魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
第二話「再会」
ポッケ村のとある家の裏。
長くなった金髪を揺らし、激しい音を立て丸太をひたすら殴っている男がいる。
男の名前はジェイ・クロード。大体察しはついてるかもしれないが、なのはを助けた男である。
とは言っても自分は「逃走に巻き込んだだけ」と言い張っている。
「50…51…52…ふぅ。」
一息つけて自分の拳をさする。丸太はそんなにボロボロではない、だが所々へこんでる所があったり血痕がある。
「親分」言われてキッカリ四年このトレーニングを続けている。
「…さぶっ!!」
ちなみにジェイは冬真っ盛りで雪山が近いこのポッケ村で上半身裸でトレーニングをしていた。寒いのは当たり前。
さっさと家の中に入ると真っ先にシャワーを浴びに向かった。
服を脱いでシャワーのお湯を全身に浴びるジェイ。身体が冷えてしまったため急にお湯をかぶると所々に痛みが走るのだが気にしない。
身体、頭を洗って出ると白猫がタオルを持ってきてくれた。コック帽を被りエプロンをかけた獣人「アイルー」なのだが。
タオルを受け取ってアイテムボックスの中からマタタビを取り出して一個、そのアイルーに与える。大喜びでキッチンへと戻っていった。
「ジェイ!ジェイはいるか!」
ドアをど派手に開けてずかずかと入ってくる銀髪の男。
胴は竜の頭を模した形で肩には角。全身には同じような角がいくつかある。人はこの装備を「モノブロスSシリーズ」という。
背中には身の丈ほどもある毒属性を持つ大剣「クロームデスレイザー」を持った男。
「あれ?親分?どうしたんだ急に?」
親分、本名はゼクウ・ローレン。親分というのは歳もそれなりにいってるしそんな雰囲気がするから…らしい。
ちなみに名づけたのはジェイ。
「うむ、新しいクエストを受けたのだが、どうやら大人数ではないとダメらしい。」
「それで俺のところに。何人?」
「三人だ。」
クエスト。それはこの世界に住む狩人達が受ける依頼のことを言う。
「一人足りないなぁ…。心当たりは?」
「『ドク』がいる。」
「『ドク』かぁ、確かにあの人なら最近ハンターになったばっかなのに俺のHRと同じだからなぁ。うん、いいんじゃないか?」
HR、それはハンターランクの略であり、それが高ければ高いほど高難易度のクエストを受けられる。というわけだ。
ちなみに『ドク』、ゼクウ、ジェイともに6。ポッケ村の中では最高位に値するハンターランクである。
「何?どういうクエストさ。」
ジェイが手を出すとゼクウがクエスト内容が書いてある紙を手渡す。
「依頼主機動六課…っは。ギルドってわけね。アイテムボックス必須…待ち合わせ場所は雪山のベースキャンプ。変わったクエストだな。…期限は…数ヶ月!?」
「大丈夫だ、住むところや食事は提供される。」
「そういう問題じゃなくて!うぅ~…。場所はミッドチルダ?どこ?」
「俺にもわからん。」
場所のミッドチルダという文字に首を傾げる二人。
街といったらドンドルマとミナガルデしか思いつかない。唸って考えてるところにもう一人客人が来た。
その客人は鎧の上に白衣を着ているという変な格好をしている男、『ドク』。わけあって本名は言えないらしい。前は科学者をやっていたとか。
最近雪山で倒れているところをここの元ハンターの中年男性が発見、ポッケ村に連れてきたという。
年上の後輩…のはずだが驚くべき適合力でジェイ達と同じHRを持っている。何か裏技でもしたのか、と思うぐらいだ。
「あぁ、ドク。ドクってミッドチルダってとこ…知ってる?」
ジェイの問いに妖しく笑うドク。何か質問をして答えるときはいつもそうだ。
「知ってるも何も、私はそこで科学者をやってたんだ!」
「マジで!?」
「なんと!?」
両手を広げて高らかに笑うドク、子供のように目を輝かせるジェイ、目を見開いて驚く親分。
第三者からの目から見るとちょっと変な光景である。ドクはすぐに笑うのをやめてふぅ、とため息をつく。
「しかし…私はある研究をやってたらな。ミッドチルダから追放されてしまったのだよ。」
「…えぇ~?」
ジェイはさっきの表情から逆転、残念そうな表情をした。
ベットにボスン、と座り込んで頬杖をついて考えているとドクは手をひらひらさせてなんでもないような表情をしている。
「まぁ、兜被っていくさ。」
「…そっか。そういえばそうだった。」
当たり前のことを忘れていてジェイはちょっと自分に腹が立っていた。
ふと、依頼内容とはさほど関係ないコメントの欄に目を通してみる。
サッと目を通すつもりだったがとある一文を見て目を見開き、自分の見間違いではないかと何度も目を擦り、見通す。
しかしそれで文の内容が変わるわけがない。ジェイは静かに笑い、立ち上がる。
「面白い、やってやろうじゃないの。いつ出発だ?」
「明日…だそうだ。」
「どこまで隠し通せるかわからないが、面白そうだな。」
一人行っては行けないような人がいるが、三人は出発することを決めた。
それぞれの家に戻り、身支度をする。ジェイが行くと決意した理由となった一文。それは
『できれば四年前、空を翔る箱舟と純白の少女、真紅の少女を見た者がこの依頼を受けることを願う。』
と書かれていた。ジェイは頭の中で記憶の渦の中から「心当たり」を引っ張り出す。
「…あの子たちか。」
翌日の早朝、雪山のベースキャンプで男三人は依頼主の到着を待っていた。
突然辺りが暗くなる。空を見上げてみると次元艦、アースラが四年前と変わらないその姿のままで降りてきた。
ゼクウは大変驚いていたがジェイは四年前に見たことがあり、ドクはミッドチルダ出身のため大して驚かない。
雪山の草原の箇所(ハンター達はエリア1という)に降りて自分達もそこに向かった。
近くで見ると大きい。そこらの飛竜と比べものにならないほど大きい。
音を立てて扉が開くと出てきたのは純白の少女と真紅の少女。
「依頼を受けてくださってありがとうございます。高町なのはです。」
「…ヴィータです。」
ジェイは「よろしく」という前に一歩前に踏み出して、兜をゆっくりと外していく。
四年前とは違って金髪は長くなってしまったけど、顔なら大丈夫だ。変わっていないはず。
二人の少女は驚愕した後、満面の笑みを浮かべて一歩前に踏み出してジェイの前へ。
「始めまして…でいいのかな。俺はジェイ・クロード。逃走に巻き込んでしまったお節介な男…と言ったほうがいいかな?」
「…ううん、いいよ。ジェイで。」
「変わってない…な。」
後ろはゼクウとドクが顔を見合わせている。ジェイがハッとしたように後ろの二人の紹介をする。
「あ、そうだったそうだった。こちらがゼクウ・ローレンで、こっちがドク…本名は明かせないんだって。ごめんな。」
「わかりました。ちょっとひっかかりますが…え?」
ふとなのはがドクの背中に目を移す。ドクが背負っているのはレイトウ本マグロ。
氷属性の大剣なのだが見かけがその名のとおり、カジキマグロである。大剣というよりかは非常食のマグロだ。
「これがどうかしたかね?」
ちょっと不機嫌そうになのはに尋ねるドク。少し気まずくなりながらもアイテムボックスを引きずり、アースラの中に入った。
…なんか知らないけどドク、なのは達に敵意むき出しだったなぁ。嫌なら来なきゃよかったのに。
番外その2「ジェイが言う『親分』と『ドク』」
親分編
名前:ゼクウ・ローレンっていうんだ。ゼクウが出す雰囲気をそのままあだ名にして「親分」。どうかな?
歳:三十代前半じゃない?
防具:あの人は実力俺よりかなり上なんだけどなぁ。モノブロスSとかゴツイやつを選ぶんだよあの人。
武器:大剣が多いかな。てか大剣を使ったところしか見たことないよ。
声:あの声は絶対どこかで「我に断てぬものなしっ!」とか叫んでるって絶対。というか実際叫んでるよ?
その他特徴:うん、俺の師匠みたいな人だな。そもそもハンターになったきっかけがあの人との出会いだったし。
なんか知らないけどよく「我に断てぬものなし」って言うんだよあの人。心当たりある?…ないよなぁ?
ちょっと古風な人だけど面倒見がいいんだ。そのおかげで俺もベテランハンターになれたわけ。
もちろん今でも尊敬しているよ。
ドク編
名前:本名明かしてくれないんだよ。でも前いたとこでは科学者やってたらしいから「ドク」って呼ぶことにしたんだ。
歳:多分親分だと同じだと思う。
防具:あの人いろいろ変わるからなぁ…。よくつける防具といったら暁丸・覇だね。
武器:よく毒系を選んでくるよ。それかガンランス。あとなんか知らないけどレイトウ本マグロも使うな…。たまに毒って苦しんでる相手を笑うんだよ。そこが怖い。
声:結構渋いなぁ。口癖?うーん…「素晴らしい!欲しかった…私も欲しかったなァ!!」とか俺が紅玉手に入れたときよく言うねー。
その他特徴:謎だねー。最近ポッケ村に来てハンターになったんだけど…。あとちょっと変わってるかな?
だって防具の上に必ず白衣着てくるんだぜ?どう思うよ?どうやらミッドチルダってとこに住んでたらしい。
初めて来たときはそりゃあもう荒れてたんだって。人の命をなんとも思わない発言を度々したし、非協力的だった。
でも次第に丸くなっていったんだよ。…感動するよなぁ、人の温もりとか絆とかさ。
そのミッドチルダってとこに12人の娘さんがいるんだって。…すっげぇ大家族なんだなぁ。
最終更新:2008年01月02日 18:28