第9話 超重神再び



 ゴッドグラヴィオンが超重剣を手に入れてから数ヶ月、ゼラバイアのミッドチルダ侵攻は止んでいた。
 その間に地上本部では兼ねてより計画されていたものを実行に移しており、その計画はほとんど最終段階へと入っていた。
 その計画とは数ヶ月前にレジアスが発表したグラヴィオンに変わる対ゼラバイアのロボット計画である。
 計画によって作り出されたロボットは5機。現在はその作られた5機のテスト運転をしていた。

「なかなかいい動きだな」
「ああそうだね。素晴らしいよ、ウーノ」
「お褒めの言葉ありがとうございます。ドクター」

 スカリエッティの助手であるウーノは頭を下げて褒め言葉を受け取る。

「ですが、あれはまだ完成はしておりません」
「わかってるよ。だがそれでもなかなかのものだよ。後はグラヴィオンの完全なデータがあれば完成だね」
「しかしお前達が選んだパイロットは本当に大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。皆優秀なものです。それは中将、あなた自身もわかっているはずですよ」

 レジアスがスカリエッティとウーノと話していると、テスト運転で飛んでいたロボット達が全機、3人の近くに降り立ち、
 そのうちの隊長機と思われる機体から赤い髪で赤い服を着た小さな女の子がコックピットから降りる。
 少女の見た目はリインより少し年上くらいだが生意気そうな顔をした少女がウーノのところに駆け寄る。

「なかなかのものだったわね」
「当たりめえだ。オメエら、あたし達を何のために呼んだんだ?」

 その少女は見た目どおりな生意気な口でウーノに話す。

「もちろん、このグラントルーパーに乗ってもらうためだよ。ヴィータ」
「ふん、とりあえず少し休憩に入る。いいな」
「ああ、構わないよ」

 ヴィータは機嫌が悪そうにその場を後にする。
 ヴィータの態度にレジアスが少々怒りを顕わにしたようにスカリエッティとウーノに尋ねる。

「何故あんなのをパイロットにした?」
「それは彼女が優秀だからですよ」
「それに彼女には何か秘密があるみたいなんですよ」
「秘密だと?」
「ええ……。私達もよくわからない秘密が……」


 その一方聖王教会では、ここ数ヶ月ゼラバイアの襲撃がないので穏やかな日常を過ごしていたというとそうでもない。
 ゼラバイアがいつ現れるかわからないのでグランナイツは訓練は欠かしていない。しかしグランナイツの面々は今は訓練をしておらず、何をしているのかと言うと……。

「スバル~~」
「ごめんね、ティア」

 怒って詰め寄るティアナに必死に謝るスバル。

「ごめんね、じゃないでしょ! 何であんたの事であたし達が巻き込まれなきゃいけないのよ!」
「ひい~~~~~~~~!! ごめんなひゃ~~~~~い」
「まあまあ、ティアナ」
「とりあえず落ち着いて……」

 フェイトとなのはがスバルのほっぺを引っ張るティアナをなだめようとするがティアナはやめない。

「さすがに落ち着けませんよ! スバルのせいであたし達こんな格好してるんですよ!」

 ティアナが言う「こんな格好」、それはスバルやティアナ、フェイトになのは、それにリインを含むグランナイツの面々全員が聖王教会のシスターの格好をしていたのだ。
 (ドゥーエは戦闘以外はほとんどシスター服を着ているので、ドゥーエはカウントしない)
 ちなみに何でこんな事になったのかと言うと話は数時間ほど前に上る。
 数時間前、スバルはシャーリー、アルト、ルキノととあるゲームをしていた。それは『ポーカー』と呼ばれるトランプを使うゲームで役が一番弱かった人が服を一枚ずつ脱ぐというルールの下でやっていたのだ。
 ゲームはスバルの完敗であり、スバルは身包みを剥がされ、もう何も着てない状態で勝負を挑む際、もし自分が負けたら「グランナイツ全員がその日はずっとシスターの格好をする」と言ってしまい結果スバルは敗北しこうなったのだ。
 そして今は訓練ではなく、いつも他のシスター職員が行っているシスター業務をしているのだ。

「そんなに怒る事じゃないよ」
「それにこの格好も慣れると結構着心地いいしね」
「はい、リインは気に入ったです!」
「ぼ、僕はさすがに……」

 ユーノはフェレットの姿をしながらも、リインの遊び心のために少しだけシスターぽくされてしまったのだ。(ユーノは男です)

「まあ、確かにユーノはね……」
「でもなのはママもフェイトママも似合ってるよ」
「「ありがとう、ヴィヴィオ」」
「へへ」

 ヴィヴィオはなのはとフェイトが自分とお揃いのシスター服を着て嬉しいのだ。
 それから数十分後、ティアナはふと思ったことをクロノに尋ねる。

「ねえクロノさん」
「何だ?」
「ヴェロッサさんはどこに行ったのですか?」
「そう言えば、最近姿見てないね」

 なのはやフェイト、スバルにリインにドゥーエもティアナの言葉を聞いてふと思い出す。
 ヴェロッサは数週間前から姿を現しておらず、なのは達は何故いなくなったのかの理由を聞いていないのだ。

「ああ、彼なら……」


 クロノがヴェロッサの事を思い出している同時刻、時空管理局の本局ではヴェロッサが護衛のシグナムとシャマルと共に色々な部署を回っていた。

「視察、ご苦労様です」
「はい、ありがとうございます」

 局員がヴェロッサに敬礼をし、ヴェロッサも敬礼し返す。

「しかし、大変だったな。ザフィーラ」
「何、このくらい問題ない」

 ザフィーラと呼ばれる犬、いや狼はシグナムの返事に答える。

「ザフィーラ、お疲れさま。でもヴェロッサさんもこの数週間で最近やってなかった視察をしてるのですもんね」
「それが時空管理局の査察官である僕の務めだよ」

 そう、ヴェロッサ・アコースの時空管理局での職務とは査察官だったのだ。
 ヴェロッサは数年前から査察官としての仕事をザフィーラや部下や同僚達に任せて、
 自身はグラヴィオンのパイロットの教育に専念していたのだが、ここ数ヶ月ゼラバイアが出現しないのを見て、久々の査察官業務をしていたのだ。
 しかし査察官としての視察だけがヴェロッサの目的ではない。もう一つ、いや本当の目的と言うべきものがあるのだ。

「しかし、何故ヴィータが未だに見つからないのでしょうか?」

 真の目的、それはヴィータを見つける事だ。

「わからん。あいつが地上部隊に転属したという情報は掴んだのだが、それ以降がわからないんだ」
「ヴィータちゃんどうしてるのかしら……」

 三人は今ヴィータがレジアスお抱えの特殊部隊に移ったことを知らない。三人が廊下を歩きながら考えていると突然ヴェロッサの方にクロノからの通信が入る!

「ロッサ、ゼラバイアがミッドチルダに現れた!!」
「何!?」
「嘘!?」
「そうか……」

 シグナムとシャマルの驚きとまったく違い、ヴェロッサは至って冷静に対応する。

「クロノ、僕がミッドチルダに戻るまで、グランナイツの諸君の指揮を頼む」
「…わかった」

 クロノは通信を切る。ヴェロッサはシグナムとシャマルを従えて走る。

「急いで戻るよ」
「「はい!」」


 聖王教会では、スバル達がクロノの指示に従って各グランディーヴァに乗る。

「お前達、今度はその格好のままでやる気か?」

 クロノが呆れたようにスバル達の格好を見てスバル達に聞く。
 スバル達の姿は前の水着姿のようにバリアジャケットの姿ではなく、罰ゲームで着ていたシスター服のままであった。

「だって……」
「『今日一日はシスター服でいる』その罰ゲームは守らないとね………」
「と言うことで行きます!」

 スバル達の勢いに負けてクロノはしぶしぶ発進許可を出す。

「仕方ない……。よし、グランナイツ全員発進だ!」
『了解!!!』

 グランカイザー、Gアタッカー、Gストライカー、Gドリラー、Gシャドウは各発進口から飛んでいく。


 ゼラバイアがやって来た都市では、久々のゼラバイアの出現により避難が遅れてしまい、逃げ遅れた人々が逃げ惑う。
 その逃げ惑う人々に向かって、ゼラバイアは攻撃をしようとする。その時!

「おりゃーーーーーーーーーーーー!!」

 グランカイザーに乗るスバルがゼラバイアに向かって飛び蹴りを喰らわす。
 しかしゼラバイアは飛び蹴りをまともに喰らったと思いきや厚い装甲で身を固めてグランカイザーの蹴りのショックを和らげた。
 グランカイザーはすぐに後ろに飛んで体勢を立て直す。

「さあ、早く逃げてください!」

 スバルは逃げる人々を先導して避難所に人々を逃がす。逃がし終えるとスバルは先ほど蹴ったゼラバイアを見る。

「何か嫌な感じのゼラバイアだね……」

 そのゼラバイアは最初に来たのと姿はあまり変わらないが違う所があるのは、そのゼラバイアの真ん中にはドクロのレリーフみたいなものが、
 半分に分かれていて、ゼラバイアの左右にくっついているのだ。先ほどの装甲はそのドクロのレリーフを一つにして固めたようなものだ。

「明らかに印象が悪いわね…」
「敵の装甲は攻撃を拡散させて背後に逃がす結晶構造になっています」
「やはり単体では無理か……」

 クロノがルキノの報告を聞いて複雑そうに悩む。

「よーし、じゃあだったら早速合神……」
「合神は無理よ」

 スバルが合神をしようとするとドゥーエが無理と答える。

「え? 何でですか?」
「それはね……」
「ロッサがいないからだ」

 ドゥーエが答えようとするとクロノが通信に割り込んで答える。

「それってどういうことですか?」
「グラヴィオンに合神するにはロッサの承認がいる。今まではロッサの承認を経てグラヴィオンに合神していたが、今はそのロッサが承認をしていない。だからダメなんだ……」
「だったら早く承認を……」
「ロッサと通信が出来ないのにか?」
「う……」

 クロノの回答を聞いてグランナイツの面々は一瞬凍りついたように止まる。
 確かにヴェロッサと連絡が取れない以上承認を得るのは難しい。

「だったら根性で補うんです!」

 アルトのとんでもない発言にシャーリーが突っ込む。

「アルト、そんな非科学的な発言でスバル達を惑わせちゃダメでしょ!」
「は~い」
「でも根性がダメなら勇気ね」
「「へ?」」

 シャーリーの言葉にアルトとルキノは一瞬きょとんとした。

「根性がダメなら勇気で補うのよ!」
「あのシャーリー…さん……」
「よく言うじゃない。最後に勝つのは勇気ある者だってね」
「その通りだね」

 突然通信に割り込むものが現れた。その割り込んだ人間はヴェロッサだった。

「ヴェロッサさん、今どこに!?」
「今そっちに向かっているのさ。まあ、そんな事より合神だね」

 ヴェロッサはグランフォートレスの艦橋の上につまり外に出ており、自身の持っていたケースを空け、杖を取り出す。

「さあ、目覚めよ超重神! 今こそ、邪悪を砕く牙となれ!」

 ヴェロッサは杖を勢いよく振り回し、左手をVサインしながら自分の額に近づけ、杖を持つ右手を前に出し杖を前に突き出す。

「グランナイツの諸君、合神せよ!」
『了解!』
「よっしゃーーーーーーーーー! ファイナル! っじゃなくて………。エルゴ、フォーーーーーーーーーーーム!!」

 スバルは思わず掛け声を間違えかけるがすぐにエルゴフォームと呼びなおし、グランカイザーからGフィールドが広がりグランディーヴァが集まっていく。

「超重合神!」

 スバルは目の前のパネルを押す。そしてグランディーヴァはグランカイザーと合神し、数ヶ月ぶりにゴッドグラヴィオンが姿を現した。

「ゴッドグラヴィオン……、なのは……」

 その様子を訓練場のモニターで見ていたヴィータは人知れずそうつぶやいた。
 グラヴィオンは地面についたと同時に両足からアンカー出す。

「ティア、フェイトさん。ダブルグラヴィトンプレッシャーパンチいきます!」
「「OK!!」」

 二人の了解と共にグラヴィオンの両腕が高速に回り始め、スバルは敵ゼラバイアにターゲットを絞る。

「ターゲットロックオン、ダブルプレッシャー…」
「「パーーーーーーーーンチ!!」」

 ティアナとフェイトが掛け声をあわせ、二つの手がゼラバイアに向かって飛んで行き、ゼラバイアはそれを防ごうと身を固めるも、
 二つのパンチを完全には防ぎきれず装甲にひびが入る。

「グラヴィトン、アーーーーーーーク!!」

 スバルは間髪いれずにグラヴィトンアークを発射させ、ゼラバイアはボロボロになる。

「今だ!」

 ヴェロッサはグランフォートレスの艦橋の中にある超重剣を呼び出す装置を展開させ、自身の持つ杖のクリスタルをとり、装置のくぼみにはめ込む。
 グラヴィオンは戻ってきた両腕で空から降りてきた超重剣の柄を握り締め、そしてゼラバイアに向かって振り下ろす。

「超重、ざーーーーーーーーん!!」

 ゼラバイアは超重剣により体を斜めに真っ二つに割れた。

「エルゴ、エーーーーーーーンド!!」

 スバルの最後の言葉と同時にゼラバイアは爆散する。
 すべてが終わり夜明けが来るとスバルはつぶやく。

「また戦いが始まったんですね」
「うん」

 スバルのつぶやきになのはが答えた。


 ミッドチルダとは違う別の異世界ではとある女性が一人でチェスをしながらつぶやいてた。

「美しいわね。あなたもそう思わない? はやて……」

 はやてと呼ばれた女性はチェスをしている女性の元に近づき、答える。

「私もそう思うよ。カリム……」
「今こそあの世界にデュエルの時が……、ふふふ」

 それからカリムとはやては不気味な笑いをしばらく続けているのだった。


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最終更新:2008年08月04日 12:10