魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~

第三話「忠勝、訓練をする。」

(・・・・眼福。)
それが訓練所に来た忠勝の感想であった。
忠勝の目の前にはスバル達となのはが戦闘の訓練をしている。スバルのウィングロードがあたりに広がり、ティアナの弾丸が宙を舞う。
そしてエリオのストラーダから吹き出す黄色い魔力、キャロが放つ桃色の魔力とフリードリヒの炎が交わる。
スバルの攻撃を避け、ティアナとエリオの一撃を防御。キャロとフリードリヒの攻撃を空中に形成しておいた魔力で相殺。
忠勝は魔法なんてものを見たことはないので不覚にも幻想的なその魔力と戦闘に見惚れていた。
「・・・どうですか?」
横から声が聞こえる。声がした方を向くと紫の髪の少女、ギンガがいた。ギンガともお互いに自己紹介を済ませている。何故か知らないがギンガは身構えていたのを覚えている。
大して気にしてはいないのだが。そのギンガの問いに何度も首を上下に振る。
忠勝の様子を見てギンガは微笑して隣に立つ。
ふと忠勝は考える。
(自分は・・もしかしてお荷物ではないのか?)
よくよく考えてみると自分は魔法なるものを使えない。腕っ節や槍の腕の自信はある。
しかしここに来て薄々わかったことがある。「ここでは魔法を使えないと意味はない」のだと。
戦闘にも魔法を使うし、どうやら日常生活にも「念話」という魔法を使うようだ。
自分は魔力なんてこれっぽっちもないから戦闘用魔法はもちろん、念話さえできない。そんな自分がここにいていいのか?と忠勝は悩む。
戦闘に見惚れて浮いていた自分の感情が一気に沈む。はっきり言って憂鬱だ。
「はい!訓練はここまで!」
「「「「あいがとうございました!!」」」」
そんなことを考えている内に訓練は終わったようだ。なのはが皆の今回の訓練でよかったところ、逆に悪かったところなどを述べている。
結局自分はついてくる必要はなかったじゃないか。槍も持ってきた意味はないな。
忠勝は背を向け歩き出す・・前になのはから声をかけられた。
「忠勝さん、あなたも六課にいる身だから・・訓練やっていかない?」
「・・・・・」
考え込む忠勝。その証拠なのか機械音が唸る。
確かにこの世界に来てから戦闘訓練や体を動かすことは最近やっていない。でも魔力を持ってない自分がこの世界の戦闘技術に通用するのだろうか。
ええぃ、もうどうにでもなれ。
槍を構え、大きく頷く忠勝。その後訓練所の一角にある広い廃墟に連れていかれた。
見上げるとフォワード陣と隊長陣。ちょっと待て、なんでヴィータとシグナムとフェイトまでいるんだとつっこみたくなった。
「準備はいいですか?」
シャリオが空中にキーボードを浮かばせて忠勝に向けて叫ぶ。
無論、準備は完了している。槍を天へと掲げてみせる。
「じゃあ設定は5体で・・・開始!!」
身を構える忠勝。地面に形成される魔法陣。そしてキーボードを覗くシグナム。
「・・・桁・・間違えてるぞ。」
「・・・え?」
地面からは設定数より二桁多い訓練用ガジェットドローンが出現した。
「ちょ!?シャーリー!?」
「何間違えてるの!?」
「ご・・・ごめんなさーい!」
通路を埋め尽くすほどのガジェットドローン。その数ざっと500。
何で間違えたのかは知らないがガジェットドローンは容赦なく忠勝へと向かっていく。
「は・・早く止め「待て!!」・・・?」
フェイトの言葉を遮ったのはヴィータの言葉。そしてヴィータは「マジかよ・・」といった顔で下を見ている。
「あいつ・・・やる気だ・・・」
その数秒後、全員の叫びがビルの屋上から響く。
そのビルの下、忠勝は槍を振るう。
横振りの一撃で数体、もう一回横振りで数体。下からの切り上げでまた数体。それから切り下げ。
そして足の裏をキャタピラを使い自身を回転させて突撃。腰から「ガキンッ!!」という機械音とともに周りにいるガジェットドローンが吹き飛ぶ。
槍の先端を回転させて一突き。そのまま刺さったガジェットドローンを鷲掴みし、放り投げる。遠くで起こる爆発。
(訓練用だからかもしれないが・・・攻撃動作が鈍いな。)
それが忠勝の第一感想。今まで忠勝が駆けてきた戦場はこのぐらい兵がいて当たり前だったし下手をすれば数千の兵と相手をしていた。
だから一対多に長けており、怯まずに攻撃を繰り出せている。
そのうち一体を潰すと一瞬目が黄色く光る。これで100体目だ。
(いける・・・これで自分はお荷物じゃないと証明できる!!)
攻撃を繰り出す忠勝はやけに楽しげだった。が、見学している者達としてはそれどころじゃなかった。
「ありえない・・・」
皆一斉にそう呟いた。
なのはやフェイト、ヴィータやシグナムは下手すると100体近くの敵と戦うときはあるが大体は魔力で一掃。それでも疲労感はある。
スバル達に関しては数十体ぐらいが限界だ。
そして忠勝はその数を軽く超えた500体を相手にしている。ちなみに今は350体いる。
信じられないというのが皆の気持ちだが目の前でああいう戦闘をされては信じるしかない。
何故か、ため息が出てしまう。

その頃の忠勝はいろんな意味でだるくなってきていた。
(さすがに皆を待たせては悪いな・・・。)
槍を地面に刺し、低く構えて精神統一。敵のど真ん中でそんなことをしていれば当然無防備になり一斉攻撃を食らう。
忠勝に向かう魔法の砲撃。それが当たる前に忠勝は空中で大の字になり、周りには黄色いオーラが流れた。

戦極ドライブ、発動。

戦極ドライブとは、忠勝がいた戦国時代の有名武将が全員持っていた技だ。
敵を100人倒すことで溢れ出す自分の中の「気」を興奮状態にさせたままそれを体内で必死に抑える。
そして抑えていた気を一気に開放する。それが戦極ドライブという技だ。
これを発動すると何のデメリットもなしに移動、攻撃、防御などのすべての身体能力などが上がる。
忠勝は背中の紋章から二門の大砲を生成、また低く構える。砲口からはわずかに稲妻が出ている。

忠勝、攻撃形態。

一気に砲口からプラズマエネルギーが放出。
蒼白い光が残りのガジェットドローンの身を包み、溶かしていく。
プラズマエネルギーが消えた後に黄色のオーラが蒼に変わり、そして消えた。
間接か煙を噴出し地に降り立つは戦国最強本多忠勝。
彼の目の前には削れた地面と崩れたビルと青空以外、何もなかった。

「・・・ガジェットドローンの反応・・・ありません・・・」
シャリオの言葉が響くが皆は硬直して動かない。
忠勝は背中のロケットでビルの屋上へと行き、軽くお辞儀をする。それでも動かない皆を見て不安に見てまたオロオロしだす忠勝。
「すごぉぉぉぉぉぉぉいっ!!」
沈黙を破ったのはスバルの一声。それから皆からの感想を叫ばれさらに忠勝はオロオロする。
ついには叩かれもみくちゃにされ踏んだり蹴ったり。
埒が明かないので忠勝はロケットを展開して、逃げた。

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最終更新:2007年12月24日 10:29