余裕
「彼」が立っていたのは森の中。
夜の冷たい風が吹きぬけ、がさがさと葉がこすれあう風景は、これから始まる狂気の殺人ゲームの空気を的確に表現する。
しかしながら、「彼」はその場に似つかわしくないほど、ひどく落ち着いていた。
「…ひとまず、支給品とやらを調べてみるか」
「彼」――セフィロスは、持っていたデイバッグをどんと地面に置くと、その中身を調べ始めた。
目の前で唐突に命を奪われた、金髪の少女と鎧の男。
明らかに異常な光景だったが、それは彼の心を震わせるには至らない。
何故なら、当にセフィロスは殺しまくっていたから。
軍人だから、というわけではない。
確かにソルジャークラス1stという栄光は、彼が斬り伏せた数多の人間の血によって塗り固められたものである。
しかし、この男の「殺した」とは、そういう人が人を殺すこととは違う。
強いて言うなら、道端を歩く虫を殺すのと同じ感覚。
セフィロスにとっての人間は、犬や猫などの動物と同じ。
何故なら、当のセフィロスが人間ではないのだから。
「武器として使えるのは――これか」
『 クロスミラージュ
「機動六課」前線フォワード部隊の一員が用いる、拳銃型インテリジェントデバイス。
通常形態のガンズモード、クロスレンジ用のダガーモード、ロングレンジ用のブレイズモードに変形』
見覚えのある武器だったのは幸いであろう。
これはティアナの使用している二挺拳銃のデバイスだ。
各種レンジに対応したモードが備え付けてあり、あらゆる戦況でそつなく使用することができる。
しかし、それでも尚、セフィロスには腑に落ちないところがあったようだ。
「…よりにもよって銃か…」
ソルジャーは銃を使わない。彼らの超人的な肉体を活かすのは、銃ではないからだ。
普段剣で戦っている彼にとって、銃はあまり使い慣れたものではない。どうしても不便な印象が残る。
ダガーモードがあるだけましかもしれないが、それも正宗に比べれば絶望的なリーチ差だ。
せめてレヴァンティンならばよかったのだが。
そんな思考が、セフィロスの脳裏をよぎった。
愚痴っていても始まらないので、彼は再び荷物を漁り始める。
新たに見つけたのは、1枚の紙切れ。
一般に言うトレーディングカードゲームだ。聖職者のような服装をした、中年の女性が描かれている。
『 治療の神 ディアン・ケト
デュエルディスクにセットすることで発動可能。自分のライフポイントを1000回復する』
ライフポイントを回復する、ということは、要するに治療のためのものなのだろう。
セフィロスはそう解釈することにした。
「それにしても…何故そのデュエルディスクとやらも付属していないんだ…」
そしてまた愚痴をこぼし、ため息をつく。
それらしいものが見られない以上、どうやら今のところ、この治療用具は宝の持ち腐れらしい。
まったくもって装備に不満が多すぎる。
しかし、これが基本なのだろう。でなければゲームとしては面白くない。
少なくとも、傍観している側からは。
ならば、欲しいものは相手から奪い取れ、ということか。
「…クロスミラージュ・セットアップ」
セフィロスはそう呟き、待機状態のクロスミラージュをアクティブにする。
すぐさま、ティアナが愛用していたハンドガンの片割れが姿を現した。
「今は俺がお前を使うことになっている」
『Yes,Sir.』
あまりにあっさりとした返答だ。
普通の人格型デバイスなら、持ち主以外が使用する時には何らかのリアクションを示すだろう。
であれば、何らかの改造が施されているということか。
メモリーを消去するなり、あるいは、誰が所有者であろうと命令を聞くようにするなり。
「技は何が使える?」
だとすると、機能の方にも何らかの変化があるのかもしれない。
そう判断し、ひとまずセフィロスは問いただす。
『クロスファイアシュート、ファントムブレイザー、…』
読み上げられた名称は、全てティアナが用いていた技のもの。
どうやら彼女個人のテクニックである幻術魔法以外は、一通り使用できるらしい。
「十分だ」
そう独りごちると、セフィロスはデイバッグを持ち上げた。
そのまま周囲を見回し、適当な木の洞を見つける。
そこそこに大きな木の根元にぽっかりと空いたそこは、人1人が入るには申し分ない大きさだ。
セフィロスはそこにデイバッグを投げ入れると、自身もその中に入り、どっかと腰を落ち着かせた。
あぐらをかいて座ること数分。
参加者の名前が載った名簿を読むことすらしない。
『どうされるつもりですか、サー?』
クロスミラージュが問いかけた。
常人を遥かに凌駕した、侵略者ジェノバの力をその身に宿す魔人。
そのセフィロスは、今後この狂気渦巻く戦場でいかに立ち回るつもりなのか、と。
「特に何も」
返ってきた返事は、あまりに予想外なものだった。
『What?』
無口なはずのクロスミラージュが、たまらず聞き返す。
「俺は特に何もしない。じたばたするよりは、周りが殺し合ってくれた方が楽に生き残れるだろう」
セフィロスはそう答えた。
彼は知っている。
こういう極限状態ならば、必ず何人かは、制限時間切れの死亡を避けるために進んで殺人者となることを。
自分が無理に動く必要はまるでない。手間がかかるだけだ。
普通は思いつかない戦術。それをすんなりと思いつけるほどに、セフィロスは落ち着いていた。
人が死んだ? 目の前で殺された?
そんなこと、元より知ったことではないのだから。
『もしも、敵に見つかった時は?』
「さすがにその時は反撃するまでだ」
逆に、自分が誰かを殺すことにも心は痛まない。
そもそも彼にとって殺人は願望だ。自分の住む星の人間を皆殺しにし、支配することがジェノバの――そして、セフィロスの悲願。
『仮に、お知り合いが攻撃を仕掛けてきた時は?』
クロスミラージュは尚も問いかける。
脳裏に浮かぶのは、機動六課で共に戦った者達。あの会場にも見られた、孤独な自分を受け入れてくれた人達。
ジェノバとしての使命を受け入れて以来できた、初めての仲間。
誰よりも、全てのきっかけとなった、あの短い茶髪の女。
「…どうにでもなるさ」
しかし、非情な声で、セフィロスは答えた。
【一日目 AM0:13】
【現在地:H-1 森林】
【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
[状態]:健康
[装備]:クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式・魔法カード「治療の神 ディアン・ケト」@リリカル遊戯王GX
[思考・状況]
基本 事態を静観し、潰し合うのを待つ
1 とりあえず禁止エリアだけを警戒すればいいか
2 向かってくるのならば、六課の連中だろうと問答無用で殺す
3 一応食料は探しておこう
[備考]
※能力・思考基準はゆりかご攻防戦直前です
※ヴァリアブルバレットは、コツが分からないので使用不可です
最終更新:2008年02月19日 21:27