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それは、八神はやての元に闇の書が現れる前。
 次元に漂う、闇の書の前に一人の少年が浮んでいた。

(これは何者だ、私の前に唐突に現れたこの存在は……)
 パラパラとページがめくれ、書に光が宿る。
(まずは素性を調べるのが先決、記憶探査開始……)
 徐々に、記憶を読み取っていくと共に、その異常さに闇の書は驚愕するしかありえなかった。
(……魔力を持たない人間が何故このような戦闘能力を持つのだ)
 そして、探査を終えた闇の書は一つの決断を下した。
(収集開始……エラー、エラー!プログラム修正不能……消去不能このまま現状を維持……)


 そして物語は始まる。

 情に目覚めし黒き龍 第一話「今日から」

 舞台は、守護騎士が幼き少女八神はやての前に現れる時まで進む。

「闇の書の起動を確認しました。」
「我ら、闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士になります。」
「夜天の主に集いし雲。」
「ヴォルケンリッター、何なりと命令を・・。」

 いつの間にか表れた黒い服に身を包んだ5人の男女の内がはやての前に跪いていた。
 だが非現実的な光景を直視したはやては、精神の限界を超え気絶してしまった。

「おい、こいつ気絶してるみたい……だぞ」
 赤い髪の小さな少女ヴィータが、はやてを覗き込むと困ったように後ろに振り向く。
「まだ、リンクが不完全なのか一人多くみえるな?」
 意識をはっきりさせようと軽く頭を振り、再度後ろを見る。
「OKOK、なんだちゃんと5人いるじゃんか……って、やっぱり一人多いじゃねーか!」
 やはり一人多い事態に、逆切れを起すヴィータ
 その切れっぷりに、慌てて後ろを振り向く三人。
 そこには確かに、自分たちが知らない少年というべき年齢の男の姿と黒い大きな箱が存在した。
「なんだと、これは一体……」
「何かのバグが起こったのか?」
 守護騎士たちの混乱は、はやてが気絶から回復するまで続くのであった。

「……なぁシグナム、結局よ私達の後ろにいたこいつは何なんだよ」
ヴィータが指を指す。
 そこにいるのは自分達と同じようなアンダースーツに身を包み俯いた少年、だがその少年からは一切の魔力を感じない。
「だが、この場に我らとまったく関係無い人物が突然現れるとは思えん」
 ザフィーラが、自分達と同じ存在だと推論を述べる。
「確かに、闇の書を介して存在を感知できるのであれば我らの同士なのだろう、だが何故魔力を感じないのだ?」
 シグナムは、当然の疑問を口にした。
「可能性としては闇の書が主の世話を任せるために新しく作り出したんじゃないかしら?」
その疑問に答えるようにシャマルが口に出す。
「用は私達の仲間なんだろ? ならそれでいいじゃねぇか」
ヴィータがこれで問題解決とばかりに話を打ち切り、少年に指を指しながら名前を問いただした。
「で、名前は何なんだよさっさと教えろよ」
「あ、私も教えて欲しい」
 はやてもそれに相槌をうつ。
 面を上げると少年は己の名を告げた。
「私の名はブラックドラゴン」
ブラックドラゴンがはやて達に名前を名乗る、しかし名前を言い終わった瞬間間髪入れずヴィータが叫んだ。
「長え! ついでに人の名前じゃねぇ!」
 ブラックドラゴン15歳、己の名を全否定された瞬間であった。
 そのヴィータの叫びに同調するように、はやて達も口々に喋りだす。
「流石に、それはないと思うんよ」
「まったくだ、呼びにくい」
「でも、困ったわね」
「どうした物か、我々としても往来でその名前を言いたくないぞ」
 あーだ、こーだと相談し始めた守護騎士一同を横目に、はやてはポンと手を軽く打ち合わせるとハヤテは柔らかな笑顔を
浮かべ、守護騎士達に告げる。
「なら皆で、ブラックドラゴンの名前考えてあげよ」
 この言葉に、感心する守護騎士一同。
「と、言うわけだ今から名前を考えるからお前はそこで待っていてくれ」
 シグナムがブラックドラゴンにそう告げると、早速名前を決め始めた。


 30分経過、今だ決まらない己の名前を聞きながらブラックドラゴンはなぜ、己がこの場にいるのかを考えるのであった。


 私はあの時死んだはず、よしんば死ななかったにしても富士の洞窟から何故この場にいるのだ?
 それに、聖衣もクロスボックスに収納された状態になっている。
 しかも、何故か彼女達の存在を感知できる、彼女達にはコスモを感じない夢か? いや……このような夢を見るはずが無い
ならばこれは現実、私は一体どうなったというのだ。
 ただ一つ解かる事は、私は現に生きていてこの場にいるということか。

 ブラックドラゴンは、内心で溜息をつくと今だ決まらない彼女達を身ながら更なる思考の淵に沈んでいくのであった。

「よーし、決まった!」
 はやての声に、思考の淵から戻るブラックドラゴン、彼が目にしたのは早く名前を言いたくてウズウズしているはやての
笑顔であった。
「今日から、黒龍や!」
 ビシッと、指を突きつけるはやて。
 その言葉を聞き、自ら小さく自分の名を反芻するブラックドラゴン。
「一生懸命考えたんやけど、安直過ぎやったか?」
バツが悪くなったのか、おどおどしだすはやて。
「悪くない、今日から私は黒龍と名乗る事にしよう」

……ああ、ドラゴンよ。私はこの新しい名と共に情に生きてみせよう。

そして彼は、はやてを安心させるかのように僅かに微笑むのだった。

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最終更新:2008年03月05日 19:41