Devil never Strikers
Mission : 08
devil army corps
前回の模擬戦から一週間。
この日は地上本部公開意見陳述会が行なわれる。
会議は厳重な警備の中行なわれ、機動六課もその警備に加わっている。
外の見回りをしながらヴィータは考える。
カリムの予言によればこの陳述会が狙われる可能性が高いらしいが、その理由は何かを。
考えても分からないのでそのうち考えるのを止め、とりあえず念話でなのはに聞いてみることにした。
『なあ、なのは、ちょっと良いか?』
特に間をおかずになのはから念話で返事がが帰ってくる。
『ん?なあに?ヴィータちゃん』
『予言通りに事が起こるとして、何でこの会議が狙われるんだ?内部のクーデターって線は薄いんだろ?』
『アコース査察官が調査してくれた範囲ではね』
『そうすっと外部からのテロってことか…だとしたら目的は何だよ?』
『……』
『犯人が例のレリック集めてる連中……スカリエッティ一味だっけか?』
『うん』
『奴らだとしたら、さらに目的がわからねえ、局を襲って何の得になる?』
『兵器開発者なら、自分の兵器の威力証明かな』
『それにしたって他にいくらでも出来る場所がある、リスクが高すぎるだろ』
『だよね……でもあんまり考えても仕方ないよ。信頼できる上司が命令をくれる。私達はその通りに動こう?』
『そうだな』
念話を終え、疑問には何の答えも見つからないながらも、多少は気が楽になった。
そしてその信頼できる上司の様子が気になり、一緒にいるはずのシグナムに念話を送る。
『はやての様子はどうだ?』
『……ヴィータか、急にどうした?』
なのはと違いいきなり本題から入ったがいつもの事なのかシグナムは気にしない。
むしろ『ちょっと良いか』などと聞いてきたさっきのほうが異常なのだ。
『なんとなくはやての様子が気になってな。どうだ?大丈夫そうか?』
『今は別行動だ。主に直接聞け』
『別行動?ま~たサボってんのかよ?ちゃんと働けって』
『サボってなどいない!ちゃんと動力室の見張りをしている!』
『動力室?』
『ああ、ここを攻められると防壁の出力が落ちるからな』
『なるほど、じゃあな』
はやての様子を聞けないのならシグナムと話す意味は無い。
早々に念話通信を切り、はやての事を考える。
そういえばはやては最近忙しそうだった。
予言の結果が上層部に伝わり、今日の警備は例年以上に厳重になっている。
有事のさいの指令系統の確認に、それが潰されたときの対処方法。
警備ルートは念入りに吟味され、ソリッド・スネークやジェームズ・ボンド、ゴルゴ13でも潜入は難しい。
(あのドンブラ粉みてーな奴でもせいぜい一部屋潰すのがやっとのはずだ)
前にエリオを襲いレリックケースを奪っていった戦闘機人の姿を思い浮かべるが、どの部屋だろうが一部屋潰された所で何も出来なくなるような事は無い。
警備は完璧だった。侵入者なんているはず無い。
当たり前だ。そんなものをスカリエッティは送り込んでいないのだから。
戦闘機人ナンバー4、クアットロ。
地上本部の局員に捕捉されない距離、地上から見上げても小さな点にさえ見えない程の上空に彼女はいた。
前線での司令塔の役目を担う彼女は、着々と地上本部を攻め落とす準備を進めていた。
作戦の内容はいたってシンプル。
今現在自分らが従えている悪魔全てで地上本部を攻める。以上だ。
潜入工作なんて小細工は必要ない。
ただ数で攻めればいい。
この作戦で使う悪魔は以下の六十七種類だ。
マリオネット ムシラ アルケニー スケアクロウ
ブラッディマリー ホムロムシラ エニグマ メガ・スケアクロウ
フェティッシュ グブスムシラ ソウルイーター アサルト
シン シザーズ ジョモツムシラ ダムドキング ブリッツ
シン サイズ アゴノフィニス ダムドクイーン グラディウス
デス シザーズ テレオフィニス ダムドナイト カットラス
デス サイズ モルトフィニス ダムドビショップ バジリスク
サルガッソー ゴートリング ダムドポーン キメラシード
ベルゼバブ ブラッドゴート ダムドルーク キメラ
シャドウ アビスゴート デュラハン メフィスト
サイクロプス パイロマンサー フォールン ファウスト
ブレイド アウロマンサー ブラッドゴイル ビアンコアンジェロ
プラズマ ブロントマンサー ヘル=エンヴィ アルトアンジェロ
フロスト サヴェッジゴーレム ヘル=グラトニー フォルト
ノーバディ ピュイア ヘル=グリード
デモノコーラス ヘル=スロース
フラムバット ヘル=プライド
スピセーレ ヘル=ラスト
インフェスタント ヘル=レイス
もちろん一種類一体と言うことは無く、数体から数十体まで様々。
合計した数字は出してないが、三千以上は確実にいる。
シルバーカーテンを使う必要なんて無い。
ただ攻め込ませればそれで終わる。
「け・れ・ど♪それじゃな~んの意味も無いのよね~♪」
悪魔達はすでに興奮状態にあり、自分達の出番を今か今かと待ち侘びている。
待たせすぎて今にも悪魔同士で殺し合いでもしそうな雰囲気だ。
クアットロはスカリエッティへの通信回線を開いた。
「ドクタ~?そろそろ良いですか?早くしないとvipにスレ立てちゃいますよ~『今から公開意見陳述会を襲うんだけど』って♪」
クアットロの冗談に帰ってきたのはツッコミでもマジレスでもなかった。
『ククッ…ククククククククククク』
『楽しそうですね?』
『ああ、楽しいさ、この手で世界の歴史を変える瞬間だ、心が沸き立つじゃないか』
モニターの向こうのスカリエッティは立ち上がり、狂気の笑みを浮かべ、叫んだ。
『さあ、始めよう!』
それを聞いたクアットロもスカリエッティのそれと良く似た笑みを顔に浮かべる。
「ミッションスタート。いってらっしゃい、悪魔ちゃん達♪」
悪魔が解き放たれた。
クアットロの合図を聞いた悪魔達は自らの魔力で転送魔法を起動する。
警備兵達は現れた転送魔方陣に混乱し、何もすることが出来ない。
無理も無い。完全に不意打ちだったしそもそも数が普通ではない。
自分達より数が多い相手への対処法は習っているだろうが、一度に数え切れない程の数の異形の者など見て動転しないほうがおかしい。
最初に動いたのはムシラ。
手近にいた局員に飛び掛り、頭に噛り付いた。
噛り付かれた局員は悲鳴を上げ、その悲鳴が全員の混乱をといた。
だが誰も彼を助けはしない。他の局員は皆、同じように襲われているか必死で逃げているかの二通りしかいないからだ。
逃げていく同僚の背中を見る彼の意識は、噛まれている所から発せられたゴリッという音と共に消えた。
「百体以上の化け物が西のエリアに!?」
騒ぎはスバルたちの元にも伝わった。
百体以上の化け物が建物の西に現れた。
聞いただけで襲撃者が悪魔だと分かったのは実際対峙した事のある彼女達だけだった。
そしてそこは今ギンガがちょっとした報告をしに向かった場所でもあった。
「助けに行かなきゃ!」
ギンガだって弱くは無い、むしろスバルより強いくらいだ。
だが、報告を聞く限りでは周りに協力者は少ないらしく、いくらギンガでも厳しそうだった。
そもそも厳しくなくてもギンガが戦っているのならすぐにでも駆けつけたかった。
すぐにでもギンガの元に行こうとするスバルだったが、ヴィータはそれを許さない。
「行くな!お前の持ち場はここだ!」
ヴィータが言うようにスバルたちはここを守らねばならない。
悪魔がこの場所に現れた時に「姉を助けに行っていたのでここにはいませんでした」では済まされないのだ。
正論だがまだ何か言いたげなスバルにティアナが顔を近づけ、耳打ちする。
「そのうちここにも悪魔が来るから、そうしたらどさくさに紛れて行きなさい」
良心が多少痛むがその方法をとることに決めたスバル。
その場の全員がバリアジャケットを纏い、未だ見ぬ悪魔の襲撃に備える。
太陽の沈む方角を睨みながら強く思う。
(ギン姉に何かあったら……泣かしてやる!)
スバルのその決意を試すかのように辺りに多数の召喚魔方陣が現れる。
ヴィータは目の前の魔方陣から出かけているフロストにアイゼンをぶつける。
砕け散るフロストの前半分。魔方陣はフロストの後ろ半分を地面に落とし、掻き消えた。
ヴィータはアイゼンを改めた。そこにはごく少量だが赤い液体が付いていた。
落ちた後ろ半分を見ると、同じ物が流れ出ている。
「凍ってるくせに血は流れてるのかよ、不思議な体だな」
血はすぐに固まり、レッドオーブとなるがそれが無害であることはダンテから聞いている。
次々と現れる悪魔達にアイゼンを向け、牽制しながらその場の全員に叫んだ。
「行くぞ!!」
「頑張ってくださいね~♪」
答えたのは様子を一方的に見ていたクアットロだった。
もちろん誰にも聞こえやしない、何となく言ってみただけだった。
彼女の仕事は戦況のコントロールだった。
これ以上出現場所を増やしたら管理局は対応しきれないだろう。
早々に落ちてもらっては困るので出現させる場所を増やすのを止める。
残りの悪魔が大体どのくらいかを示すカウンターは未だに三千を下らない。
この数字が三桁になってくれれば本格的に作戦が始まるのだが、それはまだまだ先になりそうだった。
「そ・れ・ま・で、ちょ~っと遊んじゃいましょ♪」
そう言いながらちょっと強めの悪魔を適当に見繕う。
ブリッツを選び、スバルたちがいる方に送り込む。
この悪魔はなかなか手強いが、選んだ理由は周りの人間や悪魔を見境無く巻き込むからだ。
「どれだけやられちゃうか、楽しみ~♪」
敵も味方も関係ない、ただやられるのを見るのが楽しいのだ。
だがクアットロの期待はあっけなく砕かれる。
ブリッツを手強い敵、と判断したヴィータの鉄槌によって文字通りに。
「アイゼン!」
「Gigantform」
カートリッジを二発ロードしてハンマーヘッドを巨大化。
周りの悪魔は無視してブリッツに接近し、アイゼンを振り下ろす。
「ギガントハンマァァァ!」
真上から叩き付けられたハンマーの直撃を受けたブリッツ。
ブリッツの溜め込んだ電気が近くにいた数体のヘル=レイスの爆弾に触れ、爆発した。
爆風が土埃を巻き上げヴィータの姿が見えなくなり、次いで広がった爆煙で三メートル先も見えなくなった。
「チャンスよ、フォローは任せなさい」
「……分かった!行ってくる!」
爆煙が視界を塞いでいる今なら、人が一人いなくなっても気づかないだろう。
この状況をチャンスと見たティアナはギンガの所に行くようスバルを促す。
仲間を置いて行く事に罪悪感を感じながらスバルは走り出した。
だがその目の前にはいつの間にかヴィータが立っていた。
「うわ、と」
慌てて急ブレーキをかけ、その場に足を止めた。
怒られる、そう思ったが、ヴィータは何も言わずに左手を目の高さまで持ち上げ、開いた。
手の上にはミニチュアの剣と、剣十字が乗っていた。
その意味を察したスバルはその手に小さな赤い宝石を加えて、再び走り出す。
罪悪感は少しだけ軽くなっていた。
Mission Clear and continues to the next mission
最終更新:2008年03月20日 15:42