NANOHA COMBAT ZERO 【6】地上に這う絶望
【6】地上に這う絶望
「さてと・・・」
倒木の陰に伏せて隠れていたなのはは、
上空のシャマルと連絡が取れたことに若干の安堵の息を漏らした。
心なしか全身を駆け巡る痛みが軽くなった気がする。
撃墜された時、脱出シートのレバーを引いていたようだが、
なのはは脱出の瞬間は全く覚えていなかった。
ここまでの展開が速すぎ、なのはも自分の頭の中を順を追って整理しないと大変だった。

全身を襲う痛みで目を覚ました時、
なのはは、森林地帯に降りたパラシュートが高い木の上で宙づりになっていた。
まずはなにはともかく身体の状態を確かめる。
両手の指を親指、人差し指と順に動かしてゆく。
右掌、・・・右腕よし、左掌、・・・左腕よし
身体の末端部分から少しずつ動かしながら、全身に異常がないか確認する。
腕や足首を動かした時の激痛は、身体が無事な証拠だと無理やりにでも前向きに考えた。
右足が全く動かず、一瞬冷や汗が吹き出したが、
落ち着いて良く見るとパラシュートのロープが絡まりついていた。
パイロットスーツの左腿にあるポケットから小さな折り畳みナイフをどうにか取り出し、
絡みついたロープを苦闘しながらスパスパと断ち切っていく。
「ふぇ?ええ?えええぇぇぇぇぇ・・・」
あまりに景気よく断ち切った事でパラシュートロープから開放されたなのはの
身体は重力に引かれて見事に落ちていった。
咄嗟に飛行魔法を展開し、地面に軟着陸する・・・つもりだったが、
せいぜい制御された墜落にしかならなかった。
「ふう、危なかった」

冷や汗を拭うと、ふと気が付いたなのはは
深刻な表情であたりを見回した。
相棒の姿が無い。
「レイジングハート?」
近くでは小鳥がさえずる声と、遠くから響くジェット機の音に砲声に爆発音。だが、
相棒の返事は聞こえなかった。
インテリジェントデバイスではあるが、ただの道具ではない。
自らの秘書、いや、分身ともいえる存在である。探して見つけ出さねばならない。
レイジングハートはお喋りで遠慮のない性格だが、
さすがに脱出シートを自力で動かすような器用な芸はできない。
なのははおそらく墜落現場にいけば何か判るだろうと考えて、
煙の立ち上っている方向へ向かおうとしていた。
不思議な事に、墜落で生じた山火事の危険については全く気にならなかった。
「でも、この状態じゃあねぇ」
今は無言で呟きながら、なのはは倒木と岩の隙間に隠れて、
1センチ、1ミリでも姿勢を低くして祈るしかない。
ファントムの墜落した現場までもうあと少しというところだった。

付近にかなりの人数が接近している気配を感じ取り、注意深く確認してみたところ、
ベルカ軍の歩兵部隊のようだ。
どうやら墜落したファントムの調査に来た連中らしい。
最悪の状況下で想像力は生きる為に欠かせないと管理局訓練校で教わったことを思い出し、
なのはは頭の中で自分自身と想定問答してみた。
Q1:戦争時、敵の勢力圏で捕まったら?
A1:良くて捕虜収容所。暴行されたあげく殺される可能性も。
Q2:捕虜収容所って、直ぐ釈放される?
A2:捕虜交換か戦争が終わる頃には出られるでしょう
Q3:傭兵でも捕虜にしてもらえる?
A3:金で揃える傭兵は外交交渉の駒にならないので期待できないでしょう
Q4:暴行される場合って?
A4:文字通りの暴行の場合もあれば、あんなコトやこんなコトの場合も
Q5:殺されるかな?
A5:特別に恨まれる存在だったら危ないでしょう。
さすがに捕まったらどうなるのかと想像すると、余り楽しい未来予想ではなかった。
普段は気にも留めないが、今この場では、
自分が10代後半の女性であることを嫌応無く意識せざるをえない。
何をしてでもこのピンチを脱出しよう。
レイジングハートが手許に無いのが痛いが、得意の魔法で切り抜けるつもりだった。
デバイスが無いので自分で詠唱して、魔力状態のパラメータの確認を行う。
なのはは、魔力と体調管理のバロメーターとして、
定期的に行われている訓練で使う魔法の結合を試みた。
「えっ!?・・・嘘、こんなに低いの?」
直感的に、第91管理外世界は何らかの魔力結合を阻害する効果が発生していると理解した。
高位レベルの魔導師なら、いとも簡単に繰り出せる魔法も、ここではかなりの魔力と運用能力がなければ扱えない。
普段なら多用できるディバインバスターやアクセルシューターでもフルドライブ以上の負担がかかる。
しかも不味いことにRHが手許に無いことで、詠唱速度も明らかに低下している。
「コレは、サスガに危ないよね」
ピンチとなったら、魔法戦の一撃で周囲にいるベルカ兵全員を倒すしかない。
反復戦闘するほどの余裕があるとはとても思えなかった。
ふと思い出して、腿にあるポケットに手を入れると、
ウスティオ空軍から支給された9mmのオートマチック拳銃を取り出した。
だが、なのはは銃の使い方を知識でしか知らなかった。
映画やTVのアクションシーンで観た(無論、ミッドではなく、地球に居た頃の話)
銃さばきに倣い、弄くりまわしてから懐のサイドポケットに入れ、
再び倒木の陰に横になって姿勢を低く構えた。
そういえば父の士郎がTVドラマの銃撃戦について、
本物の銃撃戦とは全然違うと薀蓄を垂れていたのを思い出す。
その薀蓄が本当にあたっているかどうか試す機会が来るという気がした。

今日は普段よりも長い日になりそうだ。



ヴァレー基地ではガルム隊がバラバラに帰還してくるのをみて、
基地の傭兵たちが不思議そうな表情を浮かべた。
「サイファーはまだ帰ってこないのか?」
「何だ。聞いてないのか? 落とされたらしい。 ソーリス・オルティスの北東40kmだ」
一時的な戦友とはいえ、死線を潜り抜けた仲間の未帰還を積極的に喜ぶ気にはなれなかった。
既に彼女達は少なくともこの戦争の間では背後を任せるに足りる存在と思われていた。
それに傭兵といっても若い女性が戦争で死ぬを無感動に見守れるほどの戦争マシーンではなかった。
「でも、あの娘らの仲間、これからの作戦、大丈夫かな?」
「メンタルで影響されるようなら、・・・落ちるぞ」
「MiG29の姉ちゃんは大丈夫そうだが、タイガーシャークの娘とかは・・・な?」
「ネメシス、モビウスあたりはちょっと不安だな」
「おい! ピクシー!お前の1番機だろ!? 心配じゃないのか?」
はやてとピクシーは先に帰還したシグナムとフェイトから、なのは撃墜の連絡を受けていた。
はやては表情を一瞬だけ硬直させ、直ちに救難任務に備えるといって
フェイト達を引っ張って部屋に篭っている。
「運が良けりゃ生きてるさ。生きてればまた同じ空を飛べるだろうし、
空戦で落とされたからといって死んだと決まったわけじゃない」
ピクシーは落ち着いた表情で状況を受入れようとした。
だが、既に彼の右主翼が赤いF-15Cは対地攻撃の武装を搭載し、いつでも発進できる状態に整備されていた。

「救難部隊が敵勢力圏に入るまで2時間半。大丈夫かな?」
窓の外からヘリのローターが空気を叩く音が徐々に遠ざかる。
救難部隊が出発する音を聞きながらはやては努めて冷静な口調で仲間を見渡した。
「では、クラウディアに救援要請を出しますか?主」
「いや、それはまずい・・・なのはちゃんが生きているのは確かやし、
敵勢力圏内ならこのままウスティオ軍に動いてもらったほうがええ」
「そんな悠長な!」
帰還以来、フェイトは焦りと苛立ちを隠そうともしなかった。
「敵の地上部隊がすぐ傍でなのはちゃんを探しているとなると、
戦闘機で出来る事はヘリの援護程度というのが妥当な判断でしょうね」
「シャマルの報告が確かなら、CSAR(戦闘捜索救難)ヘリが行くか、
ソーリスオルティスを奪還した空挺部隊が現地に進出するかしないと、救出にならへんもんな。」
シャマルに続いてはやてが発言を継いだ。はやての意見にフェイトは不満のようだが、
主の意図を汲んだシャマルが発言したことで指揮官に向けられるフェイトの心理的な反発が幾分穏やかになる・・・。はやては湖の参謀の機転に目配せで感謝した。
指揮官らしく努めて冷静な判断をするはやてであったが、
本心をいえば今すぐにでもフォックスハウンドを全速で飛ばして援護に向かいたいと思っていた。
だが、同時にそれは大して役にも立たない行動であることもわかっている。
「問題はヘリをどのように護衛するかですが・・・」
ヘリにぴったり寄り添うのは心強いが、敵の攻撃を惹き付けることにもなる。
周辺空域で積極的に邀撃するとヘリの護りをおろそかにしてしまう。
「ん~、私のフォックスハウンドでヘリの速度に合わせるのは厳しいしなぁ」
シャマルがヘリに随伴することは機体特性からいって、ごく自然と決まった。
「我ら3人で周辺邀撃ですね。そのかわりヘリには敵を近づけさせぬ」
「そういうことや。では、これより、マジシャン隊でなのはちゃん救難作戦の援護に出撃します!」
はやての宣言に、フェイト、シグナム、シャマルが声を揃えて返答する。
「「「了解!」」」
「いいや、俺達で。だ。」
ノックもせずに部屋に入ってきたのはピクシーだった。
「なんや?女の子だけの話に割り込んでくるスケベ男は誰かいなと思ったで。
おまけに空で4対1のハーレムデートする気? 厚っかましぃスケベやわぁ この人」
あまりヴァレー基地の他の傭兵を巻き込んで出撃したくないという思いもあり、
はやてが気持ちを誤魔化すかのように機関銃のように下品な悪態をついて出迎える。
「・・・・・・そうか、それは残念だな。ハーレムデートに振られた腹いせに酒飲んで寝るか」
たっぷり5秒ほど無言を保ってから踵を返しかけたピクシーだったが、フェイトがピクシーの上着の裾をつまんだ。上目遣いでちょっと照れたフェイトの表情がなんとも女の子らしい。ただ、ちょっと鬼気せまるオーラには退いてしまう。
「ん?何だ ネメシス?」
「デートは駄目ですけど、これから一緒に空の散歩ならいいですよ?」
「喜んで。 ところで、他の面子も散歩に誘っても良いかな?」
「ええ、是非誘ってあげてください!」

爆弾とミサイルを抱え、ソーリスオルティスの空を命掛けで散歩したいという変わり者が集まっていた。
《こちらマジシャン1、モビウス。各機に通達。今回の指揮は私が執ります》
《クロウ隊 了解》
《ヴィソフニル隊 了解》
《ガルム2 了解》
10機近い戦闘機はヴァレー基地上空で編隊を組むと、
北北西に針路を取った。
先行する救難ヘリ部隊に追いつくまで1時間もかからない。
救難ヘリの乗員にとってやや意外なことに、
今回の救助では酒場で聞かせるような武勇伝のネタになりそうな出来事は何も起こらなかった。
信号スモークが上がっている地点にいるパイロットを確認し、
救助ポイントへ素早く進入し、パイロットを迅速に拾い上げ、一気に離脱する。
今回に関して言えばそれだけだった。
激しい銃撃戦もなければ、やばい対空ミサイルも敵戦闘機も傭兵隊の航空戦力によってまだ遠いところで早々に撃退されていた。
救助されたなのはは、脱出行中で奪ったらしい血糊のついたベルカ陸軍の戦闘服を着て、
負傷はしていたが、意識はしっかりしており、受け答えも明瞭だった。
CSAR(戦闘捜索救難)といってもいつもいつも危険な任務ではない。
武勇伝とはならなくとも、救難隊の功績がまた一つ積み重ねられた。



なのははヘリのキャビンで差し出された蜂蜜と檸檬入りのホットワインが掌の中で揺れるのをぼんやりと眺めていた。
ステンレスのマグの中で揺れる液面に自身のやや疲れた顔が映る。
濃い虹色がゆらぐ液面に視線を落としながら、思考の海に沈んだ。

今日の出来事はきっと夢にでてくるだろう。
今晩だけ?1週間?いや、もっと長い期間だ。
1年、あるいは生涯夢に出てくるかもしれない。

日が西に向かうにつれ、只でさえ薄暗いソーリスオルティスの森がさらに暗くなってきた。
風が出てきたのを見計らい、枯葉を踏みしめる音を風に足音を紛らせながら、
なのはは愛機の墜落現場へそっと忍び寄った。
既に先ほどのベルカ兵があたりに散らばるファントムの残骸に群がっているのが見える。
その風景を見て、思わずぐっと下唇をかみ締めた。
まるで自分のプライベートルームを泥棒に荒らされているのを見守るしかないような屈辱に思えた。
今すぐ、ベルカ兵全員をアクセルシューターでぶっ飛ばしてやろうかという欲求に駆られる。
距離にして50メートルほど。RHが手許にないが、その程度は造作ない。
魔力結合もかなり制限されるが、S級魔導師としての誇りもあり、
多少の障害があっても対処する自信があった。
ただ、攻撃にそのものは問題ないが、予想以上に魔力消耗してしまう。その点は気懸かりだった。

「パイロットは脱出しているようだ。見ろ、コクピットのシートが射出されている」
「当然、探すんだよな?」
「ああ、必ず死亡を確認するか捕虜にしろとの上からのお達しだ」
「そりゃまた、面倒な」
「大隊本部が空軍へ照会したらしい。コイツは最近あちこちの作戦で俺達ベルカに大損害を与えている奴だとさ」
指揮官らしい男は焼け残ったファントムの白い外装部分を乱暴に蹴り飛ばし、大きく凹ませた。
「そんなパイロットを再び、我がベルカの空を自由に飛ばせるわけにはいかん!」



突然、捜索を行っているベルカ兵をピンク色の光が襲い掛かった。
「ぐわっ・・・・」
「ぎゃああああ・・・・・」
「うああああぁぁぁっ」
精密に誘導されたアクセルシューターの斉射で多くの兵士が倒される。
非殺傷だが、長時間意識を刈り取る威力設定は戦争中でも人殺しを良しとしないなのはの本物の良心だった。
もっとも、普段なら賞賛されるべき良心がこの後、自身にも不幸をもたらすことになる。
だが、S級魔導師といえども、未来を予知する能力まではもっていない。
一時的に気を失ったものの、ぎりぎりのところで直撃を免れた幸運な男は、
自分達がウスティオのパイロットに襲われたことを瞬時に悟った。
何やら得体のしれない高性能な武器を使う奴だが、地上での戦い方をまるでわかっちゃいない。
奇襲のつもりだろうが付け焼刃だ。歩兵には歩兵の戦い方があることを思い知らせてやる!
「そこだ!」
男が茂みの奥に向けて銃撃が連続して浴びせる。
「!?」
まさか反撃されるとは予想していなかったなのはは、咄嗟に逃げようと森の奥に走りこもうとした。
男の燻り出しにまんまと嵌ったことに気付かず、痛む足を引きずりながら必死で走る。
なのはの前後左右で銃弾が木々をはじき飛ばされる。
「仕留め損なったのは2人・・・・、最後の攻撃で倒さなきゃ」
なのはは痛みを堪えて走りながら、状況を打開しようと、反撃の機会を伺った。
「! あれは・・・?」
視界の端に黒い物体が放物線を描きながら向かってくるのを捉える。
良く判らないが、碌なモノじゃないことだけは感じ取れる。
その碌でもないグレネードが爆発し、なのはは魔力を振り絞ってプロテクションを展開した。
だが、爆発威力に耐え切るには強度が若干足りず、後ろに吹き飛ばされた。
「!くぁっ・・・ぁぁあっ・・・・い、いったぁぁぁ!」
足の痛み以上に、地面に打ち付けた右肩から激痛が駆け抜けた。
肩が脱臼しかかっていた。
左手で右肩を庇いつつ、挫いた足を引きずりながら必死で這って逃げるなのはを
2人のベルカ兵が追いかけてきた。グレネードの攻撃でなのはが倒れるのを見たらしく、
一気に追ってきた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ふかふかに積もった枯葉のクッションでけつまずき、派手に転倒する。
転倒した痛みよりも後ろとの距離が詰められたことが気になる。
ポケットとからこぼれ落としたオートマチック拳銃を拾い上げようと思わず手を伸ばしはじめた時

ダダダッ!

銃声と共になのはの目の前にへ土煙が一列に舞い上がった。
「Freeze 動くな!」
緊張感に満ちた一瞬の静寂が流れる。


「Freeze! 動くな!」
悔しさと恐怖の混じった感情に諦めを何パーセントか含んだ表情を浮かべホールドアップする。
「よし、そのままゆっくりとこちらを向くんだ。妙な真似はするな」
ベルカ訛はあるが、まずまず聞き取りやすいオーシア語だった。
一人のベルカ兵が離れたところから油断なく銃を構え、もう一人がなのはのボディチェックを行った。
「貴様、・・・・・女か!?」



ココからエロ展開
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なぁ?パイロットは捕虜にするか、死亡を確認すればいいんだよな?」
一人のベルカ兵の問いかけは実に曖昧で直接的な表現は一切なかったが、
もう一方の兵にはその意味が十分に伝わっていた。これからの出来事はこの場にいる3人の秘密にしておくこと。
そしてこの不幸な女には秘密を抱えてこの世から旅立って貰うということ。
諺曰く、「死人に口無し」

ベルカ兵達の会話よりもその身体に向けられる粘着質な視線でなのはは彼等の思惑を察し、
怯えの表情を浮かべた。
いかなる障害や災難から逃げの姿勢を見せた事のない強い心のエースオブエースも若い女性である。
管理局のエースとして幾つもの戦いを潜り抜けてきた自分でも恐怖するものがあった。

ダメじゃない。こんな所で死にたい?自分を叱咤し、なんとか逃げようとするが、
膝の震えは必死の願いも空しく、おさまる気配がない。
へなへな・・・とヘタリこんで尻餅をつき、立ち上がることもままならなかった。
「あ・・・あああ、いや・・・・来ないで・・・・」
「逃げようたって無駄だ。観念しろ」
なのはが後ろずさりに這うように逃げるが、
怯えの表情がかえって2人のベルカ兵士の欲望を煽り立てる。
「う、嘘?・・・嫌、・・いやあぁぁぁぁぁぁ・・・」

両腕をがっちりを押さえ込まれ、地面に組み伏せられた。
必死にもがくが、馬乗りされ、首を左右に振るしかできない。
唇を強引にこじあけ中に進入してくる。
フェイトとプライベートで睦みあう時に交わすような溶けるような甘いキスではなかった。
おぞましさに寒気が走る。
凶暴で猛々しく、強引に口の中を吸いまわされ、舐めまわされる。
「んんくんんん! んんん・・イヤ、やめてぇ・・・」

不意にゴツい軍用ナイフの刃がなのはの目の前で光り、首筋に冷たい感触が走る。
「暴れるんじゃねぇ。死にたくはないだろう?」
もう一人の男は手に持つナイフと同じようにギラつく眼の光をうかべていた。
信頼度ゼロの言葉だったが、白く光る刃を前に見せられてはおとなしく従うしかなかった。

ツーッ・・・
白い刃がなのはの体の上を走る。
くすんだ濃緑色のパイロットスーツが一気に切り裂かれ、
伸びやかな素肌が冷ややかな外の空気に晒される。胸の谷間にも冷たい刃が当てられ、
抵抗も無く真ん中から引き離されたブラジャーから小ぶりだが形の整った乳房が
ぷるんと震えながら飛び出した。
すかさず口を塞いでいる男が片手で胸の小さな突起を転がすように弄ぶ。
「あ、あああ・・う、・嘘・・・・やめて・・・」

なのはのパイロットスーツをへそ下までナイフで切り刻んだ男は満足そうに表情で
最後に残された下半身を覆う縞模様のコットン製品にナイフの刃を当てた。
「へへ、これより最後の防衛線を突破する!」
ぷつん・・・・
頼りない小さな布切れの最終防衛ラインも容易く切り裂かれる。
今までフェイトにしか進入を許したことがない慎ましやかな茂みの奥を見知らぬ、
しかも敵軍の男に見られる羞恥と屈辱。
さすがに耐え切れず、なのはの視界が熱い涙でぼやけ始めた。

「わかってんだろ? 口、開けな」
鼻をつままれて、息が苦しくなった。男が唇を開放した時に、大きく喘ぐ。
「はぁはぁはぁ・・・!? んぐ・・・んんん!」
必死に酸素を求めている隙をついて熱っぽくて硬い凶器が中に侵入してきた。排除しようとする間もなく、激しい一方的な攻撃になのはは苦しそうに眉を寄せて耐えた。防ぐこともままならない屈辱にどうにかここまで堪えていた涙が、つっ・・・・と、こぼれる。
「妙な気を起こすんじゃねーぞ。この場でぶっ殺す。」
銃を頭に押し付けられた感触は男の言葉がハッタリではなく本気の殺意だと皮膚でかんじとれた。
僅かに残っていたせめてもの抵抗心を粉々にした男は遠慮なく自身の凶器を突き立てる。
「うっ・・・うぐっ・・・うううぅぅ」
「そうだ。・・・・大人しくしてろ」
口の端から唾液がつーっっ、と糸を引いて鎖骨の窪みに流れ落ちた。


湿度の高い茂みをかきわけて洞窟の入口にとりついたもういっぽうの凶器は
上の洞窟で猛攻をかける凶器よりも大口径、調砲身の大型兵器だったが、
抵抗を必死でつづけるなのはは敵が侵入しようとしている事に気がつく余裕はなかった。
「ではこちらからも洞窟を攻撃する。」
「OK戦友、上下で挟撃だ」
突然、体の芯から突き上げるような衝撃と激痛が襲う。
「!?・・・ぬぐうううう! あうぐっ・・く~ん!・・・ん~ん~!」
2対1で一方的に攻められ、身体を動かすこともままならない。
やがて来る運命として覚悟はしていたが、それでも夢であってほしかった。
粘液質の液体が粘っこく絡みつく音が森の中に響く。
「そろそろ、砲撃するぞ」
「タイミングを合わせるぜ」
「イ、イヤァァァァァ・・!!」
抵抗する気力を挫かれ、いいように体中を辱められる。
悪夢なら醒めてほしいと願った。
身体が穢されてゆく・・・
心が堕されてゆく・・・
そして何より、悔しくて悲しい事に、私の未来が此処で消されてゆく・・・
魔力も気力もその貯金を使い果たしていた。


突然、傍らの茂みが騒々しくなる。
「貴様ら 何やっているか!」
腰と手の動きを休めることなく平然と答える。
「観りゃわかるっしょ?曹長殿」
「俺等も捕虜の身体検査やってるんですよ」
なるほど、2人よりも上官である曹長はオーシア兵士の捕虜を連れていた。
「捕虜虐待に婦女暴行はその場で処断だ」
「はい 曹長殿。敵パイロットは勇敢で最期まで激しく抵抗。捕虜として捕えることはできませんでした。
敵ながら勇敢な軍人です」
曹長は部下の表情を眺め、つづいてなのはの体と顔を舐めるように観察した。
部下の言い分とその意味をじっくりと噛み締め、思案した。
「ちなみに、貴様等とちがって、俺はコイツに『アッー』な身体検査はやっていないぞ」
笑いながらライフルの銃口を捕虜の尻に突き立てる。
捕虜はプラスチックの簡易手錠で後手に拘束されていた。
オーシア空挺部隊の制服を着た捕虜は少々痛めつけられたようで、
まだ幼い顔が青い痣で潰れていた。
どうやらソーリスオルティス降下で風に流されたらしい。
「鉛弾を喰らいたくなければ、俺に代われ!」
この状況から救ってくれる儚い可能性をあっさりと握りつぶされ、
持ち直しかけたなのはの心は再び絶望の泥沼に引きずり込まれた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年01月18日 20:45