闇の剣士と祝福の風


一方に森、そして一方にコンクリート作りの施設を見下ろせる丘の一角に男は立っていた。
青いコートに輝く銀髪、そして絶世の美貌をもつ美男子である。

「殺し合いの褒章で望みを叶えるか…」

男は呟きながら支給品の入ったバッグを手に周囲を一瞥する、殺気も魔力も本能的な危険も感じない。
完全に周囲の安全を確かめてからバッグを地に下ろし青い天を見上げながる。

「…まるで蟲毒だな」

思うのは呪術の初歩の儀式”蟲毒“それは壷の中に入れた無数の毒蟲を最後の一匹まで喰らい殺し合わせて残った最後の一匹に呪力を持たせるという呪いに用いる儀式である。
この殺人ゲームはそれを思わせる歪み狂った遊戯であったが男は冷たく残忍、そして何より美しい微笑を浮かべる。

「まあ、構わんか……六課の者共との馴れ合いよりはよほど有意義だ」

彼にとって下等な人間どもを殺してある程度望むが叶うなら何も問題は無いのだ。

男の名はバージル、伝説の魔剣士スパーダの息子にして闇に心を堕とした半魔の剣士である。


「さて、さっそく荷物を確認するとしよう」

バッグの中には水や食料などの最低限の物が入っていた、ある程度内容物を確認したバージルは肝心の得物を探る。
そして出てきたそれは正にバージルの望むべきものだった。

「ほう……随分とまあ運の良い」

手にしたそれは恐ろしく長大な日本刀、かつて最強のソルジャーが振るった刀であり、名を正宗という名刀中の名刀である。
バージルは鞘から抜き去ると、その刀身を眺めながら魔力を徐々に込めていく。
すると斬撃を横合いの森に一閃する、その魔力の斬撃の木々が何本も切り倒された。

「素晴らしい名刀だ、これならば存分に俺の技を使えるだろう」

心の底から満足そうな声を漏らして、妖しいまでの刀身に魅入られた。

「だがこれは少し長すぎるな、居合には使いにくいな。まあ良い、さて他には何が入っているのか。せめて魔法行使に役立つデバイスであれば……」

バージルは鞘に収めた正宗を腰に下げて、バッグの中の残りの支給品を確認する。
そして取り出されたのは眠っている人間の女性だった。

「……なんだこれは?」

それは長く美しい銀色の髪を持ち、黒いアンダーウェアのような服を着た女性。
身体は豊かな起伏を誇り、抜群のプロポーションを見せ付けている。安らかな寝顔も気品を感じる美貌である。
だがバージルは即座にその女性が人間でないと悟った、何故ならばその女性は彼の知るモノと同じ気配を持っていたからだ。

「この気配……あの融合機と同じ。こいつもユニゾンデバイスなのか?」

それは彼が仮の巣として身を置く機動六課、その部隊長である八神はやての融合機リィンフォースⅡと同じ気配。
バージルはともかく、その女性を起こす事にした。

「おい、起きろ」

肩を掴んで身体を揺さぶる、ついでにその豊満な胸も大いに揺れたが気にはしない。
女性はその刺激に“う~ん”と可愛い声をあげて目を覚ました。

「起きたか?」
「んぅ…ここは?……いったい私は…」
「詳しい場所は分からん…あえて言うならゲーム会場か。俺はバージル、お前は誰だ?」
「私……私の名前は…………リインフォース」


それはかつてはやてと共にあった悲しき融合機。涙と共に天に還ったユニゾンデバイス、リインフォースⅠ。



「なるほど、では主はやては今でもお元気にしているのだな?」
「まあな」
「そうか…それは良かった…」

眼を覚ましたリインフォースはバージルと互いの知る情報を交換し合った。
と言ってもリインフォースは10年前に消えた存在であるため、自身の現状とユニゾンデバイスとしての機能以外に教える事は無かった。
逆にリインフォースはバージルから教えられたはやての現状に嬉しそうに笑みを零す。
だがバージルはまるで極上の獲物を見つけた肉食獣のような鋭く妖しい眼光でリインフォースを見つめる。

「ところでリインフォースと言ったか。貴様のマスターはまだ八神に設定されているか?」
「いや、どうやら蘇った代償にマスター認証は初期化されているようだ」
「そうか……ならば変更だ」

その言葉と共にバージルの手がリインフォースに伸び、その細く美しい首を締め上げた。

「くはあっ! なっ、何をする…」
「貴様がデバイスならば新たな主人の名を刻んでやらねばな」

バージルの手から魔力で編んだプログラムが流れ込み、リインフォースの体内を蹂躙する。
機動六課で魔法術式やデバイスの操作を修得しているバージルにとって、融合機という特殊なタイプといえど唯のデバイスであるリインフォースのプログラムを修正するなど簡単な事だった。
リインフォースの所有者設定は瞬く間にバージルのそれへと変えられえていく。
そして全てが終わり、バージルの手から解放されたリインフォースは膝を突き咳き込む。

「げほっ! げほっ!」
「これで貴様は俺の所有物だ、髪の毛1本から爪の先まで全てな。せいぜいこの殺人遊戯の役に立て」
「なっ! お前はこの狂ったゲームに乗るというのか!?」
「ああ、別に人間共を庇いたてる必要などないからな」
「なんだと……本気で言っているのか?」
「無論だ」
「悪魔め…」

リインフォースのその言葉にバージルは不気味な、それでいて怖気を奮うほどに美しい笑みを見せて笑う。

「その通り、よく知っているな。俺は悪魔だ」


闇の剣士はこうして祝福の風を従えた、これが彼にとって幸運か不幸かはまだ分からない。


【一日目 現時刻AM2:10】
【現在位置:D0 アヴァロン近く】

〔参戦時間軸〕 Strikers May Cry六話から七話の間くらい
〔状態〕健康 魔力量や身体能力は抑えられているが技は微塵の陰りもない 悪魔の生命力は健在かも
魔人化できるかはまだ不明
〔装備〕正宗 @魔法少女リリカルなのは Strikers片翼の天使
〔道具〕リインフォース(あくまでもバージルはモノ扱いしているので)@A‘sアニメ本編
〔思考・状況〕
1 目に付いた参加者は一人の例外なく殺す、もしくは利用する。
2 周辺を警戒しつつ索敵、現在のところは様子見であまり派手に動く気はない。
3 名簿の確認はしていない、っていうか興味ない。
〔備考〕
リィンフォースはマスター認証をバージルの奪われつつも彼に殺しをさせないようにしたいと考えている。
かつての使用者侵食などのバグは解消済み、またバージルとの融合は可能だがかつて蒐集した技が使えるかは不明。

014 本編投下順 016

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最終更新:2008年02月19日 21:39