仮面ライダーリリカル電王sts第八話
「白き魔王と紫の狂人」
ここは機動6課訓練用フィールド。普段は前線フォワード部隊の訓練に使われるスペース。しかし、今はその場を闘気、いや殺気が支配していた。
放つは中央にたたずむ一組の男女。
片や、エースオブエースと呼ばれし管理局最強の魔導師、白き魔王高町なのは。
片や、狂わんばかりの殺気に包まれし時を駆ける仮面の戦士。紫の狂人、仮面ライダー電王Gunform。
見守りし者は皆、動かない。いや、動けない。それほどの殺気に包まれていた。
もはや、この場に言葉は不用。始まるは全力全開の真剣勝負。
先に仕掛けたのは電王の方であった。デンガッシャーから連続して放たれるエネルギー弾。それは狙いなどつけていない乱射であった。
しかし乱射は時に効果的である。それは、空中軌道の制限。だが、なのはには通用しなかった。
片手を上げると障壁で全て受け止めたのだ。
「へぇ、やるじゃん」
「でも、これからだから。お話、聞いてもらうよ」
「じゃあさ、これならどお?」
電王がそう言った瞬間その周囲に六発ほどの魔力弾が現れたのだ。その魔力弾を見た時、なのはは少し驚いた。それは、よく知る者の魔法。
「これって…」
「そうさ、これはティアナお姉ちゃんの魔法!いくよ、クロスファイヤァーシュート!」
放たれる魔力弾。そろはもの凄い誘導弾。なのははその凄さを知っている。
だからこそ正面から受けるのだ。なのはの周りに十発ほどの魔力弾が現れる。
「アクセルシューター、シュート!」
二色の誘導弾は互いを撃ち落とし、残った物も次々と撃ち落とされた。
爆煙で視界が封じられるが、煙が晴れるとこちらに銃口を向ける電王。
収束する魔力。放たれる魔法。
「ファントムゥ、ブレイザァー!」
「グッ、まだ!」
避けるなのは、追う電王。お互いに退かない、いや退くわけにはいかない訳がある。
なのはは、自身の全力を叩き込むことにした。
「いくよ、レイジングハート…」
『Exceed mode.』
その瞬間、お互いに示し合わせた様に集まっていく力。
あるのは、全力での砲撃勝負のみ!
「最後いくよいい?」
「これが終わったらお話聞かせて…」
「答えは聞いてない」
互いにレイジングハートとデンガッシャーを向けるなのはと電王。パスは既にセタッチされていた。
『full charge』
「ディバィィン…」
「いけぇぇ!」
「バスタァァー!」
桜色の閃光と紫の光弾がぶつかりあう。単純な力の勝負。
しかしそれは長くは続かなかった…。徐々に光弾は閃光に呑まれ消え去った。
「ごめん…、ティアナお姉ちゃん。倒せないや」
「リュウタロスゥゥ!」
ドギャアアァァ 閃光に包まれる中、電王は呟き、ティアナは叫んだ。
模擬戦が終わり、ここはラウンジ。R良太郎は、只一人、落ち込んでいた。そこに近づく影が一人。
「落ち込んでんの?」
「ティアナお姉ちゃん…」
「な~んで、そこまで落ち込んでの。相手はあのなのはさんよ?勝てる方が少ないわ」
「だって、ティアナお姉ちゃんに酷いことしたんでしょ?何で、そんなに」
ムスッ、としてるR良太郎を見て、ティアナは少し前の話をした。
「私ね、以前無茶な特訓をして、なのはさんに怒られたんだ。自分の命も考えないような無茶な特訓」
「何で、ティアナお姉ちゃんはそんなこと」
「力が欲しかったのかな。私にはね、兄さんがいたの…」
語られたのはティアナが力を求めた理由。
ティアナの兄、ティーダ・ランスターは管理局に所属する魔導師であった。
ある時、彼は逃走中の違法魔導師を追跡していたところ、殉職したのだ。ティアナは悲しんだ。
しかし、上司の放った一言のせいで彼の死は不名誉な死となってしまったのだった。
それからだ。ティアナが力を求めたのは。
ランスターの魔法を認めさせる。その為にティアナは力を求めた。
そして、スバルと出会い機動6課へと配属された。
しかし、ティアナは、その中で自分の才能のなさに劣等感を覚えてしまった。強くなった事にも気付かずに…。
「そのせいか、無茶苦茶な特訓をしちゃったんだ。で、なのはさんに撃墜されて…」
「じゃあ僕が見たのは…」
「そっ。その後、なのはさんに反抗して、でもシャーリーさんが教えてくれたんだ、なのはさんの過去」
その過去とは、なのはが自らの無茶のせいで撃墜され、大ケガを負ったということ。
なのはは自分の教え子には無茶をして欲しくなかったから実力のつく教導をしていたことを。
「だから、私は恨んでない。逆に感謝してるかもしれない。だから大丈夫だよ、リュウタロス」
そう言って、ティアナは優しく微笑んだ。
「ティアナお姉ちゃん!」
「うわっ」
R良太郎はいきなりティアナに抱きついた。そして、こう呟いた。
「ごめんね、ティアナお姉ちゃん…。ごめんね…」
「大丈夫、大丈夫だから」
「グスッ、ウワァァァン!ウワァァァン!」
「ホラホラ、ちょっと泣かないの」
ティアナの胸に顔を埋めながら、泣きじゃくるR良太郎。それを、優しく慰めるティアナ。
それはさながら、姉弟のようであった。その様子を見守る影が二つ。それは、なのはとスバルであった。
「もう心配ないみたい」
「そうですね。それにしても、ティア、すっかりお姉ちゃんですね」
「二人共、そこで見てないでこっちに来て下さい。」
「やっぱ、バレてた」
「バレバレ、あんたがいるところが分かんない方がおかしいわ」
「ムウゥ、ティアのイジワル」
「あの、その…」
「いいよ。私も、やり方が悪かったの分かってるし」
「ごめんなさい…。あと、えっとお願いしてもいい?」
「うん、なに?」
「なのはさんの事もお姉ちゃんて呼んで良いかな」
「え、えぇぇ!」
「良いじゃないですか!ねっ!」
「そうかなぁ。じゃあいいよ」
「わ~い、やったぁ!なのはお姉ちゃ~ん!」
「ヒャアァッ!」
なのはに抱きつくR良太郎。
心はリュウタロスでも身体は十代後半の少年。さすがのなのはも、少し戸惑っていた。
「エースオブエースも形無しやな」
「にゃはは、はやてちゃ~ん」
その場に通りかかったはやてがなのはをおちょくっていた。
「ティアナお姉ちゃんも!」
「ちょ、ちょっとやめなさいって!」
「お姉ちゃん達、二人共だ~い好き!」
「にゃはは…」
ハニカムような二人の笑顔と眩しいばかりに微笑むR良太郎。
しかし、平穏な時は長くは続かなかった。
「フッ、呑気なもんだな」
ラウンジが見える林の中、右手のライフルを構えているのは、以前Rティアナに倒されたオウルイマジン改と同型の改造種オウルイマジンR。
「ここで消えてもらうぞ、電王!」
スコープの先には、R良太郎の姿が。
オウルイマジンRが狙っている時、ティアナは林の一点が光るのが見えたのだった。
「リュウタロス、危ない!」
そう言って自らの身を投げ出すティアナ。
そして、
『チュンッ!』
「あ、クッ!」
「ティアナお姉ちゃん!」
「ティアナ!」
「ティア?ティアァァ!」
ティアナはR良太郎を庇い撃たれてしまったのだ。
「ティア、ティア!お願いしっかりして、目を開けて!」
「早く、誰か、シャマルを呼んで来て!早く!」
「お姉ちゃん、ねぇしっかりしてよティアナお姉ちゃん!」
「仕留め損なったかまぁいい、全員死ね!」
林から飛び立ち目の前に着地し、宣言したオウルイマジンR。
「許さない、許さない!」
「待って、スバル」
「何で、止めるんですか、なのはさん!」
「お願い、スバルちゃんは下がっててよ…」
「リュウタロスも!何で!」
「お願い!」
納得しない様子で下がるスバル。
なのはとR良太郎はオウルイマジンRの元へと歩き始めた。
「許せない、ティアナにこんな酷いことを」
「許さない、ティアナお姉ちゃんを苦しめたから!」
なのははレイジングハート、R良太郎はベルトを腰にセットしフォームスイッチを押した。
オウルイマジンRは恐れた。その後ろ姿には白と紫の二匹の龍の姿があったのだから。
「変身…」
「セットアップ…」
瞬時に変身した二人はレイジングハートとデンガッシャーガンモードを向けた。
そして、二人同時にその言葉を放った。
『お前、倒すけどいい?』
「な、なにを!」
『答えは聞いてないけど』
次回、ミッドチルダに二つの龍と蒼き騎士が舞う。
次回予告
スバル「倒れてしまったティア。怒りに震える私達」
はやて「全ての怒りを乗せて今、二匹の龍が舞う」
スバル「次回、仮面ライダーリリカル電王sts第九話「ドラゴンズ・ダンス」
はやて「お楽しみに…」
なのは&電王『倒すけどいい?答えは聞いてないけど』
最終更新:2008年02月25日 19:47