人影にいち早く気がついたガロードはティファを連れて素早く岩陰へと隠れた。
岩に背を預けたまま顔を覗かせ、背後の様子を窺う。
彼の視線の先には四人の魔導師がいた。
内、二人は金髪の若い男。
もう二人は女性で、片方はどう見ても子供だ。
そのことに一瞬戸惑いを感じたがガロードだが、時空管理局は才能と本人の意志さえあれば入局出来ることを思い出す。
恐らくあの子供もそういう者の一人なのだろうと結論付け、再び様子見を始めた。
幸いにもまだ誰にも見つかってはいないようで、ガロード達を探して辺りを見回している。
更に後方にはガロードが潜入した白い船が停泊しており、それを見た彼には魔導師らの目的が容易に想像出来た。
(あいつら……ティファを連れ戻しに来たな)
一難去ってまた一難。
ガロードは緊張を解いた体を再度引き締め、GXを持つ手に力を入れる。
手と額にはうっすらと冷や汗が滲んでいた。
一方、ティファを追って来た四人の魔導師達――正確には二人の魔導師と二人の騎士――
大破したガジェットを囲み、燦々たる有り様を目の前にしていた。
「I型とは言え、AMFを持ったガジェットをここまで見事に破壊するとはな」
その内の一人、ヴォルケンリッターが将・シグナムはその場にしゃがみ込み、ガジェットの破損具合を見極めていた。
ガジェットの状況や傷口から、破壊した人物の情報を少しでも得るためだ。
先程まで激しく燃えていたであろう炎も今は納まり、今は黒い煙だけが立ち上っている。
しかし破損状況は思ったよりも酷く、ガジェットの残骸から得られる情報は無いに等しかった。
唯一解ったことと言えば、鋭利な刃物で両断されたということ位。
ある意味予想通りの結果に溜め息をつき、シグナムは立ち上がった。
「こりゃ、久々に骨のある相手と戦えそうだぜ!」
その横で、白と赤が目立つバリアジャケットを着た魔導師が己の闘志を燃え上がらせていた。
彼の名はウィッツ・スー。
ジャミルに傭兵として雇われおり、二丁のライフル銃型ストレージデバイス『ガンダムエアマスター』を操るフリーの魔導師である。
根が熱い性格であるウィッツは強い相手と戦えるとあり、任務を忘れて気分を高揚させていた。
そんなテンションの上がるウィッツを、少し離れた所から冷めた目で見ている魔導師がまた一人。
「ウィッツの奴、張り切っちゃってまぁ。やることだけちゃっちゃとやって、ギャラ貰うのが大人じゃないのかねぇ?」
濃い緑のバリアジャケットを身に纏い、腕、肩、足など体中を兵器型のデバイスで武装しているのは、ウィッツと同じくフリーランスで魔導師をやっているロアビィ・ロイ。
体中に装備された様々な兵器型デバイスの管制・運用を行っている高処理性能ストレージデバイス『ガンダムレオパルド』の所有者で、彼もまたジャミルに腕を買われ雇われていた。
ウィッツとは対照的にクールな性格のロアビィは敵の魔導師に大して興味がなく、一見するとやる気がないようにも見える。
「お前! 口動かしてないでさっさと探せよな!」
「はいはい、分かってるって」
その姿勢が癪に障ったのか、すぐ側でティファの捜索をしていたヴィータはロアビィに向かって怒声を浴びせた。
愛機グラーフアイゼンを振りかざして懸命に威嚇するも、残念な事にあまり怖くない。
ロアビィはヴィータを軽く受け流し、ティファの捜索を再開した。
四人はゆっくりと、ゆっくりと、ガロード達へ着実に近づいて行く……
第二話「あなたに、力を…」
(来る……っ!)
スラッシュフォームに変形させたGXを握り、ガロードはシグナム達の動きを伺っていた。
少しずつ近づいてくると同時に緊張も高まってくる。
相手は四人、こちらは実質一人。
圧倒的に不利な状況の中、現状を脱出できる最良の策を必死になって考える。
(ここから逃げても見通しがいいから見つかっちまう。見つかっても逃げきれる方法! なんか、なんかないか!?)
考えれば考えるほど思考は泥沼化し、一向に良い案など浮かばない。
更に刻刻と近づく足音がガロードから落ち着きを奪っていく。
すぐそこまで迫る複数の足音。
頭を抱えて悶え苦しむガロードだったが、ふと、一つの名案が迷走する頭に閃いた。
……この場合、迷案と言った方が正しいのかもしれないが。
兎にも角にも、もう一刻の猶予も残されていない。
ガロードはこの状況を脱するべく立ち上がった。
横ではティファが心無しか不安げな表情を投げ掛けていたが、安心させる為に笑顔で答える。
シグナム達がいるであろう方を向き、ガロードは隠れ蓑にしていた岩に飛び乗った。
「やーいっ!! お前達!!」
開口一番、大声を張り上げその場にいる全員の視線を集めた。
見た目からして腕利きの魔導師三人(ヴィータは数に入れていない)を前にしても、ガロードの声色は全く変わらない。
一人でアフターウォーを生き抜いてきた彼にとって、こんな状況はさして珍しくないのだろう。
大きな賭は慣れっこなのだ。
「出やがった、なぁっ!?」
「が、ガキンチョだぁ!?」
対するウィッツ達は未知の魔導師の登場に驚愕し、同時に落胆した。
ガジェットを撃破した魔導師がこんな子供という事実に。
特にシグナムとウィッツは久々に実戦で魔導師と手合わせ出来ると踏んでいただけに、落胆の具合も半端ではなかった。
ロアビィとヴィータに関しては呆れ果てて物も言えない。
目の前がそんな状態になっているとは露知らず、ガロードは一世一代の賭け始めた。
「もし攻撃したら恐ろしい事になるぞ! いいか、よーく聞けよ! このデバイスにはなぁ、おっそろしい魔法が記録されてるんだぞ!!」
「ほぉ……それは興味深いな」
かかった!
シグナムの呟きを耳にしたとき、ガロードはそう確信したという。
残念な事に、その言葉に含まれていた大きな皮肉の意を全く理解せずに。
妙な自信をつけたガロードは更に続ける。
「だから! それを使われたくなかったら大人しく……」
『Rifle bullet』
『Grenade launcher』
「ん?」
不意に、デバイスの音声が響いた。
ガロードが音声の発生源を見ると、ウィッツとロアビィが自分に向けてデバイスの銃口を見せている事に気がつく。
銃口にはそれぞれ魔法陣が展開されていた。
……まさか。
冷や汗が頬を伝った瞬間、光の銃弾と高密度魔力弾がガロードを襲った。
「おわああぁっ!? ととっ!?」
急に仰け反った為バランスを崩し、そのまま岩の横へと倒れ込むガロード。
それが幸いし、ウィッツのライフルバレット、ロアビィの放ったグレネードランチャーを奇跡的に避けることが出来た。
が、代わりに左半身が硬い地面に直撃。
少し高さがあった事も手伝い、鈍痛がガロードの体を駆け巡る。
「馬鹿か! んな見え透いた嘘が通じるワケねぇだろ!!」
「嘘はイケないなぁ、嘘は!」
くだらない嘘を聞かされ怒りが増し、今にもガロードを撃ち殺さん勢いで怒鳴るウィッツ。
続くロアビィも言葉こそは軽いが、強い呆れが聞いて取れる。
「く、くそぅ……なんでバレたんだ?」
バレていないとでも思ったのか。
ウィッツ達は痛む脇腹をさすりながら立ち上がるガロードに冷めた視線を向けた。
……人を騙すにはそれなりの材料とシチュエーションが必要になる。
今回ガロードには、相手に秘密兵器を持っていると思い込ませるだけ材料の不足していた。
更に騙す側が冷静さを忘れてしまっていたのだから、この結果は至極当然と言えるだろう。
一世一代の賭け、早くも終了である。
それでもガロードは立ち上がり、GXの刃先をウィッツ達に向けた。
飽くまでも対抗する気らしい。
「ったく……さっさと伸して船に連れ帰っちまおうぜ。ガキの相手なんかしてられっか」
「待てよ」
「あぁ?」
痺れを切らしたウィッツがエアマスターの銃口を再びガロードに向けようとした時、その行動を止める人物が現れた。
邪魔をされたウィッツは露骨に嫌そうな顔で止めさせた人物を睨み付ける。
意外にもそれは、普段血の気の多いヴィータであった。
ウィッツの睨みにも全く動じることなく、寧ろ睨み返している。
「相手はまだ子供だ。んな目くじら立てなくても、話し合いでどうにかなんだろ。ここはあたしが説得してやる」
エアマスターの銃口を無理やり下ろさせると、ヴィータはウィッツを押し退け一歩前へ出た。
ウィッツは不満に顔を歪めていたが、言い争うのも面倒だと早々に諦める。
因みに、「お前も子供だろ」と思ったのはここだけの秘密だ。
「ヴィータにしては珍しいな。高町なのはに触発されたか?」
「るせぇ」
シグナムの嫌味を流しつつ、ヴィータはグラーフアイゼンを待機フォルムへと変形させた。
実際、ヴィータは『高町なのはの一件』以来確実に大人の対応が出来るようになってきている。
『話し合いの場には武器を持ち込まない』という10年前の自分の言葉を律儀に守っているのも、その影響なのだろう。
発端はともかく、シグナムはヴィータがこの数年で変わってきた事を、将として内心嬉しく思っていた。
「おい、お前」
「な、なんだよ!?」
ガロードはGXの魔力刃を見せつけ、急に声をかけてきたヴィータを威嚇する。
だが彼女は全く気にした様子もなく、涼しい顔で言葉を続けた。
「誘拐、並びにデバイスの窃盗。これだけでも結構な罪だ。普通だったら即逮捕、だな。だけどな、おまえが浚った少女をこっちに渡せば、お前にはまだ弁護の余地ってやつがある。武装を解除して素直に」
投降しろ、とヴィータは言おうとしていた。
――この後数分間押し問答を繰り返し、最後には自首させる。
どうしても話し合いに応じない場合にのみ、なのは流で『お話する』――
それがヴィータの考えだった。
しかし、それはガロードの爆弾とも言える発言の前に脆くも崩れ去ったのだった。
「うるせえっ! 『チビ』の癖に難しい事ゴチャゴチャ言いやがって! 『ガキ』はお家に帰ってお人形遊びでもしてろよっ!!」
ブツンッ。
ガロードが言い放った刹那。
その場に、張り詰めた糸が、千切れたような音が響いた。
直後、先程まで涼しい顔をしていた筈のヴィータの様子が急変。
腕が微弱に痙攣し、額には血管が浮き出る。
目もつり上がり、まるで鬼の形相かと見紛う程だ。
そして何より、怒りの対象であるガロードだけでなく、無関係のウィッツやロアビィまでもが鳥肌を感じる程の、炎のように赤い殺気を全身に漲らせていた。
「お前ら、引っ込んでろよ……」
腹の底から絞り出したような低い声で後ろの三人を威圧するヴィータ。
既に彼女の手にはハンマーフォルムとなったグラーフアイゼンが握られている。
そして次の瞬間。
「こいつはあたしがぶっっっっ殺す!!!」
阿修羅と化したヴィータがガロードに突撃した。
話し合いを持ち掛けた方がこれでは、もう話し合いも何もあったものではない。
後ろで傍観していたシグナムは、己の考えを直ちに訂正したという。
やはりヴィータはヴィータか……と。
一方、急に襲われたガロードはヴィータを迎えうち、激しい鍔迫り合いを繰り広げていた。
「くっ……!」
「うぉおりゃあああ!!」
ヴィータのとてつもない気迫に押されて行くガロード。
グラーフアイゼンとGXの刃の交差部からは激しい火花が飛び散っていた。
――このままじゃやられるっ!
危機感を覚えたガロードは全力を持ってグラーフアイゼンを押し返す。
しかしヴィータが後退する気配は微塵もない。
寧ろヴィータの力は増していき、ガロードの方が更に押し返されていた。
それに気づいたガロードはとっさに分が悪いと判断。
押し返すのではなく受け流そうとGXの刃を傾ける。
「うおっ!?」
これは思いの外うまく行った。
真正面に膨大な力が掛かっていたグラーフアイゼンが魔力刃の上を滑るように振り下ろさる。
そのままガロードの体ギリギリを素通りし、地面に小さなクレーターを作った。
ヴィータもグラーフアイゼンと共に大きく前へ仰け反り、大きな隙が生じる。
チャンス到来だ。
ガロードはがら空きになったヴィータの背にGXを振り下ろした。
だがヴィータもこのまま黙ってはいない。
地面を抉って無理やりグラーフアイゼンを引っ張り出し、柄でGXの刃を防ぐ。
「なっ!?」
「ヌルいんだよっ!!」
ヴィータの力技に驚愕し目を見開くガロード。
その瞬間今度はガロードに隙が生まれた。
ヴィータの鋭い目線がそれを捉える。
GXをガロードごと押し返すとグラーフアイゼンを大きく振りかぶった。
「しまっ……!!」
「おらあああああああ!!」
「飛龍一閃!」
鉄槌の一撃がガロードを襲うかと思われたその時。
二人を紫の光龍が襲った。
光龍を素早く視界の端に認めたヴィータはその場から後ろへ跳躍し難なく交わす。
しかし反応が遅れたガロードは直撃こそ免れたが、衝撃波をまともに受けた。
吹き飛ばされ、背中から地面に滑り落ちる。
そのままティファの隠れている岩陰まで砂埃を上げながら引き擦られていった。
「引っ込んでろっつっただろ!!」
今のでヴィータの怒りの矛先が変わったのか、彼女は魔法が飛んできた方を睨みつける。
視線の先にはシグナムが涼しい顔で立っており、愛機であるレヴァンティンを鞘に納めていた。
「お前こそ熱くなりすぎた。我々の任務は飽くまでティファ・アディールの保護。このままお前が暴れれば、近くに隠れているであろう彼女にも危険が及ぶぞ」
「ちぇ! わぁってるよ!」
シグナムの忠告をすんなりと受け入れたものの、やはり怒りの熱(ほとぼり)は冷めないらしい。
つまらなそうに吐き捨て、グラーフアイゼンを肩に担いだ。
吹き飛ばされたガロードはというと、シグナムがヴィータに説教をしているうちに岩陰のティファの下へ戻っていた。
ヴィータの怒りが籠もった攻撃を受けた手は、デバイド越しだったというのに未だに少し痺れている。
ガロードは手を強く振って痺れを紛らわし、同時にヴィータを戒めるシグナムの言葉にしっかりと耳を傾けていた。
そしてシグナムの説教が終わった直後、新たな策がガロードの頭に閃く。
(そ、そうか、あいつらティファを狙ってるんだっけ。それじゃあ……)
なんとかこの場を切り抜けるため、ガロードはティファに向き直った。
一方、ヴィータの暴走により蚊帳の外へ追いやられたウィッツとロアビィは、ティファが隠れている岩陰のすぐ側まで近付いていた。
既にティファを視認しており、今にでも確保出来る程の距離だ。
(しっかし、シグナムさんも策士だねぇ。ヴィータちゃんの暴走餌にして、その隙に俺達が目標を確保しろってんだから。出来る女って、俺好みかも)
(そうかよ。……そろそろ行くぜ、あのガキ戻って来やがった)
(おっ、それはちょっと不味いね。じゃ、1、2の3で行こうか?)
(ガキか。まぁいい……1)
(2の……)
――3っ!
念話をそこで切り、ウィッツとロアビィはガロード達へと襲いかかる。
いや、襲いかかろうとした。
「っ! 待て!」
「何ぃ!?」
ロアビィが声を張り上げウィッツを引き止めた。
ウィッツも目の前の光景に思わず目を見開く。
なんと、再び岩の上へと躍り出たガロードがティファの首に魔力刃を突きつけているのだ。
驚いたのはウィッツ達の反対側にいるシグナム達も同じで、絶句したまま動けないでいる。
「これでどぉ? 撃てるもんなら撃ってみる!?」
「このヤロっ!」
「おおっと動かない。この子に傷がついちゃってもいいわけ?」
「くっ!」
ティファの首に突きつけられた魔力刃を強調するようにちらつかせ、ガロードは強気の態度でヴィータを脅す。
頭に血が上っていたヴィータも、今度ばかりは迂闊に手が出せないでいた。
そしてヴィータの反応を目の当たりにしたガロードは、今度こそ自分が優位に立ったことを確信し、更に畳み掛けるように言葉を続ける。
「やっぱ撃てないよねぇ? なんたって、あんた達の狙いはこの子なんだから! 少しでも下手なことしたら、どうなるか分かってるよね?」
「ちぃっ! 卑怯なマネを!」
「なかなかやるじゃない」
「ハートのエースはこっちが握ってるって事、お忘れなく!」
『Reflector wing』
シグナム達四人にただならぬ緊張感が漂う中、ガロードの背に銀色に輝く『X』を象った魔力の翼が現れる。
するとどうだろう。
ガロードの体がティファと共に二、三センチ程地面から浮き上がった。
「じゃあね!」
シグナム達に軽くウインクし、ガロードはティファを抱えたまま岩の上から飛び上がった。
そのまま地面に着地し、ホバリングのように地面から少し浮いて一目散に森へ疾走する。
スピードはなかなか速く、滑走した後に砂埃を巻き上げていった。
しかし、それを黙って見つめている程ウィッツの気は長くはない。
「あの餓鬼っ! 馬鹿にしくさって!!」
「待てっ!」
エアマスターの銃口を向け今度こそガロードを狙撃しようとした時、今度はその行動をシグナムによって制止させられた。
「何回も何回も止めんじゃねぇっ!!」
「今攻撃すればティファ・アディールにも確実に当たるぞ!」
「っ! ……くそっ!!」
いい加減に嫌気がさしたウィッツは激情し、シグナムに食ってかかる。
だがシグナムの尤もな意見の前に、ウィッツの怒りはまたも不発に終わった。
溜まった鬱憤をぶつけるように足下の小石を思い切り蹴飛ばす。
そうこうしている内にガロードの姿は既に無くなり、舞い上がった砂埃だけが虚しく漂っていた。
その光景に溜め息をつき、ロアビィはウィッツに話し掛ける。
「俺は一度フリーデンに戻るよ。契約がある間はデバイスのメンテとかタダだし。あそこの技師、腕いいんだよね」
「俺も一服するぜ。……ったくよぉ、一休みしないと腹の虫が収まらねぇ!」
「あたしもだ!」
内から湧き上がる殺意を隠そうともせず、ウィッツとヴィータはフリーデンへ向かって飛び立った。
そんな二人に呆れたのか、シグナムは小さな溜め息をつくと同じくフリーデンへと飛び立つ。
ロアビィはその後を追うように、足に装備したローラー型デバイスで地面を疾走していった。
その頃、上手くシグナム達を撒いたガロードはすぐさま魔力刃を消し、抱えていたティファを降ろた。
辺りの安全をしっかり確認し、バリアジャケットを解除する。
青白い光がガロードを包み、一瞬の内に元の赤いジャケット姿へと戻った。
そしてティファへと向き直り、すこし不安げな表情で彼女の顔を見る。
「……ごめんな、怖くなかったか?」
首に傷がついていないか確認し、心底済まなそうに謝るガロード。
それ対し、ティファは口元を緩ませ仄かに微笑む。
「信じて、いたから」
ティファのこの一言に、ガロードの心が一気に軽くなる。
不安は安心へと変わり、こそばゆい気持ちにティファを直視できなくなる。
「……うん」
照れくさそうに頬を掻きながら、ガロードもティファに微笑み返した。
人質にしたのだから流石にティファも自分に不信感を抱いたのではと不安に思っていたガロードだったが、それはいらない心配だったようだ。
そんな和やかな雰囲気の中、二人を茂みの中から見つめる人影が一つ。
鋭く光るその視線は、ガロードの手にしているGXに注がれていた。
(へへへっ……こりゃ、久々に透き通った酒にありつけるぜ)
- AFTER WAR LYRICAL NANOHA XtrikerS-
最終更新:2008年04月29日 09:17