第一話「忠勝、ミットチルダにて起動」

「・・・・・!!」
忠勝は目を覚ました。あたりを見回すと今までの騒がしさはなく、静かな場所で。
しかしその風景は違和感がありすぎた。数多の鉄の城が建ち並び、灰色の川が流れている。
そしてその灰色の川の上を異形の船が高速で通り過ぎる。戦国の世を生きてきた忠勝にとっては見るものすべてが異形のもの。頭を抱え、地に膝を付く。自分の武器はちゃんと自分の手に握られている。
「・・・・・」
彼は必死に考えている。この世界からどうやって戦国の世に戻るのか。その前に、戻れるのか。ここの者達はどんな容姿なのだろうか?
少なくとも頭のてっぺんの毛だけを綺麗に剃った愛を与えると見せかけて殺戮行為を仕掛ける南蛮人ではないことを願う。
ゆっくりと立ち上がり、自分にどこか異常がないか立ちながらの瞑想で確かめる。
(ない。)
そう確認したかの如く、忠勝の眼が赤く光り、関節から熱を排気。煙が吹き上がる。

__________戦国最強「本多忠勝」、始動。

巨大槍を数回、回転させると背中の紋章から筒が二本飛び出す。俗に言う「ロケットブースター」というものだ。
筒から蒼白い炎が出る。低く構えて数秒、再び眼が赤く光り、空へと飛び立った。


しばらく飛行していると一つの奇妙なものを見た。空を飛ぶ奇妙な船だ。
上には何かが回転している。あれで空を飛んでいるのだろうか?どちらにしろ忠勝にはその原理はわからない。
そして地上では何か騒がしい。
何が起こっているのかは理解するつもりはなかった。だが、遠方から見えた光で忠勝は大体のことを理解した。

しかし、自分の体は勝手にあの船を「守ろうと」飛び出していた。

なんでそういう行動に出たのかは自分でもよくわからない。そして今まで戦国の世に身を流していたときの記憶を思い出した。戦の跡、そこには自分の手で命を絶ってしまった兵。
死体から鎧などをひっぺはがす農民達の姿、一人の兵にすがりつくように泣いている子供、そして女。こちらが近づくと石を投げてきた。
「しんじゃえ人殺し!!」
その時は自分は何も思わなかった。しかし主である徳川家康は悲しそうな顔をして、自分に問うた。
「忠勝・・・ワシは・・・間違っていたのか・・・?」
「・・・・」
その問いに答えることはできなかった。
しかしこれだけはわかった。戦で死んだ敵兵のことを想い、主は泣いているのだと。その日から、兵の命を自分の手で絶つたびに、苦しくなった。
もしかしたら自分は「必要以上に人が死ぬのを見たくない。」と感じるようになっていたのかもしれない。
「・・・・・・!!!」
意識を現実に戻す。そう、自分が今やるべきことはすでに決まっていたのだ。
紋章が開き、二枚の巨大な盾を腕に装着。箱と光の間に立ち、両手を交差させて光を真っ向から受けた。
_____忠勝、防御形態
間接が軋むほどの衝撃が走る。しかしこのまま引き下がるほど自分は落ちぶれちゃいない。何しろ戦国最強なのだから。
腕を上へと思い切り振り上げた。光は上空へと飛び、爆発した。
自分は守ろうと思った命を守った。命を絶つことしかできなかった自分のこの手で。


「・・・・え・・?」
私、高町なのはは唖然としていた。シャマルさん達が乗っていたヘリを守ろうとしてヘリの前の立とうとした時、全身を黒い鎧で身を包んだ人(?)が盾で砲撃を防いでいた。
ここには民間人はいないはず。だとしたら、こんなバリアジャケットを持つ管理局員がいただろうか?
いや、いない。じゃあ・・・誰が?
「あの・・・あなたは・・・?」
その人は何も答えなかった。こちらを見てホッとしたような雰囲気を出すと背中のブースターを噴出して砲撃が発生した地点へと飛び出していた。
(フェイトちゃん・・・はやてちゃん・・・)
不安でたまらなかった私は二人の親友に念話を行っていた。
(うん、こっちでも確認したけど・・・誰だったんだろう?)
(しかしどえらいバリアジャケットやったなぁ・・・。あんなバリアジャケットであれほどの速度・・・人間とは思えへんわ。)
親友のフェイトちゃんとはやてちゃんの答えは同じだった。助けてくれたのに不安がぬぐえない。
(と・・・とりあえず私あの人追ってみるね!)
(あ、わ、私もいく!)
無意識のうちに私はあの人を追っていた。
正体が何なのか知りたかったのが半分、お礼が言いたいのが半分。
私はひたすらあの人の後を追う。姿は見えなかったけど、必死で追いかける。途中でフェイトちゃんと合流した。
急がなきゃという思いが、何故か頭の中で駆け巡る。


「・・・・・・」
「い・・いつの間に・・・?」
「あ・・・あらぁ・・・」
一方、三人はお互いに驚いていた。
忠勝のほうはあんな砲撃をしていたのが少女だったということだ。自分の知り合いにも銃を使う女性がいたが、あそこまで大きくはない。
槍を構える動作はしていたものの驚きで攻撃に移るという意思はどこかに吹っ飛んでしまった。
そして忠勝と対峙する二人の少女。一人はディエチ。砲撃を行った張本人だ。そしてその隣に立つはクアットロ。
二人とも砲撃を防がれたと思いきやいきなり目の前に黒い鎧に身を包んだ巨人が降り立ったからだ。
逃げることも忘れ、ただただ唖然として立ち尽くしている。
「・・・・・!!」
いち早く我に帰ったのは忠勝。
巨大な槍を二人の少女めがけ振るう。もちろん先端は回転してないから刺さない限りダメージは打撃だけで済ませられる。
「う・・・わっ!!」
ディエチはなんとか避けるも自らの武器、イノーメスカノンを吹き飛ばされてしまった。
忠勝は次にクアットロへと右斜めの振り下ろし攻撃を行った。クアットロは慌てながらもシルバーカーテンで姿を消す。
そして忠勝が混乱している間にディエチはIS、「ヘヴィバレル」を発動。変換時間は無いに等しいため威力は期待できそうにない。
魔力で生み出された弾丸を盾で防御する。お互いに離れ、また静寂が流れる。また忠勝が槍を振るい始めた時・・・・
「IS発動!ライドインパルス!!」
突然現れた紫の髪の少女に一撃が防がれた。乱入者の名前はトーレ。ディエチとクアットロの姉のような存在だ。
忠勝の槍とトーレのインパルスブレードがぶつかり合い火花を散らす。しかし力の差は目に見えていた。
(こいつっ・・・できる・・・!!)
次第に押され始めるトーレ。しかしディエチの援護射撃で忠勝は大きく吹き飛ばされた。
「今だっ・・・!!」
インパルスブレードの連続攻撃が忠勝を襲う。
「トライデント・・・・スマッシャァァァァァァァッ!!」
「エクセリオォン・・・・バスタァァァァァァァァッ!!」
「「「!?」」」
トーレの連続攻撃は新たな乱入者により中断された。
一方は亜麻色の髪を両サイドで結び、白いバリアジャケットを纏った女性、高町なのは。
もう一方は長い金髪をなのはと同じように両サイドで結び、黒いバリアジャケットに身を包んだ女性、フェイト・T・ハラオウン。
「・・・チッ、退くぞ!!二人とも!!」
「は・・はい!IS発動!!シルバーカーテン!!」
新たな乱入者の姿を見て不利を悟った少女達は姿を消し、逃げた。
しかし二人の女性は三人を追うことはなかった。
視線はすでに黒き鎧の巨人、本多忠勝へと移されていた。
「あ・・・あの・・大丈夫ですか・・?」
「差し支えなければお名前などを教えてほしいのですが・・・」
「・・・・・」
彼女達の問いに答えることはできなかった。
何しろ彼は「喋れない」のだ。喋れないものに答えろといわれてもいかがなものかなと。
言葉の代わりに機械音が唸る。
忠勝は立ち上がりまた飛行を開始しようとする前に・・・
「・・・!?」
体が床に沈み、また意識を失っていた。
これはたぶん、エネルギー切れというやつである。

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最終更新:2007年12月22日 21:30