魔王行軍


エリア11には反逆者がいた。

世界の3分の1を占める超大国・神聖ブリタニア帝国。
正義を掲げる反逆者は、侵略の限りを尽くす暴虐の帝国を許しはしない。
策を巡らせ、包囲して、追い込んで、殲滅する。

反逆者は容赦をしない。
弱者を虐げる強者達に。
自らが抱える良心にさえも。

弱き民を導く王として。
同時に、いたずらに死を振り撒く悪魔として。
そのどちらもが、かの反逆者の姿に相応しいのだろう。

故に。

反逆者は「魔王」だった。



見知らぬ大地の丘の上。
魔王はそこに君臨する。
宵闇に溶け込むような漆黒のマントを翻し、紫の瞳で眼下の街を見下ろして。
ルルーシュ・ランペルージはそこに立っていた。

「醜態だな…」

誰へともなく、ルルーシュは呟く。
トウキョウ租界の戦火の中、彼は最愛の妹を奪われた。
指導者ゼロたる自分は戦線を離れ、追っ手を振り切り、妹ナナリーの待つ神根島へとたどり着いた――はずだった。
突然襲いかかった「トラップ」。
白光煌めく中、目を開けた場所は見知らぬ部屋。
目の前で起きた殺人。自分達にも強要された殺人。

(こんな所で、下らない遊びに付き合っている暇はない)

奇しくも彼の親友にして、生涯最大の宿敵たる白騎士と、全く同じリアクション。
ルルーシュの焦りは募る。
早くこの場をくぐり抜け、ナナリーを助けに向かわねば、何をされるかも分からない。
しかし、彼にも1つの気がかりがあった。

「スバル…」

群集の中、見つけたのは見覚えのある顔。
次々と犠牲を増やすルルーシュが巻き込みたくないと願った、最後の良心。
人と悪魔の境界を隔てる、絶対防衛線。

安全なはずだった。
富士の新政庁は、黒の騎士団が制圧していた。
全てのブリタニア軍勢を駆逐したあの場所で、スバルがアクシデントに遭うはずがなかった。

(甘かったというのか…俺の読みが)

ルルーシュは己の浅はかさを呪う。
しかし、悔やんでいても先には進めない。

「クラールヴィント」

命令を下す。
手袋をはめた黒き両手を飾る、青と緑の4つの指輪に向かって。

「エリアサーチを」
『Jawohl.』

黄金のリングが、女の声でルルーシュに応じた。

魔王の武器は腕力ではない。
持ちうる全ての戦力を余すことなく活用し、最善の策を割り出す磨き抜かれた叡知。
ときに、「魔法だ」「奇跡だ」とさえ呼ばれる、ドラマティックな勝利を呼び込むひらめき。
頭脳こそが、ルルーシュの剣であり、盾であった。
そして、策謀は情報を組み立てて作られる。
優れた情報処理能力を有するアームドデバイス・クラールヴィントは、魔王にとっては、何物にも勝る最強の武器。

(アタリを引いたな)

殺し合いのゲームの中渡された、攻撃能力を持たない非力なリング。
誰もが肩を落とすようなこのデバイスを手にした時、彼はそう確信した。

『3人の人間がいます。柊かがみ、ヴィータ、枢木スザク』
「そうか…残念だが、やはり街は避けるべきだな」

スザクがこのゲームに参加していることを、ルルーシュは知っている。
慎重な彼は、名簿を見忘れるという愚は犯さない。
他の者は知らないが、少なくともスザクには、今の装備で勝つことはできない。
今自分が他に持っているのは、水と食料、そして妙な四角い物体のみ。
おまけに建築物を拠点にするため、またはそんな人間を狙うため、じきに多数の参加者が押し寄せてくるだろう。

「…ここを離れるぞ。随時、エリアサーチを怠るな」

故に、ルルーシュは市街地入りを断念した。
そのまま東の方へと歩いていく。
目指すは病院。
様々な医療品があるこの場所は、押さえておいて損はない。
素早く到達すればそれらを独占できるし、それら目当てに来る参加者を待ち伏せし、装備を奪うことができる。
やりようはないわけではない。トラップを駆使すれば、超人にさえ勝つこともできる。
人の多い市街地と異なり、そこならば、安心して細工が可能。

「…他の誰が犠牲になろうと、俺は構わない」

今更のことだ。
ルルーシュは独りごちる。

「アイツを除いては…だが」

しかし、冷徹無慈悲な魔王にも、守りたい者はいた。
そう――最後の友、スバル・ナカジマ。

「スバルを見つけたら、最優先で報告」
『Jawohl.』

彼女だけは守ってみせる。
殺させはしない。殺しはしない。
超常の力に囚われ、超常の境遇に放り込まれ、修羅の道を往く男の、最後に残った人間らしさ。
それを捨てたい人間などいない。
故に、全力で守り抜く。
ルルーシュは誓った。

たとえ、その超常の力――ギアスが、この地に足を踏み入れた瞬間から、左目から姿を消しているとしても。

(それに…)

最大の障壁。
たった1人になるまでゲームは終わらない。
そのルール。

(それを破る手段も…ないことはない)

だが、ルルーシュは知らない。

自らの愛馬――漆黒と黄金の鎧を持つ「真の魔王」・ガウェインが、息を潜め、主の到来を待ち続けていることを。

【一日目 現時刻AM0:54】
【現在地:D-3 丘】

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル】
[参戦時間軸]STAGE10途中。神根島にて、V.V.のトラップにかかった瞬間
[状態]健康
[装備]クラールヴィント(リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー)
[道具]支給品一式(水、食料、電王用ライダーパス@マスカレード)
[思考・状況]
基本 このゲームに生き残り、神根島に戻ってナナリー救出に向かう。
1.拠点とするため、病院を目指す
2.スバルだけは絶対に守り抜く
3.俺に余計な手間をとらせたこと…いずれ後悔させてやる
4.今は何か武器が要るな…

[備考]
※ギアスは使用不可。本人もそれを認知しています
※クラールヴィントはシャマルから没収されたものです。…地獄兄弟フラグ?

007 本編投下順 009

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最終更新:2008年02月19日 21:31