自分は今、戦場にいる。
戦場とはいっても四角い土俵に立ち、周りには観客がいる。誰が開催したかは知らないが自分は「第二回婆沙羅大武道会」という大会の土俵の上にいる。
いつの間にか決勝戦だ。この試合に勝てば100万石が手に入るという。心なしか我が主の声援も力が入っている。
相手は三日月の鍬形をした兜に蒼き鎧。手に持つは六本の刀。もう一人は前者とは対なるように上半身裸に赤いジャケット。そして手には二本の槍。二人ともこちらに殺気を放ってくる。
一方、自分が手に持つは巨大な槍。先端が回転する槍だ。
世間では自分が持つこの槍のことを「ドリル」と呼ぶ者がいる。関係ない話なのだが。
「試合・・・開始!!」
この騒ぎの中でも審判の試合開始を告げる声がはっきりと聞こえた。
その瞬間二人は自分へと迫る。自分も負けじと槍を構え、横に振るう。彼らは当然のごとく避けた。こんな攻撃が当たらないのはわかっている。
すばやく槍をまた横に振るう。矛先は蒼い鎧の武士。その武士は槍の一撃を受け、かなり後方まで吹き飛ばされる。
次は縦一直線の振り下ろし。次の矛先は赤き武士。しかしその攻撃は防御される。さすがに驚いた。自分の一撃を防御しきれた者を見るのは初めてだ。
「Hey!!敵は一人じゃねぇぜ!?」
後方が異様に暗い。振り向くと先ほどの蒼い鎧の武士が低く構えている。腕が蒼白く光り、稲妻が走っている。
「Hell dragon!!」
腕を前に突き出すと自分の身長ほどもある稲妻の球が迫ってきた。回避行動や防御行動も間に合わず当たってしまった。
体が、浮いた。決して揺らぐことのなかった自分の体が今、宙に舞っている。
硬い土俵の感触を味わうのを許さないがごとく、赤き武士が自分が着地する地点に立っていた。
「千両花火ぃぃ!!」
一つに連結した槍の一撃が顔面に当たる。数回宙で回転してから自分の体が地に落ちた。
その瞬間、自分の中の「青い目盛りみたいな何か」が満タンになったのを感じた。
自分の体を起こし、槍を地面に思い切り刺した。その衝撃で二人の武士は宙に浮く。
自分も宙に浮き、背中から円陣を形成する。
円陣の漢字の一文字が光り、回転を始める。次第に回転が速くなる。
「終わりにしろ!!○○!!」
自分の名を叫ぶ主。無論、そうするつもりだ。主よ、もうすぐその手に巨万の富を掴ませて差し上げます。
だが、異変は起こった。
地面がない。
それは自分の周囲だけであった。しかし皆も突然のことに唖然とする。
自分はこんな地面を無くすほど強大な力を持った覚えはないし、主から聞いたこともない。
地面がなくなったことによって生じた穴は大きくなる。
そして二つ目の異変に気づく。
自分がその「穴」に引きずりこまれている。
どんなに離れようと力を振り絞ってもその穴からは離れられない。
逆にどんどん引き込まれていく。
思わず天に手を伸ばす。しかしその手を掴む者はいない。
「○○!!○○!!」
必死に助けに行こうとするがほかの家来に制止されている主。ああ、あなたに巨万の富を掴ませることができなくて自分が許せません。
こんなところで終わるのだろうか。主、申し訳ございませんでした。
「○○!!」
どんどん遠くなっていく主の声。そして目の前も暗くなり始めた。
しかし、意識が無くなる前に、自分の名前をはっきりと呼ぶ主の声が聞こえた。
「忠勝!!行くな!!忠勝っ!!」
「ただかぁぁぁぁぁぁぁぁぁつっ!!」
最終更新:2007年12月22日 11:00