魔法少女フルメタなのは第三話「新たな生活」

機動六課内 訓練場
ここでは現在、六課フォワードメンバーと、嘱託魔道士二名が魔法戦の訓練を行っていた。

「はい皆そこまで~。次は模擬戦だよ。」
なのはがそう言い、六人は手を止めて集まって来る。
「今日の模擬戦は私とじゃなくて、嘱託の二人対正規メンバーでやってもらうよ。」
「相良さん達とですか?」
「うん。二人の覚えた魔法のチェックも兼ねてね。」
「よろしく頼む。」
「お手柔らかにな~。」宗介、クルツの両名が四人と向き合う。

「相良さん、今日は負けませんよ!」
「自分の意志は言葉でなく行動で示せ、ナカジマ。」
宗介とスバル、
「クルツさん、今日こそは倒させてもらいます。」
「おいおい、もっと気楽に行こうぜティアナちゃ~ん。」
クルツとティアナがそれぞれ言う。

実はこの四人宗介達が嘱託となった時に一度模擬戦をしており、スバルとティアナはその時にボロ負けしたのだ。
あたし達、あれから猛練習したんです。この前の二の舞にはなりません!」
「二度言わせるな。意志は行動で示せ。アーバレスト!」
「よし、俺もいくぜ。M9!」
『『了解、起動します。』』


宗介達が嘱託魔道士となったのは、次の様な経緯がある。
シャマルが運ばれてきた二人の男を検査した時に、体内から大型のリンカーコア反応を検知したのだ。
その報告に興味を持ったのが、六課のちび狸…もとい部隊長のはやてである。

戦力の確保に貪欲な彼女は、「管理局に協力すればより早く元の世界の座標を調べ、当面の生活も保証する」
という条件を持って来て、尚且つ管理局の規則やリミッターからも逃れられる嘱託魔道士という形での協力を求めたのだ。
異世界でのアテなどある筈のない二人は、少し悩んだ後承諾したのである。
「ほな、これは君らに返さんとな。」そう言ってはやては鞄から白と灰色の宝石の様なものを取り出し、二人に渡す。
「これは?」
「インテリジェントデバイスや。君達専用のな。」
「俺達専用?それはどういう…」
『ただ今戻りました軍曹殿。二日振りですね。』

「アルか!?」
聞き慣れた男性の機械音声が響き、宗介は驚く。」
『肯定。姿はだいぶ変わりましたが、私は私のままです。』
アルは以前と変わらぬ抑揚のない声で言う。
「何故アルがデバイスとやらになっているんだ?」
「えーとね…見つけた時はまだロボットだったんだけど…触れたらなんかそうなっちゃったの…」
なのはが言い辛そうに説明する。
「俺のM9もか…」
呟くようにクルツが言う。
「とにかく、うちのデバイスマイスターに見てもろたけど、デバイスとしての使用に問題はないそうや。
その子ら使って、魔道士としての仕事に励んでや。」

だが二人は…
(元の世界に戻った時、上に何と報告すれば…)
(M9て確か数千万ドルだよな…もし弁償になったら…)
拭い切れない不安に、表情を暗くしていた。

その後紆余曲折あったものの、何とか二人とも試験をパスし、現在に至る。
「アル!」
「M9!」
叫んだ二人の身体が光に包まれ、バリアジャケットが装着される。
宗介のは全体的に白く、肩回りが大きく張り出したデザインで、腰にはショットガンの様な銃型デバイスが付いている。
クルツのは上腕全体を覆う装甲板と、色が灰色な所以外は宗介のと似通っており、手には大きなライフルを持っていた。

「それでは模擬戦、スタート!」
なのはの合図を皮切りに、六人は瞬時に動き始めた。
宗介はショットガンを前方に構え、クルツは転移魔法で狙撃ポイントに移動する。
「うおおお!!」
突っ込んできたスバルに牽制の魔力散弾を撃つが、素早く回避され距離を詰められる。
「センスは良いが攻撃は一直線だな。アル、GRAW‐2!」
『了解。GRAW‐2』
宗介の左脇の兵装ラックが開き、そこから大型のナイフが表れた。
『魔力刃、展開します。』
アルがそう言うと、青みがかった白い魔力が刃の部分に集まり、発光する。
(余談だが、この魔力刃は高速で動いている為、ナイフと言うよりチェーンソーに近い武器となる。)
体を捻ってスバルの一撃を避けた宗は、体を戻す勢いを利用して斬り掛かる。スバルは咄嗟に左の手甲で防ぐが、GRAW‐2の威力に体勢を崩す。

「うわっ!」
宗介はその隙を見逃さず、ショットガンをスバルの腹に押し付けた。
「寝ていろ。」
ズドン!!
言うと同時にトリガーを引き、零距離で散弾を食らったスバルは吹き飛んだ。

「スバルさん!くっそー!!」
ストラーダを構え、ソニックムーヴで迫るエリオ。
だが宗介は顔色一つ変えず、ショットガンをしまいながら命じた。
「アル、ATDだ。」
『了解。ATD』
すると宗介の手の中に投げナイフ型の凝縮魔力が形成され、それをエリオに向けて放った。
エリオは障壁を張るが、ATDはその障壁に刺さり、爆発を起こす。
「うわあっ!!」
エリオが怯んだその一瞬で宗介は背後に回り、エリオを俯せに倒す。
そしてGRAW‐2を首筋に当てて気絶させ一言、
「訓練が足らんな。」
と言った。


その頃後衛組は、

ズガン!
「くっ、このままじゃ…」
クルツの狙撃により、身動きが取れないでいた。
二人は現在、物陰に隠れている状態である。
「キャロ、アイツの位置は?」
「だめです、特定出来ません。見つけてもすぐに場所を移されるんです。」
「ちぃっ…こうなったら!」

「悪ィけど、援護には行かせないぜ。子猫ちゃん達。」
クルツはビルの屋上から屋上へと転移魔法を使い、ポイントを移しながら狙撃を続けていた。
「ホントは女の子をイジメるのって嫌いなんだがな…ん?」
スコープを覗いていたクルツは眼下で起こった出来事に目を見張る。

そこには、ティアナのフェイクシルエットによる多数の幻影が、四方八方に飛び出すという光景があった。
「ワ~オ、美女大増量だぜ。でもね~ティアナちゃん、俺は偽物には興味ないのよ。M9。」
『はい、ウェーバー軍曹殿。』
「“妖精の目”を発動だ。」
『了解。“妖精の目”起動』
スコープの先に緑色の魔力フィルターが表れる。

そのフィルター越しにスコープを覗くと、多数の人型の魔力の中を移動するティアナとキャロの姿がはっきりと映っている。

「見つけたぜ子猫ちゃん。」
言うと同時にクルツは鈍色の魔力弾を発射する。
「キュウッ!」
「フリード!キャッ!?」
魔力弾が連続で命中し、落下するフリードとキャロ。
「嘘でしょ!?この数の幻影の中で本物を見つけるなんて…キャアッ!」
ティアナの頭部と胴体にも命中して、ティアナは倒れ伏した。」

「ハイ終わり、と。やっぱ良い気分はしねぇな…」
金髪碧眼の天才狙撃手は一人呟いた。


「クルツの方も終わったか。これで模擬戦は…」
宗介はそこまで言い、背後の殺気に気付く。

「ディバィィィン、バスタァァー!!」
いつの間にか復活していたスバルが、宗介に向けて魔力スフィアを撃ち出す。

しかし、その瞬間アーバレストの背面装甲が開き、放熱板が出て来る。
そして宗介の目前に迫った魔力スフィアは、発生した不可視の壁に遮られる。
「いっ!!?」
自身の全力の技を止められ、スバルは驚愕に目を見開く。


『ラムダ・ドライバ、正常に展開。』
「ふう…デバイスでの発動は初めてだったが、何とか上手くいったな。」
『肯定。私も作動を確認できて一安心です。』
「…お前がそれを言うか?」
『何しろこんな状態ですので。機能があるのは分かるのですが、発動するかどうかは疑問でした。』
「………」
ここでも漫才する一人と一機。

「相良さん、何なんですかそれ!?」
「アーバレストの特殊機能だ。魔法とはまた別のな。」
事も無げに言う宗介。
「特殊機能ってそんな、ズルイ!!」
「戦場でズルイもくそもあるか。今度こそ寝ていろ。」

ラムダ・ドライバの効果を魔力弾に付加し、発射する宗介。スバルは障壁で防ぐも、魔力弾は弾かれる事なく突き進み、遂には障壁を貫通、スバルはまたしても吹き飛ばされた。
「そ、そんなぁ~…」
スバルが目を回して完全にダウンした所で、この日の模擬戦は終了した。


「今日の訓練はここまで。後は皆しっかり休んでね。」
「ありがとうございましたぁ~…」
グロッキーとなった四人はふらついた足取りで宿舎へ戻っていく。
シャーリーにデバイスを預けその後を追う宗介だが、クルツに
「話がある。後でロビーに来い。」
と言われる。

「それで話とは何だ、クルツ?」
着替えを終え、ロビーにやって来た宗介。
「お前よ、今日一日ずーっとイラついたまま訓練してたろ?」
「…何を言って「とぼけるんじゃねぇ。」
宗介の言葉を遮るクルツ。
「ダテに長く相棒やってねぇよ。表情の変化くらい分かるさ。今のオメーは情緒不安定ですって面してるよ。」

自分の心情を言い当てられ、押黙る宗介。
「大方、元の世界になかなか戻れねぇ事に不満なんだろ?それと向こうの連中、特にカナメを気に
してるって所か。」
宗介は自分が守ると言った、大切な女性を思い出す。
「ああ、お前の言う通りだ。」
「ったく、前にも言ったろ?オメーの悪い所は、マジメすぎて一人で戦争してる気になってる事だって。俺らがいなくなったからって簡単にやられる程ヤワな連中か、西太平洋戦隊は?
それにカナメだって、お前がいなくなったからってダメになる娘じゃねぇだろ?」

その言葉に宗介ははっとする。
(そうだ、あの娘は千鳥かなめ。俺の事を信じてくれた娘だ。そんな彼女を俺が信じてやらないでどうするんだ。)
「じたばたしたって始まらねぇんだ。ここで俺達が出来る事を全てやる、それでいいじゃねぇか。今は彼女達が助けるべき“仲間”なんだしよ。」
「…そうだな。すまないクルツ、心配をかけたな。」

それを聞いたクルツはニカッと笑い、叫んだ。
「よ~し!!では青少年の悩みが解決した所でぇ、今日は飲むぞ、皆!!!」
「おーっ!!」(×11)物陰から突然出て来たはやてとシャマルを含むフォワードメンバーに、宗介はギクリとする。
「なっ…!」
「相良君には黙っとったけどな、今日は二人の歓迎会するんや。相良君普通に言っても驚きそうに見えへんかったからなぁ~。」
「にゃはは、悩んだままお祝いしてもつまらないから、終わった後でって事で隠れてたんだ。」
「レクリエーションルームに準備してあるんですよ。早く行きましょう。」
「カナメさんて人の事、詳しく聞かせてもらいますからね~。」
スバルとティアナに両脇から押さえられ、呆然としたまま強制連行される宗介だった。


尚、この後の歓迎会で、はやてが酔って服を脱ぎ始めたとか、クルツがそれを手伝おうとしてヴォルケンズにボコボコにされたとか、スバル達に無理やり酒を飲まされた宗介がヤバイ事になったとか、色々とあったのだが、それはまた別のお話。

続く

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最終更新:2007年12月28日 10:02