「久々に帰ってきたわね……」

 朝早くからティアナはバイクを運転し、一人で外に出て行った。それは大事な用を済ませるために…。
 スバルは訓練開始前に皆で広間でノビノビしていたらティアナがいないことに気付く。

「あれ? そう言えば、ティアは……?」
「ああ、彼女なら……」

 ヴェロッサがティアナ不在を答える。



 第4話 オレンジ色のドリル少女


 ティアナは海が見える丘でバイクを止めて、桶と花を持ちながら墓地へと向かい、そしてあるところで足を止める。
 それはランスター家の墓石のある場所だった。

「兄さん、あたしグラヴィオンに乗ってるよ」

 ティアナの大事な用とは兄の墓参り。今日はティアナの兄ティーダ・ランスターの命日であったのだ。

「兄さん、あたし復讐みたいな事をしてる。でもあたしは復讐なんて考えてない。確かにゼラバイアは兄さんを殺した憎い敵。
でもそれ以上に兄さんが守ろうとしたこの世界を壊そうとする敵。だからあたしは戦う。復讐なんかじゃない、この世界を守るために…」

 ティアナは暗い顔をしながらも自分の思いを墓に向かって言う。そこには兄の亡骸はない。
 それでも魂は眠るであろうその場所に向かってティアナは目を瞑り、手を合わせる。

「だから兄さん、あたしを守って……」

 ティアナは静かに黙祷を捧げる。


「と言うわけで彼女はいませんよ」

 ヴェロッサがティアナ不在の説明をし終える。
 スバルはその事情を聞いて暗い顔をする。

「そう言えば、ティア言ってた。お兄さんはゼラバイアに殺されたって。あたし何も知らなかったな…。てっきりちょっとした事で死んだって聞いてたから…」
「ゼラバイアの事はこの前まで秘密事項だったからね。ティアナもその事実を知ったのはティーダが死んだ1ヵ月後くらいだからね…」

 ヴェロッサはティーダの事を知っているために、ティーダの死を思うと悲しい顔をする。

「しかし彼の死は無駄じゃない。彼のおかげでゼラバイアの襲来が予測しやすくなったからね…。彼がいなかったら初陣で勝利を得ることは出来なかっただろう」「
「僕も彼には感謝している。彼は個人的な友人でもあったしね……」

 クロノやヴェロッサはティーダの事と行動を共にしていた事を思い出す。

「あの、それでティアはどこにいるんですか?」
「…、そうだね。ティアナなら……」


 ティアナは墓地から海の方へ向かおうとしている途中、自分がこの土地で見たことないビルがあるのに気付いて近所の人間に聞く。

「あれは何ですか?」
「ああ、あれね。あれは最近出来た管理局地上部隊の会議場だとさ」
「まったく迷惑だよね。話し合いなら中央でやればいいのに…」
「あはは、そうですね…」

 ティアナはその話を聞いて苦笑いをし、お礼を言ってその場を去る。
 ティアナは海へと向かい、砂浜近くにバイクを止めて自身は海の近くまで行き、砂浜で座り込む。

「やっぱりいいわね。ここは…」

 この海は自分の故郷の近くにあるということで、夏になるとたまにだが兄と一緒に行って遊んだ事をティアナは思い出す。

「……、兄さん……」

 ティアナが思い出にふけって顔をうずくまっていると突然砂浜が揺れだす。

「な、何!? 地震!?」

 揺れはティアナの方に近づいているようで、ティアナを中心に地面は揺れる。
 するとティアナの横からGドリラーが砂の中から姿を現したのだ。

「Gドリラー!?」

 ティアナは突然のGドリラーの出現に驚きを隠せない。
 そして上空からはグランカイザーやグランディーヴァを運用する輸送機「グランフォートレス」が飛んできて外にはスバルが出ていて、ティアナに手を振る。

「やっほ~~~~~~、ティア~~~~~~~」
「スバル、あんた何をって……、何よ、その格好!?」

 スバルがグランフォートレスから降りる。ティアナはスバルの格好を見てまたしても驚く。
 スバルの格好は水着だったのだ。しかも水着を隠す服は着ていない。(短パンは履いている)
 スバルの水着は青色で上半身の部分は露出は高いわけではないが低いわけでもなく、胸を強調するようなものだった。

「あんた、その格好でここに……」
「あたしだけじゃないよ」
「え?」

 スバルがそう言うと、Gドリラーからはフェイト、グランフォートレスからなのは、ドゥーエ、リインも降りてくる。
 ティアナはリイン以外の降りてきた3人の姿を見て驚愕する。
 リインはいつもの格好だったが、他の3人は何とスバルと同じ水着姿だった。
 なのはとフェイトは二人ともビキニと呼ばれる露出の高いもので、なのははピンク、フェイトは黒色の水着であった。
 ドゥーエはなのはやフェイトのような露出の高いものではないが、レオタードのようなもので色は緑色。

「なのはさん、フェイトさん、ドゥーエさん……。まさか……」
「さあ、皆で泳ごうか」

 なのはの言葉を聞いてティアナの予感は的中した。ティアナは理由をなのはに聞く。

「な、何でまた急に……」

 その疑問はなのはではなく、フェレットの姿でリインの肩に乗っていたユーノが答える。

「ヴェロッサがティアナが海の近くにいるから、どうせならグランナイツで海に行こうと言う事になってね……」
「…そうですか……。でも何でグランディーヴァで?」
「それもヴェロッサの指示です。何かあった時用だって……」

 ティアナはヴェロッサの考えに呆れてものも言えなかった。

「ところでティアの水着もあるんだよ。これでどう!」

 スバルがティアナの為に用意した水着を取り出す。それは学校などで見かけるスクール水着だった。
 ティアナはそれを見て、すぐにスバルに向かって飛び蹴りを入れる。スバルは海まで吹き飛ばされてしまう。

「馬鹿スバル! 水着くらいあたしが選ぶわ!」
「ひどいよ~~~~」

 スバルは泡を立てながら喋る。

「だったらこれはリインが着ますね」


 ティアナの地元の近くに出来たビルではレジアスが地上部隊の一部の上官達を集めて会議をしていた。
 何故こんな場所で会議をしているのかと言うとそれは最近グラナガンがゼラバイアの襲撃を受けたためにグラナガンは少しばかり壊滅状態。
 それによって会議の場所を変えていたのだ。
 レジアスは会議場の中心に立ち、各地上部隊の上官達に向かって演説をしていた。

「ゼラバイアと呼ばれる謎の存在により、ミッドチルダは危機にさらされているのは諸君らも知っているだろう。政治経済はもちろん、民間レベルでもゼラバイアの出現で様々な社会不安が引き起こされている。
ゆえにわしは混沌した現在だからこそ、地上部隊はその力を次元部隊や本局に見せ付ける好機だと考えている。
今の現状を嘆くのではなく、より市民の安全を約束できるように各部隊の……」

 レジアスが演説を続けようとすると突然建物全体がわずかに揺れる。
 揺れがすぐに治まりレジアスが演説を再会しようとするとまたしても建物全体が揺れる。

「何だ!?」

 この揺れは地震ではない。地震にしては少し不自然である。席に着いていた地上部隊の上官達はどよめきあううちに一目散に逃げていく。

「まさか、地面から……」
「中将…」

 レジアスを武装局員が囲むように守り、レジアスは会議場を去ろうとした時、先ほどまでレジアスが立っていた場所からゼラバイアが出現したのだ。
 ゼラバイアの出現で武装局員は量産デバイスから魔力弾を撃ち、ゼラバイアを攻撃。レジアスは守られながら急いで会場から逃げた。


 海で遊んでいたグランナイツはユーノの感知魔法により、ゼラバイアの出現を感知して急いで自分達の機体に乗る。
 聖王教会の司令室でもゼラバイア出現を感知して、シャーリー、アルト、ルキノ、配置について、ヴェロッサとクロノも司令室に入る。

「グランカイザー及び全グランディーヴァの起動を確認」
「コックピットをモニターに出します」

 アルトがコックピットのモニターを出すと、そこには水着姿のグランナイツの姿が映し出される。
 リインもさっきまで服を着ていたのに、スバルがティアナに出した水着が気に入ったのか、自分のサイズにあう水着を着ていた。
 そしてティアナも水着を着ていた。ティアナの水着はなのは、フェイト、スバルより露出は控えめだがドゥーエやリインのものよりはある。
 上半身部分は露出よりも胸の大きさを強調していおり、下はなのはとフェイトとそんなに変わらない。色はオレンジ色。

「君達、そんな格好で戦う気か……」

 クロノが呆れかえるとヴェロッサは反対しなかった。

「いや、今は緊急事態だ。それにあれはあれで美しい」
「ヴェロッサさん……」
「ヴェロッサのエッチ」

 ティアナが呆れ、フェイトがぼそりとそう言う。

「諸君、今その近くでは地上部隊の平和会議をしていて人口密度が高い。大量殺戮を目的にしているゼラバイアはそこに反応したのだろう。急いで止めてくれ」
『了解!』
「グランナイツの諸君、合神せよ!」
「エルゴ、フォーーーーーーーーーム!!」

 ヴェロッサの承認を得て、スバルがエルゴフォームを発動させる。
 グランカイザーからはエルゴフォームの重力が包み込まれる。

「超重合神!!」

 そしていつものようにグランディーヴァがグランカイザーと合神してゴッドグラヴィオンが完成するが、今日は少し違っていた。

「超重合神!! ゴッド、グラヴィオーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」

 合神直後に何故かヴェロッサが叫んだのだ。

「今のは…」
「一度言ってみたかったのだよ」
「ははは……」

 クロノは思わず苦笑いした。
 グラヴィオンは会議をしていた建物にたどり着くがゼラバイアの姿はなく、あるのは破壊された建物だけである。

「ひどい……」
「ゼラバイアがいないようだけど、逃げたのかな?」
「いえ、そんなはずないわ! 絶対にいる!」
「ティアナ、少し落ち着きなさい」

 自分の故郷を荒らされて怒るティアナをなだめるドゥーエ。

「わかってます」

 すると地面から突然触手が現れ、グラヴィオンの脚に絡みつく。
 今回のゼラバイアはダイヤの形で貝殻のような厚い装甲をしており、中身からは本体が出ている。

「あいつね。あたしの故郷を荒らすのは……。スバル!」
「グラヴィトンバスターーーーーーーー!!」

 グラヴィオンが両腕を組んでグラヴィトンバスターを放つが、ゼラバイアは自分の厚い装甲に身を固めて、グラヴィトンバスターから本体を守る。

「くっ! ダメか…」

 ゼラバイアは脚にグラヴィオンの脚に絡めた触手でグラヴィオンの体勢を崩し、厚い装甲を被ったままそのまま体当たりしていき、グラヴィオンは後ろに倒れる。

「うわああああああ!!」
「重力安定指数65%」
「重力臨界値まで後7075ポイントです」

 ゼラバイアは体当たりしてすぐに装甲の腕をドリルのように回して、そして自分自身もドリルのように回転させて地面に潜る。

「あれは……」
「まさか逃げる気!」

 ドゥーエが敵の狙いを予測する。

「まずいよ、このまま逃がしたら被害が増える」
「どうしたら…」

 フェイトが逃がした時の状況を考え、スバルが悩みながら策を練る。

「あたしが行くわ。Gドリラーで奴地下からたたき出すわ。フェイトさんもいいですか?」

 ティアナが提案してフェイトに同意を求める。

「それしかないね…。いくよ! ティアナ!」
「はい!」
「エルゴ、ブレイク!」

 グラヴィオンの両腕から二つに分かれたGドリラーが離れて、また一つのGドリラーになり、ゼラバイアが掘った穴からゼラバイアを追う。
 穴に入って間もなくGドリラーはゼラバイアを発見する。

「くらえええええええ!!」

 ティアナは叫びながら、ミサイルとバスターをゼラバイアに向かって撃つ。
 ゼラバイアは一時撤退と考えたのか地上に向かう。

「ティアナ、こっちも急いで戻るよ」
「はい!」

 Gドリラーも元来た道を急いで逆走して、ゼラバイアよりも先にグラヴィオンのところに戻り、Gドリラーは再び二つに分かれてグラヴィオンの腕になる。

「スバル、フェイトさん、あれを使います!」
「あれって…、まさかあれを……」

 フェイトがティアナの考えを察知し、ティアナに答えを聞く。

「ええ、あれです」
「でもあれは私もシュミレーターで何度もやってるけどうまくいかない。ティアナも一度も成功してないでしょ」
「……、それでも…。それでもあたしやります! スバル準備して!」
「わかった!」

 グラヴィオンは再び両腕を前にして手を合わせる。数秒後ゼラバイアが地上に姿を現すのと同時に組んでいた両腕が高速回転し始める。

「行くよ、ティア!」
「「「グラヴィトン」」」
「プレッシャーーーー」」
「スパイラル、ナッーーーーーーーーーーークルーーーーーーーーー!!」」
「え?」

 スバルとティアナの叫びが自分と違う事にフェイトは戸惑いながら、両腕は高速回転を続けながらゼラバイアに向かって飛んでいく。
 ゼラバイアの装甲は硬い。だがそれ以上にティアナの怒りで増えたG因子でパワーアップしたスパイラルナックルの方が強かった。
 ゼラバイアの装甲は破壊され、ゼラバイアの体に大きな風穴が開き、爆散する。
 Gドリラーはグラヴィオンの腕にと戻る。

「終わったね」
(兄さん、故郷が荒れてごめんなさい…。でも守ったよ……)


 グランナイツは再び海辺へと戻り海水浴を楽しもうとするが、フェイトがスバルとティアナに説教をしていた。

「二人とも、勝手に技の名前を変えるなんて…」

 フェイトが説教している訳は、さっきの両腕を発射させる技は「グラヴィトンプレッシャーパンチ」なのに、
 スバルとティアナが勝手に「グラヴィトンスパイラルナックル」と変えたことである。

「ごめんなさいフェイトさん。あたしが訓練中のティアに技の名前を変えたらって言ったから…」
「いえ、スバルが悪くないんです。あたしが勝手に…」
「まあまあ、二人とも反省してみたい出し許してあげようよフェイトちゃん」

 フェイトが二人を叱る中、なのはがその間に入る。

「それに私はそっちの方が好きかな。『スパイラルナックル』」
「な、なのは……」
「でも今度からはちゃんと一緒に使う人の了承をとってからにしようね」
「「はい!」」
「それじゃあ、海で泳ぐよ。フェイトちゃんも行こう」
「うん」

 なのはがフェイトの手を引っ張り、スバルとティアナがそれを追うように海に入ろうとすると…。

「諸君、バカンスは楽しんでいるかい?」
『ヴェ、ヴェロッサ(さん)…』

 何とヴェロッサが手にサーフボードを持ってビキニパンツ姿でここにいたのだ。

「な、何でここに…」
「そんなことより、グランナイツの諸君着いてきたまえ!」

 そしてヴェロッサは海へと突撃する。

「美しい波だ。さあ、乗るぞ! はっはっはっ」

 ヴェロッサは楽しそうだった。

「「海に行ってくる」って僕だけ留守番かーーーーーーーーー!!」

 クロノはヴェロッサの置手紙を見て、教会には自分しかいないのを見てそう叫んだそうだ。


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最終更新:2008年04月30日 23:16