受け継がれる正義


「一文字……!!」

本郷猛は、空を見上げ亡き親友の名を呟いた。
一文字隼人は、本郷にとって唯一無二の相棒であった。
共に数多くの修羅場を潜り抜けてきた、大切な戦友だった。
誰よりも気を許せる、掛替えの無いパートナーだった。
本郷は強く拳を握りしめ、目の前の木へと強く叩きつける。

「……この殺し合いは、必ず止める。
だから、安心してくれ……!!」

一文字を失った事への悲しみ、覇王十代と神崎士郎に対する怒り。
様々な想いが、その拳には込められていた。
しかし本郷は、復讐の為に戦う気はなかった。
一文字は、自分達がこうなった全ての元凶へと戦いを挑み、そして死んだ。
仮面ライダーとして、正義を貫いて散っていったのだ。
だから、そんな彼の心に報いる為にも……この殺し合いを、必ず止めてみせる。
一人でも多くの命を、この手で守り抜いてみせる。

「お前の正義は……俺が引き継ぐ!!」

正義の戦士……仮面ライダーとして。

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「フェイトちゃん、ユーノ君、すずかちゃん、クロノ君、ミライさん。
それに、ヴィータちゃん達まで……」

高町なのはは、名簿に記された名前を見て驚きを隠せなかった。
自分の知っている者達が、これ程まで多く参加させられているとは思ってもみなかったからだ。
直接の面識は無いはやてとダンの二人も含めれば、合計で十一人にもなる。

「兎に角、皆と合流しなくちゃ……!!」

なのはは、殺し合いに乗るつもりなどは一切無かった。
この殺し合いを止めて、無事に元の世界に帰る。
その為にも、まずは皆と合流しなければならない。
自分一人の力だけでは、現状をどうにかする事は出来ないだろう。
だが、皆で協力すればきっと道は開く……きっとこの殺し合いを止められるに違いない。
なのはは一回深呼吸をし、気合を入れる。
その後、現在地を確認する為に地図を開こうとするが……その時だった。

「あれ……?」

少しばかり離れた場所に、誰かが立っているのが見えた。
なのはは少しばかり近寄り、その男の姿を見……そして気付く。
先程自分は、彼―――本郷猛の姿を一度目撃している事に。
なのははすぐに歩み寄り、声をかけた。

「あの、すいません!!」
「っ!!」

本郷は、声の聞こえてきた方へと振り向きとっさに身構えた。
なのははそれに少しばかり驚くが、本郷はそんな彼女の姿を見て警戒を解いた。
彼女に全く敵意が無いのが、一目見てすぐに分かったからだ。
その後、優しく微笑みながら彼女に答える。

「俺に何か用かな?」
「えっと……あなたの事、さっきの広場で見ました。
一文字さんって人の知り合いですよね……?」

なのはが本郷に声をかけたのは、彼が絶対に殺し合いに乗っていないと分かっていたからだった。
そう判断した理由は、広場で一文字が殺害された時。
本郷は彼の側にいて、彼が倒された事を悲しんでいたからだ。
そんな人が殺し合いに乗る筈がないと、そう感じたから声をかけた……そしてこの判断は、正しかった。

「……ああ。
俺は本郷猛だ、君は?」
「私は高町なのはです。
よろしくお願いします、本郷さん」


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「成る程……やはりこれは、異世界に呼び出されてしまったと判断していいか」

本郷となのはは、互いの持つ情報を交換し終える。
なのはは時空管理局や魔法、ウルトラマンに関して話せる限りのことを本郷に話していた。
本来ならばやたらに人に話すべき事ではないが、今は状況が状況である。
尤も、信じてもらえるかどうかという問題はあったが……それは完全な杞憂に終わった。
本郷は意外にも、自分の話をあっさりと信じてくれたからだ。
聞いてみたところ、どうやら彼は以前に、時空管理局の局員と接触した事があるらしい。

「しかし、驚かされたよ。
君の様に小さい子供が、魔法使いをしているなんてな」
「にゃはは……よく言われます」

本郷は、なのはに正直感心していた。
幾ら管理局の魔法使いとはいえ、彼女はまだ9歳という幼い子供。
しかし……それを感じさせないほどに、随分としっかりしている。
普通はこんな状況に陥れば、泣き叫んだりするのが当然である。
しかし彼女は、すぐに己が為すべき事を見つけ、自分に接触をしてきた。

「……強い子だな、この子は」
「ふぇ?」
「いや……とりあえず、君の仲間の名前を教えてくれないか?」
「はい、分かりました」

本郷はペンと名簿を取り出し、名前に一つずつチェックを入れていく。
絶対に殺し合いには乗らないであろう者達と、接触に注意が必要であろう者達。
二つのグループに分け、印をつけていくが……ここで本郷が、ある事に気付いた。

「ん……?」
「本郷さん?」
「……なのはちゃん。
君の名前が、名簿に二つあるんだ。
それと、このフェイトって子の名前もだ」
「え!?」

なのはは慌てて、名簿を確認する。
確かに、自分とフェイトの名前だけが二つある。
先程は、どうやら見落としてしまっていたようだが……どういう事だろうか。
どちらか片方だけなら兎も角、二人でこうなっているとなると、入力ミスなどとは思えない。
それに……なのははここで、もう一つ気になる点を見つけた。

「……フェイトちゃん?」
「何か、心当たりがあるのか?」
「……この名簿に書かれているフェイトちゃんの名前、少しおかしいんです。
フェイト=T=ハラオウンって……」

なのはは、フェイトがハラオウンの性を名乗っている事のおかしさについて本郷に話した。
確かに彼女には、養子縁組の話は出ている。
だが、まだ彼女は養子となってはいない……ハラオウンと付くのには、少しおかしいのだ。
本郷はその話を聞いて少し驚くが、すぐに冷静さを取り戻して頭を働かせる。
IQ600の天才である彼には、これがどういう事なのかを導き出すのには大して時間はいらなかった。

「……未来から来たということか?」
「え?」
「この子は、君のいた時間の未来から来たということになるんじゃないか?
そう考えれば、君とこの子の名前だけが二つあることにも説明がつけられる」
「あ……」

本郷の言葉を聞き、なのははハッとする。
確かに彼の言うとおりならば、辻褄が合う。
普通ならば、時間を越えるなんてとここで言うだろうが、幸いにもなのはは、時間を越えた経験のある人物を一人知っている。
ミライから聞いたが、彼は一度過去へと飛んだことがあるとの事だった。
しかし、そうなると……この殺し合いには、未来・もしくは過去から来たもう一人の自分がいる事になる。
何だか妙な気分だなと、なのはは苦笑した。

「もう一人の私かぁ……会ってみたいような、会うのが怖いような……」
「まあ、事情を説明するのは少し大変だろうが、心強い味方にはなってくれるだろうな。
さて……それじゃあ、そろそろいくか」

そろそろ動き出すとしよう。
本郷はデイバッグからヘルメットを二つ取り出し、その内の一つをなのはに手渡す。
彼の支給品の一つは、サイドカーだった。
バイクの運転が得意な本郷にとって、これは当たりの部類に入る代物だろう。

「これ、本郷さんの支給品ですか?」
「ああ、他にももう一つあるが……こっちは、外れ品に入るかな?」

そう言うと、本郷は自分のもう一つの支給品を見せた。
翠屋のケーキ詰め合わせセット。
サイドカーと違って、これははっきり言えば外れの品である。
しかし、なのはは当然ながらそれに見覚えのあった。

「あ、これうちのケーキだ」
「君の?」
「はい、私の家は喫茶店なんです」
「そうか……それじゃあ、後でゆっくり食べさせてもらうよ。
そういえば、君の支給品は?」
「あ、はい……この二つです」

なのはは、自分の支給品を本郷に見せた。
一つ目は『ほのお』の魔法マテリア。
説明書によると、これを持っていればファイア系の魔法が使えるという。
デバイスを没収されている今、なのはにとってこれは心強い武器であった。
そしてもう一つは……大切な仲間の武器、メビウスブレス。
ミライがウルトラマンメビウスへと変身するのに、必要不可欠な道具である。

「そうなると……そのミライを見つけて、どうにかしてこれを渡さないとな」
「はい……これが無いと、ミライさんは変身する事が出来ませんから」
「ああ、分かった」

本郷はなのはが乗ったのを確認して、エンジンをかけた。
二人はとりあえず、人がそれなりに集まりそうな場所へと向かう事にした。
ここから一番近い場所でその条件を満たしているのは、病院である。


魔法少女と仮面ライダー。
共に強い想いを持つ、二人の戦士。
彼等は今……主催者へと反逆の狼煙を上げた。



【1日目 現時刻AM0:45】
【現在地 H-0】

【高町なのは@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
[時間軸]12話中盤、ウルトラマンダイナの正体発覚直後。
[状態]健康
[装備]『ほのお』の魔法マテリア@片翼の天使
[道具]支給品一式、メビウスブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止め、元の世界に帰る。
   その為に、仲間を集める
1.病院に向かい、そこで仲間を探す
2.フェイト達と合流する。
  戦う術のないはやてとすずかの二人とは、可能ならば最優先に。
3.本郷の仲間と合流する。
4.ミライにメビウスブレスを渡す。

[備考]
※本郷と情報を交換しました。
 ただし、本郷が過去にリンディと会っている事は聞いていません。
 (管理局の局員と会ったことがあるとだけ話しています)
※自分とフェイトとが、この会場には二人いる事に気付きました。
 彼女達は、未来もしくは過去の時間軸から来たのではないかと推測しています
※『ほのお』の魔法マテリアは、ファイガまでの使用が可能。
 つまり、マスターされている状態です。
※アクセル・シューター等の様な簡単な攻撃魔法と、防御魔法の使用は可能。
 ただしどちらも、レイジングハートが無い為力が減少しています。
※はやてとダンの二人とは、直接の面識はありません

【本郷猛@リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー】
[時間軸]四話特別編終了後~本編開始までの間
[状態]健康
[装備]無し
[道具]支給品一式、リヴァルのサイドカー@反目のスバル、翠屋のケーキ詰め合わせセット
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止め、元の世界へと帰る。
   その為に仲間を集める、一人でも多くの命を守り抜く。
1.病院に向かい、そこで仲間を探す
2.なのはの仲間達と合流する。
  戦う術のないはやてとすずかの二人とは、可能ならば最優先に。
3.自分の仲間と合流する
4.ミライにメビウスブレスを渡す。

[備考]
※なのはと情報を交換しました。
 ただし、過去にリンディと会っている事は話していません。
 (管理局の局員と会ったことがあるとだけ話しています)
※なのはとフェイトが、この会場には二人いる事に気付きました。
 彼女達は、未来もしくは過去の時間軸から来たのではないかと推測しています
※光太郎との面識はあります。
 他のライダーに関しては、次の書き手さんにお任せします
※ハラオウンという名を聞いて、フェイトとクロノはリンディの関係者であると判断しました

044 本編投下順 046

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最終更新:2008年03月06日 21:24