八神はやての元に集った、闇の書の守護騎士ヴォルケンリッター。
その中に、富士の洞窟で死んだはずの暗黒聖闘士ブラックドラゴンの姿があった。
新しい名前として黒龍と名をつけられた彼は、はやてと守護騎士達と共に新しい生活を歩む事を決意する。
だがしかし、そこには既に暗雲が立ち込めていた。
情に目覚めし黒き龍第二話「荒れ狂う龍! 黒龍怒りの鉄拳」
八神はやてです、突然家族が増えた事に驚いた私ですがそれにも慣れ楽しく毎日を過ごしています。
最近ではみんなも、それぞれやりたい事や趣味などができて少し寂しい時があるけど良い感じです。
でも、黒龍その趣味だけは私としてはどうかと思うんよ。
「なぁ、黒龍それ面白いんの?」
なにげなくテレビを見ながら、リビングでな一心に作業をしている黒龍に声をかける。
声に既に諦めと呆れが混じっているのが、自分でもよう分かるわ。
「面白いかと聞かれれば、面白いな。文化的生活とは全くの無縁だったからな楽しいぞこの写経と言うのは」
そこには机の上にお経を広げ、一心不乱に筆を取る黒龍の姿があった。
そうなんや、他の皆が大なり小なり外に出て生活を送ってるのに黒竜だけが家の中で大半の時間を過ごしてるんや。
私としては家族と一緒に居られて嬉しいけど、偶にスゴイ据わった目でひたすら摸写しつづけてる黒龍は凄く恐いわ。
「黒龍は、外で何かしようとは思わないの?」
私の問いに、黒龍は意外な返事をしてきました。
「いや、深夜に外で鍛錬などもしている。近くの山の上にある神社なのだか、顔見知りとも言える知り合いもできた」
何か、夜中に時々ごそごそと動いてると思ったらそんな事してたんか、普通昼間にやると思うんやけど。
それよりも、そんな中で顔見知りできるってまさかお化けやないよね?
「何分昼間から外に出ていると補導されそうだしな、なので精神修養も兼ねて写経をしているのだ」
続けての黒龍の発言に、心の中で思わず突っ込んでしまったわー。
「その顔見知りに、盆栽の方も進められたのだが植物はあいにくと育てた事が無いので遠慮しておいた」
確かに黒龍は、ぱっと見高校生ぐらいやし補導されるかもしれんけどそこまで神経つかうのやろうか?
あと黒龍が言うその顔見知り、写経もあれやけど盆栽を進めるってどんな神経の持ち主や。
「何よりも私としては、外に出ているよりはやて達とすごしていた方がずっと暖かい気持ちになれる」
あかん、そこでそんな事言うなんて反則や黒龍は長髪なのがちょっとアレだけど世間で言う美形さんやし
私も照れてしまう。顔が赤くなってるのが、自分でも分かるわ。
そうこうしていると、黒龍は写経を止めて私に振り返った。
「はやて、もうすぐ昼になるな食事の用意をしてしまおう。 今日は何を作るのだ?」
そう告げると、立ち上がり台所に向かって歩いてく。
「今日はヴィータがスパゲティを食べたいって言ったから、お手軽にナポリタンにするつもりや」
返事を返し、私も車椅子を動かして台所に進む。さぁ今日も張り切って料理するでー。
その日の夜、皆また外にでかけてから中々戻ってきいへん。
仕方が無いので黒竜と二人で待ってるけど、寂しいわ……、折角今日は鍋にしようと思ったのに。
そんな風に寂しそうな表情を見せていたら、黒龍が席を立ってジャンパーを着込み始めた。
「はやて、皆がまだ帰ってこないので少しコンビニに行ってアイスを買ってこようと思うのだが何が良いか?」
何気ない様子で黒龍は、私に何が欲しいか聞いてくる。でも一人になるのが寂しいから、此処にいて欲しいと伝えようとしたら
黒龍は軽く微笑むとさり気ない気遣いを見せてくれたんや。
「ついでに、シグナム達を見かけたら早く戻るように伝えておくとしよう。 で、どうする?」
うちのことを考えて、コンビニに行くという建前でシグナム達を探しに行こうとする。そんな黒龍の心遣いを無駄にしたくなくて
私は、じゃあストロベリーが良いと伝えた。
「此処からは少し遠いから、少し遅くなるかもしれないが可能な限り早く戻ってこよう」
そう言って、ドアを開け外出していった。
外灯に照らされた道をのんびり歩きながら、黒龍は考えていた。
シグナム達が外に出る回数が増えたのは、この前はやての検診に行ってからだと。
「何か成さねばならない事があるのか、なぜ私やはやてには……」
そう呟いたが、彼女達と共に現れた時に言っていた言葉を思い出した。
「魔力が感じない、恐らくこれが私には何も話さなかった原因だろう。そしてはやてに対しては恐らく……」
ブツブツと呟きながら、コンビニまで後10分ほどの距離になった時、黒龍の鋭敏な感覚が何かを感じていた。
「なんだ、この異常な空気は……この町に似つかわしくない戦いの気配をも内包している。向こうか!」
黒龍は、気配を感じた方向に向かい急いで駆け出した。
駆けつけた先でみた物は、コスモではない何か異様な力で包まれた空間そして、空に浮んでいる隠れた何か。
だが、いかに隠れようとも僅かな空気の流れを感じる以上捕らえられない事は無い!
「何事だこれは、そしてシグナム達の気配も同時に感じる……ええい! 何があったか知らないが見ぬ振りはできん」
ゆっくりと息を整えると、空に浮ぶ何かに向かって己の拳を解き放った、その数1秒間に実に50。
常人や、魔道師には異常とも言える攻撃だが、聖闘士にしてはこの程度朝飯前な行為。
解き放たれた拳圧が、このあたりに浮んでいた何かを確実に葬ったと感じ黒龍は空間に突入した。
アースラ艦内
「艦長、結界東部周辺に浮かべていたサーチャーが全部一瞬で破壊されました!」
艦内で、結界及びその周辺の把握をしていたエイミィが慌てて、後ろに居るリンディに異変を告げる。
「何ですってエイミィ! 東部周辺にいる武装隊第一、第三小隊に至急向かわせて。」
告げられるや否やすぐさま指示を出す、そして軽く頷くと更なる指示を出した。
「後クロノにも連絡を、一瞬でサーチャーを破壊する何かに武装隊が対応できない可能性があるわ」
その後、苦笑いを浮かべ安心させるようにエイミィに告げた。
「まぁ、幾らなんでも早々そんなことは無いと思いたいわね」
「そうですよ、このアースラにいる武装隊は空戦Aランクですよ」
しかしリンディの不安はその数分後的中してしまう。
気配に向かって、ひたすら走る黒龍の感覚に空から向かってくる10人近くの人間の気配を感じた。
「シグナム達の気配はもう近い、こいつらが何者か知らないが邪魔をしないで貰おう」
言葉と共に高まるコスモ、それを勢いに変え黒龍は音速の動きを持って一瞬で吹き飛ばす。
ドシャ、ドシャと地面に落ちていく音を聞きながらも、後ろを振り向かずそのまま跳躍ビルの屋上に飛び上がった。
「どこだ? この当たりのはずだか……」
周囲を見渡していた黒龍の目に飛び込んできたのは、黒い少年に武器を突きつけられたシャマルの姿であった。
その光景を目撃した瞬間、黒龍の中で生まれて初めて何かが切れた。
「抵抗しなければ、弁護の機会があなたにはある。同意するなら武装の解除をブハァ!」
シャマルにデバイスを突きつけていたクロノは、先ほど有ったサーチャーと小隊の全滅を聞き急ぎ逮捕しようとした瞬間
通常では考えられない威力の何かで隣のビルの壁に叩きつけられていた。
「え、何? 何が起こったの!?」
突然の叫び声に、慌てて後ろを振り向いたシャマルが目にしたのは、鬼気迫る表情で立っているこの場に居ないはずの
自分たちの家族、そして初めてみた怒りの表情であった。
「誰だか知らんが小僧、人の家族に手を出そうとするのならそれ相応の報いを受けてもらおう」
そう語る黒龍の背中に、シャマルは荒れ狂う龍の姿をみた。
ここに、魔道師対聖闘士異なる力を持つ者同士の最初の戦いが切って落とされた。
最終更新:2008年03月09日 20:17