魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~
第四話「忠勝と予言、そして鬼」
「ククク・・まさかこんなデータが手に入るとはねぇ・・・。」
とある地下にある研究所。ここで紫の髪に白衣を着た男性、ジェイル・スカリエッティは立っている。
彼の目の前にはモニターに映し出されたなのは達六課メンバー。そして、本多忠勝。
「こんなものが六課にあったとは・・いやいや、流石の私も驚いたよ。」
本多忠勝の映像だけがアップになり色々な項目が浮き出る。スカリエッティはふむ、と唸る。その顔はまさに純粋に何かを楽しむ子供の様。
そんな彼の横に薄い紫の髪の女性が現れる。ナンバーズの1番目、ウーノだ。
「ドクター。これをどうするおつもりで?」
「ククク・・・久しぶりに別の方向に研究意欲が向いてきたよ!!」
長年付き添っているウーノはその言葉だけでドクターがこれから行おうとすることが理解できた。
「ではドクター、材料はどうするおつもりで?」
「そんなもの、何かで代用すればいいだけのこと!クククク・・・ハハハハハハハハハ!!」
高笑いをして研究所の奥へと消えていくスカリエッティ、その後をついていくウーノ。
誰もいなくなったその一室に本多忠勝のモニターをじっと見つめる隻眼の少女が立っていた。
その少女が思うはモニター越しに見える強者への期待。自然と腕がうずいてしまう。
いつしか対決するであろう強者に思いを膨らませ、隻眼の少女は立ち去る。
「もし戦うことがあれば・・・私の期待を裏切ってくれるなよ・・。」
少女、チンクの呟きが響いた。
所変わってここは聖王教会の廊下。
その場所にはなのは、フェイト、はやてという隊長三人。その後ろには何故か忠勝がいる。
時々刺さる視線が痛い。
「じゃあ、入ろうか。」
はやてがノックするとドアが開き、奥からフェイトより少し薄い金髪の女性が現れた。
「失礼します。高町なのは一等空尉であります。」
「フェイト・T・ハラオウン執務官です。」
二人が背筋を伸ばし、敬礼をする。金髪の女性はそんな二人に対して優しく微笑む。
「いらっしゃい。はじめまして。聖王教会教会騎士団、騎士、カリム・グラシアと申します。どうぞ、こちらへ。」
そう案内されて三人は奥のテーブルへと案内される。テーブルの椅子には一人の黒髪の男性が座っていた。
「失礼します。」と言ってから二人は席に座る。
「クロノ提督、少しお久しぶりです。」
「ああ。フェイト執務官。」
クロノと呼ばれた男性はその威厳のある表情のまま、フェイトと挨拶。
そんな二人を見てカリムはクス、と笑った。
「二人とも、そう固くならないで。私たちは個人的にも友人だから。いつもどおりで平気ですよ?」
カリムの言葉にクロノは「やれやれ」といった表情をする。
「と、騎士カリムが仰せだ。普段と同じで。」
「平気や。」
「じゃあ、クロノ君、久しぶり。」
「お兄ちゃん、元気だった?」
フェイトの言葉に一瞬クロノはドキッとして、それから少し照れた表情に。
「それはよせ。お互いいい年だぞ?」
「兄妹関係に年齢は関係ないよ。クロノ?」
「・・・・」
クロノの抵抗の言葉にフェイトはさらりと対処。クロノは肩を落とす。
そんな二人の姿を見て、つい笑みがこぼれてしまう。
「あれ?忠勝さんは?」
なのははもう一人いないことに気づく。その人は何故かここに連れてこられた忠勝だ。
「忠勝さーん。入ってきていいんだよー?」
忠勝とは誰か?日本名であることを考えるとなのは達の友人なのだろうか?とクロノとカリムは思う。
しかし入ってきたのは想像を真っ向から打ち破り、いや、砕いた黒い鎧の巨人。
しばらく流れる沈黙。「あちゃー」という表情をするなのは達三人。一方の忠勝はもう慣れたみたいだ。とりあえず頭を掻いておく。
「な・・何なんだ?このミスター質量兵器は?」
「えっと・・・六課脅威のメカニズムや!」
「違うでしょ、はやてちゃん。えっとね、こちらは本多忠勝さん。私達に協力してくれている人なの。」
「というか人なのでしょうか・・・?」
まただ。自分を見るその視線が痛い。こんな姿を主に見せられない。戦国最強も形無しである。
フェイトがコホン、と咳払いをすると喋れない自分の代わりに自己紹介をしてくれた。
「この人は本多忠勝さん。なのはやはやての世界の戦国時代からこの世界に飛んできたんだって。とっても強いんだ。」
いや魔法を使える貴殿らのほうが十分強いですよと言いたくなったが喋れないので心の中にしまっておくことにした。
お辞儀をすると二人も頭を下げて返してくれた。
「でも忠勝さん・・でしたっけ。連れてきたんですか?」
そこは自分も気になってたことだ。納得のいく答えを期待しているぞはやて殿。
「うん・・六課にいるから、クロノ君達にも会わせておかんとなーって。」
来客や外部の者には会わない約束をしたような気がするが忠勝は堪える。
苦笑するクロノとカリム。
正直それからの話は忠勝は自分に関係ない話だったためあまり覚えていない。
唯一気になることがあるならば予言の「崩れ落ちる鉄の城」というフレーズだ。その言葉を聞いた時忠勝は寒気を覚えた。
まさか自分が死してしまうのだろうか?不安になってきた。そして「白銀(しろがね)の城」。
自分の意思を継いでくれる者がいる・・ということだろうか?
どうしても不安がぬぐえないまま六課に戻った。
自室に戻ろうとするとはやてに呼び止められた。
「あの・・忠勝さん。カリムの予言の崩れ落ちる鉄の城・・・って忠勝さんも感じてるとおり・・貴方だと思うん。」
俯いて言いにくそうに言葉を口にするはやて。忠勝は何もせず、黙って聞く。
「でも・・・あれは割りとよく当たる占い・・ってカリムも言うてたし・・第一・・・ウチや・・ウチ等六課メンバーが・・そんなことさせへんから!」
振り絞って出した言葉。言い切ったはやては少し呼吸を荒くしている。顔は俯いたままだ。
そんな彼女を見て忠勝は何も言えない。だから手を伸ばし、不器用ながらもはやての頭を撫でる。
「!」
もうちょっと鬼が島の鬼に男気・・というものを学んだほうがよかったな。と心底思いながら忠勝は自室へ戻った。
途中で金髪の子供と遭遇し、泣かれてエライことにはなったが。
また所変わり管理局地上本部。
窓辺に佇む中年の男と女性。
「連中が何を企んでいるやら知らんが、土に塗れ、血を流して地上の平和を守ってきたのは我々だ。それを軽んじる海の連中や蒙昧な教会連中にいいようにされてたまるものか!
何より、最高協議会は我々の味方だ。そうだろう?オーリス?」
「はい。」
「査察では、教会や本局を叩けそうな材料を探して「ハァッハッハッハ!いけねぇなぁオッサンよぉ!」・・・誰だ?」
中年の男が振り向くとそこには銀髪に隻眼、上半身裸で巨大な錨みたいなものを持った男がいた。
「・・誰だ?」
「んなことより、オッサンのその性格を直したほうがいいぜ?反吐がでらァ。」
「何!?」
中年の男、レジアスの殺気を込めた表情をしばらく見つめ、男は鼻で笑う。
「権力とか、そういう事の前に部下を大事にしたり協力する・・・というのも必要だぜ?っとぉ、機動六課とやらの宿舎は・・あっちゃあ。えらく離れてやがるな。」
地図を眺め豪快に笑いながら背を向ける男。
「待て!!貴様は誰だ!!返答次第によっては貴様を・・・・」
言い切る前に男は殺気を込めた視線を送る。その殺気は先ほどのレジアスが放っていた殺気を遥かに上回るものだった。
思わず硬直してしまうレジアス。そしてまた豪快に笑い出す男。
「あんたに名乗る名前は鬼が島の鬼・・・ぐらいしかねぇよ。じゃあな!その六課とやらにお友達が待っているんでな!!」
男は巨大な錨の上に乗り、サーフィンみたいに滑りながら去っていった。室内で。
最終更新:2007年12月24日 13:37