HOWLING


夜空を見上げる。
濃紺の闇の中に、淡い輝きを伴って浮かぶのは――満月。

僅かに歯ぎしりをする。

月は嫌いだ。
あの日のことを思い出すから。
戦火が照らす宵闇。燃え盛る六課隊舎。ガジェットドローン達。最愛のパートナー。抵抗する守護騎士。
そして――悪魔。
あの月と同じ銀色の髪をたなびかせ、あの月と同じ輝きを放つ瞳でこちらを見据えて。
醜く笑った。
そこから先は、熱さしか覚えていない。
斬り落とされた腕の痛みなど、すぐに吹き飛んでしまった。
血、肉、皮、神経、フレーム、ケーブル…全てが地獄の業火に舐め回された。
今でもその苦しみは、記憶という形でこの脳髄をえぐり続ける。


回想する。

『お前にやってもらいたいことがある』

狭い真っ白な部屋の中、たった1人で向き合った、黒い鎧の男。

『殺し合いだ。このリストに載っている者達を、全て殺してほしい』

手渡された名簿には無数の名前。
そして、そこにはあの悪魔の名があった。
セフィロス、と。
彼女は尋ねた。コイツも殺していいのかと。

『構わない。リストの人間は、全てお前の獲物だ』

願ったり叶ったりだ。
彼女はすぐに受け入れた。
ようやくあの男を殺すことができる。
あの地獄の日々を招いた悪魔を、この世から消すことができる。
そうして、自分はようやく解放される。

『では頼んだぞ――ディード』

こうして、彼女はこの地に降りた。
眼下に広大な狩り場を見下ろす地へ。
恐らくここは山の頂上。地図にご丁寧に描かれたマーキング――「1」の横一列からは遠い。
これらのエリアのいずれかに、あの男を落としたということだろう。
手の込んだことだ。奴を殺したければ捜せ、その過程で見つけた敵を殺せ、ということか。

いいだろう。
やってやる。

あの銀月を仰ぐ。
その先に憎むべき敵を見据えて。

お前がいる限り、悪夢は終わらない。

毎晩のように自分を苛む、千の責め苦。
恐怖の炎は、眠る時すら自分に安息を許さない。

それも終わりだ。
ここでお前を殺すことで、終わらせてやる。
お前と戦うためにドクターからもらった、この鋼鉄の両腕が、お前をその高みから引きずり下ろす。
引き裂いて、捻り潰して、ぐちゃぐちゃにして。
自分の痛みを身体に叩き込んでやる。

1匹の餓狼が吼えた。

痛みを棄てるために、仇敵の血を欲する。
吐き出すために食らうという矛盾を為すために。

奴は自分が殺す。
邪魔をする者は――



「皆殺しだああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーッ!!!」



【一日目 現時刻AM0:20】
【G-8 山頂】

【ディード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
[参戦時間軸]11話中。自室で寝ていた頃
[状態]健康・憎悪
[装備]両腕の義手
[道具]支給品一式、救急箱
[思考・状況]
基本 セフィロスを殺す
1.邪魔をする者は全て殺す
[備考]
※主催者から直接送り込まれた、いわばジョーカーです。食糧は他の参加者よりも充実しています。
※左の義手からはAMFバリアが外されています。
※腕の構造上、手持ち武器を握って使うことができません。

034 本編投下順 036

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最終更新:2008年02月25日 20:03