数ヶ月ぶりのゼラバイア襲撃から4日後、スバルがかつて所属し、妹のノーヴェや友人のチンク、セイン、ウェンディが所属している陸上警備隊第386部隊の隊舎にノーヴェ達当ての手紙が届いていた。
「これは……」
「手紙見たいっスね」
「とりあえずあけてみようよ」
「そんじゃ、あけるぜ」
ノーヴェが4人を代表して手紙を開けるそこには二つの紙が入っていて、その事を知らなかったために二つの紙は床に落ちる。
「うん? 二つあるぞ」
「どれどれ」
チンクが落ちた二つの紙を拾い上げて見てみる。
「ふむふむ…」
「チンク姉、何が書いてあるんだ?」
「一つは私達に書いた手紙ともう一つは何かよくわからん」
「だったらそのあたし達当ての手紙を読んでみようーー」
セインが元気よくそう答えて、4人は固まってスバルが書いた手紙を見る。
『ノーヴェ、チンクさん、セイン、ウェンディへ
元気ですか? あたしは元気です。でもまたゼラバイアが現れてからは、訓練が前以上にハードになってヘトヘトです。
でもそんなヘトヘトでもあたしは頑張っています。それはなのはさんやティア達があたしを支えているからです。
それにそう簡単に倒れたらノーヴェ達にも笑われるからね。だから気にしないで下さい。それじゃあ……。 スバル・ナカジマより。
P.S. もう一つの手紙はあたしがいるところを簡単にした地図です。よかったら来てね』
4人はスバルの書いた手紙を読み終えるとそれぞれ自分の思ったことを口にする。
「スバルの奴……」
「元気にやっているようだな」
「でもこれ地図だったんだ」
セインがもう一つの紙に書かれていた地図を手にして言う。
「ちょっとわかりにくいっスね……」
第10話 懐かしき再会
スバルの手紙をもらってから3日後、ノーヴェ達は上司に無理を言って何とか休暇をもらい、スバルの書いた地図どおりの道をたどっていた。
もっともスバルの絵があまりに下手だったので、絵のうまいウェンディが可能な限り書き直したものを参考にしているのだ。
そして4人とも休暇であり、遊びに行く感覚で私服を着て行っていた。
ノーヴェは少々分厚い紺色のジャケット(実はスバルのとほとんどおそろい)で長ズボン。チンクは見た目に合わせたのか、10歳くらいの女の子が着そうなフリフリでピンクと白交じりの服とコートでミニスカート。
セインはいたってシンプルな服で少し長めのスカート。ウェンディは少し寒い時期なのにも関わらず胸元が開いた服で胸を少しだけ見せ、上着を着てセインと同じようなスカートを履いていた。
「しかし、本当にここでいいのかよ?」
ノーヴェが愚痴をこぼす。歩いても歩いても森が続いているだけなのから無理はない。
「でもスバルのあの地図を解釈するとこの道であってる筈なんっスけどね……」
「まだ道がある。もう少し歩いてから考えるぞ」
チンクが3人の先頭に立って三人を引率する。
4人は気付いていない。自分達の周りに監視用の透明の犬の群れがいて、カメラを隠し持っている事に……。
犬の群れにつけられているカメラは、教会の監視用モニターと繋がっており、監視の為に何人かのシスターがノーヴェ達の姿を見ていた。
「うーん」
「どうした?」
きちんと仕事をしているか見に来たシグナムとお茶を入れてきたアイナが監視部屋を訪れてきて、考えているシスター達に尋ねた。
「ああ、シグナムさんにアイナさん」
「実はですね、今教会の裏の方から侵入者の女の子が4人ほどこちらに来てるんですよ」
「女の子が4人?」
「ええ、この子達です」
シスターの一人がノーヴェ達の映るモニターをズームアップさせる。シグナムとアイナはそれが誰なのかすぐにわかった。
「どうします? 身元照会しますか?」
「する必要は無い」
「え?」
シグナムとアイナは二人して笑顔で答える。
「「あの子達は、知ってる子達だ(ですから)」」
ノーヴェ達が来たことはシグナムとアイナの通信ですぐにヴェロッサとクロノに伝えられた。
「ヴェロッサ、客が来たぞ」
「客だと? ロッサ、今日は客人と会う約束はなかったはずだが……」
「まあ、客人と言ってもヴェロッサさんの客人と言うには違いますけど、客人が来ました」
「…わかった。出迎えようか」
ヴェロッサは飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置き、出迎えの準備をしに部屋を出た。
一方ノーヴェ達は目的地が見えないことに苛立ちを隠しきれないでいた。
「くそ! 全然見えないぞ! ウェンディ! 本当にあってんのか?」
「文句はスバルに言って欲しいっスよ。あたしも少し疲れてきたっス」
「なら、こういう時はファイトーーーーーー!」
「いっぱーーーーーーーーつ!」
「まだ余裕あるじゃねえか!」
セインとウェンディのボケにノーヴェがツッコム。
「お前達、そうカリカリ…、うん?」
チンクが何かを見つけ、足を止める。ノーヴェ達もすぐに足を止めた。
「チンク姉、どうした?」
「いや、前に人がいるのでな…」
チンクがその方向に指を刺す。チンクの指の先には馬に乗っているシグナムとアイナ、そしてバイクに乗っているヴェロッサの姿があった。
「やあ、始めましてだね」
ノーヴェ達はヴェロッサ達のバイクや馬に乗って休みながら教会の方へと進む。
「なあ、あんたがヴェロッサって奴なのか?」
「ああ、そうだけど……」
「スバルの奴は…」
「てことは君がスバルの妹のノーヴェだね。スバルは元気にしてるよ」
「そうか……」
ノーヴェはその事を聞いて少し安心した顔をする。
聖王教会のトレーニングルームではスバル達グランナイツがトレーニングをしており、今ちょうどトレーニングを終え、休憩の為に広間に行こうとしていた。
「最近トレーニングがきつくなったような気がしない?」
「ゼラバイアがまた現れたからね。今まではまだ優しかったくらいだと思うよ」
「まだまだきつくなるみたいだから覚悟しておいた方がいいわよ」
「そんな~~~~」
なのはとドゥーエの言葉にスバルは疲れきったようにへこたれながら歩く。
スバル達が広間に入るとスバル達の目の前にはノーヴェ達がソファで座っていた。
「スバル、久しぶりだな」
「チンクさん! それにノーヴェにセインにウェンディも!」
「スバル、久しぶりっス!」
「久しぶり!」
ノーヴェ達はすぐにスバルや顔を知っている他のメンバーと話し合う。
「いやー、ティアもこっちにいたとは驚きっスよ」
「こっちだってあんたが来るなんて思わなかったわ」
ティアナはノーヴェ達とは顔見知りであった。特にウェンディとは訓練校からのライバルであり、いつもウェンディはティアナにライバル意識を燃やしつつも仲のいい友達でいたのだ。
「リインは元気だった?」
「はい元気ですぅ!」
「ユーノも?」
「まあ僕も元気かな……」
セインはリインとユーノと仲良く話している。
そして意外なもう一組。
「チンク、久しぶりね」
「ドゥーエ、随分久しぶりだな」
ウェンディやセインが懐かしい友人と明るく話す中、少し離れた場所でチンクとドゥーエが紅茶を飲みながら話している。
「ドクターの下を離れているのはわかっていたがまさかここに居たとはな…」
「あら、悪かったかしら?」
ドゥーエは少し憎たらしそうな笑いをしながらチンクに言う。
「いや、ただスバルから聞いていなかっただけだ。それにしてもお前も変わらないようだな」
「あなたたちもね……」
そんな再会をしている中で部屋の片隅でスバルはクロノに説教をくらっていた。
「お前はここを観光施設にでもするつもりか? ここは教会だから拝みに来る人はいるが……」
「そういうつもりじゃないです。それに命がけでグラヴィオンに乗って戦っているのはあたし達が戦ってるのに地上本部の手柄ってのも………」
「僕達の使命はゼラバイアからこの世界の生命を守ること。僕達がどう思われようが関係ない。それだけはわかってくれ」
仮面の下のクロノの目には何かを秘めた目をしているのを誰も気付かなかった。
クロノとスバルのやり取りを見てノーヴェはぼやく。
「あいつ、あたし達が来たから怒られてるのか? それだったら悪い事したな……」
「うんうん、全然悪くないよ」
ノーヴェのぼやきに気付いたなのはとフェイトがノーヴェに近づいて、なのはがノーヴェに言った。
「それに普段は私達あてのにお客さんがいないからむしろ大歓迎だよ」
「それならいいけど……」
スバルがクロノの説教から解放されてすぐに聖王教会に仕えて長く、ヴェロッサと親交の深いシャッハ・ヌエラとヴィヴィオとキャロとルーテシアが広間にやって来た。
「皆さん、これから皆さんを機動六課の本部のこの聖王教会の見学をしますね。私はこの聖王教会のシスター、シャッハ・ヌエラと言います。よろしくお願いします」
ノーヴェ達がシャッハ達に連れられて、色々なところを見て回る。
最初は表向きで普通の教会の聖杯堂など退屈になりそうなところばかりだったが、表向きの案内を終えると次は真の行動をしている部分の案内に入った。
「そしてここが私達機動六課の秘密兵器、いえ、ミッドチルダの楯、グランディーヴァやグランカイザーのある格納庫です」
「うわ~すごく広いっスね~~」
格納庫のあまりの広さに一同は驚きを隠せないでいた。
「この戦闘機って……、この前スバルが乗ってた奴っスよね?」
ウェンディがGアタッカーを指差してシャッハに尋ねた。
「はい。こちらはGアタッカーとGストライカーと言って、合神後はグラヴィオンの足になるんです」
「足か……。スバルの奴ちょっと不憫だな」
「そうだね。足って……」
スバルが足担当だと聞いて、ノーヴェとセインは少しスバルを哀れんだ。
「いや、確かにスバルはGアタッカーに乗る時はありますけど、スバルは基本的にグランカイザーに乗ってるんですよ」
『グランカイザー?』
「はい。後でお見せしますが、グランカイザーには今まではなのはさんが乗ってたのですが、スバルが来てからはたまになのはさんが乗るくらいで今は主になのはさんがGアタッカーに乗ってるのですよ」
「ふーん、そうなんだ」
「ちなみにGストライカーはドゥーエさんが乗ってるのですよ」
「ドゥーエか……」
チンクはその言葉を聞いて、少し息を洩らした。
「チンク姉?」
「いや、なんでもない」
チンクは何も無かったかのように冷静を振舞う。
「で、この下にあるドリルマシーンはなんっスか?」
ウェンディが下の方にあるGドリラーの事を尋ねようとすると、近くにいたマリーが答えた。
「あれはGドリラーと言ってフェイトちゃんとティアナが乗ってるんだよ」
「ああ、ティアはあれに乗ってるんだ」
「しかしなかなかいいッスね。ドリルが螺旋じゃないところがまたすごいっス! こだわりを感じるっス!」
「お、なかなかいいところに目をつけるね」
マリーは嬉しさを感じた。
「そしてこのドリルは天をも貫くドリルで、世界を守るんっスね!」
「世界を守るところは否定しないけど、天を貫いたら……」
Gドリラー、グランカイザーの説明を終えた後はグラヴィオンの戦いの記録と技集を映像で見ることになり、セインとウェンディは大興奮だった。
「おお、これは『オープンゲット』!」
「これは『エルゴブレイク』って言う分離なんだけどね…」
「『エルゴブレイク』って言うよりも『オープンゲット』の方がいいっスよ!」
「よし、後でスバル達に言って改名してもらおう!」
(まあ、スバル達も少しは勝手に改名してたりするけど…、まいっか)
マリーは二人のロボットの熱に関心すらしたそうだ。
「次は司令室を案内します」
「司令室って何をするところなんだ?」
「そうですね。グランナイツの人達に指示を……」
シャッハ達が司令室に入ると、そこには何故か袴姿のヴェロッサが立っていた。
「ロッサ、何を?」
「皆、ピクニックに行くよ」
『ピクニック~~~~?』
その言葉にスバル達やノーヴェ一行は声を合わせる。
「そうだよ。客人を楽しませるにはもってこいだと思ってね。それに今日は天気がいい。
と言うことで、グランナイツの諸君、ピクニックに発進だ!」
皆私服に着替えて、近くの山までピクニックに出かけたのだが何故かグランカイザーやグランディーヴァまで持ち出してのピクニックだった。
ドゥーエ以外のメンバーは以前に買出しをした時とそんなに変わらない服装であった。
ドゥーエは今回はシスター服ではなく、大人の女性をかもし出すような少々セクシーな服でズボンは長いのを着ていった。
「あの、何で?」
「ああ、これ一応出撃だからね」
ティアナの疑問にヴェロッサは笑いながら答えた。
「ははは……」
ティアナは思わず苦笑いをしたそうだ。
そしてピクニックシートが広げられ、急いで重箱に入れられていた料理が次々に並べられた。
「皆、自分の席に飲み物はあるかい?」
『ありまーーーーーーーーーす(っス)』
「今日は無礼講だよ。皆、それじゃあ、乾杯」
『かんぱーーーーーーーーーーい(っス)!』
皆でわいわい騒ぐ。その途中、マリーが面白い映像を見せると言って、皆の前である映像を出した。
それはスバルが始めて聖王教会に侵入してきた時の大人の女性の変装姿であった。
「え、これスバルっスか?」
「そうだよ~~~~~」
「スバル、あんまり色気ないっスね」
「まだあたしの方が色気あるでしょ」
「………」
セインが魅力的なポーズを取り出したが、チンクとノーヴェは何も喋らず黙っていた。
「そんな事ないよーーーー。この後すぐに男の人に声をかけられたんだから……」
「早送り~~~」
マリーが映像を早送りすると、次は変装していたスバルにヴァイスが声をかけてスバルが思いっきりグーで断った場面だった。
「ほらね」
「あ、でもこの人って……」
「ヴァイスって人っスよね」
「え? 誰?」
スバルが知らないようなのでチンクが説明をした。
「ヴァイス・グランセニック。階級は陸曹。地上部隊でレジアス中将の直轄の部下。腕はAAランク魔導師にも劣らないが少々女性に声をかける癖がある曲者だそうだ」
「へえ~~~~~」
「お前がいなくなる前から有名だぞ。知らなかったのか」
「全然」
「はあ、本当に駄目な姉だな…」
スバルの無知にノーヴェがため息を洩らす。
「ク~~~ロ~~~~ノ」
「うん?」
クロノは呼び声が聞こえたのその方を見ると、目の前にはビール缶を持って少し酔っ払い気味のドゥーエとシャマルが立っていた。
「あんたも飲みなさい。あんたも飲めるんでしょ」
「いや、僕は…」
「あら、こんないい女二人が誘ってるのよ。いやだっていうの?」
「………」
(うん? 何か知ってるような匂い……。まあいいわ)
ドゥーエはクロノにここまで近づくのは初めてだったが、自分が知っているかすかな匂いがクロノからした気がするがドゥーエはあまり気にせずシャマルと共にクロノに酒を勧めた。
皆でまたしても騒ぐ。スバルの近くにノーヴェが真剣な顔をして、スバルに話しかける。
「スバル」
「うん?」
「ギン姉には会えた?」
スバルはギンガの事を聞かれてさっきまでとは違い、悲しそうな顔をした。
「うんうん、まだ」
「だよな」
「どこ行ったんだろ? ギン姉」
「そうなのよ~~~~~。どこ行ったのよ!? ギンガ!」
スバルとノーヴェが真剣に話をしている中にさっきよりも酔っ払い度が増したドゥーエが入ってきた。
「え? ドゥーエさん、ギン姉、知ってるの?」
「知ってるというか、同僚だ」
スバルの質問にチンクが答えた。
「チンクさん」
「チンク姉」
「ギンガはドゥーエと同じ所属だ。その時ドゥーエとギンガは知り合った。私もその時ドゥーエと付き添って、ギンガと知り合ったんだ」
「そうだったんだ」
「ところでチンクさんとドゥーエさんってどういう関係ですか?」
「姉妹だが? 何か?」
「え?」
その言葉にスバルが唖然とする。スバルは次に冷静にドゥーエとチンクを見比べる。
(確かに姉妹みたいだといえばみたいだけど……)
『チンクさん』
『うん、念話か』
スバルは皆に聞かれるとまずいと判断し、念話に切り替えてチンクに尋ねた。
『つまりドゥーエさんはチンクさんやセインにウェンディ、それにギン姉やあたしにノーヴェと同じ……』
『ああ、ドクターが作った「戦闘機人」だ』
その事を聞いてスバルの表情は重く沈む。
『戦闘機人』とはスカリエッティが考案したとされる、人間と機械を融合させた兵器。簡単に言えばサイボーグである。
その骨格は機械のもので、通常の人間の何倍も体は丈夫であり、戦闘能力も一人ひとり違うが高い。
ノーヴェが前にスバル達を庇った際に腕から機械の部分があったのはそのためだ。
ドゥーエ、チンク、セイン、ウェンディ、(ウーノ)はスカリエッティ自身が作り出した戦闘機人で、ギンガ、スバル、ノーヴェは別の人間が作り出した戦闘機人である。
戦闘機人は血の繋がりなどは本当はないのだが、皆姉妹のように接している。(ギンガ、スバル、ノーヴェは母のクイント・ナカジマの遺伝子から作り出されているため実姉妹で間違いではない)
ノーヴェは一度事故でスカリエッティにより改造されていて、その際にスバル達はチンク達と会い、仲良くなったのだ。
スバルは自分達が「戦闘機人」であることは最初は気にしていたが、今ではさほど気にしていない。それでもまさか「戦闘機人」がまだいたのかと思うと何となく。
チンクはそれを見てフォローするように付け加える。
『だが、「戦闘機人」でも関係ない。ドゥーエもこうしてお前達の仲間になってるじゃないか。これからもやっていける。私が保証する』
『チンクさん……。そうですね。もう少ししたらなのはさん達にも言います。あたし達のこと…。ティアもちゃんとわかってくれたし』
ティアナはスバル達が戦闘機人である事を知っている。それは訓練校時代の時にスバルが突然カミングアウトをしたのだ。
最初聞いた時は戸惑いを隠せなかったが、すぐにいつもどおりに戻った。その時ティアナはこう言ったのだ。
(あんた達が戦闘機人でも別に何も問題ないわ。それにあんた達はあんた達。それ以外の何者でもないでしょ。だから戦闘機人だなんて関係ないわよ)
その言葉にスバルは心を打たれ、泣いた。ティアナが真剣に受け入れたのだ。きっとなのは達も受け入れてくれる。
(だってなのはさん達やさしいもん)
『ただ……』
『?』
『ドゥーエの事だ。恐らく……』
チンクはドゥーエの目的(あくまでチンクの予想)をスバルにだけ念話でこっそり教えた。
『だが、仮にそのような事があってもドゥーエを見る目を変えないでくれ。ドゥーエは仲間を見捨てるようなものではない』
『わかりました。もしそうなってもあたし、ドゥーエさんを信じてみます』
『頼む』
チンクは心の中でスバルに頭を下げるようにスバルに感謝した。
「捜しても、捜しても、見つからないのよ~~~~~!」
しかし、今目の前にいるドゥーエはビール缶を勢いよく飲む酔っ払いにしか見えなかった。
「…まあ、ドゥーエの事、頼むぞ」
「はい……」
ドゥーエはその酔っ払った勢いで、リインとヴィヴィオとユーノ(人間)のいるところにフラフラ歩いていき、何ととんでもない事をした。
「ユーノ~~~~」
「な、何ですか?」
「あなたの力でギンガを探し出して~」
そう言うとドゥーエは持っていたビールをユーノめがげてぶっ掛けた。
「やめて、僕はまだ未成年……」
「フェレットになれば問題なし」
ドゥーエはビールをユーノに何度もぶっ掛けた結果、ユーノは酔っ払ってしまいフェレット形態になってなのはの頭の上に乗ってしまった。
「あらあら」
「何か久しぶりかな。ユーノ君が私の頭の上に乗ったりするの…」
なのははユーノとまだ会ったばかりの頃を思い出したそうだ。
「皆、楽しんでいるようだね。ピクニックに来て正解だったかな」
ヴェロッサが皆の様子を見て和んでいると、その意見と反対のものが二人。
「皆、楽しんでるのね」
「そう、楽しんでるだな」
それはドゥーエに酒を飲まされたシャマルとクロノだった。
「君たちはそうでもないようで………」
「いえいえ、楽しんでますよ!」
シャマルが酔っ払ってヴェロッサに顔を近づいて意見する。
「そうか…。ならいいです…」
ヴェロッサもそれ以上は言えなかった。
その一方で、酔っ払いドゥーエの頼みでGドリラーの中にあるおつまみを取りにノーヴェとウェンディが行ったのだが、中に入ったウェンディがとんでもない事をした。
「あ」
「お前…」
「何か押しちゃったみたいっス」
するとGドリラーが動き始めて前へ爆走し始めたのだ。
「「うわああああああああああ」」
「あ、ありゃーーーーー」
「追うぞ!」
シグナムが先陣を切って飛んで行き、なのは達もグランディーヴァに乗る。
「あの何でこっちに乗ってるんですか!?」
スバルは自分の近くにあったGアタッカーに乗ったのだが、フェイトとティアナも乗っていたのだ。
「仕方ないでしょ、急いでたんだから!」
「それにあっちはドゥーエがいるし…」
フェイトが言うドゥーエは今は酔っ払ってGストライカーの運転がまともではなく、少々ふらついていた。
「確かに…」
「リイン、Gドリラーは?」
「ダメです。見つかりません」
「こっちにいたよ」
なのはのグランカイザーがGドリラーを捕捉した。
「外部に異常なし。生体反応も大丈夫。二人とも無事だよ」
「なのはさん、何とか止めれませんか?」
「ダメ、グランカイザーのコマンドを受け付けない。このままフォローするわ」
「了解。皆なのはの所に集合~~~」
何故か酔っ払いのドゥーエが先頭になってグランカイザーとGドリラーのところに向かう。
「そう言えば、ユーノさん…。なのはさんの頭の上にいますけど…。気に入ったのですか?」
リインが密かにモニターから見てそう思った。
「マリーさん、何で止められないの?」
モニターで見ているアイナが近くにいるマリーに尋ねる。
「多分、パーソナルロックがかかってんです。これじゃあ、全てのコマンドは受け付けません。止めるにはマスターキーで再起動して合神しかありません」
「マスターキーは?」
「ピクニックに持って行きませんよ。普通…」
「ですよね……」
「再起動すればいいんだね?」
突然の声にマリーやアイナが驚く。
実はヴェロッサは既に自身のバイクでGドリラーのところに向かっていたのだ。
「あ、ヴェロッサさん。そうです! ですが、直接Gドリラーにアクセスする必要があります」
「僕が乗り込んで再起動させる。各グランディーヴァ、合神準備。Gドリラー再起動と同時に合神」
『了解!』
「さあいくよ、雷鋼馬(らいこうば)」
自身のバイクの名前を呼んで谷を飛び、大地を駆ける!
そしてついにGドリラーのコックピットにたどり着く。
「君達、怪我はないかい?」
「大丈夫っス!」
「そうか」
ヴェロッサはすぐにコントロールパネルの前に行き、クリスタルをコントロールパネルに押し付け再起動させた。
「グランナイツの諸君、合神せよ」
合神が承認される。
「「エルゴ、フォーーーーーーーーーム!」」
なのはと頭の上にいるユーノが同時に叫び、グランカイザーを包み込むフィールドが現れる。
「「超重合神!!」」
なのはとユーノが叫び、なのはが目の前のパネルを拳で押す。
そして重力フィールドにグランディーヴァが飛んで行き、グランカイザーの手足となり合神し、ゴッドグラヴィオンと化した。
「ふう」
「とりあえず、皆大丈夫?」
なのはがGドリラーの方にいるノーヴェとウェンディの所に通信を入れる。
「何とかな…」
「大丈夫っス」
「皆、よかった~」
セインが通信を聞いてほっとする。
「もう、ドゥーエ。今度からグランディーヴァにおつまみを入れないで下さい」
「……、まあね」
フェイトに叱られ、今回の事でさすがのドゥーエも反省した。
「あ、そう言えばユーノ君。私の頭の上に乗ってたんだった」
「ユーノさん、気に入ったのですか?」
フェレットのユーノが腕を組んでなのはの頭の上にいるのをリインは少し羨ましそうに思いながら言った。
『はははははははは』
皆笑いながら今回のピクニックを終えた。約二名を除いて………。
「もう、何でこうなるのーーーーーー!?」
今回の騒動により、マリーはグランディーヴァのプロテクション修正を一晩中やるはめになったそうだ。
そしてもう一人はと言うと………。
「ああ、飲みすぎたわ」
クロノの部屋ではクロノが仮面を外して、一人ベッドで横たわっていた。
しかしそれにしては妙である。何故か言葉が女口調なのだ。
「もう私は本当はまだ20歳じゃないのに無理して飲みすぎた~~~。もう3年までは絶対お酒は飲まないわ」
そう心に決めたクロノ(?)であった。
最終更新:2008年08月08日 20:03