魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 番外編 Bad End 回避シナリオ。
超蛇足的夢オチEND。
彼が目を覚まして最初に感じたのは自分の顔が濡れていた事だった。どうやら寝ている間に泣いていたらしい。
彼が隣を見ると昨日は隣で寝ていた筈の彼女の姿が無かった。
確か昨日は彼の部屋に泊まりに来た筈だったが今は影も形も無い。
枕元に散らばった彼女の桜色の長く美しい髪が確かに彼女の存在がここにあった事を教えていが、先ほどの悪夢の残留がその認識を阻害する。
その時寝室のドアが開かれる。
現われたのはエプロンを掛け、昨晩のままに解かれてストレートに下ろされた桜色の髪を揺らした最愛の烈火の将の姿だった。
「もう朝食だぞバージル」
シグナムが声を掛けるがバージルは唖然としているような顔で何も言わない。
「どうした? 今日は休みだからといって、まだ寝ボケているのか?」
「………」
だがバージルはシグナムのそんな言葉にも無反応で彼女の顔を食い入るように見つめ続ける。
「何だ? もしかして何か顔に付いているのか?」
そのシグナムの問いにも答えず、バージルはおもむろに立ち上がるとシグナムに近づいていった。
「どうしたバー…ひゃっ!」
シグナムが言葉を言い切る前にバージルは彼女の身体を抱き寄せた。
「どうした? いきなり…」
「………」
バージルは何も言わずにシグナムの身体を力の限り抱きしめる。
「ちょっ…苦しい…本当にどうしたんだ?」
服越しに伝わる彼女の身体の温もりと柔らかい感触が、鼻腔を満たす彼女の髪の甘い香りが、耳に響く彼女の澄んだ声が、やっとこの場所が悪夢でないとバージルに教えた。
バージルのその様子にシグナムは心配そうに口を開いた。
「何か悪い夢でも見たのか?」
「……ああ」
「そうか…」
シグナムはバージルの言葉を聞くとその背に手を回して優しく抱き返しながら彼の耳元で囁いた。
「大丈夫だ……私はここにいるから」
そのシグナムの優しい言葉に心を落ち着けたバージルはやっと平静を取り戻して言葉を返した。
「……すまんな…みっともない所を見せて」
「もうすぐ夫婦になるのだ、気にするな」
「シグナム~味噌汁の鍋に火かかったままだったぞ~。バージルの旦那起こすのにどんだけ…」
その二人の下にフワフワと宙に浮かんで融合型デバイスの少女アギトがやって来る、そしてアギトは寝室で抱き合っていたバージルとシグナムを見て言葉を失って固まった。
「アギト、これはだな…」
「お、お邪魔しました~!! 2時間ぐらい外行ってるから、ごゆっくりどうぞ!!!」
アギトはそう言うと凄まじい速さで部屋を後にした。
「なんだか…勘違いさせてしまったな…」
「だな」
「それでは朝食にするか」
「ああ。二人きりというのも悪くは無い」
二人はそう言いながら食卓へと向かった。
こうして今日も平和に世界は回る。
Happy End
最終更新:2008年01月29日 22:35