時に剣士も動く。タン、と地面を蹴り前に進む。
前進の先に待ち構えていたものは十字架での横薙。それを両膝を屈伸、上半身を猫のように丸め避ける。
そして折り畳まった脚、上半身に込められたエネルギーを一気に解放し再び地面を蹴る。
セフィロスの身体が真上に浮き上がり、アーカードの身体に縦一文字の斬り傷が付けられる。
股間から始まり胸板にまで走る傷。普通の人間からすれば即死しても不思議ではない。だが不死王にすれば蚊に刺された程度。
一瞬の怯みすら見せず空中に浮かぶ剣士へ十字架を振り上げ、

「ファイガ」

そのタフネスすら見越した剣士の放った炎撃が身体を焼いた。
アーカードの動きが止まる。セフィロスが地面に着地する。瞬間、セフィロスの持つ正宗がその両腕ごと掻き消えた。
「八刀一閃」――刹那の間に繰り出された八つに及ぶ超速の斬撃が吸血鬼に直撃。
真紅の身体が弾けるように吹き飛び、ビルの一つへと突っ込んだ。


「クククククク…………素晴らしい!」


――しかしそれでも笑いは止む事を知らない。
変わらぬ、いやそれ以上の狂気を滲ませ吸血鬼は立ち上がっていた。
身体中の傷は凄まじい速度で治癒を始めている。理不尽なまでの回復力。
しかしセフィロスは眉一つ動かさず、再度アーカードへの剣を構える。
死なないのならば死ぬまで殺すのみ――――不死という超常的な存在に対する解答としてはあまりに単純。
だがセフィロスは一瞬の迷いも躊躇いもなくそれを選択する。

「惜しいな。制限さえなければ本当の吸血鬼の闘争を見せたいところだ」

ここで初めてアーカードの表情から微笑みが消えた。残念そうに溜め息を吐き、肩を落とす。
拘束具を解放し、この男と全力で戦ってみたい。幾重に現れる使い魔達を相手にどう対処するのか見てみたい。
悪夢とも呼べる光景を前にしても臆する事なく、果敢に突破を仕掛けてくるか、それとも無様に逃げ出すのか。
この剣士(ソルジャー)は不死王の心の臓に杭を打ち込む事が可能なのか。想像が止まらない。
その闘争を脳内に描くだけで血が沸き立つ。

今まで気にも止めていなかった首輪が唐突に鬱陶しく感じた。


「……御託はいい。さっさとかかってこい」


だがアーカードの想いなどセフィロスには知った事ではない。
こいつはこの場で殺す――――それがセフィロスが自分自身に課した任務である。相手の心情などセフィロスにとってはどうでもいい事でしかない。

「ハハッ! そうだな。この一分一秒、刹那に至るまで今は楽しませてもらおう」
「来い」

ヒトを超越した二つの存在は殆ど同時に駆け出した。申し訳程度に開いていた間合いは一瞬で縮まっていく。
セフィロスは鮮やかな銀髪をたなびかせ、アーカードは真紅の外套をたなびかせ、二人は遂に交錯した。

最初に仕掛けた者はセフィロス。
先手必勝とばかりに、白銀の十字架を握る右腕へ狙いを定め神速の抜刀術をお見舞いする。
だが吸血鬼はせせら笑いを浮かべつつ、身を捩り回避。捻れを戻す反動で十字架を振り抜く。
その一撃たるやまさに目にも止まらぬスピード。得物を振り切った体勢のセフィロスには防御など叶わず――――だが回避するには充分過ぎた。
前方の右脚に渾身を込め、地面を踏み抜く。体勢は変わらずその姿だけが真後ろに遠ざかり、十字架は再び空を切った。

(……避けたか)

追撃を一つ一つ丁寧にいなしつつセフィロスは思考する。
内容は先の攻防について。
奴に放った抜刀は渾身の物だった。数分前までは反応すらされていなかったであろう超速の一撃。
だが奴は易々とそれを回避し、反撃を行ってきた。

(攻撃を見せすぎたな……)

あのタフネスに対抗するには仕方がないとはいえ、何回と斬撃を放った。
恐らく無意識の内に、こちらのスピードに目が慣れて始めているのだろう。
先程までのように一方的に攻撃を成功させる事は望めない。
多少の危険は思慮に含むべきか。それとも切り札を切るか――。


殆どを戦闘に費やしている思考回路の片隅でセフィロスは判断に迷っていた。
切り札――漆黒の片翼を発現し、リスクを減らすか。リスクを背負いつつもこの状態で戦闘を続行するか。
確かに片翼を生やせば今以上の速度、威力での攻撃が出来る。だがそれでも相手の特質上、短期決着は望めない。
そしてもし奴が片翼の速度をも学習し、慣れてしまったら?
――――恐らく、勝利への道は消え去る。
今、相手が知らない切り札を持っているこの状態を保つ事こそが、奴に勝つ為の大前提。
奴とて死なない訳ではない筈だ。この殺し合いに参加させられてる以上、死という概念は必ず持っている。
だが奴が死なないのもまた事実。
腕を斬り落としても、首を跳ね飛ばしても、胴体を両断しても、多少の怯みを見せるのみ。
直ぐさま傷を治癒し、その剛力で襲いかかってくる。

片翼以上の切り札もあるにはあるが、あの魔法を行使したら近くに隠れているはやてを巻き込んでしまう。
他の魔法も奴を殺しきるには至らない。自身が有する最強の武器である剣術も、あの治癒力と耐久力の前には大した意味を成さない。
速度も徐々に追随され始めており、時が経てば不利になることは明白。
完全に動きを捉えられる前に奴を殺さなくては敗ける。

この時、セフィロスは改めて感じ取っていた。
目の前にいる化け物がどれだけ強大か。
今の優勢な戦況がどれだけ危うい均衡の上に立っているのか。
アンジールも、戦闘機人も、シグナムも、アレックスも、高町なのはさえも凌駕する圧倒的な戦闘力。
かつて自分を滅ぼした男――――何故だか奴の姿が脳裏に浮かぶ。
あの男と目の前の男に共通点などない。姿形、性格、信念、何もかもが異なっている。
奴は正義を信念に戦い遂には自分を越えた英雄、コイツは悦楽の為に戦闘をする狂った化け物。
正義と悪。
単純に二分化したとしても重なる事はない二人。
なのに重なる。あの英雄とこの怪物の姿が、重なる。

「どうした人間(ヒューマン)! 貴様の速度はそんなものか!」
「黙れ」

愉悦にまみれた叫びと共に振るわれる十字架。
セフィロスはそれを身体を屈めて避け、五月蝿い戯れ言を発するその口を塞ぐように顔面に斬掛かる。
が、アーカードは首を傾げるだけでその一撃を回避。正宗は虚しく空を切った。

(やはり反応速度が上がっているな……)

小さく舌打ちしセフィロスは再度、正宗を構える。
――一撃が当たらないなら連続で斬り込むのみ。
単純だが真理とも言える思考の元、セフィロスは小さく一歩踏み込んだ。

「吹き飛べ」

瞬間、計八回にも及ぶ神速の連撃がアーカードを襲う。
「八刀一閃」。
劣勢に傾き掛けた流れを再び引き戻す為、必殺の剣技をセフィロスは再び使用した。
速さが、威力が、キレが、何もかもが通常の攻撃の遥か上を行く一撃を八回。
その衝撃には不死の王とはいえ耐えきる事は不可。その証拠にアーカードは同様の攻撃を喰らった時、なすすべもなく地を舐めている。
それは今回も同様。瞬きする間もなく一、二、三と斬撃が命中、その身体を後退させる。
四、五、六、七、八――――八撃目は先程回避された顔面を狙い振るわれた。
回避などもってのほか、防御すら叶う事なくアーカードは体中から漆黒の血液を
撒き散らし、後ろへと吹き飛ぶ――――



「ふはあうぇた」



――――聞こえたのは声にならない声であった。
この時、この戦闘に於いて初めてセフィロスの顔に感情が灯る。
それは驚愕。有り得ない、という言葉がセフィロスの心を支配する。
セフィロスに驕りはなかった。あの状況下で自身が信頼する技に頼るのは王道、寧ろ最適の判断ともいえる。
なのに防がれた。最後の八撃目が止められた。

――アーカードに止められた最後の一撃は、右側頭部から顔面を真横に斬り裂く横一文字であった。
連撃により体勢を崩した状態から、頭部へ最速の一撃。
セフィロスの狙い通り刃は確かにアーカードの右頬から進入し、顔面を両断せんと口内、後頭部を通過し――――そしてちょうど正中線、口内のど真ん中で進行を阻止された。

セフィロスの愛剣・正宗を止めた物体、それは圧倒的な顎の力。自身の頭部を斬り裂く刃を歯と顎の力だけで止めたのだ。
何処までも馬鹿げた怪力。まさに吸血鬼だから、いやアーカードだからこそ可能な防御法。
噛み締められているだけだというのに、刃はまるで溶接したかのように固定され、動かない。
それはセフィロスの力でさえもびくともしない程。
何よりもセフィロス自身が驚愕する。

自分の必殺技を見切られたどころか、「噛む」などという行動で防がれた。
今まで何十もの怪物、達人を斬り伏せてきたこの技が――。

「私はお前を捕まえたぞ、剣士(ソルジャー)」

口から頭部を貫かれ、刃を歯に挟んだ状態で、どういう訳かアーカードは声を出す。
「八刀一閃」を防がれてから優に数秒は経っている、にも関わらずセフィロスは動くことが出来なかった。
アーカードが見せた驚異の防御法は、普段のセフィロスからしたら有り得ない隙を作り出したのだ。

「何を惚けている?」

右ストレートがセフィロスの鳩尾を捉えた。
まるで巨大なハンマーで思い切り叩かれたかのような一撃。セフィロスの両足が地面を離れ、宙を浮く。

「……ッ!!」

苦悶の声すら、出ない。
吸血鬼の怪力に加え完璧な角度で鳩尾に命中したのだ。
血反吐を撒き散らし地面をのた打ち回らないだけマシと言ったところであろう。

「どうした? 反撃をしないのか? 先程までの射殺すような瞳はどこに消えた?」

更に右、今度はフック気味の一撃であった。
続けて左、地面に向かうセフィロスを掬い上げるような一撃。
続けて右、再び鳩尾。セフィロスの身体が「く」の字に折れる。
続けて左、前方に倒れたセフィロスの顔面を、天に伸びるかのようなアッパーがブチ抜く。セフィロスの長身が地面を離れ宙に浮いた。
最後は十字架、血塗れの右手に握られたそれが剣道の突きのように鳩尾を襲う。
セフィロスの姿が一瞬にしてアーカードの視界から消え去った。
十字架のあまりの威力に、まるで鞠玉の如くセフィロスは後方に吹き飛んでいった。

一拍おいてセフィロスはビルの一つに激突、周辺に轟音が響き渡る。
コンクリートで形成されている強固な壁に、セフィロスを中心として、放射状に蜘蛛の巣ような模様の亀裂が走った。
亀裂は縦横数メートルに渡っており、如何に最後の一撃が重いのかを間接的に語っていた。

「どうした? どうした? どうした? まさかこの程度で終いか? たった数発の拳で貴様は戦えなくなるというのか?」

セフィロスの身体がズルリと亀裂から抜け落ち、力無く地に転がった。
意識が飛んでいるのか、挑発的なアーカードの言葉にも反応がない。
アーカードの瞳に失望の色が灯った。
終始浮かべていた微笑みは鳴りを静め、代わりに微かな怒りを含んだ表情が浮かんでいる。
長い溜め息を吐いた後に、顔に刺さる正宗を抜き捨て、左手のパニッシャーを持ち上げ、セフィロスへと一歩一歩近付いていった。

「貴様はそんなものか………がっかりだ、まだあの少年の方が頑張っていた」

コンマで開けられた距離がゆっくりと縮まっていく。
吸血鬼は自身の失望を口にして、いかに剣士に期待していたかを口にして、十字架を頭上に振り上げつつ歩を進める。
五メートル、四メートル、三メートル、二メートル……遂に手を伸ばせば届く距離にアーカードは足を踏み入れる。
セフィロスは、動かない。

「がっかりだよ、剣士(ソルジャー)」

中心にある「ドクロ」を象った穴に五指を絡め、セフィロスの脳天を狙い十字架を振り上げる。。
この十字架が振り下ろされた時、セフィロスは死ぬだろう。その淡麗な銀髪を血と脳漿で染め上げ絶命する。
なのに今だセフィロスは、動かない。

「出来損ないの下らない生き物め……」

鈍い銀色をしたパニッシャーが日光に照らされ眩い光を反射する。
その足元には墓標の如く影が形成されていて、地面が「赤色に発光」していた。

―――地面が赤い?
ふと頭をよぎった疑問にアーカードの動きが止まった。首を傾げ赤色の大地を凝視する。
血に染まっている訳ではない。何故か何の変哲もない地面がボンヤリと光っているのだ。
と、そこでアーカードはある答えに行き着く。瞬間、狂気の笑みが復活した。

「まさか貴様―――」
「―――燃え尽きろ」

アーカードがその言葉を最後まで聞く事はなかった。
突如発生した紅蓮の炎柱に全身を舐め回すように焼かれたからだ。
瞬きをする暇すらなく十字架を持った不死王は炎と一体となる。自身のコートよりも濃い色の真紅に包まれ、その表情すら確認する事はできない。
にも関わらず膝を折ることはない。悠然と圧倒的な灼熱の中で立ち続ける。
「ファイガウォール」―――エース・オブ・エース高町なのはの砲撃魔法と同等の威力を一身に受け、だがそれでも不死王は倒れない。


「―――これで終いだ!」


――しかしこの程度の攻めで手を休める気などセフィロスには毛頭なかった。
意識を喪失した演技でおびき寄せて最大出力魔法。やはり制限は存在したが勝機を見出すことには成功した。
漸く掴んだチャンス―――ここで終われる筈がない。
肩に背負ったデイパックから旧友の愛刀を取り出し、炎の中で立ち尽くすアーカード目掛け斬り掛かる。
肉を斬り裂く感触が刀を通して感じられた。

(身体が……重い……)

しかし、攻撃に転じたというのに、セフィロスの顔は苦悶に歪んでいた。
額には脂汗が流れ、眉間には深い皺が刻まれている。普段のポーカーフェイスが保てない程にセフィロスは消耗していた。

直撃したアーカードの攻撃。
制限下での超威力の魔法行使。
特に前者は不味かった。
本当に意識が飛びかねない連続攻撃であった。あまりの衝撃に意識を失う事は許されなかったが、ダメージは大きい。
一度刀を振るう度に、身体中、特に殴打を重ねられた腹部、頭部に軋むような痛みが走る。
だが、止まれない。奴が死ぬまで刀を振るい続けなくては勝機が消滅する。
多大なダメージを負った今の身体では切り札を切ったとしても勝ち目などない。
―――これが最後のチャンスだ。


「ハァァァァアアアアアア――!」


剣舞は回転を増していく。
命を燃やした連撃は最早、並の達人すら知覚できない程の速度に到達していた。
セフィロスが振るう一撃一撃にアーカードは枯れ木の如くグラグラと身体を揺らす。だが足だけは固定されたかのように動かない。
後退も、前進も、膝を折ることも―――何もせずにただ揺れる上体を支えている。



―――そして数秒におよぶ驟雨のような連撃は、不意に停止した。



■



「セフィロスさん!」


八神はやては数分前と変わらぬ位置に立ち、悲鳴な叫び声を上げた。
届かないのは分かっている。届いたとしても無意味なのも分かっている。でも叫ばずには居られない。
遥か十数メートル先にいるセフィロスの窮地に、八神はやては叫ばずには居られなかった。


―――最初は圧倒的な勝負だと感じていた。
相手の攻撃はセフィロスに掠りもせず、セフィロスさんの攻撃だけが一方的に相手を襲う。
ただ相手の治癒力せいで戦闘不能に追い込むには至らない。でも勝利は直ぐそこにあるように感じた。
だが時間が経つにつれ状況は変化した。
セフィロスさんの攻撃が外れるようになったのだ。いや、外れているのではない。避けられているのだ。
慣れなのか、本気を出し始めてきたのか、相手の反応が高まっている。
徐々に追い詰められていくセフィロスを、はやては歯痒い思いで見ている事しか出来なかった。

―――そして遂に恐れていた時が来てしまった。
セフィロスさんの刀が信じられない方法で止められ、そして殴り飛ばされた。
あの男の人が化け物じみた怪力を持っている事は見ているだけでも理解できる。
その怪力を真っ正面から連続で数発。
セフィロスさんが紙切れのように軽々と宙を飛び、ビルの壁へと叩き付けられた。
地に伏せるセフィロスさんを見て、声を上げる事すら出来なかった。
何十と打ち込んだ攻撃がたった数発で逆転される。あまりに理不尽な戦い。
赤コートの男は、その手に持った十字架を振り上げながら近付いていく。
助けに行きたいのに、助けなくちゃいけないのに、身体が凍り付いてしまったように動かなかった。
この時、自分は確かにある感情を抱いていた。
それは恐怖。
闇の書の闇よりも、仮面ライダーよりも、今まで見てきたどんな敵よりも強大なその男に自分は恐怖していた。

ただ絶望と恐怖に身体を震えていた自分―――でもセフィロスさんは違った。
ボロボロの身体で最後の力を振り絞り抵抗した。
巨大な柱状の炎魔法。
次いで嵐のような連斬。
赤服の男はただ沈黙を持ってセフィロスさんの攻撃を受けていた。
刀が何十何百と致命的な傷を形成し赤服の男を追い込んでいく。普通の人間だったら跡形も無くなるであろう連続技。
―――なのに、なのに、なのに。
―――赤服の男は倒れない。

攻撃をしていた筈のセフィロスさんの膝が折れた。
地面に刺した剣で身体を支え、倒れる事だけは拒否している。でもその体勢を維持する事すらも辛そうに見える。
途端に炎が消え失せた。
そして火柱から現れたのは身体中から夥しい量の血を流し、皮膚の殆どを炭化させ―――だがそれでも笑みを浮かべている狂った男。
セフィロスさんが行った命を賭しての攻撃も届かない。見る見る内に治っていく。
十数秒と掛からずに男は元の姿に戻り、セフィロスさんを見下ろしていた。

「セフィロスさん!」

届かないのは分かっている。
届いたとしても無意味なのも分かっている。
でも叫ばずには居られなかった。

―――だから気付けば動いていた。
自分が動いたとしても無意味なのは分かっている。
でも動かずにはいられなかった――。



落下防止の為に設置されたフェンスを乗り越え、はやては宙に身を投げ出す。
同時に見えないグライダーを身に纏っているかのように、はやてが空中を滑った。
飛行時間はほんの数秒。直ぐさま地面に降り立つと、両手を大きく広げ毅然と口を結び視線を正面に固定する。

「ほう、これは可愛らしいお嬢さんだ」

はやてが舞い降りた位置はセフィロスの目の前――つまりはアーカードの目の前。
傷を負い、膝を付くセフィロスを庇うようにはやてはそこに立ち塞がった。

「何を……して、いる…………早く、逃げろ……」

後方からか細く震えた声が響く。つい数分前まで自分を支えてくれた強い声。
だがその声も今は酷く弱々しい。分かっている、自分の判断のせいでセフィロスさんは傷付いた。

「良いだろう。私の前に立ち塞がるのならお前も敵だ」

身体が震える。奥歯がカチガチと音を立てる。
目の前の男は身体を捻り、弓を射るかのように右手を後方に構える。右手は拳ではなく五本の指をピンと伸ばしていた。
昔、テレビで見た事がある。確かあれは貫手という構えだ。
素手の筈なのにまるで長槍を突き付けられてる気分になる。
いや、あれだけの力を持った人が行う貫手だ。本物の槍のように人体など突き破るのだろう。
あの右手が動いた時自分は死ぬ。音もなく迫ってくる死は、やはり怖いものであった。
でも逃げない。自分の後ろにはセフィロスさんが居るのだ。
逃げない。逃げてたまるか。

(みんな、ごめんな……)

その瞳にうっすらと涙を浮かべながらも、八神はやては地に根を生やしたかのように動かない。
その脳裏に「死」という影がちらつき、今まで感じた事もない程に膨大な恐怖が心を鷲掴みにするが、決して動こうとしない。

「良い夢を。剣士(ソルジャー)、そして勇気あるお嬢さん」

死を前にしても揺るがない少女。
最後の最後まで失望させる事なく、至高の闘争を与えてくれた剣士。
賛辞の言葉が自然と口から飛び出していた。
限界まで引き絞った右手を解放する。狙いは少女の心の臓。せめて苦しまないように全力で手刀を叩き込もう。

一メートルにも満たない僅かな距離を風を切り、右手が直進する。
素晴らしい男だった。吸血鬼を遥かに越える身体能力に、凍てつくような殺意。
この男になら心臓を受け渡せると思った。この男なら覚めない夢を終わらせてくれると思った。
だが足りない。あと少し、ほんの僅かだが足りなかった。
惜しむ気持ちが時間を引き延ばす。右手が少女に、そしてその後方にて、満身創痍の身体で今だに射殺すような視線を放っている男へと、迫る。
この状況下でそのような瞳を見せられるとは―――やはり人間は素晴らしい。

至福の時もあと少し終焉を迎える。槍と化した右手が少女に到達した時、終わってしまう。
覚めない夢は終わらないというのに、勇気ある人間達はこの世から消える。
今まで感じた事のない感情を胸にアーカードは右腕を振り抜き――


「AMEN」


――そしてその視界が完全な闇に染まった。
続いて衝撃。セフィロスの「八刀一閃」に勝るとも劣らない衝撃が横殴りにアーカードを襲う。

――アーカードはこの闇の正体を知っていた。
これは目を潰された時に訪れる真の闇。
感覚から言って口から上、顔の上半分が吹き飛ばされているだろう。
続けて来た衝撃は上半身を中心に駆け巡っていた。不意打ちであったとはいえ姿勢を保つ事が出来ない。
相当な馬鹿力を持った何者かに巨大な何かで殴られた―――アーカードは心地よい浮遊感と寸分の光も存在しない闇の中、判断する。

(いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞ! 立ち向かえ人間! その全力を持って我が心の臓腑に杭を穿て! この憐れな化け物の夢のはざまを終わらせてみろ!)

スタ、と宙で一回転し頭部を無くした吸血鬼は悠々と地面に着地する。一緒に吹き飛んだ十字架が音をたて地面にささる。
着地と共に黒が集結し、吹き飛んだ頭部の形成を始める。吸血鬼の視界が晴れていく。

『さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ』

同時に鳴り響く大魔導師の声明。その声が遊戯の開催から六時間もの時間を告げる。
だが吸血鬼の耳にそんなものは届かない。意識は新たに現れた敵対勢力に集中されている。
復活した眼球でその男の姿を確認し、アーカードの顔が歪んだ。
視線の先にいる男も、アーカードと同様に顔を歪めた。
呟きは同時。
男は宿敵に対し、アーカードは愛敵に対し、灼熱の情念を胸に声を出す。

「やはり貴様か、アンデルセンッ!!」
「ご機嫌じゃねぇか、アーカードッ!!」

―――そこにいたのは巨大なハンマーを肩に掛けた漆黒の親父。
―――夢のような闘争はまだまだ終わらない。
―――空に響く放送をゴング代わりに第2ラウンドが開始する。



■



あの右手が身体を貫くかと思われた刹那、赤コートの男の頭が弾けた。
同時に右腕から力が抜け、ダラリと下がる。
次いでガシャン、という聞き覚えのある音が三回。そして巨大な何かが男の上半身にめり込み吹き飛ばした。

「ヴィー……タ……?」

その巨大な何かを自分は見慣れている。
その何かとはヴィータが得物とするグラーフアイゼン――それのギガントフォルムと呼ばれる形態。
もしかして、という予感が頭をよぎり、会いたいと望んでいる家族の名を思わず呟いてしまった。
だけどそこに居たのは見知らぬ男の人。
赤コートの男が吹き飛んだ後、そこには眼鏡を掛けた金髪の男の人が立っていた。
赤コートの男は、突然現れた謎の眼鏡の男と再び戦闘を始めた。
最初は、眼鏡の人が助けてくれたのかと思ったが別にそんな気持ちは無かったらしい。
私達の存在に気付いているのか、いないのか、眼鏡の人はギガントフォルムのグラーフアイゼンを片手に赤コートの男に突撃していってしまった。

何はともあれ身の危険は去った。
どうにかセフィロスさんを運び、ビルの一つに身を隠す。セフィロスさんは苦悶の表情で意識を失っていた。
この場に夜天の書があれば傷を治療することも可能だが、今は無い。
自分に出来ることは額に浮かぶ汗を拭いてあげることだけだぢた。

「ごめんな……ごめんな、セフィロスさん……」

―――気付けば涙に視界が歪んでいた。

―――セフィロスさんはこんなボロボロになるまで戦い続けた。
それに比べ自分は何なのだ。セフィロスさんの戦いを見てるだけ。
殺し合いを止めると言ったのは自分自身なのに。
自分は、何にもしていない。
戦闘はセフィロスさん任せ切り。
シグナムを失ったあの時もそう。
今回の戦いもそう。
自分は見ていただけだ。
一緒に戦った訳ではない。
力も無いのにただ戦闘の間に入り、理想だけを語っていただけだ。
そんな私を庇ってシグナムは死んだ。そんな私の理想を貫き通す為にセフィロスさんは傷付いた。
―――自分は何をしている?

「ごめんな、シグナム……ごめんな、セフィロスさん……ごめんな、ごめんな、ごめんな……」

八神はやてはただただ謝り続け、瞳から間断無く涙が流していた。
頭上にて放映される凄惨な殺人劇も、プレシアの高笑いも、見えない、聞こえない。
ただ自身の無力さが悔しかった。口だけでは何も解決しない。それを貫く力がなくては理想を語る権利などないのだ。
放送は何時の間にか終わっており、吸血鬼と狂信者の戦闘音だけが響く。
だが自身の罪を知った少女は顔を上げることはない。

ただ涙を流し、傍らに倒れる剣士を縋るように見つめていた。






一分、二分、三分―――何もない無駄な時間が流れていく中、それは唐突に発生する。
最初は少女も失意の真っ只中に居て気付かなかったが、次第にそれは無視できるものではなくなっていく。
はやては、不審げな顔でセフィロスから視線を外し、天井を眺めた。

(ビルが……揺れてる?)

その思考は半分正解で半分ハズレ。
確かにビルは揺れている。だが揺れているのはビルだけではない。
地面そのものが、自分達の足元を形成する世界自体が揺れているのだ。

「な、なんや、これ?」

その揺れはまるで何かが近付いてくるかのように急速に大きさを増していく。
最初は感じ取る事すら怪しかった揺れが今ではビル全体を震わしていて、立ち上がることすら危うい。
ミシリミシリと、ビルが嫌な音をたて、揺れている。
はやての胸に漠然とした焦燥感が募り始めた。
まさか、と思いつつも最悪の事態が頭に浮かび、こびり付いたかのように離れない。

(に、逃げないと……!)

思考の合間にも揺れは力強さを増していく。最早グラグラなどと生易しい揺れではない。
『ガクガク』と悲鳴を上げるかのようにビルがその巨体を左右に振る。
仰向けに寝転がるセフィロスを背負おうと、身体中に渾身の力を込め立ち上がる。
―――しかし、少女の努力も虚しく終わりの時は突然にやって来た。
部屋にある窓から太陽すら凌ぐ暴力的な「白」が差し込み、部屋を染め上げる。
強烈な光に、暗闇とは逆の原理で眼が役を為さなくなった。床も、天井も、セフィロスさんの姿も、自分の手すら、判別できない。




―――圧倒的な白が世界を包んだ―――




■



吸血鬼が振るう巨大な十字架を、これまた巨大な鉄槌が受け止める。
漆黒の狂信者がほんの僅か後方に滑るが、力負けはしていない。
膠着状態に入る。

「良いぞ、アンデルセン! お前も楽しませてくれる!」
「語るにおよばず!」

交差する得物を挟み、互いに叫ぶ。
アーカードは愉悦をアンデルセンは憤怒を。まさに正反対の感情を胸に、二人の化け物は顔を向かい合わせる。
頭上で流れる放送など意識の外。画面内で行われる殺人ショーにすら気付かず、眼前の敵を討ち滅ぼすべく行動を続けている。

「シィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
「ハァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

反発しあう磁石のように、互いの姿が後ろに飛ぶ。
地面を削りつつも両者共、姿勢を崩すことはない。視界の中、意識の中に存在するのは目の前の宿敵。
地面に着地すると共に再び地を蹴り出し、勢いを付け再び激突する。
先程のセフィロス戦のような力VSスピード・手数の戦いとは違う、純粋な力と力とのぶつかり合い。
より強い方が勝つ―――勝負の原点とも言える単純な戦い。だが戦闘者によりそれは限り無く高次元のものに昇華されていく。
アーカードとアンデルセンだからこそ出来る最強の力比べ。どちらも引くことを考えない戦いは、時が経つにつれ熾烈さ増していった。


――だからこそ二人は異変に気付かない。
地面が揺れだしても、周辺のビル群が振動を始めても、地平線の彼方から奇妙で強烈な光が発生したとしても、その光が徐々にこちらに向かい直進し始めているのにも――――二人は気付かない。
そして丁度二人の真上、遙か上空にて光が炸裂――――圧倒的な白と共に暴風雨のような烈風、衝撃が世界を突き抜ける。
先程まで不安定に揺れていたビルはトドメを刺されたかのように崩壊を始め、瓦礫と化していく。
その衝撃は有象無象の差別なく全てに平等に降り懸かる。
申し訳程度に植えられた街路樹も。
最年少執務官を張り付けられたデビルハンターの住処も。
失意の夜天の主、そして最強の剣士が潜んでいるビルも。
それら全てが、ゆっくりと吸い込まれるように『天空に向かって』瓦礫を撒き散らしていく。

――そしてその現象は二人の人外とて例外ではない。

「何ぃいいいいいいッ!!??」

白に潰された世界の中アンデルセンが声を上げ、空に引き寄せられていく。
アーカードもまた、手に巨大な十字架を握ったまま空へと落下していった。

(ほう……実に興味深い)

しかし、この異常事態さえアーカードの心を揺らがすには足りない。アーカードは冷静な思考回路を保ったまま、空を眺める。
太陽すら隠れる真っ白な世界。ただ上に引っ張られる感覚だけが己を支配する。
その世界の中心に立ち、アーカードはふとある物に気付く。
それは白色の世界の更に奥、遙か上空に存在する一つの巨大な球体。
何もかもを覆い隠す白の中、その球体だけが異色であった。果てなき宇宙の何処かに存在する万物を飲み込む黒穴のように、それは全てを引き寄せている。

(あれが……「死」か)

自身が追い求めているものがあの球体の中にあるのか?
アーカードの頬が弛む。
何百年と求てきた答えが、明確な形を持ってそこに存在する――――歓喜が、身体を駆け巡った。

(……今日は何という日だ! あんなにも具体的な形で「死」がある! 伸ばせば届きそうな場所に「死」がある! この夢の狭間を終わらせる終焉の鐘があそこにはある! )

「ふはっはっはは……は、はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」




―――白色の世界にて不死王の笑い声が響いた。



■



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