汝、死にたもうなかれ
広々とした森があった。
地には草、天には枝葉、見渡せば樹々が乱立している。日の出る頃ならば木漏れ日の差す清々しい風景ともなるだろうが、深夜の現時では薄気味悪いだけだ。
側を流れる川の音は草木のざわめきと重なり、その森林を静寂で彩った。
獣は無く、虫も居ない、まるで造られたような森だ。
だがそんな森にも、その領域の内に居座る生き物があった。
それは森の中にあって川に近い部分。中心部に比べて若干樹々が少なく、月明かりも多めに差し込む場所だ。
注ぐ月明かりに照らされた生き物、それは一対の人型だった。
片や薄紫の長髪をたたえた黒衣の少女。否、短い袖やスカートから露出するか細い手足を見れば、幼女と称する方が良いのかもしれない。
しかしもう一方は人間ではなかった。確かに人型ではある、だが身の丈は2メートル近くあり、目は二対、全身は黒の外殻で覆われ、露出する筋肉は紫だ。
人型の虫、そう表現出来るものだ。
そして人形の虫は地にあぐらをかいて座し、少女は組まれた足に腰を下ろし、人形の虫に小柄な全身を預けていた。
まるで頼る様に、まるで泣きつく様に、まるですがりつく様に。
少女、ルーテシア=アルピーノは己に尽くす召喚獣、ガリューに寄り掛っていた。
ルーテシアの胸中を一言でまとめるならば、それは“嘆き”という言葉に尽きる。
……また、誰か死ぬの……?
ルーテシアはこの戦いに召喚される前、世界の存続をかけて怪獣達を捕殺する役目についていた。史上最強の生物ゴジラに対抗するべく、10体の怪獣達を使い魔とする役目に。
そしてルーテシアはその1匹目、巨大な蜘蛛の怪獣であるクモンガを連れていた。
クモンガが見つかり、捕らえられ、殺され、そして自分に回された時の事を、ルーテシアは今でも覚えている。
……死んだ子を、使ってる……
魔導師社会において使い魔は広く用いられる技術だ、それ自体に深い罪悪感は無い。だが、自らの手で素体を殺して使い魔を造る、等という話は聞いた事も無い。
遺体を道具とする為に命を奪う、そんな話があっていい筈は無い。
故に、表にこそ出さないがルーテシアは当時から深い自責を抱えていた。自らの手で死なせたクモンガを、己の下僕とする事に。
……私の周りには…“死”ばかりがある……
何時からか、ルーテシアはそう思う様になっていた。
かつての保護者、ゼスト=グランガイツは死人であり、そして再び死んだ。
かつての協力者、白天王はゴジラによってヴォルテールと共に殺された。
手に入れた使い魔、クモンガが自分に仕えるのは殺されたからだ。
そして今、自分が巻き込まれたこの戦いにおいては、
……見ず知らずの人が、死んだ……
今も目に焼き付いている。あの“主催者”達に歯向かい、殺された2人の人間を。首輪が炸裂し、首から上が吹き飛んだ男と女を。
「…………っ!」
血や肉の吹き飛んだ光景を幻視し、ルーテシアは思わず頭を抱え、双眸はキツく閉じる。幻さえも見たくないと言うように。
……助けてくれる人はみんな死んで、同じ場所にいただけの人も死んで……
じゃあ自分は何なんだ。近くにいただけで命を潰す自分は一体何なのか。
「――まるで、私が」
想いが思考を凌駕し、言葉として紡がれそうになった。
自分が“それ”なのではないか、という事を言葉で紡がれそうになった。
だが、
「…………ぁ」
身を預けていた巨躯の両腕が、ルーテシアの体を抱き締めた。装甲に塗れた無骨な腕ではあるが、こちらを支えようとする労りを感じる。
自身を抱え込んだ巨躯をルーテシアは見上げた。
「……ガリュー」
そこにあったのは親愛なる従者の顔だ。
喋る事もなく、表情を変える事も無い、だがそれでも、想われていると解る相手だ。
「ガリュー……っ」
胎児の様に身を丸めてガリューにすがりつく。
この状況にあって、唯一頼れるものに。
自分に残された、最後の希望に。
「違うよね。私、“それ”じゃないよね……?」
心身と言を震わせてルーテシアは問う。
抱いた懸念を否定して欲しい、その一心にガリューへと問い掛ける。
ガリューはその答えを言う事は出来ない。人間とは異なる生体を持つガリューには、発声器が無いからだ。だが、行動を持って意思を示す事は出来る。
より強くルーテシアを抱き締める事、それがガリューの意思だ。
「――ガリュぅ……っ」
ルーテシアもまたガリューを抱き返し、そして、
「ほう、二度目の獲物も子供とはな」
第三者の声を聞いた。
「!?」
見やるのはガリューと同時、視線の先には一人の男が立っていた。
その姿が歪んで見えたのは凶暴な笑みと殺意に意識が竦んだせいか。それだけの危険性を男は滲ませていた。
間違いない。この男は、
……殺し合いに、乗ってる……っ!!
「――さあ少女よ、お前はユーノ=スクライアの様に私を楽しませてくれるか?」
●
その男はアーカードという名前である――という事を知る筈も無く、ガリューは跳んだ。ルーテシアを跳ね飛ばさぬように脇に退かせ、転じて弾丸の如く跳躍したのだ。
一拍の間もなくガリューはアーカードに接近、外殻に彩られた左腕を振り抜く。
だが、ルーテシアには予感があった。それも飛び抜けて悪い予感が。
「――ガリュー! 駄目!!」
ルーテシアが静止を叫んだのは、丁度ガリューの腕が粉砕されたのと同時だった。
「…………ッ!!」
まず外殻が、次いで筋肉が、そして血液が散逸する。
それを為したのは、ガリューの拳よりも遅く振られ、しかし先に攻撃を成したアーカードの右腕だった。
肘から先が消失したガリューの左腕、それと交差するようにしてアーカードの右腕があった。その先にはガリューの体液が付着した拳が握られている。
「――――――――ッッッ!!!」
それでもガリューは止まらない。左腕が失われたならば、と今度は右腕を突き抜く。
しかし、
「……は」
短く鼻で笑うアーカード。と同時に、彼の返す右腕によって突き出されたガリューの腕は左腕と同様に砕かれた。
「どうした“虫人間”!! 貴様はその程度か!?」
挑発と嘲笑を交えたアーカードの咆哮、ガリューはそれに応えた。
突如としてガリューの肩甲部から一対の触手が伸びる。本来ならば両腕と併用する事によって同時に4つの攻撃を繰り出す為の器官、それが発動したのだ。
初速から最高速度、不意打ちとして放たれた触手がアーカードを貫こうとする。
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」
だがそれは、アーカードの哄笑の下に防がれた。
両の手が触手を掴み、その切先をアーカードの胴からずらしたのだ。結果、触手による攻撃はアーカードの掌を僅かに抉ったのみに留まる。
だが同時にそれは、ガリューがアーカードによって捕らえられた事と同意だ。
触手を掴まれ、更に両腕を失ったガリューは、その胴体をアーカードの前に晒していた。
「――臓腑を散らせ」
ガリューが触手を伸ばして距離を空けようとする間もなく、抜き放ったアーカードの右脚がガリューの胸を貫いた。
「!!!!!!!」
外殻も筋肉も血液も内臓も、
その他諸々も含めたそれがアーカードの脚と共にガリューの背から噴き出した。
「……ッ…ッッ………ッ………ッ…」
しかしアーカードの虐殺はこれに留まらない。
痙攣するガリューの体を串刺しにした右脚を抜き、両手は触手を離してガリューの両肩を掴む。そして繰り出されるのは、
「殺――――――――――――――――――――ッッッ!!!」
直角90度で突かれた、天に向けての蹴りだ。
火山の噴火にも似た威力と速度はガリューの顎を撃ち抜き、その獰猛な攻撃力によって首をへし折った。否、引き千切ったというべきか。
うなじの外殻がへし折れ、伸びきった喉の肉が破れて内部を露出させた。闇夜の暗がりでさえなければ、口内と食道が見て取れたかもしれない。
喉の限界を超えたガリューの頭部が、上下逆さまに真後ろを見た。
間を空けて後方、アーカードによる虐殺を呆然と見続けていたルーテシアの姿を。
「――いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
崩れ落ちたガリューの遺骸。
直後に沸き出したルーテシアの悲鳴。
そして、ガリューの脇を抜けたアーカードがルーテシアを蹴り跳ばした。
ガリューの破壊からルーテシアへの一撃、その間――僅か10秒。
●
「……あ、ぁ……ぁ」
背後の樹木へと背中を強打したルーテシアが呻く。
強固なガリューの肉体を軽く粉砕した男の蹴りを受け、即死しなかったのは奇跡的だったと言える。だがそれが幸いだとは、ルーテシアは決して思わない。
肩甲骨と背骨に染み渡る痺れ、頭蓋の振動から来る脳髄の激痛、内臓のうねりと胃液の上昇を我知らずと知覚する。
「――ほう、耐えたか。弱小の身と思ったが……中々頑丈だな」
ゆっくりと、悠然と男が歩んでくる。最早ルーテシアが動く事など出来ないと理解しているからだ。まあ最も、例え動けても逃がす事は無かっただろうが。
ルーテシアを蹴った左脚が、ガリューを貫いた右脚が、散らばったガリューが森林の草を踏みしめる。だがそこには、散らばったガリューの残骸以外に落ちているものがあった。
それはルーテシアが持っていた支給品だ。
蹴飛ばされた衝撃で手放したルーテシアのデイバックが、その収容物を散乱させたのだ。
食糧、地図、ランタン、筆記用具、その他諸々の物品があり、そしてその内の一つが男の目に留まった。
「拳銃、か。……見た事も無い種類だな」
その奇異さが男の興味を引いたのだろう、小さな火器が男の手に握られる。
男はそれをしげしげと見つめてから、やがて、
「これは貴様の支給品だな、少女よ。――ならば、これで始末をつけてやろう」
宣言と共にルーテシアの額に銃口を密着させた。
「……あ」
ひんやりとした鉄の温度を額に感じてルーテシアは声を漏らす。だがそれも全く無意味な事だ。
その程度で引き金を引かぬ者が、ああも無惨にガリューを破壊する筈が無い。
「――や、やぁ」
目尻から零れた涙、それは恐怖だったのか拒絶だったのか。
やはりそれを気にする事も無く、男は引き金を引く。
そうして、ルーテシアの後頭部から奔流が噴いた。
●
額に銃口を押し付けた状態で弾丸を放てば、当然頭部は破砕される。
散った火花が表皮を焼き、吐き出された弾丸が頭蓋を抜き、脳髄を掻き回し、再び頭蓋を抜け、液状化した頭部の内容物と共に後頭部から噴き出す。
故に少女の後頭部から噴き出した奔流は、彼女の脳髄や脳漿や頭蓋の破片だとアーカードが思っていた。
だが、それは違った。
「……何!?」
噴き出したのは液体ではない。まるで硝子の破片にも似た、光の断片群だ。それが後頭部から噴き出し、空中へと逆巻いていく。
「これは……」
原理不明の光の奔流が暗闇の森林を輝き染める。
驚きに棒立ちとなったアーカードが、そして本人にも何が起きているのか解らないのか、少女もまた光の渦を見ている。
そして、二人の脳裏に何かが響いた。
それは声だ。アーカードでも少女でもない、新たな声が二人の意識に語りかける。
――我は汝……
―――汝は我……
――――我は汝の心の海より出でし者……
何時しか奔流が一つの形を造った。その形状は、
―――――“潜影の従者”、ガリューなり……
つい先ほどアーカードが破壊した筈の、“虫人間”の姿だった。
「馬鹿な! 亡霊とでも言うつもりか!?」
驚くアーカードの叫びが、奔流より生じた“虫人間”に向けられる。
アーカードは化物の存在を信じている。何故なら自分こそが化物、吸血鬼だからだ。しかし亡霊の存在は信じない。死者を信じて、どうして生者を虐殺する事が出来ようか。
アーカードが否定を持って睨む先、ガリューを名乗る“虫人間”が先ほどと同様に腕を振りかぶる。だから先ほどと同様に、再びアーカードはその腕を打ち砕こうとした。
「二度目の死に浸れ……ッ!!!」
繰り出されたアーカードの拳、だが今回は、そちらの方が遅かった。
アーカードよりも後に抜かれた筈のガリューの拳が、しかし先んじてアーカードを捉えた。人外の鋭利を誇る拳がアーカードに迫り、
「―――――――――――――」
その首を断ち切った。
中空を舞う頭部、アーカードの意識はそちら側にある。僅かに回転する頭部が視界が振り、取り残された首から下を見る事が出来た。
首が刎ねられた場合、人は死を免れる事は出来ない。だがアーカードはその限りではない。
何故なら彼は吸血鬼、それも数ある吸血鬼の中にあって最高を誇る、真性の吸血鬼だからだ。その治癒力と生命力は、正に不死性と呼ぶに足るほどの強さだ。
事実、アーカードは過去に首を刈られた事があったが、その後に蘇生を果たしている。その事実こそが、“首を落とされた程度で死なない”という事を決定的にする。
そうして首が地に落ちる頃、取り残された胴の向こうで少女から出現したガリューが消失するのが見えた。
……私が死んだと思ったか?
知らないのだから仕方が無い、が、知っている自分から見ればそれは蒙昧愚昧の極地だ。
不意打ちとはいえ自分の首を断った攻撃力、だがそれを収めた少女は敵ではない。すぐに再生して今度は即死させる。それがアーカードの目論みだ。
だが、
「……………?」
少女が駆け寄ってきた。首から血を吹く胴の脇を抜け、紫の髪を揺らして少女が近寄ってきたのだ。
少女は転がったアーカードの首を、つまり自分を抱え上げる。
そしてアーカードの頭を掲げて、胴と頭の首の断面を密着させた。
……どういうつもりだ?
首を密着される事、それはアーカードにとって得以外の何ものでもない。癒着させる肉体が密着している分だけ、再生が早まるだけだ。
問題はそこではない。何故少女がそれをするか、という事だ。
……私の再生力を知っているのか?
否、それにしても首を繋げる理由にはならない。
自分はついさっきまで殺そうとしていた敵なのだ、そんな相手を生かそうとする理由は、再生力の既知無知を問わず、有り得る筈が無い。
……一体どういうつもりだ……?
疑念を抱いた所で、ふと少女が何か呟いている事に気付いた。
か細い声で、無休の発声で、まるで呪文かなにかのように少女は呟いている。
「…死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい
死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい
死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい
死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい…」
噴き出す血に全身を赤黒く染めた少女は、焦点を結ばない双眸で、無心に呟き続ける。
殺そうとしていた相手に、死なないで欲しいと。
●
ガリューを虐殺した男によって額を撃ち抜かれたルーテシア、彼女が感じたのは一種の虚脱感だった。
まるで蛹から抜け出す蝶の様に、中身が自分から這い出してくるような感覚。
そうして発生したのは、死んだ筈のガリューだった。
光の渦から形成されたガリュー、それが繰り出した一撃が、ルーテシアを殺そうとしていた男の首を刎ねる。
「……ぁ」
宙を飛んだ男の頭部、それを見届けてガリューの姿が霞んだ。
まるで、役目を果たした、と言わんばかりに輪郭が霞み、ルーテシアから噴き出した光の断片へと戻り、暗闇の森へと散っていった。
「……ガリュー」
ルーテシアが愛し、また向こうもこちらを愛していたと断言出来る相手、召喚獣ガリュー。故に死して尚、ルーテシアを護る為に現れ、男を撃退してくれた。
と思う程に、ルーテシアは楽観的ではなかった。
そう思う要因は、再び現れたガリューの勝利そのものだ。
ガリューの戦闘力は、男のそれに遠く敵わなかった。故の虐殺、故の危機だったのだ。
それが拳銃によって撃ち抜かれ、光の渦から再び現れた途端に逆転し、男の首を刎ねた。そこにどんな原理があるのか知らないが、一度殺された事によってその力を得たのは解る。
殺された事によって、ガリューはルーテシアを護る力を得たのだ。それはつまり、
……ガリューが死ななきゃ、私は助からなかった……
同じだ、とルーテシアは思う。今までと同じだ、と。
かつての保護者、ゼスト=グランガイツは死を経て自分を助け、後に再び死んだ。
かつての協力者、白天王は自分の命令を持ってゴジラと戦い、その末に死んだ。
新しい協力者、クモンガは自分に仕え助けてくれるのは、自分達に殺されたからだ。
この戦いの冒頭で死んだ二人は、何も関係ない筈なのに自分の目の前で死んだ。
そして今、自分の守護者であるガリューは、死ぬ事で得た力で自分を殺そうとした敵を殺した。
……私の周りは、死んだ人ばかり……
だから思ってしまう。彼らが死んだのは、自分と出会ったからではないか、と。
自分は――関わる者に“死”をもたらす“それ”なのではないか、と。
「や、ぁ」
違う。違う、と否定したい。自分はそんな、おぞましいものではない、と。
だが先ほどは否定してくれたガリューも今はいない。あるのは、無惨に破壊されたガリューの遺骸だけだ。
その事実が、よりルーテシアの思いを助長させるのだ。
……ちがう、よぉ……私は、誰も、死なせるつもりなんて……
だが死んでいる。皆、全員、死んでいる。ひょっとしたらこの戦いも、自分がいるから発生したものではないのか? 自分が原因でより多くの人が死ぬのか?
「――ぁ――や―や―ち、ちが―――ちが、ちがう」
気がついた時ルーテシアは、墜落した男の生首の前に立っていた。
そして、まるで夢遊病の様な挙動で首を取り、そのまま胴の首の断面とすり合わせた。
蘇生など叶う筈の無い行為、それ以前に自分を殺そうとした相手への助力を意味する行動、それはルーテシアの心を護る為の防衛手段だった。
自分と一緒に生活した男は死んだ。
かつて自分を助けてくれた巨人は死んだ。
新しく自分を助けてくれる大蜘蛛は死んでいる。
何の関わりもない人間達は自分の目の前で殺された。
つい先ほどには自分を守り続けてくれた召喚獣も死んだ。
この上、自分を殺そうとする者まで死んだ日には、
……私は“それ”になっちゃう……
近寄るだけで相手を死なせる、おぞましい“それ”になってしまう。
「…死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい
死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい
死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい
死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい死なないで下さい…」
それだけは嫌だった。
だからルーテシア=アルピーノは男の首を繋げようとする。
それで蘇生など出来る筈が無い、と知りつつ。それが慰めにもならない病的な行い、と解りつつ。
男の為ではなく、自身の心を護る為に。
ルーテシアはただ無心に、全身を赤く染めて、無心に首をすり合わせ続ける。
●
“死”の為に生きる男、アーカード。
“死”によって生かされた少女、ルーテシア。
――――出会う筈の無い二人が、今、出会っていた。
【一日目 AM1:15】
【現在地 I-7】
【ルーテシア=アルピーノ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
[時間軸]ミッドチルダ1終了後
[状態]恐慌・現在進行形で血塗れ
[装備]無し
[道具]支給品一式・召喚器@P3Lyrical・不明支給品0~2個
[思考・状況]
基本 誰にも死んで欲しくない
1.私は……皆を死なせるものじゃない……
2.お願い……死なないで……
※“死”に対して過剰な忌避感を持っています
※固有スキル『転移魔法』……現在位置の周囲8マスの中で行った事のある場所のみ、自分、ないし任意対象1~3体を転移可能。ただし、魔力・体力の消耗大。
※固有スキル『召喚魔法』……マーキングした物体を自分の周囲に転移させます。ただし、マーキングを維持するのに魔力の消費小、更に発動すると魔力・体力の消耗大。
【アーカード@NANOSING】
[参戦時間軸]第八話開始直後
[状態]千切れた首を再生中、首に首輪が着けられていない
[装備]無し
[道具]支給品一式、不明支給品1~3個
[思考・状況]
基本:闘争を楽しむ
1:この小娘……何を考えている?
2:何だこの弱体化は……?
3:ユーノとの再戦を楽しみに待つ
[備考]
※名簿はまだ見ていません
※心臓に首輪が装着されています
最終更新:2008年03月02日 15:40