魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~

第六話「その日、機動六課。そして崩れ落ちる城(前編)」


忠勝は六課のヘリポートに立つ。
どうやら何かの警備らしい。どちらにしろ自分は居候の身なので行けない。
「じゃあ・・・忠勝さん、ヴィヴィオを・・お願いね。」
なのはとフェイトが少し寂しそうにヘリという空を翔る船に乗る。ヴィヴィオも寂しいのだろう顔が不安で染まっている。
しかしこれも仕事。三人もよくわかっているはずだ。このままでは埒が明かないので、心を鬼にしてヴィヴィオを連れてその場から去った。
「忠勝っ・・・」
ヴィータが何か言いそうだったのをシグナムが止める。
「言うな。本多も・・・辛いんだ。」
皆が乗ったヘリは管理局地上本部へと向かった。予言が現実になるまで・・・あとわずか。

有名な管理局員が集まる管理局地上本部。
ニュース番組にてレポートが始まり、現場にいけなかったメンバーはそれぞれの思いでモニターに目を向ける。
「公開意見陳述会開始まで、あと三時間を切りました。本局や各世界代表による、ミッドチルダ地上管理局の運営に関する意見交換が目的のこの会議。
波乱続きとなることが珍しくなく、地上本部からの陳述内容について注目が集まっています。今回は特に、かねてから議論が絶えない、地上防衛用の迎撃
兵器「アインヘリアル」の運用についての問題が話し合われると思われます。」
忠勝も、モニターに眼を向ける。ヴィヴィオは今、アイナが相手をしてくれている。
「陳述会の開始まで、ライブの映像とともに、実況を続けていきます。」
忠勝は立ち上がり、何もないことを祈りながら外に出ることにした。
外に出ると、隣からこの世界にいるはずのない見知った男が現れた。その男は巨大な錨を持ち、真剣な面持ちで忠勝に話しかけた。
「いよぉ、戦国最強本多忠勝さんよ。今日はなンか重要な日らしいな。」
男の名は長曾我部元親。戦国の世では何度か戦ったことがある。忠勝は槍を構えた。
「おいおい、ここで戦闘したってしゃあねぇだろ。一応俺はアンタに話をしにきた。風魔もいるんだがな、怪我をしちまってて来れねぇ。」
忠勝は槍を下ろし、また誰もいない門へと顔を向けた。向けたというよりかは、睨んでいる。
嫌な予感が彼の頭から離れなかったのだ。だからこうして、門の向こう側から映える太陽を眺める。
それぐらいしか気を紛らわすことができなかった。
「それで・・・俺達がこの世界に来た理由・・・ちょっとずつ・・・憶測だがわかってきたぜ。」
「!?」
「まぁ落ち着け・・・。俺等より前に生死不明になったやつ等がいてよ・・そいつらが関係してるみてぇだ。」
自分達より生死不明になった武将・・。
考え込んでからしばらく経ったあと、忠勝はハッとしたように元親の顔を見る。
「そうだ・・・魔王のオッサン・・・織田信長、その配下・・・明智光秀。この二人は本能寺で明智光秀が謀反を起こし、崩れ去る本能寺の中で
斬り合ってたのを最後に、サッパリ姿形消えちまった。」
その話は自分も知っている。
炎で焼け落ちる本能寺の中で斬り合ってた魔王と悪臣。崩れ落ちた本能寺の瓦礫を掃除しても遺体すらなかったという。
残るはずの武器も消えていた。つまり、もしかしたら自分達より先にこの世界に来たのかもしれない。
「・・・で、この世界に来てから知ったんだが・・次元震っつーもんがあるらしいぜ。一見普通の地震と変わらねぇがその地震によって次元と次元を
繋げる穴がポッカリと開いちまうことなんだ。多分、あの二人の大きすぎる邪気に引き寄せられたんだろう。偶然にも謀反の時に、地震が起こったという証言も聞いた。
で、その二人があっちに行っちまったことで・・・なんつーんだ。その穴がゴチャゴチャになっちまって、穴ができやすくなって・・あとは知ってのとおりだ。」
その話を聞いても一つ納得がいかない。
何で元親は自分がここにいることをわかったのか。自分の存在は特定の人以外は秘密のはずだし、何よりこの世界に慣れてないはずの元親がそんなことを知ってるのか。
忠勝はわずかに赤く光る眼で元親を睨みつける。大体の内容を理解した元親はため息をついて説明する。
「聖王教会だかなんだかしらんが、そういうとこに拾ってもらった・・そういうわけだ。」
忠勝は、少し同情した。

「IS発動、ランブルデトネイター。」
「遠隔召喚・・・開始。」
そのころ地上管理局本部では、惨劇が起こっていた。
爆発音が響く。倒れていく人たち。進入するガジェットドローン。
その数は軽く1000を超えている。
中にはまだ人が残っている。走るフォワードメンバーとヴィータ、リィン。
「本部に向かって・・航空戦力・・・!?速い・・・!!」
「ランク・・推定オーバーS!!」
ロングアーチからの連絡を聞き、ヴィータは走りながらリィンを呼ぶ。
「そっちは、あたしとリィンが上がる!!地上は、こいつらがやる!!」
ポケットから待機状態のシュベルトクロイツとレヴァンテインを取り出し、ティアナに渡す。
「こいつらのことを・・・頼んだ!」
「届けてあげてくださいです!」
「「「「はい!」」」」
スバル達と別れるヴィータ。
ヴィータは赤い光、リィンは蒼白い光となり、一つになる。
「ユニゾン・イン!」
普段の真紅に染まったゴスロリ風のバリアジャケットが生成されてからバリアジャケットが純白へと染まる。
ユニゾン・インしたヴィータとリィンは、まだ見ぬ敵の元へと飛んでいく。そして
「ギガントハンマー!!」
「外したです!」
雲が消えたその空に浮かぶは茶髪だった男。今は髪が金に染まり、赤き眼光をヴィータにへと向ける。
その男の名は、ゼスト。
そしてその騒ぎの中、別々の場所でガジェットドローンが出てくるはずの魔方陣からは、二つの人影が出ていた。

一方ーー
「うわぁぁ!」
突然の襲撃者の攻撃に吹き飛ぶスバル。
ティアナ達は桃色の魔力に囲まれ動けない状態となっていた。
「ノーヴェ、作業内容忘れてないっすか~?」
ノーヴェと呼ばれたスバルによく似た赤髪の少女はそっけない態度で返事をする。
「うるせーよ。忘れてねぇ。」
奥から出てきた大きなサーフボードのような機械を持った少女、ウェンディがからかうように語る。
「捕獲対象三名。全部生かしたまま持って帰るんすよー?」
「・・・旧式とはいえ、タイプ0がこれくらいでつぶれるかよ。」
「・・・・戦闘・・・・機人・・・」
その二人の少女の姿を見てポツリとつぶやくスバル。
「ふっふーん?あたし達だけじゃないっすよー?」
その背後には無数のガジェットドローン。
「絶対絶命ってやつね・・これは・・・。」
ティアナが敵を思い切り睨みつけながら銃口を向ける。
「それでも・・やらなきゃいけない・・・」
ストラーダの切っ先を向ける。
「それが・・・私達の今やるべきこと!」
「キュクルー!」
ケリュケイオンを桃色に光らせ、戦意を見せるキャロとフリード。
「ちっ・・・。だったら!」
まず先手を切ったのはノーヴェ。黄色のウィングロードを発動させてスバルへと突撃。
「くっ・・・!」
スバルも突撃。そして拳と拳がぶつかり合う。すぐさまスバルは離れ、その離れた隙をついてティアナが射撃。
ノーヴェは回避して後ろに回りこみ、ティアナに蹴りを喰らわせようと、突撃する。
ティアナに当たったと思ったらティアナの姿は光の塵となって消えた。
「・・・幻影!?」
蹴りの衝撃であたりに砂塵が起こり、ウェンディが眼球に内蔵されているカメラであたりを見ると、四人ではなく、
数十人に増えたスバル達であった。
「うっそぉ!?・・なーんてね!」
一見成功したかに見えたこの作戦、だが二人の少女の悲鳴によって失敗に終わる。
「きゃあぁぁぁ!!」
「このっ・・・はなせぇ!」
ガジェットドローン参型の機械の触手に捕らえのは幻術を発動させていたティアナ、キャロの二人であった。
殴りかかろうとしていたスバル、切りかかろうとしていたエリオはその悲鳴によって動きを止められた。
「策を作るときは常に相手の裏を突け・・・。松永のおっちゃんが言ってたことがこんなとこで役に立つとはな。」
「さぁ、人質もいることだし、ついてきてもらうっすよ~?」
本当に絶体絶命かと思われたその刹那、手裏剣がティアナとキャロを捕らえていた触手を切り裂いた。
爆発の砂塵の中、スバルが目にしたのは見覚えのある赤髪。
「風魔・・・さん?」
その名を呟いた瞬間、その赤髪の人影の中心の砂塵が晴れる。そこに立っていたのは迷彩服を着ていた男。
手には少し大きい手裏剣が二つ。
「悪いけど、俺伝説の忍って呼ばれるほど働くの好きじゃないのよね~。ま、俺のほうがいい男だろ?」
その男を殺気を込めた目つきで睨み、構えるノーヴェ。
「・・誰だ。」
並の人なら逃げ出しているであろうその殺気を受けても不敵に笑うと手裏剣をヨーヨーのようにもてあそぶ。
数秒すると男の眼光が鋭くなっていた。
「人呼んで猿飛佐助。さぁーて、お前に俺の動きが見切れるかな?あ、言っとくけど一人じゃないよ?」
「何?」
その瞬間、装甲がボコボコにへこみ、上半分が引きちぎられたガジェットドローンの残骸が吹き飛んできた。
残骸を見て目を見開き、驚愕するノーヴェとウェンディ。
「フン・・・これしきで我に挑むとは・・・片腹痛いわ。」
奥から現れたのは人間にしては大きすぎる身長、体格をした男。片手にはボロボロになったガジェットドローンが握られている。
「我が名は豊臣秀吉・・・。貴様等は我を楽しませてくれるのだろうな・・・?」
二人の武将が、並んでノーヴェ達二人を睨む。

「・・・あ、お嬢ちゃん達早く行ってくれないかな?」
「あ・・・はい!撤退ー!!」
突然の乱入者にわけがわからないままスバル達は隊長の下へと走る。

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最終更新:2007年12月26日 10:50