リリカル遊戯王GX 第三話 飛べスバル! ペガサスに乗る魔法拳士!

「レイ、大丈夫か!?」
「じゅ、うだい……」

レイの悲鳴で飛び起きた十代とオブライエンは、途中でヨハンとアモン、なのは達と合流しながらレイの下へ向かった。
倒れていたレイを十代が慌てて抱き起すと、レイはわずかに目を開けて苦しそうに言葉を絞りだす。

「十代……マルっちが……一年の、加納 マルタン君が……」
「マルタン? そいつがどうしたんだ?」
「オレンジ色の影に、襲われて……」
「なっ!?」

オレンジの影、十代は自分たちがこの世界に飛ばされる直前に出会った人影を思い出す、
まさかそいつがアカデミアに入り込んでいるとは思ていなかった。
十代が考え込んでる間に、ヨハン達は二手に別れマルタンの捜索を開始する。

「十代君、その子の肩を見せて」
「なのはさん? あ、ああ……」

なのはに言われるまま、レイの肩口をなのはへと向ける。
その肩には痛々しい、明らかに普通ではない傷があった。

「何なんだ、この傷は……!」
「そこまではわからないけど、このままじゃ危険だね」
「くそっ、早く保健室に――」
「待って、その前に簡単な回復だけでも……」

言いながらなのはは治療魔法をレイへとかける。
多少レイの顔色はよくなったが、肝心の傷は少し塞がっただけだった。

「これは……この傷自体が魔力を消している……?」
「治せないのか?」
「ごめん、私じゃ体力を回復させることが限界みたい」
「いや、十分だぜ。俺はレイを保健室に連れていくよ」

シャマルさえいればなんとかできるかもしれないのに……
なのはは自分が無力だと沈みかけるが、今はそんな場合ではないと十代と共にレイを保健室へと連れていく。



「貴様・・・・・・!?」

図書室に来たアモンは目の前の光景に驚愕する。
レイと一緒にいたはずのマルタンが――左腕がモンスターのようになっている――どうやって作ったか、玉座のような椅子に座っていたのだ。

「何故だ、何故この少年を選んだ? お前が望んでいるものは何なんだ! 俺たちをこの世界へつれてきたのはお前なんだろう!?」
「ああ、アモン、やはりお前は賢い」
「っ!?」
「ボクの僕として働いてくれないか? 人間としてのお前の知恵を貸してほしいんだ」

マルタンが手を差し伸べる。
アモンはその手を睨みながら思考を巡らし――



結局その後もマルタンを見つけることはできず、早朝に十代達は保健室へ集まっていた。
レイは傷の影響か、高熱を出して寝込んでいる。
なのはが再び魔法をかけるが、ほとんど効果はない。

「この感じ、AMFに似てるね、体に触れた途端に魔力が消えてる」
「魔力が消される……レイちゃんを襲った奴は通信や転移を封じてる奴と同じ……?」

フェイトとティアナは思考を巡らせるが、さすがにこれだけの情報からでは大したことはわからない。
魔法が効かないとなると通常の医療技術が頼みだが、鮎川も首を横に振る。

「保健室の医薬品じゃ足りないの、この薬が必要なんだけど……」
「……聞いたこともねぇ」

鮎川にメモを渡されるが、十代にはさっぱりだ、
横からオブライエンが覗き込み、無表情でいることの多い顔を顰める。

「専門的な薬品だ、このような世界で見つかるかどうか……」
「そんな、それじゃレイは!」
「待て、薬ならあるかも知れないぞ」

思わず叫びそうになる十代を、三沢の声が静止する。
一同の視線が三沢に集まり――いくつか「そういえばいたっけ……」という視線があるのを感じ少し落ち込みかけるが、気を取り直して言葉を続ける。

「ここに来る途中、なのはさん達と出会う前に潜水艦を見つけたんだ」
「潜水艦!? こんな砂漠に?」

その場の全員が信じられないといった反応だったが、
ただ一人、アモンだけが必要以上に動揺していることにティアナは気づく。
だがその事を追及するよりも前に「どこかの軍の物なら専門的な医薬品もあるかもしれないな」と言われ、タイミングを逃してしまう。
確かにその通りだ、何らおかしいところは無い――だが、今の反応が妙に気になった。

「スバル、あのアモンって人、注意して見てて」
「ティア? うん……いいけど」

ただの気のせいかもしれない可能性の方が高いのだ、迂闊にトラブルの種になりかねない話題を広めるべきではない。
そう判断し、すぐ横にいたスバルにだけ自身が疑いの念を持っていることを伝える。
自分の気のせいなら問題無し、
もしも何かよからぬ事を企んでいたとしたら……その時は何としても止めなくてはならない。


「それじゃ、アカデミアは任せたぜ」
「ふっ、この万丈目サンダーに任せておけ」
「イヤン、兄貴格好いい~」
「……貴様らは黙っていろ」

十代・ヨハン・オブライエン・ジム・アモン、そしてスターズ隊が潜水艦へと薬や食糧等を探しに行く事となった。
残るメンバーはモンスターがアカデミアに来た時のための防衛要員である。

「フェイトちゃん、そっちをお願いね」
「うん、なのは達も気を付けて」

スターズが行くことになったのは、エリオやキャロよりもスバル達の方が体力が高いから、
そして、ティアナがアモンといる事を希望したからだ。

「……なのは、どう思う?」
「私はティアナがそう判断した材料を見逃しちゃったからなんとも言えないよ、今はティアナ達に任せるしかない」

なのはとフェイトはティアナが疑惑の眼でアモンを見ていることに気づいてはいた、
ただ、ここで自分たちも必要以上に疑いをかけるとどうしても不自然になってしまい、いらぬ争いを生む可能性が高い。
今はティアナに任せるのみである……ただでさえ、この二人は嘘が下手なのだから。


「マルタンが、マルタンが見つからないのであ~る!」
「ナポレオン教頭、少しは落ち付くノーネ」

校長室――だがアカデミアの校長、鮫島は学園にはいなかった――で、ひたすら嘆き続けるナポレオンをクロノスは持て余していた。
十代達からマルタンが行方不明になったと聞かされてから、ずっとこの調子なのだ。

「教頭、加納 マルタン君と何か関係があるノーネ?」
「な、な、ないのであ~る! せ、生徒の無事を願うのは教師として当然のことであ~る!」

間違いない、何か関係があるようだ。
だがこの様子では詳しいことは言わないだろう、何よりそれが事件解決の鍵になる訳がない。
そう考え、クロノスは半ば無理矢理潜水艦の探索へと向かった十代達が早く帰ってくることを祈るのであった。

「それにしても……鮫島校長は肝心な時にいつもいないノーネ」

その頃、十代達の元の世界……

「これは……いったいどういうことだ」

鮫島は呆然としながら目の前の光景を見ていた。
デュエルアカデミアのある島、その一部が、ぽっかりと削り取られたように消失していたのだから無理もない。
尚も呆然とする鮫島だったが、上空からやってきたヘリの音に我を取り戻す。

「ミスター鮫島、お久し振りデ~ス!」
「ペガサス会長!」

ヘリから降りてきた銀髪の男、デュエルモンスターズを作り出したペガサス=ジェイ=クロフォードと握手をかわす。
ペガサスもアカデミアが消えた情報を入手し、急きょ駆け付けたそうだ。
不安そうに生徒たちの無事を祈る鮫島に、ペガサスは優しく声をかける。

「大丈夫です、ミスター鮫島」
「……ペガサス会長?」
「行方不明になった生徒の名簿には、十代ボーイの名前もありました。十代ボーイはミラクルボーイ、きっとこの事件もなんとかしてくれマース」
「……はい」

――私たちは無力デース、ですが、決して諦めはしまセーン。だから十代ボーイ、不安に怯える生徒たちを勇気づけてあげてくだサーイ



更に同刻、とある時空世界……

「主はやて! それは本当ですか!?」
「どうやらそうみたいや……まさか、こんなことになるなんて……」
「は、はやてのせいじゃねぇよ! だからそんな顔しないでくれってば!」

なのは達との連絡が取れなくなった事を伝えられ、はやて、そしてその守護騎士であるヴォルケンリッター達はかなり動揺していた。
通話だけでなく、転移することさえできなくなってしまったというのだ、
その仕事を持ち込んだはやてとしては、自分のせいだと思わざるおえない。

「……主はやて、テスタロッサ達なら少々の困難、平気なはずです」
「それは、私も十分承知や。だけど……」
「はやてちゃん、私たちは誰よりなのはちゃん達の力を知っているはずよ……信じましょう」
「そうだよ! なのはとスバル達ならきっと全員無事に帰ってくる!」

シグナム達が次々と励ましていくが、はやては相変わらず顔を上げられなかった。
そこで、今まで黙っていたザフィーラが口を開く。

「主、そこまで不安ならば、直接行くしかない」
「ザフィーラ……だけど、それは無理や、ここの事件が……」
「わかっています。だからこそ、今は俯き止まっている場合ではない。早急にこの事件を解決し、高町なのは達の救援に」
「――っ、そう、やな……そうや、今はこの事件を終わらす、それしかない! いくで、みんな!」
『はい(おう)!』

――なのはちゃん、フェイトちゃん、みんなもう少しだけ待ってて! 私らも、すぐに行くから!



「なあ、せっかく精霊を実体化できるんだしさ、ネオスに乗っていかねぇか? あっという間だぜ!」
「いや……昨日サファイヤ・ペガサスを召喚した時デスベルトが作動した、カードを使うのは慎重になったほうがいい」

まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように十代が言うが、すぐにヨハンが静止する。

「ちぇ、せっかくなのにな……」
「クリクリー?」
「あはは、はねクリボーはいいんだよ」

笑いながらはねクリボーとじゃれる十代を見て、ヨハンは何か言おうとするが、なのはに止められる。
そのままなのはが十代と目線を合わせるようにかがみ、肩を掴みながら語りかけた。

「十代君、これは遊びじゃない、人の生死がかかっていることなんだよ。
 勿論私達は君たちを守ることを優先する、だけど、それでも守りきれない可能性は十分にある。
 その時、迂闊な行動を取ったら高い可能性でその人だけじゃなく、他の人も死ぬ……ここは、そういう世界なの」
「っ……ああ、わかってるてば、ごめん」

真剣な瞳でじっと見つめられ、初めは適当な返事をしていた十代もこの状況を正常に理解してきたようだった。
それを察すると、なのはは一転して笑顔になる。

「うん、それじゃあ急ごうか、レイちゃんが待ってるよ」
「よっしゃあ! 早く行こうぜ!」

あっという間に立ち直り、さっさと自分一人だけで先行してしまう。

「……少し、頭冷やさせたほうがいいかな?」
「やめてあげてくださいなのはさん、お願いですから」



マルタンは十代達が外へ向かったのを見て、笑いながらその左腕に意識を集中させる。
するとその腕がまるでデュエルディスクのように変化し、マルタンは一枚のカードを取り出しセットした。

「砂漠の僕を、君たちに送ろう・・・・・・」



「あ、あれ潜水艦じゃないか!?」
「本当だ・・・・・・っておい十代! 一人で行くな!」
「ヘイ十代! 足元に気をつけろ!」
「へ? うわわ!?」

ジムの忠告を受けた直後、十代の足元が突然蟻地獄のようになり十代は砂に飲み込まれていく。

「いかん! ロープを……」
「マッハキャリバー!」
『Wing Road』

オブライエンが命綱を用意して飛び込むよりも速く、
スバルが魔力で作った道を十代のところまで伸ばし引き上げる。

「大丈夫!?」
「あ、ああ……すっげぇ」
「トラップ発動、マジックジャマー!」

その声が聞こえた瞬間、スバルは自分の直感を信じ十代を蟻地獄の外まで投げ飛ばす。
そして次の瞬間――ウイングロードは消えスバルが蟻地獄へと落とされた。

「スバル!?」
「今のは、マジックジャマー、魔法を一つ打ち消す罠だ!」

ヨハンの説明になのは達は顔を青くする。
まさか問答無用で魔法を打ち消すなどと、理不尽なカードがあるとは思わなかった、
もしもそんなカードが何枚もあるのだったら自分達にとっては致命的だ。

「アモン、このロープを頼む!」
「あ、ああ……」

オブライエンが自分の腰に巻きつけたロープをアモンに渡し飛び降りる。
砂に埋もれていくスバルを捕まえるが、蟻地獄の中心の砂が盛り上がり、一人――一匹と言うべきだろうか?――のモンスターが現れる。
―岩の精霊 タイタン― 攻撃力1700 防御力1000 効果モンスター

「我が聖なる砂漠に入りし邪なる者達よ、岩の精霊 タイタンの名に置いて成敗する!」
「あれは、デュエルディスク!?」

タイタンの左腕に装着されている機械、十代達のものとは形状が違うが、それは間違いなくデュエルディスクだった。
そのディスクを見て、ヨハンは自分のディスクを作動させる。

「ヨハン!? ここは俺が……」
「いや、みんなはオブライエンとスバルを頼む!」

十代を制しヨハンは皆と少し離れた場所でタイタンと向き合う。

「異世界の者よ、貴様が相手か」
「ああ! いくぜ、デュエル!」
―タイタン LP4000― ―ヨハン LP4000―
「私のターン、サンド・ドゥードゥルバグを召喚!」

タイタンがディスクにカードをセットすると、蟻地獄の中心に蠍とも蟻地獄ともとれないモンスターが現れる。
―サンド・ドゥードゥルバグ― 攻撃力1200 防御力800 効果モンスター
なのは達は初めて見るが、これがデュエルモンスターズの基本の流れなのだ。
ヨハンがデュエルをしている間にスバル達を引っ張りあげようとはするのだが、蟻地獄に囚われ中々上手くいかない、
飛行魔法で助けに行くことも考えたが、またあの罠カードを使われたら重量が一人分増えるだけである。

「スバル、ウイングロードは!? 例え消されても一瞬だけでも出せればあんたならこっちまで跳べるでしょ!」
「ダメ、さっき消された時から魔力が結合してくれない!」

ティアナが苦し紛れに考えた策もあっさりと却下される、
それを見ながらヨハンは決着を急ごうとカードを引く。

「俺のターン! アメジスト・キャットを召喚!」

美しい毛並の豹のようなモンスターが召喚される。
―宝玉獣アメジスト・キャット― 攻撃力1200 防御力400 効果モンスター

「頼むぞ、アメジスト・キャット!」
「任せといて!」
「アメジスト・ネイル!」

アメジスト・キャットがタイタンの召喚したモンスターへ飛び掛るが、
その相手が砂の中に潜ってしまい振りかざした爪は空を斬る。

「何!? 宝玉獣の攻撃を回避するなんて……!」
「やはりこの世界でもデュエルモンスターズの基本は成り立っている。
 あのモンスターはフィールドが砂漠の時、1ターンに一度だけ攻撃をかわすことができるんだ」

アモンの冷静な考察に、ジムはある事を思い出し表情を強張らせる。

「おい、そうなるとこの蟻地獄は……!」
「メサイアの蟻地獄だとしたら、レベル3以下のモンスターは召喚されたターンの終了時に破壊される……!」
「そんな、ヨハン!」
「くっ、アメジスト・キャット!」

その危惧は当たり、アメジスト・キャットはどんどん砂の中へと沈み込んでいき、倒される。
アメジスト・キャットの効果によってその宝石がヨハンの横に現れるが――

「まずい! ヨハンの場はがら空きだ!」
「ふはは! サンド・ドゥードゥルバグで攻撃!」

相手モンスターの直接攻撃に備えてヨハンは身を堅くする。
しかしいつまで経っても攻撃が来ることは無く、顔を上げ……

「スバル!」
「何だと!?」

サンド・ドゥードゥルバグはヨハンではなく、スバルの足にその強靭なアゴで噛み付いていた。
スバルは痛みを必死で堪え振り払うが、すぐ側のオブライエンはヴァーチャル映像による痛みとは比べ物にならない、
本物の傷みというものがスバルを襲っている事に気づいた。
実際にスバルが傷ついていてもなのはは動けなかった、いつの間にかタイタンの場に伏せられている一枚のカード、
デュエルについてはよく知らないなのはだったが、あのカードから受ける感覚、それは先ほどスバルのウイングロードを消したのと同じものだ。
――恐らくあれも魔法を解除する罠……間違いなく、敵は私達の存在を知って対策を取っている!

「貴様! 何故俺を狙わない!?」
「何を言っている? 確実に仕留められる獲物からやっているだけだ。
 これは貴様らのやっていた児戯等とは違うことがまだ理解できんか!?」
「児戯だと……!」

今まで自分達が真剣に向き合ってきたデュエルを馬鹿にされヨハンの頭に血が上る、
それは彼の思考を短絡化させ、戦略を安直な物へと劣化させていってしまう。

「砂漠では確かに宝玉獣の方が圧倒的に不利、ならば空から攻撃だ! コバルト・イーグルを召喚!」
「よっしゃ、久々ー! やってやるぜ!」

ヨハンの場に新たな宝玉獣が現れる。
―宝玉獣コバルト・イーグル― 攻撃力1400 防御力800 効果モンスター
先ほどのスバルへの攻撃で、これは普通のデュエルでは無いことがわかった。
――ならば、こういう事も!

「行け! コバルト・ウイング!」
「おっしゃぁ!」

通常のデュエルではまたモンスター効果で攻撃を無効化されるだけだろう、
だが、アメジスト・キャットよりも遥かにスピードのある攻撃で潜る前に捕えられれば――

「砂漠の守りを甘く見るな!」
「何!?」

突如コバルト・イーグルの真下から砂が吹き上がり、コバルト・イーグルを空高く吹っ飛ばす、
これは完全にヨハンのミスだ、普段の彼ならばこんなミスはしなかっただろうが、先ほどの挑発にまんまと乗せられてしまった。

「ふっ、貴様の場はまたがら空きだな!」
「しまった!」

コバルト・イーグルはまだ体勢を立て直せていない、
これが普通のデュエルならば場にモンスターがいる以上プレイヤーへは攻撃できないだろうが、あいにくこのデュエルは普通じゃない。

「行け! サンド・ドゥードゥルバグ!」
「うわああああ!!」

先ほどとは逆の足に噛み付かれ、スバルは今度こそ悲鳴を上げる。
このままでは自分を掴んでいるオブライエンも危険だ、何度も「自分の事はいい」と言おうと思ったが、
それでは意味がない、自分がいなくなれば今度はヨハンが直接狙われるだけなのだ。
だが、冷静さを欠いたヨハンでは1ターンに一度攻撃を回避するあのモンスターへの有効策は思いつくのに時間がかかるかもしれない。
――1ターン……? 一度だけ……
そこでスバルはある対抗策を思いつく、うまくいくかどうかわからない、自分の相棒、そして憧れの人物がこちらの狙いに気づいてくれなければ――
――いや、絶対に気づいてくれる!
スバルの心に、この二人に対する疑いなど欠片もない。思うが早いか、スバルは声を上げる。

「ティア! クロスシフトD!」
「なっ!? 何言ってるのよスバル! こんな状況で……それに、魔法は消されちゃう!」
「――っ!? ティアナ、スバルの言う通りにして、ヨハン君! お願い、スバルに翼を!」

スバルとなのは、二人の言葉にタイタンを含む全員が困惑する、
しかしヨハンはいち早くその意味に気づき、カードを引き当てる。

「サファイヤ・ペガサス、召喚! サファイヤ・トルネード!」
「ちぃ、無駄だ! サンド・ドゥードゥルバグにはどんな攻撃も効かぬ!」

タイタンの言葉通り、サファイヤ・ペガサスの放った竜巻もかわされてしまう、
だが、ヨハンは不適に笑いかける。

「確かに宝玉獣の攻撃でさえもそいつには効かない、だが、それは1ターンに一度だけだ!」
「何を言うかと思えば、コバルト・イーグルはまだ攻撃できる状態ではな――!?」
「そう、デュエルに関わらなくても攻撃できる人はいる……あなた自身がスバルを攻撃したことで教えてくれた!」

なのはがサンド・ドゥードゥルバグへと狙いをつける、
タイタンはその姿に慌てて場のカードを発動させた、それが狙いだとも気づかずに。

「ディバイーン、バスター!」
「罠カード! マジックドレイン!」

発動された罠によってなのはの魔法はかき消され、タイタンは冷や汗を拭う、
だが、直後に聞こえた声によってその表情は凍り付いてしまう。

「クロスファイア……シュート!」
「しまった! 罠が間に合わん!?」
「うおおおぉぉぉぉ! クロスファイア……バスター!」

タイタンが対抗策を思案する間も与えず、
オブライエンに頼んで投げ飛ばしてもらったスバルは、サンド・ドゥードゥルバグに魔力球を叩き付けて破壊する。

「ぐぅぅぅ!!」
―タイタン LP3400―
「タイタンのライフが減った!?」
「まさか、ガール達のマジックにも攻撃力があるのか!?」
「くっ! だが、そのまま砂に埋もれることは避けられまい!」

この時にタイタンの犯したミスは二つ。
一つはなのは達への牽制は一回で十分だとトラップカードを一枚しか伏せておかなかったこと。
そしてもう一つは、本来のデュエル相手であったヨハンを軽視しすぎたことだ。

「サファイヤ・ペガサス!」
「お嬢さん、大丈夫か?」
「うわぁ! ありがと、このまま行こう!」
「おう!」

スバルが砂に叩き付けられる直前、スバルはサファイヤ・ペガサスの背に乗せられ助け出される。
そのまま驚愕しているタイタン目掛け、体勢を立て直したコバルト・イーグルと共に攻撃をしかける!

「ディバイーン……トルネード!」
「コバルト・ウイング!」
「ぐわあああああああ!!」
―タイタン LP0000―
「やったぜ、ヨハン!」

タイタンは倒れ、蟻地獄も消えていく。
ヨハンの下へみんなが駆け寄り、デスベルトが作動しヨハンは顔を歪める。

「ヨハン、大丈夫か?」
「ああ、俺は平気さ、それよりすまない。俺のせいで余計な怪我をさせちまった」
「ううん、全然平気だよ、丈夫さだけが取り得だから!」

謝るヨハンに、ペガサスに乗ったままのスバルは笑いながら返す。
その様子を見ていたなのはは、妙な事に気づいた。

「スバル……傷は?」
『え?』

全員がスバルの足を見る。
そこにはモンスターに噛み付かれた痛々しい傷跡が――

「……ない」
「スバル、立てる?」
「えっと……うん、平気、歩けるし全然痛くないし……あ、ちょっと離れてて、ウイングロード!」

困惑しながら、試しに先ほど発動できなかった魔力の道を生み出そうとすると、あっさりと作り出される。

「これって、どういうことなんだ?」
「デュエルの最中に受けたものは、デュエルの時にしか残らない、って事なのかも……」
「そうか、ライフポイントもデュエルごとにリセットされる、そう考えれば納得できる」

多少無理矢理なところがあるが、そうと考えるしかない。
十代達はそう結論付けて潜水艦へと足を進めるのだった。

続く

十代「くっそぉ! 潜水艦の中でまで襲ってくるなんて! 急がないとレイがやばいってのに!」
なのは「落ち着いて十代君、出口を塞がれたなら、別の場所に作ればいい!」

次回 リリカル遊戯王GX
 第四話 潜水艦の罠! 打ち破れディバインバスター!

十代「すっげぇけど、怖ぇ……」
なのは「……何か言ったかな?」


十代「今回の最強カードはこれ!」

―ペガサスに乗った魔法拳士― 攻撃力2400 防御力2000 融合カード
「スターズ3 スバル・ナカジマ」+「宝石獣サファイヤ・ペガサス」
守備モンスターを攻撃した時そのモンスターを破壊する(ダメージ計算は行う)
守備モンスターの守備力より攻撃力が勝っていた場合、その分だけダメージを与える

なのは「スバルに翼を与えてくれた、ヨハン君に感謝しないとだね」
十代「それじゃ、次回もよろしくな!」

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最終更新:2007年11月18日 10:17