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「一体この状況は何だ……?」

 B-2の平地。リインフォースはそこに独り、佇んでいた。
 今の状況は、説明するなら「いつの間にか連れ去られ」「殺し合わされている」の二言で済む。
 最初は前のようにどこかに召喚されたのかとも思ったが、少なくともあれだけの人数を召喚する術などリインは知らない。
 おまけに、今の姿は二度と使うことはないだろうと思っていたパイ=エンダーの姿。
 ようやく主と暮らせるかと思った矢先にこれである。リインの中には、確かな怒りが渦巻いていた。

(さて、どうする……?)

 リインフォースは考える。ここを生きて出るにはどうすればいいのかを。
 まずは殺し合いに乗る場合。これは生存確率が低すぎる。
 最初の部屋の時点では、見えただけでも軽く60はいた。もしかしたらもっといたのかもしれない。
 自分は闇の書の管制人格だったから、戦闘能力には自信がある。だが、それでも下手をすれば一人で60人を相手にしなければならない。
 おまけに自分の魔力も大きく削られている。この分では蒐集した魔法の威力も落ちているだろう。
 そんな状況で戦い続け、それで最後まで生き残ることができるとはさすがに思っていない。
 ならば抗い、主催を倒すか?
 ……少し考え、それも困難だと結論付けた。
 それをするには、まず首輪を外す必要がある。だが、それまでに襲撃が無いとも限らないし、主催側に感付かれれば首輪がボン、である。
 そしてリインが出した結論は、「どちらも困難」。彼女らしからぬ弱気な結論だった。

 ……ふと、彼女の頭にとある可能性が浮かぶ。
 その瞬間、リインが足元にあるデイバッグを漁り、参加者名簿を取り出した。
 ……果たして、彼女の思い浮かべた可能性は見事に的中していた。

「主はやて……何故あなたまで、この狂った所に……!」

 彼女が思い浮かべた可能性、それははやてが参加している可能性である。
 それが的中していると分かった今、彼女の取る道は一つ。かつて自身の存在を消してまではやてを救おうとした彼女なら、おそらく進むであろう道を。

「……主はやて、あなたは私が、必ず生還させてみせます……!」

 その道とは、はやてを生還させる道である。彼女はそのためなら何だってするだろう。
 たとえ同じように名簿に載っていた仲間を、その手で殺してでも。
 ……もちろん、そうせずにはやてを生還させる術があるならば、迷わずそれを取るが。

 決意を固めた彼女がまず行ったのは、支給品の確認である。
 力が制限されている以上、支給品は言わば生命線。ならばそれを確認するべきである。
 そうして最初に手に触れたものを取り出すと……世にも恐ろしいものが出てきた。
 その恐ろしいもの……リンディ茶スペシャルブレンドを前に、しばらく固まるリイン。
 このある意味劇物な品を見た彼女は、リンディ茶をデイバッグにそっと戻し……

「……さて、私の支給品は何だ?」

 見なかったことにしやがった。
 しかも、「私は何も見ていない」と何度も呟いている。かわいそうなのでこれ以上は触れないであげよう。
 続いて彼女が取り出したのは、一台の携帯電話。説明書には『カイザフォン』と書かれていた。
 カイザギアがあれば変身が可能とあったが、今は持っていない。故に、これは単なる携帯電話としてしか使えないだろう。
 電話が繋がる相手がいるのならば有用だが、あいにく今はいない。その上扱いをよく知らないので、とりあえずは保留としておいた。
 他に支給品があるのなら、それを武器に使えるかとも思ったが、あいにくラスト一個……いや、一本も役には立たなさそうだ。

「……主催者はこんなもので殺し合いをさせようというのか?」

 ネギが出てきた。実際には首領パッチソードという名で、それなりに使えるはずなのだが、彼女はそれを知らない。
 主催者はバカかと思いながら、デイバッグにネギをしまった。
 と、その時である。カイザフォンが突如鳴り出したのだ。
 これにはリインも多少面食らう。まさかここまで早く着信があるとは思っていなかったのだ。
 そして着信があるという事は、カイザフォンの存在を知る何者かがかけてきているという事。

「く……これか?」

 悪戦苦闘しながらも、何とかボタンを押して電話に出ることに成功したリイン。
 そしてカイザフォンからは、

『もしもし、聞こえるか?』

 男の声がした。


 同刻、J-6南部の森の中。
 ヨハン=アンデルセンはそこで、豹変してしまった十代について考えていた。
 ほんの少し前まではアカデミアにいて、足りない食料を節約しながら食べていたはず。それが何故、ここにいる?
 しかも、大量に集めた人間(その中には万丈目とレイの姿もあった)が殺し合いを強制させられ、見せしめにされた明日香は死亡。おまけに主催は十代。
 これは十代をよく知る人間から見れば、到底あり得ないような出来事である。
 百歩譲って他はあるとしても、十代がそれをやるわけがない。それこそ何か及びもつかないような事が起こらない限りは。

「これは……十代に何かあったな」

 その及びもつかないことの正体は分からないが、それでも十代に何らかの異変が起こったというのは間違いない。
 ならば逆に考えれば、その異変の正体が分かれば十代を止められるかもしれないという事。
 そのためにも、まず必要なのは情報だ。それがあれば、もしかすると十代を元に戻す手立てが見つかるかもしれない。
 となれば、まず行うべきは支給品の確認だ。この中に手がかりがある可能性もあり、身を守るためにもやっておかなければならない事である。
 最初に取り出したのは、一丁のごついライフル。よく見ると、「当たり」と書かれたメモ用紙が貼られている。

「何々……この紙は一部の強力な支給品に貼られたものです。これを使って遠慮なく殺ってくださいね……だって?」

 この「当たり」の紙が貼られているという事は、ヨハンの支給品である銃……ライサンダーZは、相当の当たり武器だという事がよく分かる。
 それを見たヨハンは沈黙。真偽はともかく、相当強力な銃だという事は見た目からも分かる。
 紙の内容にイラついたのもあるが、それ以上にこの銃が乗った者に奪われた場合の事を想像し、身震いした。

「これは、乗った奴に渡すわけにはいかないな……!」

 そう言いながら、別の支給品を探すヨハン。次に出てきたのは一台の携帯電話。
 説明書には『ファイズフォン』と書かれていたが、どうせ単なる変わったデザインの携帯電話だろうと思い、デイバッグにしまおうとした。
 が、そこで一度思いとどまって開き、電話帳を出す。
 そこに登録されていた番号は、主要施設全ての番号と、他に支給されている電話……カイザフォンとサイガフォンの番号。
 もし誰かが電話に出れば、その人物と情報交換が可能。そう考えたのだ。
 そしてヨハンは最初に目に付いたカイザフォンへと電話をかけた。
 しばらく待つが、出ない。相手は電話に気付いていないのだろうか。
 もう切ってしまおうか。そう思った頃に、発信音が消えた。相手が電話に出たのだろう。
 ヨハンは確認のため、電話の向こうにいるであろう何者かに呼びかけた。

「もしもし、聞こえるか?」


【一日目 AM1:25】
【現在地 B-2 平地】
【リインフォース@スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神 THE BELKA OF MAZIKAL】
[参戦時期]10話終了~11話開始までの間
[状態]健康、パイの姿
[装備]なし
[道具]支給品一式、カイザフォン@マスカレード、リンディ茶スペシャルブレンド(砂糖40倍)@仮面ライダーリリカル電王sts、首領パッチソード@ナナナーナ・ナーノハ
[思考・状況]
基本:はやてを生還させる(手段は問わず)
1:電話の相手に対処
2:私は何も見ていない……
3:はやて生還のために、あらゆる手段をとる。必要とあらば殺しも辞さない
[備考]
※首領パッチソードの詳細を知りません

【現在地 J-6 森】
【ヨハン=アンデルセン@リリカル遊戯王GX】
[参戦時期]第九話 食事中
[状態]健康
[装備]ライサンダーZ@魔法少女リリカルなのはStrikerS――legend of EDF――
[道具]支給品一式、ファイズフォン@マスカレード、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本:十代を止める
1:十代の豹変の理由など、情報を集める
2:そのために電話の相手と情報交換
3:ライサンダーをマーダーに渡さない


[備考]
※一部の強力な支給品に「当たり」と書かれた紙が貼られています
※どうやらサイガフォンが誰かに支給されているようです

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最終更新:2008年02月24日 13:42