Armored Core4×Nanoha
プロローグ
国家を企業が解体する。
そう聞いて、真面目に受け取る人間は居ないやも知れない。
だが、その世界では、行き過ぎた軍拡や乱開発が資源の浪費を生み、浪費は貧困を生み、貧困は混乱を生み、最早その世界は限界に来ていた。
国家は、最早それを鎮める手段をもたず、世界を治める主体たりえない。
だが、国家はそれを認めるわけには行かず、ACと呼ばれる機動兵器を企業より導入し、反乱の鎮圧に当たった。
しかし、企業はそれを十分に理解し、己の懐が十分暖まった後、企業は国家など必要ない。そう判断したのである。
―――国家解体戦争の勃発である。
圧倒的な戦力差が有る為、当初は国家が勝利するであろう。と観測されていた。結局のところ、戦争とは数字が支配する物であり、戦力差が圧倒的であれば、負けるのが道理である。
だが、そうはならなかった。企業の送り出した怪物『ネクスト』の存在が、全てを塗り替えた。僅か26機。たったそれだけの数の兵器が、通常は戦場で支配的になどなりようが無い。
そう、それが通常の兵器などではなかっただけの話である。
コジマ粒子による防御手段、プライマルアーマー、従来のAC『ノーマル』などでは為し得ない機動を可能にするクイックブースト。
数秒で1000km/hを超える爆発的な推進力を得るオーバードブースト。
従来のACとは隔世の感すらある、高精度のアクチュエータ複雑系、そしてそれらを手足のように使いこなす『リンクス』の存在。
それらがただ一機の機体におさまり、戦場をまさに『支配』した。
僅か一ヶ月。そう、僅か一ヶ月で国家に対し、企業は完全なる勝利を収めた。
企業は己の利権を維持する為に、一般人をコロニーに押し込め、自分たちは独占した金で裕福な生活を享受していた。
無論反発もあったが、しかし金を持たぬ上、武器も購入できない以上、反乱など考えるだけ無駄である。
労働の対価としてあたえられるのは暮らせるだけの糧食。
一応は国家が支配した時代よりも平和になり、それを誇って、企業はこの秩序をパックス・エコノミカと自称した。
しかし、内実は酷い物で、各企業は憎しみあい、火薬庫に火種を満載しており、いつ爆発してもおかしくない。
その企業が、コロニーの中に押し込んだ人々には無気力が蔓延している。これが平和なのか。
管理外世界××に関する執務官の報告書より抜粋(再提出前)
何のことは無い。
新人がミスをやらかして、それがよりによって次元間転送で、ログは残っていたからそれを追跡し、突き止め、救出しようとした。
それがよりにもよって嘱託魔道士『高町なのは』であっただけの話。
本来ならば始末書一枚で済む話ではあったが、それどころではなくなった。
救出に失敗した挙句に、本局からの一時帰還命令。
後はお決まりの政治的判断。……救出は、成功だけはした。成功だけはしたのだ。
ある執務官の手記より引用。
最終更新:2008年03月05日 20:41