「ケロ……あのー我輩のこと見えているでありますか?」
場をごまかすかのように作り笑いを浮かべ、ケロロが男性に尋ねると男性は「ああ。」と首を縦に動かす。

やべー。現地生命体に見つかっちゃったー。
顔から汗が吹き出し、精神が張り詰めてくる。
どうやってこの現地生命体から姿を消すか……。アンチバリアの存在をど忘れし、脱出の名案を出そうと考察し始めた。

が……よく、辺りを見回すと研究室と思わしき広い空間。
その空間の壁に立つ柱。
そして、生命体が手元の寝台で寝かせている誰かの身体を見てケロロは思考が停止した。

誰かは裸で……胸が膨らんでいていて身体も幼かった。そのことから女性だと認識する。
が、問題はそこではなかった。
女性の身体の一部がメスで開かれて機械が剥き出しているのだった。

「……どうした?」
カエルと思える物体が固まっているのを察し、男性は妖しく眼を細めて尋ねる。
しゃべるということは、このカエルは誰かの使い魔か……。
と考察し、男性は始末してしまおうと判断した時。

「わー、すっげー!改造人間じゃんカッコイイー!」
「へ?」

第1話「ケロロ、めぐりあい研究施設。であります!」

新しく現れたテレビのヒーローを見ているかのような興奮した声に男性は邪念が霧散してしまう。
意外な言葉をもらい、反復しながら眼の前のカエルを見遣る。

カッコイイ?
確かに自分の中の最高の技術で生み出したこの戦闘機人に愛を注いでいるが、他人からそう言われたことなど今までになかった。
その為、男性は嬉しさで気分が高揚していたことを自覚した。

褒められて……うれしいのか。私は……。
「カッコ……イイかい?」

「左舷、何をバカなこと言ってんの!?
こんな『出たなショッカー!』みたいなのとか『キカイダー!!』みたいなヒーロー、ヒロインほど男の心を擽るものはないであります。これは造ったのでありますか?」
「ああ、戦闘機人と言ってね。この娘だけじゃなく。あっちのカプセルに入った娘もね。」
柱のように立ち並ぶカプセルの中を男性が促して示すとカエルはらんらんと輝きを放って中に浸かっている少女達を見回して叫ぶ。
「ゲロー!なんじゃありゃぁ……あれ全員ショッカーライダーに変身するんでありますか!?」
カプセルにはそれぞれ数字がNo.5から順番にプレートに刻まれており、ケロロにはそれがまるでライダーシリーズに思えてしまう。

「いや、変身はしないけど。あらゆる状況での闘いを想定して調整している。」
「やべぇよ。アンタ……男の中の男であります!」
きっぱりと崇高の眼差しできっぱりと答えるカエル。
そんな彼に男性は興味が湧きはじめていた。
このカエルは……認められなかった自分の技術を褒めた。自分を認めた……。

ただそれだけ……。
それだけでもスカリエッティにとっては充分な感情である。
ふわふわと、気持ちが柔らかくなって。知らないうちに自然と口元は緩んでいた。
「ありがとう……。」

「ケロッ、自信を持った方が良いーであります。」
にこにことこちらが照れてしまいそうになる輝かしい笑顔を見せてくれるケロロ。
そんな彼に男性はまだ自己紹介を済ましていないことに気付き、口を開く。
「ありがとうカエル君、まだ名乗っていなかったね。私はジェイル・スカリエッティ、科学者をやっているんだ。」


おっ、自己紹介は宇宙共通の最初のコミュニケーションでありますな!
とスカリエッティと名を告げた彼にケロロは気を良くし。ビシッと両手をを腰に沿え、右手を斜めに額にくっつけて名を名乗る。
「ケロッ!我輩、ガマ星雲第58番惑星 宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊長 ケロロ軍曹であります。」
「宇宙……それは興味深いね。軍曹君と呼べば良いのかな?」

「ノンノンノン!コミュニケーションに遠慮なんて無しだって~。好きに呼んで良いであります。」
スカリエッティの尋ねに「わかってないなぁ。」というかのように肩を浮かせてその小さな緑色の右手をひょっこりと差し出す。
「だから我輩も、スカ殿と呼ぶであります。」


ケロロの言葉にスカリエッティは彼の右手に自身の右手を重ねて握手を成立させる。
スカ殿か……。
初めてあだ名ような呼び方を付けられ、嬉しそうに微笑んで小さな彼の名を呼ぶ。
「よろしくね、ケロロ君。」
「よろしくであります。」

冬の寒さを溶かしていく澄みきった春風のように純粋な心のまま成長した科学者と宇宙人が出会った。

そして、ミッドチルダの世界に嵐を巻き起こす……のは後の話。

「ねー、スカ殿。この娘の名前おすぇーてー。」

ぴょこっと寝台に飛び乗り、横たわる少女を見遣りながらケロロはスカリエッティから名を尋ね。
教えられる。
その名は
「ああ、彼女はNo.4・クアットロだ。」

伝説のアノ人の仮の名前にケロロは更に興奮したのか目を皿のように丸く広げ、クアットロへと敬礼をする。
まさか、メガ・バズーカ・ランチャーを限界まで撃ったお方に会えるなんて……我輩感無量であります!!
「ケロ!4番目とかマジでカッケェェ!最高じゃん!」
「そ、そうかい?」


ケロロは真っ直ぐいて白と黒の美しい配色の眼から涙を溢れていた。
そんな彼に「何故泣いているんだ、ケロロ君は?」とスカリエッティは聞きたかったが彼から熱い何かを察し、言葉をかけれない。

「ねーねー、早くクアットロ殿起動しないでありますか?」
「え、軽っ。」

今の今熱い何かは何処へいったのか、けろっと雰囲気が切り替わり。ケロロは急かすかのようにスカリエッティに尋ねてきた。
が、スカリエッティも新しく出来た小さな友人の楽しそうな笑顔を見たくもあり……彼から少し離れて近くのコンピューターへと歩み寄る。
あれだけの反応だ……他の娘達にも会わせてあげたい。
「ケロロ君、クアットロは起動できないから先にNo.1から3までの娘達を紹介するよ。」
「マジ!?会わせて会わせてー!」
意外であったスカリエッティの言葉にケロロは。
プロトタイプからG-3も居んの!?と驚きと喜びが心を高揚させる。


そして、手元のコンピューターに設けられた通信機器にスカリエッティが誰かの名前を呼び。すぐに三人の女性がケロロ達の居る研究室へと到着した。

「まず三人共紹介しよう。彼はケロロ君、私の宇宙の友人だ。」

スカリエッティからの紹介に三人は同じタイミングで頷き、ケロロを認識して一人の女性が先だって挨拶をし始める。
「No.1、ウーノです。よろしくお願いしますケロロ君」
「彼女は情報処理や私の秘書を務めている。」

スカリエッティと同じ紫色の長い髪を揺らし、ぺこっと頭を下げる彼女に続き、金髪の女性と紫色の短髪の女性が前に出てケロロと握手を交わす。
「そして次はNo.2とNo.3。No.2は潜入や隠密行動を特化してNo.3は高速戦闘に特化している。」
「名前はドゥーエ、よろしくねケロちゃん。」
「トーレだ。よろしく頼む。ケロロ。」

そんな彼女達にケロロは元気よく笑顔を浮かべ、昴ぶった心が影響して震えた右手で敬礼をする。

やべぇよ……これならケロンはあと10年は闘えるであります……ゲロゲロリ。
「ウーノ殿、ドゥーエ殿、トーレ殿。よろしくであります。我輩こんなにガンダムに会えるなんて夢みたいであります!」

その笑顔は輝かしく、まるでさんさんと大地に恵みをもらたす太陽のように明るい。
彼の笑顔を見る者にさえ恵みをもたらすように……。

スカリエッティから紹介され、知り合ったばかりの戦闘機人の彼女達も彼の存在は好印象となって焼き付いた。
「ガンダム?」と三人は同時に首を傾げたが。
とくにトーレはケロロと左手で握手したまま、彼の姿に見入ってしまっている。

なんて、つぶらな瞳なんだ……可愛い。
「…………。」
「ケロ?トーレ殿どうしたでありますか?」

トーレの顔を見上げると彼女の瞳は潤みを帯び、頬はほんのりと赤く染まっていた。が、ケロロはその反応が分からず。?を浮かべて尋ねた。
「ああ、いや、そ、そのだな。」
ケロロからの尋ねにトーレは途端に慌ててしどろもどろになってしまう。
そんな妹の態度を姉二人は何と無く理解していた。
ウーノは、可愛いもの好きだから……。と
ドゥーエは、スイッチ入ったわね。と

「可愛いからってトーレ。ケロちゃん一人じめしないでよ。」
「あ、す、すいません。ドゥーエ姉様。」

注意をされ、名残惜しむようにケロロを見遣りながら彼から少し離れ、今度はウーノとドゥーエがケロロの頭を撫でたり抱きしめたりしてくる。

「ケロロ君、ウーノお姉ちゃんって呼んでね。」
「ウーノお姉様ズル。なら私もお姉ちゃんで良いわ。」
「ケロっ、お姉ちゃんでありますか?」


なかなかに彼女達に受けが良い彼にスカリエッティは口元に手を沿えて笑みを零してしまう。
思ってたよりも、ケロロ君とこの娘たちの相性は良いみたいだ……
待てよ。ケロロ君は宇宙から来た。ということは船でか……。


彼の言葉に推測し、スカリエッティはその疑問を口に乗せる。
「ケロロ君、君の宇宙船を見せてくれないかな?」

「良いでありますが。」
ウーノに抱きしめられたままケロロは不思議そうに「ケロ?」と首を傾げてそう答えた。

「ハッ…………。」
が、そこで彼は船と仲間達、洞窟を壊してしまった事を直感的に思い出す。
あ、忘れてた……みんな脱出したかなぁ。
「ゲロォ……。」

途端にげんなりと、痩衰えるケロロの表情にスカリエッティは?を浮かべてしまう。
「どうしたんだいケロロ君?」
「ケロ……そのぉ。とっても言いにくいのでありますが。」

「?」
その場にいた一同が「なんだろう。」とケロロの言葉を待つ。
そして

「入口壊しちゃった♪」
てへっ。とケロロはキャップを被ったような頭に両手を沿えてぶっちゃけた。
そんな彼を見て、ついに我慢出来なくなったトーレがウーノ、ドゥーエに囲まれていた小さな宇宙人に抱き着く。
「きゃわいぃぃ!!」
「ゲロッ!?」
その力は半端なものではなく、愛の篭った怪力で抱きしめられ。
次第にケロロの緑色の肌が赤く染まり、青くなって意識が薄れていく。


ケロ……ああ、見える。時が見えるでありまーす。
〔りまーす〕
〔まーす〕
〔まー〕

何故か心の中で語尾が反響する。
そしてケロロはぐったりとトーレの腕の中で気を失った。

「ちょっとトーレ、ケロロ君死ぬから!!」
「唯一のマスコット殺さないでよね~。」
姉二人からの指摘にケロロの可愛さにスイッチが入っていたが、ハッと我に返り。
ケロロを見下ろすとケロロは白目を向いて口から魂が立ち上っていた。
「ぁあっ!大丈夫かケロロ!?」


そんな娘達やケロロの光景をスカリエッティは嬉しく思っていた。
これは良い出会いだ、何となくだけどこの施設にいるのが楽しい……。

慌ててケロロを介抱しているトーレ達を面白いそうに眺め、そっと笑い声を零す。
「さて、入口の確認とケロロ君の船を見てみるかな……ふふ。」



ケロロ「さて、次回のリリカルケロロ軍曹STSは−−」
ギロロ「まて貴様、何を忘れてくれてたんだ!!」
タママ「ひどいですぅ!」
クルル「まぁ、好き勝手出来るから良いけどな。クーックックック」
ケロロ「まぁ、よくある事じゃんドンマイドンマイ。
第2話「ケロロ小隊、散らばっちゃった。であります!」てことで……どすか?」
ギロロ「ごまかすなぁ!!」
ケロロ「ゲゲ~ロ。」



ゼロロ「あれ……皆は何処?また、僕一人……ぼっちなんだ…………。あはは、そうなんだ。そう……だよね。うん、分かってたよ。」

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最終更新:2008年09月02日 23:38