ワームとの戦いの末に、一人の少女が死亡した。
 黒の瞳を剥き出しにして、その瞬間を瞳に焼き付ける。
 焼き付ける、というよりは見せつけられた、と言っても過言ではないが。
 人の死を、それもたった一人の妹の死を、素直に受け入れられる訳も無く。
 絶句したクロノは、何も言えずにただただ空間モニターを見詰めているだけしか出来なかった。
 もうフェイトは居ないし、帰っても来ない。頭では理解していても、心では理解出来なくて。
 フェイトがやられたと解って居ても、それが「死」なのだとすぐには納得出来る訳もなくて。
 だけど、時間が経つに連れて、否応なしにクロノの心はフェイトの死を受け入れて行く。
 しかし当然自分にどうにか出来る訳も無く、それが悔しくてクロノは拳を握り締めた。
 ――そんな時だった。

「これはっ……次元振!? そんな、なんで!?」
「駄目だ! これじゃ、この艦も次元震に巻き込まれます!」
「艦長! クロノ艦長! この距離じゃ、回避出来ません!」

 エイミィの絶叫に続いて、スタッフ達が口々に叫び出した。
 喧騒が、受け入れ難い現実に思考を停止させていたクロノを現実へと呼び戻す。
 気付けば緊急事態を意味するアラートが、艦内のあちこちでけたたましく鳴り響いていた。
 一体何が起こっているのかと理解するよりも早く、アースラは次元震の波に飲み込まれ――時間が、逆行した。


 クロノは絶句していた。
 空間モニターを通して見守る戦いに、突如として現れたのは一人の戦士。
 背から噴出するは光の翼。煌めく太陽の光を受けて燦然と輝く赤と銀の身体。
 カブトムシを彷彿とさせる巨大な角を持った戦士は、見まごう事なきカブトのもの。
 間違いない。今この場に現れたあのライダーは、仮面ライダーカブトだ。
 しかし、現状でクロノが問題としているのは、そんな事ではない。

「何だこれ……!? あのライダーが現れると同時に、大規模な次元震が発生!」
「一体何をしたんだ、あのライダーは! 周囲の管理外世界にも影響が出てるぞ!」
「第19管理外世界、第78無人世界……駄目です、あちこちの世界で次元震が発生してます!」

 開かれた空間モニターに映る、様々な世界。
 緑豊かな世界や、荒廃した砂漠の世界、月が二つある世界や、人々で賑わう世界。
 モニターに映し出された世界は全て、今現在次元震によって影響を与えられた世界だ。
 その全てに共通して言えるのは、太陽光が遮断され、仄暗い闇に包まれている事。
 幸い次元震はすぐに収まり、それぞれの世界はすぐに元の平穏を取り戻した。
 それに伴って、展開されて居た銀色のカブトの装甲が、閉じて行く。
 表情を顰め、クロノが叫ぶ。

「あのライダー……カブトがこれをやったのか!」
「カブトは時間を越えたんです!」
「――っ!?」

 クロノの問いに答えたのは、立川大悟であった。
 しかし、それはまともな人間ならばすぐに理解するのは難しい答え。
 意味が解らなかったクロノは、瞬間的に言葉に詰まったのだった。


 ACT.10「乱心!完全調和第三章」


 圧倒的な力を持って敵を撃破したカブトは、悠々と天を指指していた。
 太陽光を受けて煌めく銀色の体躯を、周囲の誰もが眩しいとすら感じる。
 これ程の力を持ったライダーが、もしも敵に回ったら――きっと恐ろしい事になる。
 なればこそ、今ここでカブトとは……否、天道総司とは、きちんと話をつけておくべきだ。
 最早敵の居なくなった市街地で、余裕の態度で直立するカブトへと歩み寄ろうとした、その時だった。
 クロノから、空間モニターで通信が入ったのは。

 それからややあって、変身を解除した一同はバラバラに解散する事となった。
 乾巧は特にこれといった挨拶も無く、サイドバッシャーで何処かへと走り去り。
 加賀美は天道やなのは達に軽く別れを告げると、いつの間にか置いてあった青のバイクで帰って行く。
 天道もまた、赤のバイクに跨りヘルメットを被ろうとしていたのだが――このまま帰す訳にはいかない。
 天道とはまだ話が終わって居ないし、それに何よりも、帰す訳には行かない理由がある。
 なのはが一歩踏み出して、天道を呼び止めた。

「あの、天道さん」
「何だ、まだ何か用か」

 ヘルメットのバイザーを上げて、煩わしそうに告げる天道。

「天道さん、私達の戦艦まで任意同行をお願いしたいんですけど」
「ほおう……時空管理局の方からこの俺に話があるとは、穏やかじゃないな」
「悪い様にはしませんから、ここは一つ穏便にお願いします」

 一歩踏み出して、気まずそうに告げるフェイト。
 天道は呆れた様な溜息を一つ落として、きっぱりと告げ、

「断る」

 しかし、すぐにヘルメットを外した。
 長い脚を振り上げ、赤のバイクから降り立ち、

「と、言いたい所だが、お前達に用があるのはこっちも同じ事だ」

 不遜な態度を崩さずに、冷ややかに告げた。
 なのは達を見下ろす天道の瞳が、何処か恐ろしく見えたのは、気のせいだろうか。
 いつもの天道とは違った、非常に人間らしい……ともすれば怒りとも取れる印象を抱いた。
 彼が何を考えているのかなど解る筈も無く、なのははただ黙って天道をアースラに連れて行くしか出来なかった。


 天道は意外にも、アースラに訪れても何の行動を起こす事もしなかった。
 カブトゼクターを呼ぶ、という事も無く、何か棘のある発言をする訳でもなく……。
 本当に言われた通り穏便に、大人しくなのは達の後ろについて黙々と歩いて来ていた。
 そんな天道が醸し出す雰囲気は何処か重苦しく、なのは達もどう声を掛けていいのか解らず。
 気付けば、険悪なムードのまま潜った自動ドアは、ブリッジへと続く扉。
 天道を迎える様に立つクロノと、立川……ついでに海堂。

「君とは初めまして、だな。僕はこの次元空間航行艦船、アースラの艦長、クロノ・ハラオウンだ。よろしく」
「ほう、意外にもご丁寧な挨拶をする奴だ。俺は天の道を往き総てを司る男――」
「――天道総司……いえ、日下部総司」

 天道の言葉を遮ったのは、クロノの後方に控えていた立川だった。
 日下部、という苗字を言われた途端に、天道の表情が険しくなった。
 その場に居る一同全員もまた、現状を理解出来ずに頭上に「?」を浮かべる。
 そんな沈黙を引き裂く様に、立川の横に控えていた男が勢いよく一歩を踏み出した。

「そして俺様の名前はだな! 海堂――」
「黙れ。お前には聞いてない」
「っ!! な、何だっちゅうんだこの野郎! 人が折角自己紹介をだな」

 一人憤慨する海堂を視界から外し、天道はクロノに向き直る。

「クロノとか言ったな。管理局の方から俺に話があるとは、一体どういう事だ」
「おい、テメエ天道この野郎! 無視か! 俺様は無視なんか、おい!」
「なら単刀直入に言おう。カブト、君は時間を巻き戻したな?」

 クロノと天道の間“だけ”で、神妙な空気が流れる。
 例え流されても自己アピールを続ける海堂の裾を、くい、とフェイトが握り締めた。
 少し悲しげな表情を浮かべて、無言のまま首を左右に振るフェイトを見て、流石の海堂も悟る。
 ここは自分の出る幕では無かったのだ、と。そう判断してからは特に出しゃばる事もなく、自ら身を引いた。

「銀色のカブトが現れると同時に、君の居る世界で大規模な次元震が発生した」
「ほう」
「君の居る世界だけじゃない。他の次元世界にまで影響が及んでいるんだ」
「やれやれ。俺もついにこの世界には収まり切らない程の存在になってしまったか。
 狭い風呂に無理に入ろうとすれば、湯が溢れ出るのも仕方ないからな」
「ふざけるな!!」

 やれやれとばかりに嘆息する天道に、クロノが声を荒げる。
 自分の世界を“狭い風呂”とするなら、他の世界に及ぼした影響は“湯”。
 どう捉えてもふざけているとしか思えない返答に、真面目なクロノがキレるのも無理はない。
 しかし、そんなクロノなど意に介さず、今度は天道が神妙な面持ちで問うた。

「こっちからも質問がある。ネイティブとは何だ? お前達管理局とは一体どういう関係がある?」
「ネイティブ……? 一体何の話を――」
「我々ネイティブは、争いを好みません」

 クロノの返答を遮ったのは、立川だった。
 表情一つ変えずに淡々と告げる立川には、流石のなのは達も違和感を覚えざるを得なかった。
 ネイティブとは何なのか。一体なぜ立川がZECTと管理局の両方に顔が利くのか。
 今まで抱いていた疑問が、一気に膨れ上がってゆく。

「貴様、この前もネイティブとか言ってたな。俺にとっての大切な人とは、一体誰の事を言っている?」
「貴方も解って居るでしょう。貴方にとってたった一人の、血の繋がった妹です」

 瞬間、天道の表情が変わった。
 つい先刻までの冷静な表情など吹き飛ばし、激情を隠しもせずに。
 声を荒げ、大きな瞳を剥き出しにして、天道は立川の肩に掴みかかった。

「お前、ひよりを知ってるのか!!」
「その答えを知りたければ、貴方も我々管理局に従い、これからもワームを倒す事です」
「何だと……?」

 天道の腕に込められた力が、抜けて行く。
 怒りとも困惑とも取れない複雑な表情を浮かべた後、天道は再び冷静を取り戻した。
 立川一通り睨みつけた後、クロノ、なのは、フェイトの三人を一瞥し、告げる。

「俺は俺の道を行く。お前達に協力してやる義理はない」
「どうして……! 私達だって、ZECTと同じで人々を守る為に戦ってるのに」
「それが胡散臭いと言ってるんだ。ZECTもお前ら管理局もな」
「……だから、ZECTにも管理局にも従わないんですか?」

 なのはが天道を見上げ、神妙な面持ちで告げる。
 信用出来ない組織だから、自分は自分の道を行き、一人で戦う。
 それが天道の言い分であり、それを邪魔する者はZECTであろうが容赦はしない。
 弟切ソウの言葉を思い出して、なのはの天道を見る表情をより一層険しくさせる。

「そうだ。俺の道を阻むなら、俺はそいつを組織ごと叩き潰す。
 それがZECTだろうが管理局だろうが関係無い。同じ事だ」
「どうしてそういう事言うんですか! 貴方には人と仲良くしようって気は――」
「下らん!」

 絶叫でなのはの言葉を遮り、しゅばっ! と右腕を掲げた。
 人差指で天井を差し、表情を変えずに続ける。

「おばあちゃんが言っていた。本当の名店は看板さえ出していないってな。
 何を言われようが、俺はお前らの様な胡散臭い組織と協力する気はない」

 その言葉には、なのは達も呆れるしか無かった。
 まるで子供だ。自分の我儘を押し通す子供の言い分だ。
 そんな訳の解らない理由で組織を潰されてたまるものかと思う。

「君はもう少し自分の立場を考えて喋った方がいいと思うぞ、天道総司」

 一歩踏み出し、一同の心中を代表して述べるのはクロノ。
 この船の艦長であり、この場で最も責任のある立場であるからこそ。
 天道とは違い、憤りを顔に出す事もせずに、クロノは続ける。

「歴史の改変に、その余波による次元震……君は今、只でさえ僕達管理局に目を付けられているんだ。
 その上で君が、そこまで表だって管理局を潰すと言うのなら、こっちだって君を犯罪者として扱わざるを得なくなる」
「俺には関係の無い事だ。俺の行く道を塞ぐなら、俺はお前達を潰してでも進む。それだけだ」
「そうか……君とはいくら話し合った所で無駄なんだろうな」

 残念そうに、クロノが嘆息した。
 この場で天道を拘束してやりたい、とすら思っているのだろう。
 だけど残念ながら、そういう訳には行かない。まだこの男の逮捕状は出ていないし、何よりこれは任意同行。
 天道にはこの動向を拒否する権利だってあるのだから、クロノだってこの場で事を荒立てたくはないのだろう。
 それに何より、天道が変身するカブトはZECTの、ひいては協力体制にある管理局の切り札でもある。
 そう易々とカブトたる天道をどうこうする訳にも行かないと言うのが、管理局の事情でもあった。
 誰も何も喋らなくなった後で、天道が踵を返し、言った。

「話はこれで終わりか。なら俺は帰らせて貰う」
「ひよりさんの事は、いいんですか」
「お前たちの事だ。どうせこれからも俺にちょっかいを出してくるんだろう」

 ちらと立川を一瞥し、

「だが、向かってくるなら容赦はしない。ひよりも必ず連れ戻す」

 厳しい視線を投げつけた。
 荒げられた口調は、まるで怒りを表しているかのようで。
 天道はクロノとなのはを一旦眇め見て、そのままブリッジを立ち去った。
 後に残されたのは、なのは達と、不安感だけだった。




 ブラインドから差し込む太陽光だけでは、光源としては心もとない。
 昼間だから問題は無いとは言え、夕方にもなると真っ暗闇になってしまう程の薄暗さ。
 そんな薄暗い一室に、ZECTのエリート部隊・シャドウの隊長である弟切ソウは居た。
 目の前に座るはZECT総帥たる加賀美陸。そして、その脇に立つのは側近の三島正人。
 本来ならば陸が最も頂点に立つ人物である筈なのだが――弟切は、そんな素振りを見せない。
 堂々と陸の眼前まで歩み寄ってから、陸に進言する。

「カブトが時空管理局と接触したらしい」
「ほう、天道君が、彼らと」
「……あんたが何を考えているのかは知らないが、俺はカブトを潰すぞ」
「弟切君が、カブトを、かね?」

 それだけ言うと、陸は不敵に笑った。
 口角を吊り上げて、にやりと……不敵に、薄気味悪く。
 弟切は、この男が苦手だった。何を考えているのか解らないし、油断が出来ないからだ。
 今すぐにでもその歪んだ笑い顔を殴り飛ばしたい衝動に駆られながら、弟切は続ける。

「奴の性格を考えてみろ。天道は絶対に時空管理局と仲違いを起こす。
 後は管理局と、管理局に協力するライダーとで上手く潰し合わせれば」
「青の、カブト」
「は……?」

 弟切の言葉を遮る、陸の言葉。
 訳が解らない。カブトは赤であって、青である筈がない。
 片方しか無い瞳に、何を言ってるんだ、という気持ちを込めて、弟切は陸を睨みつけた。

「君は、青い色をしたカブトを、知っているかね?」
「何を訳の解らない事を……ガタックの事か?」
「ほう、知らない、と」

 次いで、くつくつと笑い始めた。
 片手でわざとらしく口元を押さえて、不敵に、不気味に。
 殺気が湧いた。人間の癖に態度のでかいこの男を、縊り殺してやりたい。
 そんな激情に駆られるが、ここで事を荒立てるのは弟切の為にはならない。
 故に我慢し、陸の言葉に耳を傾ける。

「知らないという罪と、知りすぎる罠」
「……さっきから、何を言いたいんだ?」
「全ての切り札を一つに纏め、勝利へと導くは、赤のカブト。
 最強の切り札として君臨し、運命を切り拓くは、青のカブト」
「一体誰の事を言っている?」
「赤のカブトと、青のカブト……もうすぐ、二人が揃う」

 これ以上無いと言う程に、陸はにやりと笑った。
 しかし当然の事、彼が何を言っているのかなど理解出来る訳もなく。
 これ以上話しても自分のストレスが溜まるだけだと判断した弟切は、陸のデスクを思いきり叩いた。

「もういい。俺は俺のやり方でカブトを潰させて貰う」
「君に、出来るかな」
「種は撒いた。後は俺が上手く立ち回る」

 それだけ言うと、弟切は陸の部屋を後にした。
 そう。種は既に撒いたのだ。あの日高町なのはと出会った時に。
 不和という名の種を、なのはの心の中に植え付けて置いたのだ。
 こうして一度芽生えた不和は、疑惑となってその者を蝕み続ける。
 天道の性格を考えれば、奴がそれを解消するとも思えない。
 後は自分が上手く立ち回るだけで、憎きカブトを潰す事が出来るのだ。
 あの日からずっと憎み続けて来た宿敵を、仲間同士で潰し合わせる事が出来るのだ。
 そしてトドメは、自分がこの手で刺す。この右目の傷を、奴の命で償わせるのだ。
 今でもハッキリと思い出せる、あの日の屈辱を――

 そう。あれはある日の夜の出来事だった。
 ネイティブワームである彼は、その日一人の青年を殺した。
 名も知らぬZECTの隊員を……自分の正体を目撃してしまったそいつを、この手で。
 そもそもネイティブとは、ワームとは同種でありながら、ワームと敵対する宇宙生命体。
 ワームよりも先に地球に訪れたというのに、ワームは我が物顔で地球を侵略しようとする。
 それが気に入らなかった彼らネイティブは、自分達の生態研究を地球人に許し、その力を分け与えた。
 こうして生み出されたのがZECT製のライダーシステムであり、その最たる特徴がクロックアップ。
 時間軸を切り離し、超高速での行動を可能とする、ワーム特有の特殊能力だった。

 さて、そんなネイティブではあるが、彼らには二通り存在する。
 地球人と共に歩み、ワームを撃退する事で平穏を手にしようとする者。
 地球人を利用し、ワームを殲滅した後は、自らが地球を支配しようとする者。
 その日ZECTの隊員を殺した彼は、後者のネイティブワームであった。

 たまたまワームの姿を取った瞬間を目撃されたから、殺した。
 そうして、思い付いた。ネイティブの力を使えば、ゼクターは自分に従う。
 となれば、今現在資格者の居ないザビーゼクターとて自分の意のままに動かせるのでは、と。
 故に彼は、殺した青年の姿を借りて、ZECTきってのエリート部隊・シャドウの隊長になろうと画策したのだが――
 出来事はそう何でもかんでも自分の思い通りに行く筈がなかった。
 あの日の記憶を思い起こす。
 あの廃工場での一幕。

「お、お前は……カブト!!」

 黄金に近い体色をしたワームが、目の前に佇む赤の戦士におののいた。
 運悪く、自分はZECTの隊員を殺す瞬間をカブトに目撃されてしまったのだ。
 人間の姿に擬態する間もなく、彼は――フィロキセラワームは、カブトに襲撃された。

 結果的に彼はカブトから逃げ切る事が出来たのだが、その代償は大きく。
 カブトが振るったイオンビームの刃が、フィロキセラワームの右目を大きく抉った。
 それは当然只で済むダメージではなく、人間の姿に擬態した所で、回復する訳も無かった。

 しかし、それは彼の心に余計に火を点ける事となるのだった。
 彼はすぐに、ザビーの資格者に相応しいとされるシャドウ隊長の座へと就いた。
 その際に、名前が必要だと判断した彼は「弟切ソウ」という名前を考案した。
 それはシャドウの初代隊長・矢車想と、三代目隊長・影山瞬から取ってつけた名前だ。
 ソウと言う名前は矢車から。弟切という苗字は、兄弟ぶって慣れ合っている彼らへの皮肉。
 自分は彼らの様な落ち零れザビーとは違う。弟だろうが何だろうが切り捨てる事も厭わない。
 だから弟切は、最強のザビーとして君臨する為にこの名前を考え、権力を手に入れたのだ。

 ……また、ソウという名前にはもう一つの意味合いが込められている。
 あの日、自分の運命を変えた相手。自分の憎しみの炎を燃やした相手、天道総司。
 ソウジという名前から一文字抜けば、それはそのままソウになる。
 それが意味する事とは何か。何て事はない、人間臭い、簡単な理由だ。
 今でこそ天道を好きに泳がせてはいるが、いつか自分は天道を倒し、天道を越える。
 奴を殺して、この復讐に終止符を打つのだ。それを果たした時、始めて自分の存在意義が示されるのだ。
 その時、自分が天道に擬態し、足りない一文字を補って、ソウからソウジへと改名するのも悪くは無い。
 そんな野望を胸に抱き、様々な思いを込めて考え付いた名前が、弟切ソウなのであった。

「見ていろカブト……お前を叩き潰して、いずれはこの俺が世界を支配してやる!」

 くつくつと笑いながら、弟切は歩を進める。
 それが、失敗に失敗を重ねて来た「完全調和」の新たな姿。
 矢車も影山も、結局は成し遂げる事が出来なかった思想を、自分が完遂させて見せる。
 矢車を越え、影山を越え、最終的には天道をも越えて、弟切の奏でる調和は真に完全となるのだから――。




 並居るワームを薙ぎ倒し、前進を続ける仮面ライダーカブト。
 黄金の短刀が秘める威力は、一撃必殺。ただの一撃でサリスワームを緑の炎と変えてゆく。
 いくらワームが徒党を組んだ所で、圧倒的な戦力の違いを持つカブトに敵う訳がなかった。
 風の様にカブトが駆け抜けた後には、緑色に燃え上る炎だけが残され――最後に残されたのは、集団を率いていたワーム。
 緑の体躯は、地球上に暮らす蟷螂に似たフォルム。セクティオワームが、その腕の鎌をカブトへと向けていた。

「前の様に行くと思うなよ、カブト」
「貴様こそ、前の様に逃げられるとは思わない事だ」

 そう。敵は以前、フェイトを騙し、その命を奪おうとしたワーム。
 突如として現れ、カブトに追いつめられた末に逃走した蟷螂のワームだった。
 一拍の間を置いて、二人は深く腰を落とし、それぞれの獲物を構え――

 ――CLOCK UP――

 戦いのゴングたるは、カブトのシステムが鳴らす電子音。
 鳴り響くと同時に、二人の居る空間の時間軸が周囲から切り離された。
 風も、音も、周囲の全ての時間も。加速する二人の前では、停まっているも同然。
 眩ゆい光が煌めくクロックアップの世界で、カブトとワームが武器を交差させる。
 一合、二合と獲物をぶつけ合わせる度に、形勢はカブト一方へと傾いていく。
 力の差は歴然。一介の成虫ワーム如きが、カブトに敵う訳も無かった。

「ハッ」
「グゥッ……!」

 ワームの拳を回避し、カウンターの一撃を叩き込む。
 イオンビームを纏った刃がワームの上体を引き裂いて、火花を舞い散らす。
 カブトの閃きを予測出来なければ、当然回避できる訳も無かった。
 ダメージが蓄積されたワームは、たまらず加速を終了させる。

 ――CLOCK OVER――

 それを感知したカブトのシステムもまた、クロックオーバーを告げた。
 大口を叩いただけに何か策があるのかと思ったが、そう言う訳ではないらしい。
 尤も、天道総司程の男が、一度刃を交えた相手との戦いで遅れを取る事などあり得ないのだが。
 上体を切り裂かれたワームがその場でたじろいでいる、この隙に一気にカタを付けてやろう。
 そう判断し、カブトゼクターに設置された三つのボタンを押そうとした、その時だった。

「フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォウッ!!!」

 木霊する、奇声。
 甲高い声が、まるで拡声器でも使ったかのように響き渡った。
 これには流石のカブトもたまらず動きを止めて、周囲を見渡す。
 そして目撃した。蟷螂のワームの後方から悠々と歩いて来る、一人の男を。
 丸いサングラスに、派手なアクセサリの数々。極めつけは、中々見掛けないド派手なアロハのジャケット。
 イヤホンから大音量の音楽を漏らしながら歩くそいつは、ともすれば海堂直也とも似た雰囲気、かも知れない。
 あろう事か男は、戦場のド真ん中へと堂々と歩を進め、両腕で以て奇妙な舞を披露してみせる。

「何だ、お前は」
「フゥー! 仮面ライダーの実力、そいつを使って試してやろうと思ったんだけどよぉ」

 言いながら、アロハの男が蟷螂のワームを指差した。
 指差された蟷螂のワームは、男の傍らまで移動し、その場に傅く。
 まるで男を恐れている様な、ワームらしからぬ畏怖の念が感じられた。

「噂に聞く程じゃあないなぁ、仮面ライダー?」
「……成程な。貴様もワームという事か」
「フォォォォォォウ! ワームだってぇ? 僕をこんな奴らと一緒にすんなよ、仮面ライダー!」

 奇声と共に返された答えは、ワームとは異なる存在。
 となれば、オルフェノクかアンデッドか――その答えを考える前に、行動したのは男だった。
 男はその口をがぱっ、と大きく開いて、相対するカブトに向けて青色の火炎放射を吹き付ける。
 ごうっ! と音を立てて迫るそれを回避し、上空へと跳び上がったカブトは、クナイガンを構え、急降下。
 イオンの刃は男へと迫り、その脳天へと突き刺さる――かと、思われたが。

「――ッ!!」

 首を僅かに傾け、その一撃を回避。
 逆にクナイガンを握るカブトの腕を、捻り上げた。
 強引な力で無理矢理カブトを眼前まで引き寄せ、嘲笑う様に告げる。

「無駄よぉ! 君レベルじゃあ、僕は倒せない!」

 それだけ言うと、男は口を開き――ほぼ零距離でカブトに熱線を吐き掛けた。
 当然回避出来る訳もなく、カブトは胸部装甲を青の熱線に焼かれ、大きく吹っ飛ばされる。
 もんどりうって後方の大樹にその背を激突させ、地べたへと落下し、その場で敵を睨み付ける。
 気付けば、今がチャンスだとばかりに、蟷螂のワームがカブトに向かって走り出していた。

「チッ」

 舌打ち一つ、その場で足を振り上げて、蟷螂の胴に減り込ませる。
 その衝撃で後方へと振ったんだ蟷螂を尻目に、カブトは立ち上がり、男を見遣った。
 目の前に立つあの男はワームではない。となれば、必然的に残った可能性は二つ。
 だが、人類の進化系も、地球の覇権を争う奴らもワームとは敵同士である筈。
 となれば、一体どんな理由があって手を組んだのか。
 その疑問を口にした。

「貴様、ワームと手を組んだのか」
「ああ、本当は僕ら敵同士なんだけど、ちょっと力を見せつけてやったらホラ、この通りよ」
「なるほどな」

 力による支配。
 それが、ワームが強制的に従わされている理由だった。
 目の前の蟷螂ワームは、この男と戦い敗れ、なし崩し的に配下にされたのだろう。
 ワームという勢力と、オルフェノクもしくはアンデッドが手を組んだ訳ではないのは、せめてもの救いか。
 小物のワームが一人他の勢力の支配下に置かれた程度ならば、そのワームを倒せば済む話だからだ。
 それよりも現状で問題視すべきは、この得体の知れない男がどれ程の力を持っているのか、だ。
 相手の実力が未知数なら、何が起こっても動じない様に、最初から全力で叩き潰すべきである。
 蟷螂のワームがこちらへ向かって再び走り出した。ならば、まずは格下のこいつから倒す。
 その判断の元で、カブトは時空の扉を開かんと手を伸ばした、その刹那――

「ウェイッ!!」
「――ッぐ!?」

 突如として現れた青のバイクが、蟷螂のワームに激突。
 結構な速度で激突された蟷螂は、そのまま吹っ飛んで、近くのビルディングの壁に叩き付けられた。
 苦しそうに悶えるセクティオワームなどまるで意に介した様子も無く、青のバイクから、紫紺のライダーが降り立つ。
 仮面ライダーブレイド。カブトと同じく、カブトムシをモチーフとする仮面ライダーだった。
 腰に装着されたホルダーから、しゃきん、と音を立てて醒剣を引き抜き、構える。
 右手で構えるブレイラウザーに左手を軽く添えて、カブトをちらと一瞥。

「話は聞いた。あんた、あの時は研究員に擬態したワームを倒そうとしてたらしいな」
「その話は後だ。今はこいつらを何とかするぞ、ブレイド」
「……後で話は聞かせて貰うぞ、カブト!」

 名も知らぬ相手を、お互いにシステムの名で呼び合う。
 些細な事でいがみ合って来たカブトとブレイドが共闘するのは、これが始めてだった。
 と言っても、お互い解決しなければならない誤解も未だ残ったままである事もまた事実。
 だが、それに関して話し合う機会を得る為には、眼前の敵を退けなければならない。
 天道にはあまり相手と話をしたいという気はないのだが、一応の目的は一致していた。

「行くぞ」

 カブトの青の視線と、ブレイドの赤の視線が交差した。
 戦士としての心構えは十分。ならば、お互いにそれ以上の言葉は必要としない。
 先に駆け出したのはカブト。それに追随して、ブレイドが醒剣を構え、走り出した。
 何が起こったのかと理解する間も与えずに、カブトの黄金の刃が蟷螂のワームを擦れ違い様に引き裂いた。
 蟷螂の身体が火花を散らした次の瞬間には、駆け抜けたブレイドが醒剣の刃で蟷螂を切り裂く。
 二人の矢継ぎ早の攻撃に対処し切れない蟷螂は、数歩後じさった後――

 赤のカブトと、紫紺のブレイド。
 赤の戦士はその脚に。紫紺の戦士はその剣に。
 バチバチバチ、と激しい音を掻き鳴らす稲妻を纏っていた。

 ――RIDER KICK――
 ――LIGHTNING SLASH――

 響き渡る電子音は、二人のライダーの必殺技の証。
 カブトのライダーキックと、ブレイドのライトニングスラッシュ。
 駆け出したブレイドが稲妻の剣でワームの身体を両断し、激しい電撃が迸る。
 数歩よろめいて、受けた電撃を振り払おうとするが……最早ワームには、それすら叶わず。
 迸る電撃に苦しむワームの身体に叩き込まれたのは、飛び上がったカブトが放つ必殺の飛び蹴り。
 カブトの足裏から叩き込まれたタキオンの電撃に、いよいよもってワームが受けたダメージは許容範囲を越え。
 次の瞬間には、蟷螂のワームは二人の稲妻にその身を焼かれ、跡形も無く爆散していた。

「何故だ!? 協力なんかしちゃって、お前ら仲悪かったんじゃないのかよぉ!?」
「ああ、確かに俺達の仲はいいとは言えない!」
「だが、今は争う理由がない」

 ブレイドに続いて、カブトがその問いに答える。
 それが第2ラウンド開幕のゴングの代わりとなった。
 駆け出したブレイドが、アロハの男に向かって醒剣を振り下ろす。
 対する男は、右脚を一歩後方へと後じさらせ、ブレイドの一撃を回避。
 続け様に男の身体が変質し、次の瞬間には異形となったその腕で、ブレイドを殴り飛ばしていた。
 数歩よろめいて、ブレイドとカブトの視線が現れた異形へと突き刺さる。
 左右非対称の身体。左右非対称の体色。左右非対称の装甲と、武器。
 漆黒の仮面に顔を隠したそいつは、見まごう事無きアンデッド。

「お前、アンデッドか!」
「仮面ライダー、僕はその辺のアンデッドとは一味違うんだ」

 真っ赤な瞳でブレイドを睨み、両手を広げて余裕綽々の態度で告げる。
 頭や肩、体中から山羊(ヤギ)に似た角を生やしたそいつは、見た目の通りの山羊の始祖。
 他のアンデッドとは明らかに雰囲気を違える、言わば上級のアンデッドと呼ぶに相応しい存在であった。
 カプリコーンアンデッドと呼ばれるアンデッドに対し、ブレイドはブレイラウザーを投げつける。
 びゅん、と風を切って迫るブレイラウザーが、その切先で以て山羊の肩を掠めた。

「ウオッ!?」

 回避し損なった山羊が、その肩から緑色の血液を噴き出した。
 この瞬間を、逃しはしない。カブトとブレイドの両方が、ほぼ同時に大地を蹴った。
 ライダー相手に一瞬でも動きを止めてしまったのが、カプリコーンアンデッドの運の尽き。
 閃いたカブトの短剣が山羊の身体を引き裂いて、その瞬間にブレイドが後方を陣取る。
 地面に突き刺さったブレイラウザーを回収したブレイドが、山羊の背中を叩き斬る。
 受けた衝撃のままに前方へとよろめけば、待ちうけているのはカブトの斬撃。
 二人の剣が、連携攻撃でカプリコーンアンデッドを追い詰めてゆく。

「ハッ!」
「ウェイ!」

 声にならない嗚咽を漏らす山羊に、無数の連撃が叩き込まれ。
 二人の刃が、反撃すら叶わない山羊の身体を何度も何度も切り裂いた。
 その身体から夥しい量の緑を噴き出しながら、山羊のアンデッドはよろめきながら数歩後退。
 頭の角が青の光を放ち――次の瞬間には、その光を二人のライダーへ向けて発射していた。
 カブトもブレイドも、地べたへと跳び退る事でかろうじてそれを回避。
 しかし――次に二人が立ち上がった時には。

「……逃げたられた!?」

 山羊のアンデッドの姿は、何処にも無かった。
 流石にこの状況で二人のライダーを相手にするのは不利だと判断したのだろう。
 奴は当初カブト一人を潰すつもりで仕掛けて来たのだ。ライダー二人との戦いなど想定してはいない。
 不利な状況となれば、やられる前に逃げてしまうのが得策と言うのは、戦法としては悪くは無い。
 結局カブトとブレイドだけが残されて、その場で二人は向き直った。
 仮面の下で、先に口を開いたのはブレイドだった。

「なあ、あんた。何でいつも誤解される様な事ばかりするんだよ。
 聞いたぞ、時空管理局の皆とも何か問題を起こしたらしいじゃないか」
「俺は俺の道を往くだけだ。所詮お前達一般人とは歩むべき道が違う」
「……何だよそれ! ちょっとは見直してもいいかと思ったけど、お前やっぱり嫌な奴だな」

 やれやれとばかりに嘆息して、呆れ口調で告げるブレイド。
 やはり剣崎一真は、こいつの、カブトのこういう所が気に食わない。
 この相手を見下した様な態度さえなければ、カブトとも一緒に戦って行きたいのに。
 出来る事なら管理局の皆とも協力して、人々の為に一緒に戦いたい。そう思っているのに。
 なのにカブトには、取りつく島がない。話そうとしても、話が通じないのだから仕方がない。
 募る苛立ちを吐き出す様に、ブレイドは叫んだ。

「俺達、同じ仮面ライダーだろ? どうして一緒に戦えないんだ!」

 問い詰めても、カブトは答えない。
 解っては居た。まともな返事が返って来ない事は。
 だけど、剣崎一真という人間は面倒臭いまでに真っ直ぐで。
 だからこそ、解っては居ても問わずには居られなかったのだ。
 しかしカブトはそんなブレイドなど意に介さず、黙って背を向ける。
 そのまま歩いて立ち去ろうとする背中を、ブレイドは慌てて掴んだ。

「おい、ちょっと待てよ! まだ話は終わってないだろ!」

 声を荒げて、カブトを引き止める。
 何の返答も返さぬカブトの所為で、居心地の悪い沈黙が流れる。
 周囲でさえずる小鳥や虫の羽音だけが響き渡って、嫌に神妙な空気が流れ。
 いい加減この空気に耐えられなくなったブレイドが、何事かを言おうとした、その時だった。

「いいのかい、仮面ライダー。早くお仲間を助けに行かなくて」

 この静寂の中で、誰かの声が響き渡った。
 まるで射抜く様な鋭さを秘めたその声に、二人は硬直する。
 しかしそれもほんの一瞬。すぐに視線を声の主へと向け、その主を見遣る。
 そこに居るのは、黄色のハイネックに、黒のジャケットを羽織った眼鏡の男だった。
 知的な雰囲気を醸し出す男は、銀縁の眼鏡を指でくい、と持ち上げて、話を続ける。

「今頃あんた達の仲間が、ワーム共に襲われてる頃だぜ」
「お前に言われるまでもない」

 言うが早いか、カブトはブレイドの腕を振り払った。
 そのまま近くに停車されていた赤のバイクへと跨り、エンジンを吹かせる。
 このままでは、またカブトは行ってしまう。何の話も出来ないままに。
 その前にせめて――せめて、

「……ならせめて、あんたの名前を教えてくれ!」
「俺は天の道を往き、総てを司る男……天道、総司」
「天道……天道だな! 俺は剣崎! 剣崎一真だ!」
「……覚えておこう」

 それだけ告げると、赤のバイクは一気に走り去って行った。
 仮面ライダーカブトに変身して戦う男の名は、天道総司。
 不遜で生け好かない奴だが、もしかしたら話せる相手かもしれない。
 今まではこちらもカブトを敵だと思っていた。だから最初から剣を交えていたのだ。
 だが、今回は違う。最初から喧嘩腰で向かわなければ、突然殴られるという事も無かった。
 だから、いつかは天道とも共に闘える日が来るのではないか――そう、剣崎は思うのであった。
 そんな時だった。不意に、先程現れた眼鏡の男が口を開いたのは。

「スペードのカテゴリークイーンか……口だけだったな」
「あんた、さっきから一体何なんだ? 何を知ってるんだ?」
「心配せずとも、今はまだあんた達と事を構える気はないさ」

 剣崎がその言葉の意味を理解するよりも早く、眼鏡の男は何処かへと歩き去って行った。
 何故か追いかける気にもなれず……と言うよりも、男の背中が追いかけるなと言っている様に感じて。
 その背中から、不思議と感じた威圧感と存在感。それに気圧されたかのように、剣崎はその場から動けなかった。


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最終更新:2011年02月19日 16:11