グランフォートレスは飛ぶ。その先には孤島が一つ浮かんでいた。
「わあ、懐かしい」
「スバル、遊びに来たんじゃないのよ」
グランフォートレスの中から島の様子を見て懐かしむスバルをティアナが少し叱る。
「いいから、ティアも見てみてよ。変わってないよ」
ティアナはしぶしぶモニターから島を見て、ティアナも懐かしさを感じた。
「本当に変わってないね」
「二人とも来た事あるの?」
なのはがスバル達に尋ねる。
「ええ、ティアに初めてギン姉を紹介した場所なんですよ」
「そうなんだ」
「あの時は楽しかったな~」
スバルとティアナはギンガと一緒に遊んだ時の事を思い出す。
と言ってもティアナはスバルに一方的に振り回されたり、ギンガにもスバルほどではないが少し振り回された記憶がある。
「お二人にとっていい思い出なんですね」
後ろで聞いていたリインがそう言った。
「時空管理局の協力の下で作られて、管理世界の様々なものを取り入れているのよ。まあ、レプリカだけど雰囲気を楽しむにはいい場所ってところね」
「ドゥーエも行ったことあるの?」
今度はフェイトがドゥーエに尋ねた。
「まあちょっとした用事があってバイトをしていたの。すぐに飽きてやめたけどね…」
その割には少し誇らしげに話すドゥーエ。
「そろそろ着陸に入るぞ。早く席に着け」
グランフォートレスを操縦するシグナムが皆に注意を呼びかける。
「はあ~、プライベートならよかったのにな……」
第12話 孤島からの真実
グランナイツのメンバーは島に降り立つが唖然とする。その島は普通の遊園地となんら変わりないようにしか見えない。
「ねえ、これって…」
「前と全然変わらない普通の遊園地ね…」
スバルとティアナは前と変わらない様子にわずかに戸惑いを見せる。
何で二人が戸惑うのかと言うと訳がある。
それはこの日の明朝にこの島にゼラバイアの反応がわずかに見られ、その調査に来たのだが、ゼラバイアの反応はともかくとしても、普通に営業しているのだ。
「ずるいな~」
その遊園地の外の様子を教会の司令室のモニターで見ていたキャロがぼやき、ルーテシアとヴィヴィオもうなづく。
「グランナイツの皆だけで行くなんてずるい」
「私もエリオと一緒に行きたかった」
「ぼ、僕と!?」
隣にいたエリオはおもいっきり驚く。
「ルーちゃん、それもずるい」
「私もママ達と行きたかったー」
「あのね、これは任務。それに君達勝手にここに入ったらダメだろ」
クロノがキャロ達を追い返そうとするが、ヴィヴィオとキャロがせがむ。
「やだやだ」
「ねえ、遊園地連れって下さい」
「ああ、シャーリー、アルト、ルキノ。とりあえずこの子達を追い返してくれ」
クロノがシャーリー達に頼むが三人とも反応が無い。
何故かと言うと三人とも遊園地のマスコット人形に見惚れてたからだ。
「ああ、クマ君…」
「欲しいな~」
「君達………」
クロノは呆れてものも言えなかった。
そして遊園地にいるグランナイツのメンバーは遊園地の中を見回るが特に異常が見あたらなかった。
「何もおかしいところは無いわね」
「お客さんもいっぱいいるし…」
「間違いかな?」
「どうでしょうかな?」
ドゥーエ、フェイト、なのはの言葉にスバルが訂正するように言う。
「乗ってみないとわかりませんよ」
「ですね!」
リインが元気よく賛成した。
そして皆楽しんだ。ジェットコースターにお化け屋敷に水を滑り降りるコースターなどとにかく楽しんだ。
コスプレ店などにも行き、なのははどこかのケンカ馬鹿を待つ少女の格好、フェイトは主人公の男の前ではいつも緊張している女忍者、
ティアナはちょっと変わったものをお持ちかえる少女の私服、リインはどこかの不老不死で魔女と名乗る女性の最初の衣装、
スバルはパンツのようなズボンをはいている少女の服装などであった。
「次どこ行く?」
「そう言えば、リインはこういうの初めてだよね。なんだったらリインの行きたいところでいいよ。遠慮なく言っていいよ」
「別にいいですよ。私はこう行った所に行くの初めてで充分楽しいです」
「リインってずっと聖王教会にいて、こういうところ出てないんだよね」
「はいです」
「私も魔法と出会う前までは家族や友達と一緒に行ったことあるけど…」
「そうか、なのはは聖王教会に行く前は普通の女の子だったのよね。それなのにヴェロッサときたら…、なのはにしろリインにしろ過保護ね」
ドゥーエが少しヴェロッサを皮肉るように言った。
「ヴェロッサさんにはとても感謝しています。記憶の無い私をずっと見てくれて…、もしヴェロッサさんがいなかったら……」
リインが懐かしむかのようにヴェロッサの事を思う。
「リイン、思い出はこれから皆で作れるよ」
「そうだよ」
「私たちで作ろう、リイン」
スバルやフェイトやなのは、皆がリインに心のある言葉をリインに伝える。
「皆さん、ありがとうございます」
その後皆でコスプレをしたまま写真を撮ったりなどした。
そして大方のアトラクションを楽しみ、そろそろ帰ろうかとした時、たまたまティアナが少年とぶつかる。
「あ、ごめんなさい……」
謝ったティアナは不審に思った。少年の様子がおかしいのだ。
そしてその不審は確信、いや現実となった。少年の姿が突然変貌し、ゼラバイアとなったのだ。
「な!?」
「ゼラバイア!」
すると周りの人間の様子もおかしくなりグランナイツのメンバー以外の人間が皆ゼラバイアになったのだ。
「まさか、全員…」
「皆強行突破! すぐにグランフォートレスのところに向かうよ!」
『はい!』
全員が自分の持つデバイスを手にし、変身し、バリアジャケットを装着。
自身の持つ技で回りにいるソルジャー級ゼラバイアを何とか蹴散らしていく。
ソルジャー級のゼラバイア達は自分達の身を一つに集め、合体し大きくなっていった。
「でかくなった!」
「皆、急ぐよ!」
なのはが指揮を取りつつ、皆飛んだり、走ったりしてグランフォートレスの方に向かう。
その様子は聖王教会の司令室でも確認されていた。
「ソルジャー級ゼラバイア、なおも増大」
「数は5000、いえもっと増えます!」
「これは客、係員、
その他の人間が偽装したゼラバイアだと思われます!」
「これはすごい数だ…。それにさらに合体してウォリアー級になるとは……」
クロノが冷静に状況を分析、その間にヴェロッサが司令室に入ってくる。
「ゼラバイアの目的は、グラヴィオンのパイロット」
スバル達はグランフォートレスで待機していたシグナムの助けもあって、何とかグランフォートレスに到着。
皆各グランディーヴァに搭乗した。
「よし、グランナイツの諸君、合神せよ!」
ヴェロッサの承認と共にいつものようにスバルが合神させ、ゴッドグラヴィオンが完成する。
そして合体されたウォーリア級のゼラバイアを迎え撃つ。
「いくよ! グラヴィトンミサイル・フルバースト。シューーーート!!」
なのはの乗るGアタッカーから大量のミサイルが発射され、ゼラバイアも飛び道具でそれに応戦。
お互い相殺しあい、周りに爆風が立ちこまる。ゼラバイアは何も見えないがゆえに隙が出来、その隙にすぐにグラヴィオンはグラヴィトンプレッシャーパンチを使い、ゼラバイアの腹部分に風穴を開けた。
そして一気にトドメを刺さんとばかりに超重剣を呼び寄せ、一気に決着を付けた。
ゼラバイアは空間ごと超重剣に斬られ、消滅した。
「ゼラバイア、消滅」
「ゴッドグラヴィオン、合神を解除してください」
超重剣はそのすさまじい破壊力ゆえに使ったらすぐに重力子臨界に達してしまうのだ。
「了解」
スバルが合神を解こうと、一旦島に着陸する。
すると着陸した途端突然島が揺れ始め、地面から無数の触手出現し、グラヴィオンの手足を絡め取る。
そして目の前には先ほど倒したゼラバイア以上の大きさをしたゼラバイアが姿を現す。
そうその島そのものがゼラバイアと化っしていたのだ。
「まさか島そのものと融合していたとは…」
「ゼラバイア、グラヴィオン内部に侵入! 侵食する気です!」
ゼラバイアの触手がコックピット内に入っていく。
そして各グランディーヴァにいる皆を襲い、Gシャドウのコックピットにも入ってくる。
しかしここで少し予想しがたい事があった。
それは他の皆と違い、触手が直接リインに攻撃しなかったのだ。
リインは突然の触手で驚く。そしてその触手からは目玉のようなものが現れリインを調べるかのように見る。
リインは突然その目玉見て、突然叫びだす。その叫びに反応したのか目玉は突然割れる。
それどころか外にいたゼラバイアが島ごと崩壊したのだ。
「一体何が……?」
「リイン……」
司令室にいるクロノとヴェロッサもその様子を唖然と見る。
「どういうこと!? リイン無事!?」
スバルがリインの安否を確認する。するとリインはなにやら怯えるような声で答えた。
「私は……、リイン……フォース……Ⅱ(ツヴァイ)……」
『!?』
突然何の事か皆わからなかった。リインはそれだけを告げて意識を失った。
司令室で聞いていたヴェロッサは床に手を付き、つぶやく。
「リイン、フォースⅡ………、ふふふふ、ふふふふふふ、ふははははは」
そしてヴェロッサは壊れた人形のように不気味に笑い続けた。
最終更新:2008年09月03日 17:12