「そろそろかな」

 暗い中ヴェロッサが機動六課の面々にそう告げた途端に皆の前に光が広がっていく。
 それはバスが暗いトンネルを抜けて外に出た証である。
 バスから外を見ると、外は一面の雪景色であり、あまりの美しさにスバル達は驚きで声も出ない。

「それでは間もなく目的地に到着するよ。温泉にね…」




 第11話 激闘! グラヴィトン温泉!!



 何故ヴェロッサ達が温泉に来ているのかと言うとそれには深い訳がある。
 それは3日ほど前に、ヴェロッサ達が今行こうとしている温泉の近くにある火山にゼラバイアがやって来たのだが、ゼラバイアは破壊活動を一切行わず火山の中に入ったきり出てこない。
 それどころか何もしてこなかったのだ。それでもゼラバイアが何もしないわけではないとクロノ達は監視を続けていたが、何もしてこない。
 調べていくと、ゼラバイアがいる火山の近くには温泉があり、ゼラバイアが活動を再開した時に備えて兼慰安旅行で機動六課の主要メンバーは温泉旅行に来たのだ。クロノを除いて………。
 クロノは自分はゼラバイアの監視の為に行かないと言い、一人聖王教会に残ったのだが、内心は行きたがっていた。しかし監視は大事だと言うことで残った。

「はあ、皆温泉楽しんでるんだろうな~~~」

 クロノが一人、主要スタッフのいない聖王教会でぼやく。


 温泉宿に着いた一向はすぐに温泉に入る準備をして、早速露天風呂温泉に入りに行った。

「いやっほーーーーーーーーー!」

 スバルが誰もいない温泉に向かって勢いよく飛び込む。
 その勢いでとんだしぶきがティアナにもろに命中した。

「スバル、あんたね! マナーを考えなさい!」
「ええ~、いいじゃんティア。今はあたし達しかいないんだから……」
「うんもーーーーーーーーーー!!」

 ティアナは怒りながら温泉に入り、スバルのほっぺの両側をつねる。

「痛い、痛い」
「何だが楽しそうだね」
「うん、そうだね」

 二人のいつものやり取りと温泉を見てなのはとフェイトは和む。
 いつものやり取りをしている二人だが、突然何かが自分達の胸を触れた感触に襲われる。

「「きゃ!」」
「どうしたの!?」

 なのはとフェイトが急いでスバル達の駆け寄ろうとするが、スバルは止める。

「大丈夫です! 犯人は何となくわかりますから……」
「「「?」」」

 なのはとフェイト、隣にいるティアナもスバルの発言に疑問を持つ。
 しかしその疑問もすぐに晴れる。スバルは神経を研ぎ澄ますようにして湯船に座り込む。
 そして、スバルの胸がまた何かに揉まれようとした時、スバルは自分の胸を揉んだものを自分の手で掴み一気に立ち上がりその正体を見る。

「やっぱり、ウェンディ…」
「ばれちゃったっス」

 スバルとティアナの胸を揉んだ犯人はウェンディであった。しかし何故ウェンディが下にいたのかと言うと犯人はもう一人いるのだ。

「セイン…」
「はいはーい」

 ウェンディの下、つまり湯船の下からはセインが突然現れたのだ。

「まったくお前達は先に行ったと思ったら何をしてるんだ」
「あ、チンクさん」

 なのはとフェイトの後ろにチンクの他に、ヴィヴィオ、シグナム、シャマル、ドゥーエ、マリー、ノーヴェがやって来ていた。

「あれ? そう言えば、ノーヴェもチンクさんもセインもウェンディも何でいるの?」
「それはな……」
「あたし達、福引に当たったんっスよ!」

 ウェンディが元気に答えた。まあ詳細はセインが教えてくれた。
 数日前、たまたま部隊の食料などの買出しにセインとウェンディが街に出かけ、そこで福引券をもらい、福引の特等の温泉旅行に当たったのだ。
 そして上司と掛け合って特別休暇をもらい、ノーヴェとチンクも誘いこの温泉旅館にやって来て、スバル達が宿にやって来るのを見て、からかうつもりでスバル達の虚位をついたのだ。

「まさか、ここでまた会える何て思わなかったよ」
「さあてそれじゃあ、他の人のも揉もうっスかね」
『え?』


 一方男湯の露天風呂温泉ではユーノともう一人キャロやルーテシアと同い年くらいの少年が入っていた。少年の名はエリオ・モンディアル。
 この少年は最近まで武者修行と称して外に旅出ていて、慰安旅行の2日ほど前に帰ってきて、エリオの大事な友であるキャロとルーテシアの押しに負け、
 半ば慰安旅行に強制参加していたのだ。

「いい湯だね、エリオ」
「はい、そうですね」

 ユーノとエリオが男二人であったかい湯船に浸かりながら外を見る。

「ここから見る眺めも綺麗だよね」
「うん……」

 エリオはボーっとしながら答えたが、今の声がユーノのものではなくキャロのものだと気付いた。
 エリオはまさかと思い振り向くとそこには何とキャロとルーテシアがタオルを巻かず、裸で男湯に入っていたのだ!

「キ、キャ、キャ、キャロ! ル、ル、ル、ルーもなんでここに!?」

 まさか二人が男にいるとは思わずエリオは気が動転する。

「さっき従業員に聞いたの」
「ここ12歳以下の子供はどっちでも入っていいって言ってたの」
「だから、キャロと話してエリオと一緒に入りたいと思って来た」
「だ、だからって……」

 エリオは急いでタオルを腰に巻いて、湯船から上がり、竹の壁に背中を貼り付ける。

「エリオ君」
「エリオ」
「「背中洗ってあげる(ね)」」

 キャロとルーテシアがエリオに迫る。キャロとルーテシアの二人はエリオに好意を持っており、この行動に悪意はまったく無い。
 エリオはその事を知っているが故に余計に恐ろしく感じている。

「ぼ、僕は、べ、別に………」

 エリオが何とか断ろうとした時、突然エリオの後ろにある竹の壁が突然エリオを中心に両端が折れたのだ。

「え、え、うわあああああああああ!!」

 エリオは仰向けになったまま竹のソリに乗ってがけを滑り降りる。

「エリオ君……」
「シャイ」
「違うと思うよ」

 ユーノはルーテシアの言葉に苦笑いしながらつっこんだ。


 戻って女湯ではウェンディにほとんどの人が胸を揉まれた後、皆でのんびりと入っていた。

「はあ~~~~~~」
「さあて、そろそろ返しかな」

 スバルが手をいやらしく動かしてウェンディの前に出る。

「お、来たっスね」
「うりゃ!」

 スバルは掛け声と同時にウェンディの胸を掴み、胸を揉む!

「うお! やったっスね~~~~~~~。うりゃああああ!!」

 ウェンディも負けじとスバルの胸を掴んで揉みかえす。

「あらら、スバルとウェンディったら……」
「まあ、平和でいい事じゃない」

 傍らでは前回のピクニックでの件を忘れたかのように、お酒を持ち込んで一緒に飲んでいるドゥーエとシャマルがスバルとウェンディの楽しそうなやり取りを微笑みながら見る。

「そうね、今はこのひと時を楽しみましょうか」
「…………ああああああああ!!」

 ドゥーエとシャマルがお酒を飲みながらスバル達の方を見ていると突然自分達の後ろの方から声が聞こえてくる。
 二人は思わず声のするほうを振り向く。そして振り向いた瞬間その声の主が竹の壁を突き破り、姿を現した。
 そうその声の主は、上の男湯から滑り降りていたエリオのだったのだ。

「……ってぐわっあ!!」

 エリオはなのはやフェイト達のタオルを巻いていない美しい裸体を目の前にしたために思わず、のけぞり鼻から血を出してしまった。
 そして顔がのけぞったままエリオは女湯を通過してまたどこかにと滑って行ってしまった。

「エリオ、ひょっとしてこっちに来たかったのかな?」
「もしかしてあたし達の体目的!?」
「きゃあああ、エッチいっス!」
「「「違うだろ(でしょ)」」」

 スバルとセインとウェンディの冗談にノーヴェとチンクとティアナが突っ込んだ。

「どこまで行くのーーーーーーーーーー!?」

 竹ゾリがなかなか止まってくれず、エリオは嘆いていた。


 エリオが竹ゾリで女湯を通過して、道路を滑ってる頃機動六課の面々(+ウェンディ達)が宿泊している宿の前に一台のバスが止まる。

「さあて着きましたぜ」

 その団体の先陣としてヴァイスが皆を引率するかのように先にバスから降りて皆を案内する。

「やっと着いたか」

 バスの中で寝ていたヴィータが起き上がって、バスから降りる。
 ヴィータに連れられる感じでバスに乗っていた他の三人の男女もバスから降りてくる。
 一人はメガネをかけてマジメそうな青年。一人はまあまあ胸が大きくなかなかかわいらしい少女。
 そしてもう一人は男の子のように見えるがイマイチ判断がつかない中性的な顔立ちでズボンをはいていた。

「ここのようだね、ディード」
「そうね、オットー」

 ディードと呼ばれた少女とオットーと呼ばれた子は無表情な顔で周りを見回す。

「お前達な、ここでもそんな顔じゃダメだぜ。折角のかわいこちゃん顔が台無しだぜ」
「ヴァイス陸曹、それは少し問題あると思いますよ。でももう少し笑ったほうがいいのは僕も思いますよ」
「だったらお前も楽しそうにしろよな、グリフィス」

 メガネの青年グリフィスもいつもの癖で、休暇であろうとも常に仕事のように冷静であまり感情を出さなく、固い青年であった。
 (オットーとディードも似たようなものだが、グリフィスと比べると感情を出す方である)
 それとは対照的なヴァイスにとってグリフィスは苦手なタイプなのだが、今は同じ部隊のメンバーなので交流を深めようと考えている。
 そしてあまり人と接しようとしないヴィータとも……。

「とりあえず、宿でチェックインを……」
「……うわあああああああああ!!」

 ヴィータがさっさと行こうとすると突然自分の上空から声が聞こえてきたので空を見上げる。
 ヴィータの上には竹ゾリで崖を滑ってきたエリオがいた。そう声の主はエリオである。
 エリオは飛んだ勢いで竹ゾリから落ち、そしてヴィータ目掛けて落ちた。

「いてて、何だ!? 手前は!?」

 ヴィータが怒鳴りながら上にいるエリオをどかそうとするが、ヴィータはあることに気付いた。
 そして上にいるエリオもどこうとする。

「いてて、ごめんな……、あ!!」

 何とエリオの両手はもろにヴィータの平らな胸を触っていたのだ。

「ご、ご、ご、ごめんな……」
「さっさと離れろーーーーーーーー!!」

 ヴィータは自身のデバイス「グラーフアイゼン」を起動させ、そのハンマーでエリオの頭をおもいっきりどついた。


「大丈夫?」

 エリオはヴィータにどつかれから数分後、温泉から戻ってきたキャロとルーテシアの優しい看病を受けていた。

「何とかね…、いてて」

 エリオは大丈夫だというが頭の上に出来たタンコブはそう簡単に引くものではない。

「でも酷いね。胸を触っただけでそんなに怒るなんて…」
「私たちはそんな事されても気にしないからね」
(少しは気にして……)

 ルーテシアの言葉に心の中で密かにツッコミを入れるエリオだった。


 夜になり、機動六課のメンバーとウェンディ達は温泉と言えばと言う定番で浴衣姿で卓球を楽しんでいた。
 その卓球台はほぼ機動六課の貸し切り状態であったが、その卓球場に一人の男がやって来た。ヴァイスである。

「おうおう、いいねえー。かわいこちゃん達が卓球なんて…」
「あなたは確か…」
「ヴァイス・グランセニックだ。よろしくな」

 ヴァイスは初めて会う機動六課の面々に自分の名前を教えるが、皆ヴァイスの名前と顔はわかっていたのであまり気に留めない。

「おいおい、そんなつれない態度を取らないでくれよ。それはそうと俺も卓球に混ぜてくれない?」

 ヴァイスの突然の話に皆どうしようかと話し合った結果、ヴァイスも入れてのダブルストーナメントをする事に決まり、優勝チームにはこの旅館の豪華混浴温泉にご招待券のプレゼントとなった。
 チームはなのは&フェイト、スバル&ノーヴェ、エリオ&ルーテシア、ティアナ&セイン、ウェンディ&チンク、ヴィヴィオ&アルト、シャーリー&マリー、シャマル&ルキノ、ドゥーエ&ヴァイスとなった。
 どのチームもすごい接戦と強さを誇ったが、優勝したのはドゥーエ&ヴァイス組みだった。

「やったわね!」
「ああ、俺と姐さんが組めばこんなもんですよ!」
「…、なら僕達と勝負しないかい?」

 ドゥーエとヴァイスが勝ち誇っている中、卓球場に浴衣姿のヴェロッサとリインがやって来た。

「え? 僕達って…リインもですか?」
「そうだよ。なあに勝つのは僕達さ」

 リインは戸惑うが、ヴェロッサはすでに勝利宣言。その様子を見てドゥーエとヴァイスは対抗意識を燃やす。

「へえ、もう勝利宣言とは自信がお有りのようで……」
「へ、だったらさっさとラケットを取りな!」

 ヴァイスはヴェロッサに向けて卓球のラケットを投げ渡すが、ヴェロッサは手でものすごい勢いで払いのける!

「な!?」
「何!?」

 ドゥーエとヴァイスは驚く。

「君達くらい……」

 ヴェロッサは自分の履いていたスリッパを片方脱ぎ始め、手に持ち構える。

「これで充分!」

 そしてそのまま乱入トーナメントとなり、ヴェロッサ&リインペアとドゥーエ&ヴァイスペアのダブルスが始まる。

「サーブはまずこちらからだ! いくぜ!」

 ヴァイスのスピンのかかったサーブがヴェロッサチームのコートに入り、ヴェロッサの目の前に飛んでいく!

「はああああああ!!」

 ヴェロッサはスリッパでそれを打ち返す! しかもその打ち返された球はヴァイスのかけたスピンをさらに上回るスピンと速さで
 ヴァイス達のコートを目にも止まらない速さで着いた後に窓ガラスに向かって飛んで行き、強い球を受けた窓ガラスにひびが入る!

「な、何て奴だ…」
「さあ、ゲームを続けようか……」
(本気だ。絶対本気でやってる)

 戦いの様子を見ている皆そう思った。

「さあ、次はこちらのサーブ。いくよ!」

 ヴェロッサがサーブを打つ! その球は先ほどよりも速さと回転を増しており、ドゥーエとヴァイスは少しも反応できなかった。

「は、速過ぎるぜ」
(戦闘機人の私でも追いつけない!?)


 ヴェロッサの強さにヴァイスは愚か戦闘機人のドゥーエでさえお手玉のように取られていく。
 (スバル、ノーヴェ、チンク、セイン、ウェンディもヴェロッサの球を見切れていない)
 ヴェロッサの猛攻は勢いを留まる事を知らない。そしてついにマッチポイント。

「これで決まりだね!」

 ヴェロッサはものすごく速いサーブを繰り出した。

「これくらいなら!」

 ヴァイスが粘って球が次に飛ぶであろう場所に先回りをして待ち構える。しかしその予想はとんでもない事で崩れる。

「マッガーレ」

 ヴェロッサがなにやら独り言を言うと突然球がストレートではなくカーブし、ヴァイスの顔面目掛けてものすごいスピードで飛んでいく!
 ヴァイスはかろうじて自分の顔面に飛んでくる球をラケットで防ぐものの、ラケットは粉々に砕け、球はわずかに勢いを落としながらもヴァイスの顔面に命中。
 ヴァイスはその衝撃で後ろに吹っ飛んだ。ヴァイスの顔面を当てた球は上空に飛んでいき、残ったドゥーエがそれを逃すまいと高くジャンプする。

「ヴェロッサがダメなら………」

 ドゥーエはせめて一矢報いたいと思い、狙いをコートやヴェロッサではなくリインに絞ったのだ。

「はああああああ!!」

 ドゥーエの強烈なスマッシュがリイン目掛けて飛んでいく!

「リイン!」

 ヴェロッサが急いで救援に行こうとするが、間に合わない。

「きゃっ!!」

 リインは自分が狙われている事を知り、とっさに自分も手に持っていたスリッパでドゥーエのスマッシュを防ぎ、防がれた球は幸運にもドゥーエ側のコートに入り、勝敗が決した。

「勝者! ヴェロッサ、リインペア!」
「ふ、当然だね」

 ヴェロッサが当然とばかりの笑みをこぼすと突然クロノから通信が入った。

「ヴェロッサ、ゼラバイアが活動を再開した!」
『!!!』

 機動六課の面々に緊張が走る!

「今僕がグランフォートレスでそちらに向かっている。グランディーヴァも収容済みだ」
「わかった」

 クロノの通信が切れ、ヴェロッサは皆に指示を出す。

「グランナイツの諸君、出撃だ!」
『了解!』

 スバル達は走って外に向かう。
 その様子を風呂上りのヴィータが目撃する。

「あいつら、あんなに走って…、どうしたんだ?」

 ヴィータが後をつけようとし、卓球場を横切ろうとした時、卓球場で倒れているヴァイスを発見した。

「あいつ……、何してんだ?」

 仕方ないのでヴァイスを起こすヴィータ。

「おい! 起きろ! 起きろーーーーー!」

 ヴィータの怒鳴るような声が何度も倒れているヴァイスを呼びかけ、5度目でようやくヴァイスは目を覚ました。

「あ、ヴィータ隊長」
「何が隊長だ! お前何で倒れてんだ!?」
「……ああ、それは………」

 ヴァイスが先ほどまでの事を説明しようとしたが、グリフィスが慌てた様子でヴィータとヴァイスを見つけ、報告する。

「ヴィータ隊長、ゼラバイアが現れました」
「!?」
「何だって!? …そうかだからあいつら……」

 ヴィータはグリフィスの報告を聞いて、なのは達が走って卓球場を後にした理由がわかった。

「くそ! 先越された!」
「「え?」」

 ヴィータが悔しがってる間に他の機動六課の面々やウェンディ一行も卓球場を後にして、貸し切りの宴会場に行く。
 スバル達は急いでクロノと合流、グランディーヴァに乗り込み、ゴッドグラヴィオンに合神して火山に向かう。

「皆聞こえてる?」

 宴会場に移動したクロノとマリーがスバル達に通信を入れる。

「敵は火山と直結している。そのまま敵を倒せば、火山も同時に爆発して、周囲に危害が及ぶ」
「ゴッドグラヴィオンと言うよりグランカイザーはマグマ何か問題ないけど、他のグランディーヴァには限界があって、限界時間は90秒だからね」
「90秒……」
「それ以上越えるとグラヴィオンよりも先になのはさん達が暑さで死んじゃうから気をつけて…」
「わかりました! だったらすぐに火山から出してやりますよ!」

 スバルが答えてすぐに通信を切る。

「あたし達はここで見ることしかできないのか!?」
「くやしいっスね!」

 ノーヴェとウェンディ、それにセインやチンクだけでなく、シャーリー達オペレーター陣も今回は自分達も手伝いができることが無いと悟り、苛立ちを隠せない。
 そんな時、ヴェロッサは宴会場の舞台のスポットライトの光をつけ、そしてマイクを持ちながら皆に呼びかける。

「皆、その熱い思いをマイクにぶつけるんだ」
『え?』

 皆が戸惑った。

「歌の力でグランナイツの皆に力を上げるんだ。それが今僕達が出来る最大の後方支援だよ。そして君達の熱い思いを彼女らに届けるんだ!」

 その言葉にいち早く乗ってきたのは以外にもノーヴェだった。

「おもしれえ、やってやろうじゃんか!」
「おお、ノーヴェノリノリっスね」
「さあて、セインさんも張り切っちゃうよ!」
「少しでも力になれるのなら私も…」
「皆、やろう!」
『はい』
「私達もやろう!」
『うん!』

 ウェンディ、セイン、チンク、マリー、シャーリー、アルト、ルキノ、キャロ、ルーテシア、ヴィヴィオも決意を固め、皆で手を合わせてマイクを手に取る。

「ふん、いい結束だな」
「シグナム、私達もよ」
「な、何?!」
「エリオ君もね…」
「え!?」

 シャマルもいつの間にか手にマイクを持ち、無理矢理シグナムとエリオを誘い舞台に立つ。
 そしてヴェロッサ以外のメンバーが皆マイクを持ちステージに集結した。
 マリー特性のカラオケモニターとスピーカーが用意され、スピーカーからイントロが流れ、それはグラヴィオンのコックピット内にも流れていく。

「シスターの諸君、合唱せよ!!」

 ヴェロッサが舞台にいる皆を一まとめに「シスター」と称し、合神承認と同じポーズをとり、合唱承認をした。
 それと同時にモニターからはグラヴィオンの現在の状況がリアルタイムで映し出され、画面下のほうには自分達が歌う歌の歌詞のテロップが現れ、皆が一斉に歌いだす。

「♪~~~~♪~~~」

 エリオとシグナムは歌うのに最初は戸惑いを見せたが、皆が歌っているのを見て覚悟を決め、自分達も歌う。
 その頃グラヴィオンは敵ゼラバイアを発見し、ゼラバイアを急いで火山から追い出そうとゼラバイアに攻撃を仕掛ける。
 敵がなかなか火山中から離れようとしないので、スバルは一か八かと言う思いでグラヴィオンの腕を使って無理矢理ゼラバイアを持ち上げた。
 それと同時に歌もサビに入ろうとするところでヴェロッサは叫んだ!

「ゴッド、グラヴィオーーーーーーーーーーーーーーン!!」

 グラヴィオンはその持ち上げたゼラバイアを遥か上空へと放り投げる。それでも火山の外までは届かない。
 スバルは「これでもか!」っと言う勢いで、グラヴィオンのパンチのラッシュをゼラバイアに浴びせる。
 パンチのラッシュと同時にグラヴィオンも火山の外に向かってブーストを上げる。
 パンチとブーストの勢いによりゼラバイアはようやく火山の外に姿を出し、グラヴィオンは追撃の一撃としてゼラバイアを蹴り上げ、
 そしてヴェロッサの承認により現れた超重剣を手にゼラバイアを切り裂く!

「超重、ざーーーーーーーーーん!!」

 ゼラバイアを空間ごと切り裂き、ゼラバイアは消滅した。
 その様子をグラントルーパーのメンバーは皆固唾を飲んで見ていた。

「やっぱかっけえなグラヴィオン。生で見るとますます…、抱きしめたいなーーーー!」
「それはさすがにまずいですよ」

 ヴァイスの興奮をグリフィスが冷静に突っ込む。

「へ、やるじゃねえかグラヴィオン…」

 ヴィータもそのグラヴィオンの強さを初めて生で見て少々興奮した。

(なのは、今回はお前達に先を越されたが今度はそうはいかないぞ)


 そして1泊の慰安旅行を終え、教会に戻った機動六課のメンバー。
 留守番をしていたクロノにリインはあるものを渡した。それはヴェロッサとリインが卓球勝負で得た「豪華混浴温泉」のチケットであった。
 卓球で得たチケットはヴェロッサに渡されたが、ヴェロッサは卓球をしたかっただけで景品にはあまり興味が無かったのでチケットをリインに渡し、リインはいつもお世話になってるお礼と言うことでクロノに渡したのだ。

「ありがとう、本当にありがとう………」

 クロノは仮面の下から波だ滝のように出てきた。その涙は30分ほど止まらなかったとか……。


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最終更新:2008年08月31日 14:20