魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~

第二話「忠勝と機動六課」

「しかし・・・驚きましたよ。いきなりこんなもの持ってこられて・・・」
「すまんなぁ、どうしても調べてほしかったんよー。」
ここは機動六課のデバイス整備室。ここに機動六課の部隊長、八神はやてとデバイスマイスター、シャリオ・フィニーノがいる。二人の目の前には機能を停止した本多忠勝。
機能停止した忠勝を皆で運んできた・・という経路でここに忠勝がいる。転送魔法使えよと後に誰かにつっこまれた。
シャリオが半ば呆れながらも忠勝を見て、はやてにわざと聞こえるようにぼやく。
「何でここに連れてきたんでしょうか?まず医務室に行かせるべきだと思いますが・・・。」
「いや、このでかさで医務室に入れるわけないやん。」
はやては苦笑して反論、次第に腹黒い笑みを浮かべる。
「でも、シャーリーもちょお興味あるんやないか?こんなすごいバリアジャケットとデバイス。きっと驚くこともイッパイあるで?」
シャリオはその腹黒さに反応するかのように怪しい笑みを浮かべた。
「そうですねぇ・・・。気を失ってるところ悪いですがいろいろと調べさせてもらいましょうか。」
シャリオは嬉々とした表情で忠勝の両脇に置いてある装置をいじり始める。はやてもどことなく嬉しそうだ。
忠勝の体を光が包む。
「全長2m超え・・・体重は約一トン・・・ありえない・・・。」
顔から輝きが消え、次第に驚きへと変わる。
出力、装甲、武装、すべてがミッドチルダにはないものだった。調査結果を何度も見通す。
「・・・!!」
そして一つの項目でシャリオの顔が青くなる。
はやてもさすがに不安になって項目の結果を覗く。
「生命反応はあるのに・・中身が全部機械やて・・!?こいつ・・・ガジェットの仲間・・!?」
はやてはとんでもないものを拾ってきてしまったとちょっと後悔した。
「でも・・今までのタイプにはない形ですね・・ミッドチルダにはない物質でできてますし・・第一助けてくれたんでしょう?」
「そうなんやけどなぁ。」
三人して調査結果を覗く。・・・・ちなみに三人目は機動を開始した本多忠勝、その人であった。
二人とも振り向き、硬直。一人はそんな二人の状態に首を傾げる。
「・・・・・きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
数秒後、大きすぎる二人の悲鳴が聞こえた。

「・・・で、こいついったい何者だ?はやて。」
数分後、悲鳴を聞いたなのは達が乱入して忠勝は何もしていないのにバインドをかけられることで騒ぎは収まった。ただし人数が増えていた。
ヴィータになのは、シグナムにフェイトが増え、まさに隊長陣勢ぞろいである。ちなみにフォワード陣は廊下で待たされている。
忠勝はというと隊長陣の前で正座で座っている。正座で座っているはずなのに皆より大きいのだからまた驚き。
「それがわからないんよー・・・。敵じゃあないことを信じる限りなんだけど・・」
はやては顎に人差し指を添え、考え込む。フェイトが忠勝の顔を覗き込み、質問する。
「あなたのお名前、教えてくれませんか?」
「・・・・・・」
忠勝は答えない。前にも書いたように忠勝は「喋れない」のだ。
あたりを見回しメモ帳とペンを見つける。その二つを指差した。
「・・・?あれを貸してくれって?」
フェイトの問いに忠勝は頷く。フェイトは少し疑問に思ったものの、相手に不安を与えるわけにはいかないので素直にメモ帳とペンを手渡す。
そして第二の問題発生。忠勝は戦国時代出身。だから「ボールペン」なる物を握ったことがないのだ。もちろん見るのも初めて。
ボールペンを手に取り、ペン先を出さないまま書こうとしたためもちろんメモ帳は白紙のまま。
何回もペン先が出てないボールペンで文字を書こうとする。オロオロする忠勝。苦笑する隊長陣。しまいには吹き出す者もいた。
「え・・・えーと、こ・・これはね?こうやって・・・」
なんとか笑いを堪えながらボールペンのペン先を出すフェイト。もう一度文字を書くと今度はちゃんと書けている。
書いている最中の忠勝はちょっぴり恥ずかしそうだった。
「我、本多忠勝也。」
これがメモ帳に書いた答えだ。
この名前を見ると皆どこかで聞いたことがある名だと考え込む。必死に悩むなのは達を見て忠勝は結構有名である主の名前を出すことにした。
サラサラとメモ帳に文字を書いていく。もう使い慣れたのかというツッコミも聞き流す。書き終わるとその紙を皆に見せた。
「主の名前は、徳川家康。」
「うぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
なのは、はやて、フェイトが叫ぶ。
徳川家康といえば徳川幕府を築いた人物で歴史の教科書で何回もその名前を見てきたし、先生の口から聞いてきた。
その徳川家康がこんなものを持っていたとは聞いたことがない。ましてや、全身機械など戦国時代ではありえない。
「忠勝さんて忠勝さんて・・・えぇぇぇぇ!?嘘っ!?えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
ただどうしようもなくオロオロするなのは。
「た・・ただ・・・ただ・・・だ・・・忠勝さん!?うそじゃないよね!?」
一番近くにいたフェイトがしどろもどろになりながら忠勝に迫る。
忠勝はその異様なオーラに押されながらも頷く。
「狂ってる・・・絶対その戦国時代狂ってる・・・。」
へたり込むはやて。ちなみにシグナムとヴィータは話についてこれていない。
そんな中ついていけてない中の一人であるシャリオが恐る恐る手を上げ
「その・・・忠勝さん・・でしたっけ?これからどうするんですか?」
シャリオの言葉を聞いて皆はっとした。地球の戦国時代の住人(仮)がミッドチルダにいる。それは一つの答えに結びついていた。
ここにいる本多忠勝は「次元遭難者」なのだと。はやてはうーんと唸り、やがて何か思いついたように忠勝を見つめる。
「忠勝さん、うちらのところに来る気あらへん?」
なのは達はまた叫びそうになるのを抑え、それでもなのはは慌てながらはやてに問う。
「忠勝さん魔法使えないんだよ!?・・素直に民間人として・・・」
「んなこと言っても受け入れてくれるところあると思う?」
「うっ・・・・」
「だから機動六課に入れたほうが手っ取り早いと思うん。物騒やし・・・このまま街中で生活させても不便なだけやし・・何より、恩返しってのもあるんよ。」
仮に入れたとしていろいろ問題がありすぎる。メンバーリストに名をいきなりのせるわけにもいかない。
メンバーを入れたら入れたでちゃんと上に報告しなければならないなど社会の厳しさという壁がある。
フェイトがその点について聞くと・・・。
「忠勝さん、来客がある日は訓練所にいてくれへんかな?訓練用のドローンとして。」
恩返しと言っておいていきなりひどい扱いである。だが忠勝はここにお世話になるならこのくらいしなきゃならないだろうと思っていた。
ドローンとは何かわからないが誰かが来客するときは置物になっていればいいのだろうと勝手に解釈。
    • そんなこんなでなのはやフェイトの反対を押し切り、いろいろ矛盾点を残しながらも忠勝は機動六課にお世話になることに。

そんなわけであくる日の朝。来客がある日には訓練所で目覚めるのだが今日は来客の予定はない。
忠勝は宿舎の設けられた一室で目を覚ます。部屋とはいっても物置を急遽改装して作られた部屋なのだが本人はあまり気にしてはいない。
部屋を出て、誰もいない廊下を歩き外に出る。まだ外は完全に日は昇っておらず、まだ薄暗い状態だ。
腕組をして風景を眺める。やがて日の光があたりを照らし始める。これが六課に住んでからの日課であり密かな楽しみ。
「あ、忠勝さん。おはようございます。」
「おはようございますー。」
「キュクルー」
忠勝が振り返ると少年と少女、そして一匹の竜がいた。忠勝は頭を軽く下げて挨拶をした。つられて二人もお辞儀をする。
さて、その少年はエリオ、少女はキャロ。そして竜はフリードリヒ。ちなみに忠勝はフリードリヒと対面したとき大層不思議そうに首を傾げていたそうだ。
この二人が出てきたということは今日はライトニングが訓練装置の準備係なのだろうか。こんな小さいのにしっかりしてるなと忠勝は心から感心した。
二人と一匹が訓練所に向かう。それからしばらくして蒼いショートカットの少女とオレンジのツインテールの少女が出てきた。
「ただかつさーん!おはようございますー!」
「おはようございます。」
忠勝は先ほどと同じように軽く頭を下げて挨拶。
蒼髪の少女はスバル。オレンジの髪の少女はティアナだ。この二人と自己紹介した時はスバルが目を輝かせながら忠勝を見ていた。
ティアナはやっとスバルから開放された忠勝をさりげなく励ましたりしていた。
そして二人の背中を見送る・・・はずだった。
「あ、そうそう。忠勝さんも訓練所に来てくださいって、なのはさんが言ってました。」
「・・・・?」
この後特に予定はないがなんで呼ばれたんだろうと疑問に思いつつもついていくことにした。
自分の武器を持って来いと言われたのが非常に気になったのだが。
(これは主が言っていた「理由を考えたら負けだ!」というやつなのだろうか?)

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最終更新:2007年12月23日 22:33