魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~

第十二話「starlight and steel」

ゆりかご内部、ヴィータと別れて玉座の間に向かうなのはと忠勝。
心配は心配なのだが今は自分に与えられた任務を全うすべき。自分もそう思っていた。
途中で感じる違和感。それは誰かがこちらに向けてくる殺気。自分が立ち止まるとなのはも止まり
「どうしたの?」
今ここでなのはを攻撃されてはまずい。手を奥のほうへ突き出し「先に行け」と目で訴える。
最後まで疑問を浮かべていたが先に言ってくれた。あとはその違和感の元を立つのみ。槍を出すといきなり少女が現れ肩に触れる。
触れた肩に違和感が。中に何かを流されたみたいな感じがする。少女は自分の正面に立つ。
「IS発動、ランブルデトネイター。」
刹那、触れた肩が爆発した。幸いなことにあまり重症ではないが先端が欠けている。
目の前に立つ隻眼の少女は殺気を放った目でこちらを見ていた。敵だ。今のでそう確信できた。
槍を振るう直前に小さな刀が目の前を飛ぶ。振り払おうとした瞬間、また爆発。
こいつは敵であると同時に、自分とは相性の悪い能力を持っているようだ。

交差するウィングロード。ぶつかり合う拳。その下で舞う邪気、飛ぶ手裏剣。
スバル、ギンガ、小太郎、光秀の戦いはまだ続いている。
「くぅううぅ……!」
「………。」
ギンガの攻撃をバリアで防ぐスバルだったがギンガの手首がいきなり回転し始めた。手がドリルのようになり、
スバルの結界を砕く。ドリルは止まらずスバルの肩を襲い、少しだが肉を抉る。
「くぅ…あぁぁぁっ!」
落下してさらにギンガの追撃を食らってしまい、道路にその体を叩きつけられた。
下では光秀の鎌が小太郎の腹を切り裂いた。傷は浅いのだがやはり激痛が走る。
光秀は自分より傷が多いはずなのに笑いながら立っている。恐ろしい男だ。
俯いて何か呟いているが無防備。チャンスは今しかない。忍者刀を構えて走り出すが刹那、顔を上げた光秀の妖しく緑に光る目を見ると体が動かなくなった。
「!!」
無防備になった小太郎を襲う鎌。痛い。確かに痛いのだが傷は出来ていない。それどころか自分の傷が緑色の球体となって光秀のあたりに浮いている。
吹き飛ばされて攻撃が止まったと思い前を見ると球体が光秀の中に吸収されて自分が与えた傷が治っていく。
「ごちそうさまです…。」
妖しく笑う光秀、全身に寒気と恐怖が走る。だがここで倒れてはいられない。
再び忍者刀で傷を与えていく。与えてはいるのだがいつまでも光秀の顔からは笑みが消えない。
「はははは…はははははは!すごい!すごいですよ!この世界に迷い込んで信長公には会えなかったけど、ここで伝説の忍と斬りあうことができるなんてぇぇぇぇぇ!!」
「!?」
今なんと言った?「信長公には会えなかったけど」だと?つまり光秀は戦場に迷い込んで、スバルの姉とは戦場がたまたま同じだった…ということか。
なんとご都合主義なんだ光秀。
上空ではまたもや爆発音が響く。
眼が虚ろになって落ちていくスバル。それを追うギンガ。だがギンガの一撃をマッハキャリバーが動き、防ぐ。
「Wing lord!」
マッハキャリバーが展開したウィングロードに着地するスバル。
見つめた先に助けてくれた自分の相棒。相棒はスバルを励ますように、語りかける。
「We can still take actions... you and I.(まだ動けます・・・私も、あなたも。)
We can still fight. So why abandon now?(まだ戦えます。なのに、こんな所で終わる気ですか?)
You taught me the reason of my being here, my strength and power which you adore so much.(あなたが教えてくれた、わたしの生まれた理由。あなたの憧れる強さ。) 」
その言葉はひどく重く、スバルの心に圧し掛かる。しかし何故だか、悪い気分はしない。
むしろ、逆に戦意が沸いてくる。
「Don't make everything a lie.(嘘にしないでください。)
In addition, that person should expect it, too.(それに、あの方もそれを望んでいるはずです。)」
「!」
完全に戦意を取り戻したスバル。同時に下で起きる「気」の爆発。視線を向けた先には倒れる光秀。
そして漆黒の着物に身を包み、漆黒の翼を背中から生やした風魔小太郎の姿があった。辺りに舞う羽、小太郎は首を横に向けると微笑して頷いた。
無言だったが向けられた背中は「戦え。」と確かに自分に伝えていた。
「ごめんね…マッハキャリバー、風魔さん。いくよ!」
「All right buddy.(はい、相棒)」
「………。」
新たに宿った戦意を心にスバル、風魔、マッハキャリバーは再び目の前の相手の前に立つ。
「はあぁぁぁぁぁぁあ!!」
スバルに魔力が集中。呼応するようにマッハキャリバーもその体を光らせた。
「Ignition.」
「A.C.S.エクセリオン!」
「A.C.S. Standby」
左右の足に二枚ずつ、蒼白い大きな翼が生み出される。

マッハキャリバーモード3・ギアエクセリオン

同時に風魔小太郎も己の中に秘めていた気を一気に開放する。

戦極ドライブLv3、発動

スバルは全速力でローラーを走らせてギンガの攻撃を回避して目の前へ。
風魔は印を結び「風」と虚空に描いて究極バサラ技を発動。同時に立ち上がった光秀に連続攻撃を当てていく。
ギンガの腹に拳を当てるスバル。腕に巨大な手裏剣を二枚生み出して構える風魔。
「一撃……必倒ぉぉぉぉっ!!ディバィィィィィィン!!バスタァァァァァァァァッ!!」
スバルの拳から放たれた蒼い光がギンガの身を包む。
そして光秀は手裏剣に直撃、道路のガードレールを越え、遥か下方へとその姿を消した。

一方、ティアナと猿飛佐助は三人相手に互角の戦いを見せている。
「やれやれ、捕らえるのがこうも難しいとはねぇ。」
のんきに笑いながら頭を掻く佐助だがティアナは結構必死だ。
「アンタみたいにのんきに戦いをやってないからよ。」
「あ、ちょっとその言葉撤回してほしいな。これでも本気だぜ?」
「そんなヘラヘラ笑いながら言われても説得力ないわよ。」
二人の間に黄色い魔力の道が走る。その上から走ってくるノーヴェの攻撃を回避して佐助はバックステップ。
後ろでツインブレードを振りかざしてきたディードの攻撃を手裏剣で防ぐ。そこにクロスミラージュで援護射撃。もう一発でウェンディが放った魔力弾を打ち落とす。
離れたディードの隙を突いて佐助は腹を蹴り、元いた場所に着地。
「うん、中々じゃないか?」
「そりゃどうも。次、行くわよ。」
「へいへい、人使いの荒いことで。」
そう言うとジャンプして下方に落下、ノーヴェ達は追うが降りると自分達の周りに数十人に増えたティアナがいた。
すかさずセンサーを発動し、あたりを見回す。その中で反応が大きいのを見つけ、攻撃する。
「同じ手は通用しねぇんだよ!」
「どうかな?」
攻撃を食らったティアナは黒い粒となって分裂。上から現れた手裏剣を構えたティアナの一撃を受け、吹き飛ぶ。
分身が消え、ティアナの姿に化けた佐助は元の姿に戻る。
「さすがに忍術は通用するでしょ~?」
「クッソォ!」
佐助はヘラヘラと笑う。後ろから突然現れたウェンディ。すでに砲撃準備完了している。
「危ない!」
「へ?」
砲撃が佐助の頭に直撃する。白目で床に倒れる佐助。驚愕するティアナ。
気を抜いた所を突かれ、佐助は倒れた。勝利を悟ったかのように接近するノーヴェ達。
「形勢逆転っすねぇ…。」
「覚悟しやがれ…。」
「………。」
次第に追い詰められていくティアナだが三人の武器、ポジションを見て思考する。
完璧だが、単純なポジション。クロスミラージュに魔力を溜めていく。ティアナが冷静なのはもう一つ理由がある。
佐助はこのぐらいでは死なない。それを裏付けるかのように、倒れていた佐助は黒い粒となり、溶ける。
飛びかかるノーヴェにまず一発。ノーヴェの攻撃は止めた。
「なっ!?」
次にウェンディが溜めていた魔力に一発。
「うっそぉ!?」
爆発して砂塵が巻き起こりクロスミラージュをモード2に移行。ダガーでディードの攻撃を防ぐ。
次に先ほど倒れたはずの佐助が地面から出現。隣にはディード、ウェンディ、ノーヴェの姿をした影が。
驚いてる三人に魔力弾を打ち込むとティアナは離脱。佐助は影とともに体を高速回転。バサラ技を発動。
回転は三人を巻き込んだ。数秒すると回転は止まりノーヴェ達は気を失い、倒れる。
「や~、スッキリしたぁ~。」
「ちょっとやりすぎじゃないの?気を失ってるとはいえ…。」
「そうか?ま、ティアナの援護がなきゃ不利だったのは確かかもな。ありがとよ。」
「…うっさい。」
「うわ、ひっど!」
佐助、ティアナの照れ隠しに気付かず。

ゆりかご内部。隻眼の少女、チンクと本多忠勝は戦う。
忠勝はチンクの触れた金属にエネルギーを流し込み、爆発させるというIS、ランブルデトネイターに苦戦している。何せ攻撃形態の砲身まで壊されたのだからうかつに手出しができない。
そしてチンクもまた、忠勝のパワーに苦戦している。一発当たっただけで体がバラバラになりそうな衝撃が走る。スピードで翻弄してここまで追い詰めているのだが。
「お前…やるな…。」
「………。」
忠勝も無言で相手に敬意を表する。無難に盾を展開させて防御形態をとる。
チンクは盾にエネルギーを流し込んだナイフを当ててISを発動させようとする。
「IS発動、ランブルデトネイッ…!?」
発動させる直前、忠勝は全速力でチンクに接近、爆発に巻き込んだ。二人とも吹き飛んで膝をつく。
盾は砕けてしまったがこれでダメージを与えることはできた。だがこれで盾も失った。次に突進形態。
チンクは跳び、忠勝の両肩に手をつけてエネルギーを送り込む。着地した瞬間ISを発動。突進形態中は急は方向転換は不可能だ。
当然肩は爆発。おまけに爆風でさらに加速がついてしまい、壁に激突。接近してきたチンクに向かい槍を振るう。
「う…くっ!」
今度はチンクが壁に激突。同時に忠勝は槍を縦に構えると紋章が開き、三個の砲身が宙に浮かぶ。
一説ではこの砲身を「ファンネル」や「ビット」とも言う。

忠勝、援護形態。

一回槍を振るう。単純な横凪ぎなため簡単に回避することができたが後ろに現れた砲身から出たプラズマ弾を受け、落ちる。
「…!?」
さらに後の二門が容赦なくチンクにプラズマ弾を当てていく。斜めに振り下ろした槍の攻撃を受けて吹き飛ぶ。
砲身が忠勝の前に留まり、電流で三角形を描く。忠勝はというと低く構えて槍を前に突き出している。突進形態の体勢だ。
「まず…!!」
回避しようと動いた時には、小さな体が突進に巻き込まれていた。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
忠勝は一歩離れて槍をチンクの顔に構えるが、それ以上は何もしない。
「…殺さないのか?」
傷ついたチンクの言葉に頷き、槍を下ろして背を向ける。忠勝の行為にチンクは鼻で笑う。
「まったく、甘いな。」
それは自分でも十分承知している。だが誰かに「殺すな」と言われた…といってしまえば嘘に聞こえてしまうのだろうか。
「殺すな」と言ったのは自分自身かもしれないし、または自分以外の誰かかもしれない。とにかく、言われたのは確かだ。
忠勝は先を急ぐ。
チンクはその無防備な背中に攻撃を加えようとしたが、できなかった。
なんで出来なかったのは、謎のまま。

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最終更新:2007年12月30日 20:02